【ワイヤレスジャパン2015/WTP2015】

ミリ波帯で車両内通信、LTEとの連携、KDDI研究所の技術展示

 東京ビッグサイトにて、5月27日~29日の期間で開催されている、通信関連分野の展示会「ワイヤレスジャパン2015/ワイヤレステクノロジーパーク2015」。本稿では、KDDI研究所の展示をご紹介したい。

 KDDI研究所のブースで、5Gに向けた技術として紹介していたのは、ミリ波帯を利用した通信技術だ。ミリ波帯(EHF)は、30GHz~300GHzの周波数帯で、大容量の転送に向いているが、直進性が高く、一つの基地局の通信エリアとしては狭いという特徴がある。

 KDDI研究所が開発した、60GHz帯のミリ波とLTEを協調動作させる通信技術では、LTEとミリ波帯に対応した基地局を設置する。ユーザーが利用すると予測されるコンテンツをあらかじめ基地局側にダウンロードしておき、ミリ波帯のエリア内に入ったタイミングで、大容量のコンテンツを伝送するという技術だ。パロアルト研究所が開発した新しいネットワークアーキテクチャ技術「CCN」(Content-Centric Networking)を利用している。デモでは、スマートフォンで動画コンテンツを再生しながらミリ波帯の範囲に入り、基地局にキャッシュされたコンテンツより続きを取得し、継続して再生していた。

送信側のミリ波伝送装置
受信側のミリ波伝送端末を装着したスマートフォン
上のグラフがLTEでのストリーミング通信。ミリ波通信(下グラフ)によるキャッシュ取得後十数秒、ストリーミングが停止している

 また、60GHz帯のミリ波帯を活用した別の技術として、車両内での高速通信技術が紹介されていた。ミリ波帯は直進性が高く障害物に弱いため、非接触での通信技術として研究されることが多いが、KDDI研究所では、新幹線車両や航空機内での高速通信技術として利用できないか研究しているという。デモでは、新幹線の車内を再現したモックアップで、網棚に設置されたミリ波帯のアクセスポイントから、反射板を通すことで、狙った座席の端末まで、約1.3Gbpsの通信速度(スループット)での無線通信を行っていた。

 KDDI研究所のブースでは、スマートフォンアプリ向けの屋内測位システムも展示されていた。これは、ビーコン(Bluetoothのタグ)とスマートフォンのセンサー(加速度・ジャイロ・地磁気)といったセンサーを利用した位置測位技術。ビーコンでおおまかな絶対位置を、スマートフォンで歩行者の相対位置を取得し、両者を組み合わせて詳細な相対位置を取得する。理想環境では誤差1.6m程度、実環境でも3.6m程度の誤差で位置認識するという。ブースでは、国土交通省が主導となって、KDDIも参加して行っている実証実験で提供されているアプリ「渋谷歩行者ナビ」が展示されていた。

地下街などの壁に設置されるビーコン
「渋谷歩行者ナビ」アプリ
KDDI研究所内での屋内測位システム検証結果
渋谷地下街での屋内測位システム検証結果

石井 徹