【ワイヤレスジャパン2015/WTP2015】

Firefox OSスマホ「Fx0」のもう1つの狙い

 2014年12月にKDDIから発売された「Fx0」はFirefox OSを搭載するスマートフォン。
KDDIでは、WebアプリやIoT連携システムの開発にも使いやすいスマートフォンとして当時発表した一方、iOS、Androidに続く「第3のOS」のスマートフォンとしても話題になった。

 27日、東京ビッグサイトで開催されている展示会「ワイヤレスジャパン2015/ワイヤレステクノロジーパーク2015」の基調講演に登壇した、KDDIプロダクト企画本部長の小林昌宏氏は「メディアではAndroid、iOSに続く第3のOSという取り上げられ方が非常に多かった。でもそれだけで『Fx0』を作ったわけではない」と語る。

KDDIの小林氏

IoTに向けた布石

 Fx0は、Firefox OSを搭載し、当初から“ギーク層の作りたい欲求”に応える機種、と説明されてきた。小林氏は「WebベースのOSで高性能なスマホが作れるというのなら見せてみたい、というのは(Fx0提供の背景に)ありつつも、動かすことには別の意味がある」と述べる。

 Firefox OSは、HTML、JavaScript、CSSといったWeb関連の技術を取り込み、ブラウザエンジンのGecko上で動作する。Webサービスの開発に携わる人、あるいはその知識がある人は数多い。

小林氏
「クリエイティブな人たちが、便利そうと思ったらシンプルに実現できる世界が必要だと思った。WebOSは開発者が非常に多い。スマートフォンとしての機能のためにさまざまなデバイスを搭載しただけではなく、Webアプリからセンサーやディスプレイを動かせる。それがスマートフォンとしても動くという意味があった」

 開発ツールの「Gluin」は、シンプルな思考で開発できるツール、とした小林氏は「IoTの世界にはそういうトレーニングをした人が考えないと、本当にシンプルなものができないのではないかと考えている。そういう人たちにFx0をオモチャとして使って欲しい」と述べた。

「ネットに繋がる自動車」を守る技術

 2020年頃の商用化を目指す5Gでは、通信速度が100倍になるなど、具体的な要件が固まりつつあり、その用途の1つとして「自動運転」が挙げられることが多い。現在、エンジンやブレーキを制御する仕組みは自動車内に閉じられたネットワークにあるが、自動運転を実現するには、5Gの低遅延技術などを用いて、周囲の自動車と情報を交換するなど、リアルタイムで通信しつづけることが必要、とされる。

 現在は閉ざされた環境にある、自動車内の各種制御エンジンだが、自動車そのものがネットに繋がる形になると、外部から攻撃され、たとえばブレーキが操作できないようにしたりする、といったリスクが生じ得る、と小林氏は指摘する。

 そこで同氏が紹介したのが、携帯電話のSIMを使うという技術だ。外部からのアクセスから制御システムを守るため、SIMを活用するというもの。SIMのICチップにあるJavaアプリ領域にセキュリティ用のアプリを搭載、暗号鍵の生成・配付やソフトの暗号化・署名を格納する。SIMで生成された暗号鍵であればエンジンやハンドル、ブレーキを制御するシステムにアクセスできる。車外との通信は、車内とは別の暗号鍵を使う。こうした仕組みで、通信経由のアップデートなどに対応しつつ、車内の制御システムを保護する。将来的には組込用途のeSIMになると見込まれており、自動車の所有者が変わっても、情報の書き換えなども通信経由で対応できる。

 小林氏は「SIMがファイアウォールのような役割を果たすシステム」と紹介し、IoTの広がりにはセキュリティ、プライバシーの保護が重要になると指摘した。

関口 聖