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【WIRELESS JAPAN 2011】
ドコモとKDDI、UQが語ったLTE、そして4Gへの展開


 WIRELESS JAPAN 2011の最終日、「LTE/4G移動通信技術フォーラム」と題して、キャリアの技術担当者らの講演が行われた。

NTTドコモ 尾上氏

NTTドコモ 尾上氏

 NTTドコモは、昨年末、LTE方式のデータ通信サービス「Xi」(クロッシィ)を開始した。NTTドコモの執行役員 研究開発推進部長である尾上誠蔵氏は、長年にわたって力説してきたLTEサービスが商用展開にこぎつけたことを説明した。ドコモがWIRELESS JAPANにおいてLTEのコンセプトを説明したのは2004年が最初の年だったという。それから7年を経て実現した「Xi」は、現在、下り最大37.5Mbpsでサービスが開始されている。帯域幅を拡張することで、技術的には100Mbpsの通信速度も不可能ではないとしている。

 東名阪でサービス展開されており、ドコモでは徐々にエリアを広げていく計画だ。2012年度には全国の主要都市に拡大するとしている。サービス契約者数は4月末で約5万件で、2011年度目標の100万契約達成にはまだ開きがある状況だ。2011年夏モデル発表会では、Xi対応のモバイルWi-Fiルーターをリリースるる予定であることが明らかにされた。さらにドコモでは秋にもXi対応のタブレット端末を、冬にはXi対応スマートフォンを提供する計画だ。尾上氏は、2014年にはXi対応機器は1500万台規模になるとした。

 かねてから尾上氏は、LTEサービスについて、爆発的に拡大する通信トラフィックをさばくためにも必要不可欠であると主張してきた。同氏はあらためてデータを示しし、現在も年間数倍のペースでトラフィック増が続いているとした。それでも日本市場はiモードやEZweb、Yahoo!ケータイが普及していたため、そもそもモバイルのデータトラフィック高い状況にあり、数倍に収まっている。フィーチャーフォン向けのコンテンツ市場が小さい海外事業者にあっては、トラフィックの増加率は日本の比ではないようだ。

 尾上氏は、LTEには課題があるという。欧州、北米、日本と、各社の採用するLTEの周波数が統一されていないことだ。周波数が異なれば、対応する周波数毎に端末や基地局設備を構築する必要があり、いわゆる「規模の経済」が働かなくなるのだ。

 この原因を尾上氏は、LTEが新しい周波数にしか割り当てられないという誤解のせいだとする。たしかにLTEはW-CDMA方式とHSPA方式のように、同じ通信方式に重ねて採用することはできない。そこで尾上氏は、各社が採用する2GHz帯の3Gサービスの一部をLTEに割くことを提案する。帯域幅の数MHzをLTE用とすれば、3Gサービスとの共存が可能という。端末はLTEと3Gのデュアル対応とし、LTE加入者が増えるにつれて、3Gの周波数帯におけるLTEの割合を増やしていけばいいという考えだ。なおこれは当然、ドコモのXiが2GHz帯でサービス展開してことを踏まえたもので、海外との「規模の経済」を期待する考えといえるだろう。また、4GとなるLTE-Advancedにも言及し、LTEは4Gへスムーズに移行するようそもそも考えられた方式と説明。LTEとLTE-Advancedは同じ周波数を共用できるとした。

 このほか、国内の携帯各社が2Gサービスを終了することについて、尾上氏は「世界に誇るべき周波数の有効利用」と語った。これは欧州各国の事業者がGSMを手放せない事情を指した発言だ。尾上氏は、GSMをGPRS、EDGEと拡張してきたのと同様に、3GでもW-CDMA、HSPA、HSPA+と拡張させていけば、より4Gへの移行ハードルが高くなっていくことを指摘した。同氏は、「2G終了は日本では当たり前だが、欧州ではGSMの火を落とすことは考えられない。先日海外で、世代交代の秘訣を披露した。“ようするに古い世代のエボリューションをやめればいい”」などと話した。



 

KDDI 古賀氏

KDDI 古賀氏

 続いて、「マルチネットワーク技術の将来像について」として、KDDIの技術開発本部 標準化推進室長の古賀正章氏が登壇した。冒頭、震災での状況を説明し、災害時に緊急地震速報など放送型の一斉配信システムが有効に働いたとした。

 ドコモの尾上氏同様、古賀氏も国内外でのトラフィックの急増を指摘した。国内のモバイルのデータ量は、この10年で約10倍にふくらんだ。これは5年に15倍のペースと大きなものだが、北米では、5年で23〜47倍と事業者の悩みの種になっているとした。対策として、周波数の利用効率を上げるために、次世代システムを着実にフォローしていくとともに、基地局設備をマクロから、マイクロ、ピコ、フェムトセルと密度を濃くしていく必要があるとした。また、マクロ基地局下のユーザーをピコやフェムトセルにハンドオーバーすることで、分散させる必要もあるという。

 KDDIでは、「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」の3M戦略を採用し、さらなるユーザー獲得を図っていく戦略だ。さまざまなサービスをネットワークによることなくシームレスに、好きなデバイスで利用できる社会を目指している。

 KDDIでは、最新モデルを中心に、CDMA2000 1xEV-DOのマルチキャリアを採用し、下り最大9.2Mbpsでサービス展開している。2012年よりLTEサービスを展開する予定で、マルチキャリアとLTEの間にEV-DO Advancedを導入する計画だ。基地局のトラフィックを見ていくと、混雑している局とそうでない局が隣り合っている場合があるという。こうした場合に負荷を分散させて帯域を確保していこうとするのはEV-DO Advancedになるという。既存基地局のソフトウェア更新のみで導入可能で、現行の端末でもサポートできるものとのこと。

 KDDIの計画では、LTEは2012年12月より商用サービスを開始。2014年度末までに人口カバー率96.5%を目指す。800/1500MHz帯の10MHz幅で運用していくという。なお、LTEはCDMAの進化の道筋にあるため、W-CDMAと同様にCDMA2000も互換性がある。KDDIでは、音声電話については既存のCDMA2000 1X網で、データ通信についてはLTEで行う。LTE圏外の場合でも、EV-DOエリア、1Xエリアに後方互換する。

 このほか古賀氏は、トラフィックの混雑状況によって、アクセス手段を変更するポリシー・コントロールや、サービスによって、品質を高くすべきか遅延を短くすべきか判断するフローについて説明した。



 

UQ 渡辺氏

UQ 渡辺氏

 UQコミュニケーションズの執行役員 CTOの渡辺文夫氏は、同社のWiMAXサービスや、今後のWiMAX2について言及した。まず、震災において携帯電話各社の電話が繋がらなくなった状況を説明し、「インターネットの力が大きかったと思う。Twitterで情報ががんがん流れていった。ネット専用でサービス展開する強みを活かしてSMS的な情報のやりとりがなされた」などと話した。被災地では現在WiMAX搭載PCなどが避難所に設置されているという。

 加入者については、6月中頃には100万契約に達成する見込みとし、最終的に2011年度末には、200万契約を超えるのが確定的であるとした。現在はモバイルWi-Fiルータータイプの端末に人気があり、新入学や新社会人などを中心に、有線契約を行わず、自宅でもWiMAXだけで通信するユーザーも増えているとした。

 UQコミュニケーションズは、データ専業であるというだけでなく、自社のショップを持たないことも他の通信事業者とは異なる特徴となっている。Web通販のほか、対面販売はMVNOとして各社が展開している。MVNOを受け入れるために「オープン&フェア」な環境として、5種類のMVNO向け構成を用意しそれを全て公表しているという。

 渡辺氏はユニークな事例として、慶應大学の藤沢キャンパスのネットワークを紹介した。大学内のパソコンは基本的にイントラネットに接続されており、UQの端末を利用することで、大学外でもインターネットにアクセスすることなく、大学の網内アクセスを実現している。VPN接続などが必要なく、直接専用線に繋がるというもので、これは企業などの専用線サービスとしても活用できるとした。

 UQでは、6月、64QAMを導入して、上りの通信速度を最大15Mbpsに伸ばす計画だ。渡辺氏はWiMAXの採用するOFDMAの技術について言及し、「OFDMAはCDMAに比べると難しく、パフォーマンスを上げるまでに時間がかかる」と話した。ドコモのXiもLTEとなるため、OFDMAの技術となる。この点について同氏は「ドコモの実力をすれば、あっという間にパフォーマンスが上がるだろう」などと語った。

 ITUのIMT-Advancedでは、日本からWiMAX2(IEE802.16m)と、LTE-Advancedが提案される。渡辺氏はWiMAX2の帯域幅を40MHz幅と想定し、仮に40MHz幅の場合、下りのスループットは330Mbps、上りのスループットは122Mbps程度になるとした。WiMAXとも後方互換する。

 なお、7月初め、UQは都内でWiMAX2のフィールドテイストを実施する。20MHz幅でのテストとなり、結果は公開される予定だ。渡辺氏は秋にもWiMAX2の技術標準が完成するのではないかと話していた。

 このほか、今後通信各社の伸びしろとして期待される、M2M市場についても言及された。渡辺氏は、携帯電話各社のM2MにはSIMカードが必要であり、1台1台の契約が伴うため、大量導入などでは不便とであるとする。また、ソフトウェアSIMという考えもあるが、これも、標準化団体である3GPPでは否決されてしまった。渡辺氏はWiMAXにSIMカードはないと話し、オペレーター契約が端末購入後にできる点を説明。「WiMAXでは買った後にオペレーターを選ぶ。そうでなければM2Mが爆発した場合に追い追いつかない」などと述べた。

 最後に渡辺氏は、「15年前、電話が全部無線になるとは考えもしなかったが、実際無線になった。あるレベルのパフォーマンスを超えたところで、通話料が高くても無線になっていった。私はデータ通信も同じように無線になっていくと思っている」と語り、講演を締めくくった。


 




(津田 啓夢)

2011/5/27 20:39