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気になるケータイの中身

シャープにソーラーモジュール開発の裏側を聞く


SH002(左)と936SH(右)とソーラーモジュール(中央)

 今夏、シャープはau向けの「SH002」、ソフトバンク向けの「936SH」、NTTドコモ向けの「SH-08A」でソーラー発電機能を搭載したケータイを投入する。これらのケータイに搭載されているのは、シャープが開発したソーラーモジュール(太陽電池)だ。シャープでは今回搭載したのと同様の携帯機器用ソーラーモジュールを商品化し、7月10日より量産して外販も行う。

 ソーラーモジュールとは、入射する光のエネルギーを電気エネルギーに変換する、主にパネル形状をしたデバイスのこと。電卓のような小電力デバイスから、家庭用電気の発電まで、さまざまな用途に使われているが、国内のケータイに搭載されるのは今回が初めてだ。

 ケータイにソーラーモジュールを搭載するというのはどういうことなのか、今回はケータイ自体の開発担当ではなく、ソーラーモジュールの開発を担当したシャープの電子デバイス事業本部 システムデバイス第一事業部 企画部 参事の藤田勝行氏にお話を伺った。

――なぜ携帯機器向けのソーラーモジュールを開発されたのでしょうか。

シャープ藤田氏

藤田氏
 まず、市場にニーズがありました。携帯電話は高機能化して消費電力も増え、バッテリーが注目されつつあります。外出先で電池が切れる、ということだけでなく、昨年の四川大地震のような災害時・緊急時にもニーズはあるでしょう。また、最近の”エコブーム”を反映し、「ソーラー発電を使用」イコール「エコに貢献」のイメージもあります。

 このほかにも、海外の電力事情が良くない地域のニーズも想定しています。そうした電力事情が良くない地域の中でも、日本よりも日照量が豊富な、赤道に近いエリアの携帯電話もターゲットになるのではないか、とも考えました。

 さらに、シャープには技術のタネ、いわゆる“シーズ”もありました。シャープは液晶だけでなくソーラーシステムにも力を入れていて、ソーラーシステム事業本部では量産実績が46年もあります。当初は衛星や灯台向けなどでしたが、現在は住宅用に力を入れています。また、電子デバイス部門は半導体集積回路、つまりICやLSIなどを小さく薄く作る技術を持っています。これらの技術を組み合わせることで、携帯機器に搭載できる小型なソーラーモジュールの開発が可能になります。

 このように、ニーズとシーズの両方がそろったところで、携帯機器向けのソーラーモジュールを開発いたしました。

――そもそもソーラーモジュールとはどのようなものなのでしょうか。

ソーラーモジュール(太陽電池)の原理
ソーラーモジュール(太陽電池)の種類

藤田氏
 当社のソーラーモジュールは光半導体、具体的にはシリコン太陽電池セルを使った外装部品です。太陽電池セルにN型半導体とP型半導体でPN接合を作り、そこに光を当てると、その光エネルギーが電気エネルギーとなり、電気が発生します。これが発電の原理です。

 太陽電池セルには種類がいくつかあり、それぞれ変換効率やコスト競争力に特長があります。まず大きく分けると使っている素材によりシリコン系と化合物系の2種類に分けられますが、一般的に太陽電池セルで使われているは、シリコンを使ったものです。

 シリコンを使ったものの中でも、結晶系と薄膜系があります。通常、電卓などで使われているは、薄膜系アモルファスの太陽電池セルです。一方、住宅用などで使われているのは結晶系の太陽電池セルです。今回開発した携帯機器向けのソーラーモジュールも、住宅用と同じシリコンの結晶系の太陽電池セルを使用しています。

――同じシリコン系でもいくつか種類がありますが、どのように違いがあるのでしょうか。

藤田氏
 簡単に言えば、製造方法が異なり、それにより材料の緻密さが異なります。シリコンの結晶が緻密でより結晶に近いほどエネルギーの変換効率が高いのですが、反面コストが高くなります。たとえば住宅用ソーラーシステムでは、変換効率が重視されるのでシリコン結晶系を使っていますが、電卓のような小電力機器では薄膜アモルファス系を使っています。

 今回のソーラーモジュールに使用している太陽電池セルは、シリコン系の多結晶です。コストの問題もありますが、既存の住宅用太陽電池セルの製造設備が使用できることもあり、変換効率と供給の両面から、シリコン系の多結晶を選択しました。

――住宅用など、従来のソーラーシステムは大きい製品ばかりでしたが、それをどのように携帯機器向けに小型化したのでしょうか。

ソーラーモジュールは入射光を増やすために表面が非光沢処理されている

藤田氏
 シャープの持つ太陽電池セル自体の技術に加え、集積回路の技術を融合させました。ポイントはモジュールを薄く作ったことにあります。

 薄型化のために、シャープの持つチップ・サイズ・パッケージ(CSP)技術を使いました。これはケータイの薄型化ニーズから出てきた集積回路技術なのですが、たくさんのチップをコンパクトにまとめるというものです。

 CSPの製造工程ではまず、複数のLSIチップを重ねていき、上下のチップが干渉したりショートしないよう各チップは「低ループワイヤーボンド技術」で精度良く配線します。さらに重ねたチップをいくつか並べ、複数個同時に樹脂により一括で「封止大判一括モールド技術」を用いています。

 今回のソーラーモジュールではチップを重ねてはいませんが、LSIチップの代わりに太陽電池セルをプリント基板上に配置し、このCSP技術で培われた高精度低ループワイヤーボンド技術、並びに大判一括モールド技術の応用により、モジュールを薄く、かつ均一に仕上げることができました。さらに太陽電池セルで太陽光を受ける必要がありますので、光学デバイスで培った透明樹脂による封止技術も使用しています。

 こうした技術を用いて、既存の設備を活用しつつ、1年弱という短期間で携帯機器向けのソーラーモジュールを作り上げました。

パネル自体の厚さは0.8mm

――薄型化がキーポイントとのことですが、通常の住宅用ソーラーモジュールはどのくらいの厚みがあったのでしょうか。

藤田氏
 もともとの住宅用のソーラーモジュールは、今回のモジュール(厚さ0.8mm)の数倍の厚みがあります。開発当初は実験のために住宅用のソーラーモジュールをそのままケータイに搭載してみたのですが、かなりの厚みがありました。その実験は発電性能を試すためだったのですが、ケータイの開発部門からは厚み1mm以下という要望を受け、それをターゲットに薄型化を行いました。

――スペックを見ると、モジュールの出力電圧が4.5Vで、電子デバイス的にちょうど良さそうですね。

藤田氏
 実は太陽電池セルのみでは約0.5Vしか出力しません。これを10個直列で接続し、約5V(4.5V以上)としています。DC-DCコンバーターで昇圧する手法もありますが、そうすると昇圧回路が必要になり、さらに昇圧時の電力ロスも問題になりますので、今回は直列にセルを配線する手法を採用しました。

左側が実際の量産製品。右側はサンプル品。サンプル品は光沢処理されている

――本日お持ちいただいたサンプル、表面の模様が2種類あるようですが?

藤田氏
 この模様は電気を取り出すための電極です。太陽電池セルから電気を取り出すためにはこの電極はなくすことができず、均一にバランス良く配置しないといけません。今回お持ちしたサンプルでは、横線が入っているものが実際に量産されたもので、ハニカム状になっているものは電極のデザインを変えたものです。オリジナリティのあるモジュールデザインも可能であることをご紹介するためのサンプルです。

――本日はお忙しいところありがとうございました。




(白根 雅彦)

2009/7/22 10:32


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