【WIRELESS JAPAN 2011】
富士通ブースにモバイル活用ソリューション、大谷常務の講演も


 25日から開催されているWIRELESS JAPAN 2011において、富士通のブースでは、携帯電話・スマートフォンの夏モデルのほか、Windows 7ケータイが展示されている。また、展示の多くで、同社が掲げる「ヒューマンセントリック」に沿ったソリューションが披露されており、いくつかモバイルを活用したものも展示されていた。一方、Windows Phoneについての展示はなかった。

夏モデルドコモ向け
au向けWindows 7ケータイのF-07C

 

健康管理、医療訪問支援、農業知識のサポートなど

 かねてより携帯電話を使った健康支援サービスに取り組む富士通だが、今回の展示では、「からだライフ 糖尿病サポート」などが出展されている。

糖尿病サポート

 「からだライフ 糖尿病サポート」は、日々、血糖値の記録が必要な糖尿病患者をサポートするサービス。血糖値を図る専用の機器で指先からわずかな血液を採取して、最大で1日8回、血糖値を測定する。測定データは専用機器からケーブル経由で携帯電話へ転送され、サーバーで管理できる。記録していると、1日1回、患者の家族にメールを送り、日々の管理がうまく行われているか、患者の家庭内での情報共有を促す。糖尿病の治療の際には、医師に日々の血糖値の記録を見せることもあるが、この仕組みを使うことで、より手軽な記録が行えるようにする。医療機関経由でエンドユーザーに提供されるという。

専用機器で血糖値を測定携帯に記録

 また在宅医療を支援する仕組みも展示されている。これは、医師がパソコンの地図上で訪れる患者宅を選択すると、Googleマップのナビ機能を利用してルートを検索して、スマートフォンへ転送するというもの。東京・巣鴨を拠点を置く祐ホームクリニックと実証実験を進めており、ブース担当者によれば、同システム導入以前は手動で行っていた訪問先のピックアップが簡単になり、訪問できる宅数は、以前の倍になったという。将来的には電子カルテの利用も視野に入れているとのこと。

在宅医療の支援スマートフォンに転送
農業支援

 一風変わったソリューションとなるのは、農業分野を支援する取り組み。これは、農場に気象センサーや通信機能を備えたモジュールを設置して、これまでのノウハウから、収穫時期を判断したり、害虫の発生を警戒させたりするなど、農業法人が農業初心者の就労者を支援するために用いられている。

赤い端末が就労者が身につけるGPS端末スマートフォンと連携も

 このほか、法人向けソリューションとして、スマートフォンから社内のパソコンのデスクトップを操作できる「どこでも業務」も展示されている。これは、VPN接続機能を備えた専用アプリと、リモートデスクトップアプリを活用するもの。サーバー上の仮想デスクトップ環境へアクセスするのではなく、ネットワーク上はクライアントとなるパソコンを遠隔操作するというもので、Windows標準のリモートデスクトップを応用している。そのパソコンで扱えるアプリケーションは全て操作できることも特徴とのこと。

リモートデスクトップサービスパソコンにログインしたところ

 

大谷常務が語る富士通の取り組み

富士通の大谷氏

 25日の基調講演には、富士通執行役員常務の大谷信雄氏が登壇した。同氏は富士通は、デバイスからソリューションまで、垂直統合で提供することが強みとアピール。また、富士通シーメンス買収で欧州に拠点置くなど、日本企業の中でもグローバル展開が進んでいるとした。そうした同社事業の中でも、ユビキタスデバイスはエンドユーザーに一番近く、重要な役割を担っていると指摘する。

 現在の富士通は、1990年代まではコンピューターセントリック、2000年代までのネットワークセントリックに次いで、ヒューマンセントリックを掲げる。その考えを支えるのは、クラウド、センサー技術、ユビキタス端末、高速ワイヤレス通信だ。ヒューマンセントリックでは、人々の活動をユビキタス端末やセンターで拾い上げ、サービスプラットフォームで解析したり新たな価値を付加したりして、ユーザーの行動支援に役立てる、という流れが想定されている。これを富士通1社で提供する。

 このうちサービスプラットフォームだけを見ると、これまでICTがあまり利用されていなかった農業やヘルスケア、医療といった分野での活用に取り組む。具体例として、農業分野や健康分野での取り組みが紹介された。

 農業では、高齢化による耕作地の放棄や、これまでの知識が継承されていないことなどが問題となっている。ICTの活用は、25%程度で、その多くが帳簿管理であり、現場ではあまり活用されていないと大谷氏は指摘する。富士通では、2008年から宮崎県都城市に拠点を置く農業生産法人の新福青果と協力し、農業におけるナレッジマネジメントシステムの検証を行ってきた。新福青果が手がける農場は97ヘクタール、3km四方のエリアに点在しており、バラバラに位置する農場をいかに管理、運営するかが課題だった。

農作業をサポート個人向け健康サービスを拡充

 実証実験では、フィールドサーバーと呼ばれる装置を設置。同装置の最上部には日照量センサー、ついでカメラ、湿度センサー、内部温度センサー(気温)、土壌水分センサー、土壌温度センサー、気象計があり、3Gデータ通信機能と無線LANを備える。高さは3~4m。無線LANでデータを伝送したり、カメラで撮影したデータを事務所から確認したりして、活用する。センサーで捉えたデータは、携帯網経由でサーバーに送信される。農場の状態は、写真やアイコン、温度表示など確認できる。機材や人がいるかどうか、害虫が発生しているかどうかわかるようになっている。雑草を取ってから、一定期間経つと、「雑草はないか?」といった文が表示され、注意を促す。

 こうした手法で土地を管理する一方、働く人に対しては防水構造のGPS端末を用意した。携帯電話でも位置情報は把握できるが、バッテリーとの兼ね合いから、専用端末が用いられている。

 また健康分野については糖尿病患者の血糖値管理が紹介された。糖尿病を患うと、日々の血糖値確認が必要となる。これを携帯電話でより簡単にできるようにした。5月16日には、血糖値検査キットのシェア6割を占めるというアークレイとの提携を発表している。そこで用意されたサービス「からだライフ 糖尿病サポート」は6月から提供される予定だ。

 大谷氏は、どちらも、これまでICTの活用が進んでいない分野として、今後も人間に近い情報サービスを展開するとした。

 

(関口 聖)

2011/5/26 08:30