「HT-03A」インタビュー

ドコモの考えるAndroidの世界


 7月10日、NTTドコモより携帯電話プラットフォーム「Android」を採用したスマートフォン「HT-03A」が発売された。今回は、NTTドコモ プロダクト部 第五商品企画担当部長の板倉仁嗣氏に「HT-03A」とドコモのAndroidへの取り組みについて聞いた。

NTTドコモの板倉氏

――Androidケータイ、Googleケータイなどと呼ばれる「HT-03A」のターゲットについてうかがいます。年齢や性別、ライフスタイルなど想定されているイメージを教えてください。

 我々が狙っているのは2台目の需要です。パソコンの代わりに、ネットブックの代わりに持ち歩いていただけるものと考えています。そういったことから、中心となるのはまず30代の男性です。インターネットをよく利用する方には、操作も軽いですし、バッテリーもパソコンと比べると飛躍的に良いものです。外出されたときに自分の行動をサポートしてくれるような道具になるのではないでしょうか。

――ハードウェアキーボード非搭載の端末を採用した理由を聞かせてください。

 Androidの1号機としてどういったものが良いのか検討した結果、今回はキーボードは非搭載で行こうと考えました。登場した際に、いかに新しいものとして演出できるか、トータルのデザインも含めてこの機種を選びました。

――ドコモではスマートフォンとして、BlackBerryやWindows Mobile端末を投入されていますが、Androidはそれらとどう違うとお考えですか?

 一口にスマートフォンといっても、OS毎にそれぞれ特徴があります。BlackbBerryはメール利用が中心の企業向けに開発されていますし、Windows MobileはこれまでのWindowsの資産が活かせるものとなっています。

 Androidはこれから新しい世界が作られていくもので、Googleのマーケットに対する期待もあるでしょう。いろいろなサービスを作っていただける場所になると思います。通常の携帯電話は安心や安全が第一に開発されているので、電話帳との連携などは一般ユーザーにはできない仕様となっています。「HT-03A」はパソコンと同じように、さまざまな組み合わせでチャレンジできるという開発側の期待もあるようです。

 利用するユーザーとしては、軽い動作のブラウザやフルタッチで快適に操作できるインターフェイスもポイントになるでしょう。iモードも頑張っていますが、「HT-03A」と比較するとまだまだ実現しにくい部分があるのも事実です。ドコモでは、iモードのビジネスもこれまで通り大切に育てていきますし、フルインターネットの世界にも目を向けてやっていければと考えています。

 iモード対応機のOSは、携帯電話向け専用のOSでした。携帯電話が発展し電話のソフトが進化していく中で、いろいろな機能が拡充されていきましたが、最も重要視していたのは電話であるということでした。

 これに対してAndroidは、どちらかというとネットに繋ぐ機器として捉えています。もちろんスマートフォンのOSはこれまでもありましたが、Androidは少し違ったアプローチのOSではないかと思います。

――世界的にスマートフォンの市場が伸びていると言われていますが、ドコモとしてAndroidの市場性をどう捉えていますか?

 山田(NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏)が各方面で話していることですが、通常の携帯電話の販売数が急激に落ち込んでいる中で、スマートフォンは成長が期待できる分野となっています。これまでドコモはこの分野に対し、目立った商品を提供できていなかったところもあります。しかし、BlackBerryに始まるここ最近の端末や、今回の「HT-03A」など数モデル続けて特徴的な商品を投入させていただきました。これからもスマートフォンの分野をきっちりフォローしていきたいと思います。

NTTドコモの板倉氏

――これまでのiモードやiアプリの世界は、ドコモのルールに基づいたコンテンツが提供されてきました。Androidマーケットに対しては、ドコモ側のルールやフィルタリングなどは適用されないということでしょうか?

 パソコンのインターネットがそうであるように、外から購入されたコンテンツについては我々がコントロールできません。最低限のインターネットのフィルタリング機能はありますが、特別なことはしていません。

――危険も含めてオープンなインターネットの世界ということですか?

 そうですね、そういった意味ではやはりパソコンの世界なんです。iモードサイトはこれまで自前で作った世界だったわけです。しかし、それ以外の世界を希望されるユーザーも存在しており、我々としては当然その方たちに対しても商品を提供していかなければなりません。これまでは全て自前だったため、自分たちで全てを説明できない歯がゆさもあります。

 とはいえ、アプリ同士がマッシュアップしてどんどん成長していくようなものは、iアプリだけではなかなか実現できない領域だと考えています。オープンなマーケットに対してドコモがどう関わっていくのか、継続的に議論をしているところです。

――国内でスマートフォンが一般化していくためには、iモードサービスがちゃんと使えるのか? という点はポイントになるかと思います。お考えを聞かせてください。

 スマートフォンに対しては現在のところ、2契約目のユーザーはiモード.netのサービスでメールが見られるようになっています。メールサービスについては今後何らかの対応をしていくことになるだろうと思います。

 日本独自の機能については、スマートフォンでも取り入れていくものとそうでないものがあるかもしれません。スマートフォンはまだ最初の段階で、対応すべきものについては手順を追って採用していくことになるでしょう。我々としても、今の状態で満足しているわけではありませんから。

――販売店側では、スマートフォンはいろいろできる分だけ説明しにくい、または従来の携帯電話とは違うために売りにくいという声もあるようです。ドコモさんとして今回の「HT-03A」をどうアピールされていくのでしょう?

 我々は「ケータイするGoogle」というキャッチコピーでGoogleサービスを打ち出しています。いろいろできるが何ができるかわからない点に対しての1つの訴求ポイントになると思います。このほかにも、プリセットしたソフトウェア(羅針盤)なども訴求しており、自分たちが言えることの中で試行錯誤しながらアピールしていきまたいと思います。

 「HT-03A」は、フルインターネットが手の中に入るということで、これまでパソコンで調べてから出かけていた方や、詳しく調べるときはどうしてもパソコンを使っていたという方には、リアルタイムにその場でこなせる便利な道具となるはずです。ストリートビューを利用して、これから出かける場所を下調べしたりと、リアルタイムにネットと関わりながら生活が築ける商品ではないでしょうか。

 アプリもきっとそういった生活をサポートしてくれるようなものが登場してくるのだと思います。私自身、外出する際にはなくなてはならないものになっています。ぜひそういう世界を体験していただきたいですね。

――ありがとうございました。

 



(津田 啓夢)

2009/7/23 17:01