P-01B開発者インタビュー

すっきりしたWオープン、タッチパッドやこだわりの点を聞く


 11月27日、新しいWオープンスタイルの「P-01B」が発売される。ワンセグも見られる大きなサブディスプレイにブラウザやフォトビューアーが操作しやすいタッチパッド、約0.2秒という高速オートフォーカス対応のカメラ、顔が近づくとシャッターが切れる「ラブシャッター」を備えるなど、ユニークな端末に仕上がっている。

 新しいWオープンスタイルを開発した理由やこだわりのポイントなどを、パナソニック モバイルコミュニケーションズのモバイルターミナルビジネスユニット 技術グループ プロジェクトマネージャー 沢村恒治氏、技術統括センター商品開発第一センター 機構設計グループ 第二チーム主任技師 大平明典氏、同センター 電気設計第二グループ 主任技師 島田肇氏、商品開発第二センター SDL担当 参事 松尾英明氏らにお話を伺った。

“枕”が消えて、すっきりWオープン実現

――まずは全体の特徴を教えてください。

沢村恒治氏

沢村氏
 大きな特徴としては3点あります。もっとも大きな特徴は「すっきりWオープン」を実現させたことです。P905iからタテにもヨコにも開くWオープンを採用していますが、今回はヒンジ構造を変えたので、左側に残っていた“枕”のようなヒンジがなくなり、全体がすっきり開くようになりました。そのおかげで、画面を3.3インチまで広げることができました。この大画面でワンセグを見たり、撮った写真をデジタルフォトフレームのように楽しんでいただけます。

 2点目は「タッチパッド」という新しいデバイスを搭載したことです。これはキーを押し込んで操作するのでなくて、上を指でなぞるだけで操作できるというものです。iモードブラウザやフルブラウザでポインタ操作をしたり、フォトビューアーを見る際に指でスッスッとなぞるだけでページをめくるように操作できるなど、ノートパソコンのタッチパッドのような使い方ができます。もちろんそれだけでは物足りないので、通常の縦横の十字キー代わりにも使うことができる仕様にしています。

 3点目ですが、実はここはある意味弱点でもあるのですが、カメラですね。他社さんが軒並み12メガにあげてきているという中で、あえて8メガで勝負させていただいてます。画素数という数字の上では少ないかもしれませんが、クオリティと使い勝手ではかなり向上しています。例えば、閉じたままでもすぐカメラを起動でき、「コンティニュアスAF」によって常に高速でAFをかけていますので、シャッターを切ったらAFで迷うことなく即撮影、自動保存できます。サブディスプレイをビューアーにして外カメラで自分撮りできますし、二人で並んで顔が近づくと自動的にシャッターが切れる「ラブシャッター」や、自分撮りもできる「グループシャッター」といったユニークな自動撮影機能も搭載していますので、撮影そのものも楽しんでいただけます。

サブディスプレイで撮影ビューアーにして撮影も

 他にもこのWオープンらしさということでゲームにも力が入ってます。弊社も「タッチパッド」を使ったゲームなど自社の選択したコンテンツを入れてます。豪華ラインナップ(お試し版含む)で11個、さらにいろんなiアプリも入っているということで、充実したゲームを楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。

――新しいWオープンですが、変更した理由や狙いを教えてください。

沢村氏
 前はヒンジが残ってしまったんですね。この“枕”がどうしても操作の邪魔になるねと。

――“枕”っていうんですね(笑)。

すっきりしたヒンジ

沢村氏
 枕みたいなものですね(笑)。これをなんとかしたいというのが最初なんです。で、その1つの解として今回の「P-01B」のようになりました。あとは先ほどお話したように、大画面にしたかったんですね。この幅で大画面にするのは非常に難しくて。もっと全体の横幅を広げればいいんですけど、横幅を極力抑えて大画面にするためにこういう構造をとりました。そして、新端末ということで、見栄えの進化も合わせて構造的なデザインイメージも少し変えたかったというのも変更した理由の1つです。開いたときに線がスッキリしますし、液晶もほぼ中央に持ってきましたので、横開きしたときの全体的なイメージはかなり綺麗になったんじゃないかなと思います。

大平氏
 ロックレバーもなくしているのでそこもポイントです。

沢村氏
 そうです。店頭にいくと、横に開けようとして開かなくて困ってる人がよくいらっしゃいましたので(苦笑)。

「タッチパッド」を採用した理由

――今回新しいUIとして「タッチパッド」を搭載されています。画面を直接タッチするという発想もあるのかなと思うんですが、あえてテンキー部分にパッドを搭載されたのはなぜでしょうか。

沢村氏
 そうですね。この形状が先にありきだったので、この形状でパネルにタッチするというのは一体どうなんだろうと我々にも違和感があったんですね。構造がパソコンのイメージに近いので、パソコンのパッドみたいな使い方のほうがいいんじゃないかと。フルブラウザやiモードブラウザなんかを横で使っていただいたときでも、ここでポインタを操作していただけますし。

 横だけの利用ではもったいないという意見から、タテオープン時も「タッチパッド」を使えるようになっています。待受のときは無効にしてるんですが、メニューを開いたら縦オープンでも操作できますので、ヘビーユーザーの方には十分楽しんでいただけるかなと思っております。

――タッチパッドが使える部分/使えない部分という切り分けはあるんでしょうか。

沢村氏
 タッチパッドが有効になると青いランプが点灯しますので、その周辺が触れるエリアになります。

――触り方にコツはありますか。キーを押し込んでも反応はしないんでしょうか。

松尾氏
 本当に触るだけですね。スクロールとタップによる選択の機能がありますが、タップの選択は、ほんとうに軽くポンと叩いていただくだけで選択できます。キーは押すと割当があるところに飛びますし、選択は選択でタップをしていただくとできるようになっています。

――そういえば前回まで搭載されていたヨコオープン時の2WAYキーがなくなりました。

沢村氏
 前回までは積極的に横で“使っていただきたい”という狙いがありましたが、今回はそれをアピールするというよりは、横で“楽しんでいただきたい”という考えからです。あとはキーの下にタッチパッド用の静電パッドが入ったため、2WAYキーではなく、このタッチバッドを選択したというのもあります。

――静電バッドを入れる上で大変だった点はありますか。

大平氏
 一番気をつけたのは操作感、クリック感ですね。タッチパッドの部品があることによって、押下感が悪くなるというようなことがないように工夫をして、操作感に悪影響を及ぼさないような構造をとっています。

松尾英明氏大平明典氏

 

撮影時の操作性向上と、撮影を楽しめるユニークな機能

――次にカメラ機能なんですが、カメラ周りのこだわりの部分というと、今回はソフトウェアの部分になるんでしょうか。

沢村氏
 そうですね。デバイスとしては8メガということで大きな進化はないんですが、それを補うように使い勝手を上げたり、ちょっと遊びの部分をソフトウェアで入れるという改善をしています。どうしても画素数やISO感度の数字の部分だけを比較されてしまいがちなんですが、感度を上げてもノイズが多いとか、質を犠牲にするのはよくないと思いまして。8メガであっても画質はさらに向上させています。

――操作性を向上させている機能を教えてください。

沢村氏
 まず「高速オートフォーカス」ですね。シャッターボタンを押してからピントが合うまでが約0.2秒というスピードでピントがあうので、すばやい撮影が可能です。常にピントを合わせ続けているので、せっかくシャッターボタンを半押ししてピントを合わせたのに、シャッターを押し込んだらまた何度もピントをあわせに行って、結局ボケてしまったなんて失敗がありません。

 デジタルカメラのLUMIXではすでにおなじみの人物や風景などを自動的に認識する「おまかせiA」も搭載していまして、今回さらに動く被写体を追いかけてくれる「追っかけフォーカス」も追加したので、「高速オートフォーカス」と合わせてシャッターチャンスを逃しにくくなっています。

松尾氏
 新たに「Myオリジナル設定」という機能も追加しました。自分がよく使う撮影設定を3件まで登録できる機能です。シャッターボタンも一回り大きく、押しやすくなってます。ちなみにカメラのシャッター音は一眼レフのLUMIXに似せて作っています。

――今回特にユニークだと思ったのは、顔と顔が近づいたら自動的にシャッターが切れるという「ラブシャッター」というオートシャッター機能なんですが、これは笑顔じゃなくても撮れるのですか? 「お友達」と「恋人」というモードの違いはどこにあるのでしょうか。

松尾氏
 笑顔とは関係なく、顔を認識すれば撮れます。ですから極端な話、ポスターと一緒でも撮れます。片手でシャッターボタンを押すとブレたりして失敗しやすくなりますが、オートシャッターを使えば押さなくていいので、カップルで写真撮りたいときもブレずに撮ることができるというメリットがあります。

シャッターボタン(右端)は大型化

沢村氏
 モードの違いは距離です。顔の大きさと距離の比率なんですよ。だから絶対的な距離じゃないんですね。大体手を伸ばして撮った場合、「恋人」は顔と顔の中心が25cmくらい、「お友だち」では40cmです。

――「グループシャッター」というのはどのような機能になるんですか?

松尾氏
 設定した人数分の顔を検出すると自動的に撮影できる機能です。例えば3人と設定していて、3人の顔がファインダー内に検出されると一旦お知らせしてくれるんですね。で、その3秒後にシャッターがおります。人数は1人~5人まで設定できるので、つまりは1人でも撮れます。手ブレしないで自分撮りができるという意味では、1人でも便利にご利用いただけると思います。

――動画撮影機能についてはいかがでしょうか。

沢村氏
 動画でも「顔認識」できるように進化しています。今回は見送ってますけども、ハイビジョン対応など、いわゆる動画のさらなる高画素化は視野に入れています。今までの画質はちょっと中途半端だなと私は思ってるんですね。動画も画質がどんどん高まっていけば、もっと気軽に撮っていただけるんじゃないかと考えますので、放っておくわけにはいかないと思いますね。

ワンセグも見られる大きなサブディスプレイ

――サブディスプレイなんですが、今回カメラのファインダーとしても使えて、ワンセグも見られるとか。どのような利用シーンを想定されていますか?

サブディスプレイでワンセグも視聴できる

沢村氏
 おっしゃる通り、今回からワンセグもサブで見られるようになりました。電車の中とか、あまり大げさに広げたくないという時でも、気軽に見ていただけるというのを狙いました。あまり大きなウリにするつもりはなかったのですが、いろいろヒアリングしていくと、意外に便利だよと言う声が聞こえてきています。サブディスプレイは2インチのQVGAなんですが、解像度としては申し分なくて、今回アンテナをホイップにしたこともあり、さらに感度がよくなって非常に綺麗に見えるんです。

――メインディスプレイとサブディスプレイでワンセグを見ている場合、サブディスプレイのほうが時間長く見られたりしますか。

島田肇氏

島田氏
 多少ありますね。何時間差があるかというと計算してみないと分かりませんが、バックライトなどの電流が違うんで多少サブディスプレイのほうが長い時間は見られます。

沢村氏
 電池の持ちが気になる場合は、ECOモードでご覧いただくという手もありますが(笑)。

――そのほかにサブディスプレイの便利な使い方はありますか?

沢村氏
 新しくはないですけれど、やはり新着メールが読めるのは便利なんじゃないかと思います。ケータイを開くといったアクションをとらなくてもサブディスプレイで表示できるので、マナーが求められる利用シーンでは役立つと思います。

 

その他の改良点

――他に前モデルから大きく変えた部分というのはありますか?

松尾氏
 この機種からはじめてBlu-ray(ブルーレイ)ディスクレコーダーと連携できるようになりました。レコーダーに録画した高画質な映像を VGAのiモーション形式で書き出すことで、ワンセグよりもかなり綺麗に楽しめます。ブルーレイディスクレコーダーの機種でできるものはまだ限定されるんですけども、今後増えるということもあると思われますので。SDカードで取り出してもできますし、レコーダーとUSBで接続して転送することによって持ち出せるということになっています。

沢村氏
 USBで高画質の場合、1時間番組は3分強くらいで転送できます。SDカードでも転送できますが、USB経由のほうがレコーダーの性能に依存せず、接続も楽なので、我々としてはUSBケーブルの利用を推奨しています。常にレコーダー側へUSBケーブルを挿しておけば、ケータイ本体を挿すだけで簡単に転送できます。
 
松尾氏
 操作のスピード面でも改良を加えています。前機種である「P-01A」への声として「メニューがもっさりする」というお話がありました。今回かなり大画面になって重たくなっているというのもありましたので、シーケンスを見直してストレスを感じないようにスピードをチューニングしています。メールも、速い人は親指で1秒間に4~5文字打ちますので、それに耐えられるように予測変換のやり方を変えて、文字入力も高速にしています。

開発陣

沢村氏
 写真をブログにアップするなどの用途もこれから増えていくだろうと思いますので、伝送性能も今回少し上がってます。これまで下りが3.6Mbpsから7.2Mbpsまで来たので、今回は上りを2Mbpsまで上げています。ブログのアップロード機能もあるので合わせて活用していただきたいです。

――確かにメニューなどの操作が格段に速くなっています。カメラとメニュー操作がキビキビと速いのは気持ちよくていいですね。

松尾氏
 ありがとうございます。メニューやメールをすぐ立ち上げたいというのは、やはりユーザの声が一番大きかったところですね。

沢村氏
 P-01Bでは、当たり前に使う機能をより使いやすくしたいなと思って力をいれました。ですからぜひ多くの方にご利用いただきたいです。

――本日はありがとうございました。

 



(すずまり)

2009/11/24 12:00