【ワイヤレスジャパン2014/WTP2014】

基地局と制御センターの通信量を削減、KDDI研の新技術

 モバイル通信サービスでやり取りされるデータ量は、日々、増え続けており、それをいかに処理して、快適な通信環境を提供するのか――携帯電話各社が抱き続けるこの課題に対して、いくつもの手法が編み出され、続々と導入されている。

KDDI研究所の新技術の概要

 そうした手法の1つとして、今後、導入されるのが「C-RAN」(Centralized Radio Access Network)、つまり携帯電話の通信ネットワークのうち、基地局と携帯電話を繋ぐ無線部分の制御を、1カ所にまとめてしまうというもの。主に都市部での導入が想定されているC-RANは、100~300程度の基地局の制御を1カ所でまとめて行う。集中制御することで、複数の基地局同士を協調させやすくなるなど、エンドユーザーにとっては通信品質の向上が期待できる。また通信事業者にとっても設備面での費用を削減できると期待されている。

 ここでネックになるのが、センター(収容局)と基地局の間でやり取りするデータ量。C-RANでは、基地局からセンターへ、LTEの無線データを送信する。つまり信号の波形を送ることになり、従来の16倍と莫大なデータを扱うことになる。今回、KDDI研究所ではこのやり取りする信号に対して、通信品質を維持しつつ、トラフィック量をほぼ半減させる手法を新たに開発。欧州の標準化団体で採用されることになり、28日開幕したワイヤレステクノロジーパーク2014の展示会場で、その動作が披露された。

 ブースでは、圧縮・伸張用の装置と、20km分の光ファイバーが用意され、有線環境下で圧縮技術のデモンストレーションを実施した。リアルタイムで品質の劣化状況をモニターで示し、ほとんど劣化しない様子が紹介されていた。

 このほか、M2M機器のデータを効率よく処理するための技術も紹介されていた。これは数KB程度ながら、機器が増えれば膨大な件数にのぼると予測されている、M2M(機器間通信)の通信に対するもの。1件1件をリアルタイムに処理するのではなく、パケットを解析して、リアルタイムな処理が不要なM2Mのデータは一時的に貯め置いて、まとめて処理する、という仕組み。効率的に処理することで、今後、M2M対応機器が急拡大しても対応しやすくするほか、一般ユーザーの通信品質への影響も低下できる、といった効果も見込めるという。

関口 聖