「945SH」「944SH」「842SH」「843SH」開発者インタビュー

AQUOS SHOTやmirumoなど多彩・豊富なシャープの夏ラインナップ


 シャープはこの夏、ソフトバンクとディズニーモバイル向けに合計8機種を投入する。AQUOS SHOT 945SH、mirumo 2 944SH、SOLAR HYBRID 842SH、かんたん携帯843SHと個性的な機種が揃っている。

 今回はこれら新モデルの944SH、945SH、842SH、843SHの4機種について、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 副事業部長の吉高泰浩氏、同 商品企画部の澤近京一郎氏、井之村憲一氏、後藤慎一氏に伺った。

シャープの夏ソフトバンクラインナップ夏モデルのカラーバリエーション

シャープの吉高氏

――今夏のソフトバンク向けラインナップはバリエーションが豊富ですね。

吉高氏
 ハイエンドはAQUOS SHOTの945SHとmirumo 2の944SHの2モデル、ミドルクラスとしてはTHE PREMIUM6 WATERPROOF 841SH、GENT 841SH s、SOLAR HYBRID 842SH、かんたん携帯の843SHの4モデルで、このほかにも、ディズニーモバイル向けのDM006SHとガンプラケータイの945SH Gを用意しています。シャープとしても、半期単独のラインナップとしては過去最多というくらい、充実しています。

――まずはAQUOS SHOT 945SHのご紹介からお願いします。

澤近氏
 945SHはAQUOS SHOTの最新モデルになります。昨冬モデル「940SH」の後継機種で、カメラ機能を大幅に進化させただけでなく、ユーザーニーズの高い防水仕様も実現しました。

AQUOS SHOT 945SH

 とくに今回注力したのが、動画撮影機能です。AQUOS SHOTは「コンパクトデジタルカメラ製品を追いかけ、負けない商品を作る」ということがコンセプトになっています。昨今のデジタルカメラ製品は動画対応が進んでいて、動画撮影への感心も高まっていますので、AQUOS SHOTの動画撮影機能も強化し、720pのHD動画撮影に対応しました。単にHD動画を記録するだけでなく、画質も考えるとビットレートなども重要になります。従来のフルワイドVGA解像度では2Mbpsでしたが、今回は720pで最大12Mbpsのビットレートに対応し、高画質化に取り組んでいます。

 また、映像だけでなく音声もしっかりと録りたいということで、ステレオ録音機能にも対応しています。カメラレンズの周辺を見ていただけるとわかりますが、マイクの穴が2つあります。ここでステレオの音声を録音します。2つのマイクを斜めに配置し、その音声を補正することで、縦横のどちらでもステレオ録音が可能となりました。

 音に関しては、DiMAGIC社の技術を導入しています。単にステレオで録音するだけでなく、3つのモードで録音できます。1つ目はワイドモードで、できる限り広い範囲の音を拾います。2つ目はフォーカスモードで、これは画面に入っている被写体の中央を中心に音を拾います。3つめはチェイスモードで、これはチェイスフォーカス機能に連動し、被写体の位置に応じて自動的に集音方向を移動させます。これらの機能により、映像がきれいなだけでなく、臨場感のある音が録れるようにしました。

――動画の編集機能はあるのでしょうか。

澤近氏
 動画を撮影するだけでなく、編集できるようにもしました。長めに撮って、あとで不要な部分をカットする、といった使い方ができます。また、メールで送れるよう、QCIF解像度で2MBまでリサイズ圧縮する機能も搭載しています。

 もちろんパソコン上で編集していただくことも可能です。今回、シャープのWebサイトから、Corel社のビデオ編集ソフト、「Digital Studio」の体験版ダウンロードページへのリンクを用意するなどしています。実際に945SHで撮影した動画をCorel社にお渡しして評価も行っていただきました。

カメラ部分

――動画からの静止画取り込み機能がありますね。

澤近氏
 撮影した動画の1シーンを写真としてブログに、というニーズに対応するため、動画から静止画をキャプチャする機能に対応しました。単に動画の1フレームを静止画として切り出すだけだとボケたような感じになりますが、独自の高画質化技術を応用し、写真としてクオリティの高い静止画を取り出せるようにしました。

――このほかの動画関連機能は?

澤近氏
 動画を使った機能としては、ゴルフスイング再生機能があります。これは専用のカメラモードでお手本になる人のスイングと自分のスイングを撮影すると、あとで2つのスイングを同時に再生することができるというものです。それも単に再生するだけでなく、自動的に認識し、スイングの開始位置を自動的にシンクロさせます。

――撮影したHD動画はどのように楽しめるのでしょうか。

HDMI対応のテレビに画面を映し出せる

澤近氏
 HD動画は大画面で見た方が楽しさ倍増なので、今回はテレビに接続するためのHDMI端子を搭載しました。撮影した動画を自分だけで楽しむのではなく、AQUOSなどの大画面テレビで高画質再生し、家族で楽しんでいただけます。

 このHDMI端子は、撮った映像を見るだけではなく、Webブラウザや写真のスライドショー機能なども大画面テレビで楽しむためにも使えます。2Dの写真から顔を切り出し、3Dキャラクターに貼りつける機能を搭載していて、そのキャラクターにスライドをめくらせる、といったアニメーションを用意しています。

 ドキュメントビューアを搭載しているので、OfficeのデータもAQUOS SHOTから大画面テレビに映し出すことができます。このドキュメントビューアも720pで表示可能です。このように、特徴的なアプリはほとんど720p解像度で特別に画面を作っています。

 また、テレビ側のリモコンから945SHを操作したり、着信メールのお知らせ機能など、AQUOSとの連携機能も用意しています。


テレビ出力でのサムネイル表示。画面が大きいので表示数も多いテレビ出力でのドキュメントビューア。こちらも1280×720ドット表示

――HD動画となると、処理能力が必要になりそうですが、プロセッサも強化されているのでしょうか。

澤近氏
 今回はHD動画対応のために、マルチメディアプロセッサエンジンを大きく進化させました。実はこれは大きくアピールしたいポイントでもあります。HD動画のためではあるのですが、その恩恵はほかのあらゆる機能に及んでいます。とくにデコレメールなどでの文字入力なども、まったくストレスを感じないレベルです。

――プロセッサが変わると消費電力にも影響があるかと思いますが。

シャープの澤近氏

澤近氏
 処理能力が向上すれば消費電力への影響は避けられません。今回は電池容量を従来モデルよりも大きくしました。本体サイズから言うと、これ以上大きくすることは避けたい状況でしたが、ユーザーニーズを考え、可能な限り容量を大きくしています。

――今回は防水に対応されていますが、大きさとしては従来のAQUOS SHOTと比べ、それほど大きいとは感じませんね。防水になるとサイズや重さが大きくなりがちですが。

澤近氏
 今回は140gに抑えました。普通に作れば150gくらいと、もっと重たくなるはずです。たとえばステンレスの部品をアルミに変えたりして軽量化にこだわりました。強度を保ちながら軽くするのは大変な技術なのですが、開発メンバーがとにかく軽くするように取り組んだ結果です。

――背面のサブディスプレイは、枠部分がイルミネーションになっているのですね。

澤近氏
 このイルミネーションにも苦労しました。このパネルはアルミをアルマイト染色しているのですが、その中央にディスプレイ窓を置き、その枠を光らせる、というのは、普通の端末ならばそれほど難しくないのですが、防水でアルミパネルとなるととたんに難易度が上がります。これはデザイナーの強い要望もあり、実現させました。

タッチパネルに対応したメモリ液晶搭載の新mirumo

――続いて944SHについてご紹介をお願いします。

mirumo 2 944SH
シャープの井之村氏

井之村氏
 mirumo 2 944SHは、昨年夏モデルの「mirumo 934SH」の後継機種になります。

 前モデル同様、背面のサブディスプレイに「メモリ液晶」を搭載していることが最大の特徴になります。944SHではそのメモリ液晶の進化として、タッチ操作に対応し、サイドライトも搭載しました。

 そのほかの大きな追加機能としては、945SHなどと同様にケータイWi-Fiに対応しています。それ以外にも、メインディスプレイは3インチから3.2インチに大型化し、防水だけでなく防塵にも対応しました。カメラは引き続き800万画素のCCDですが、100枚連写などにも対応しています。

――メモリ液晶をタッチパネに対応にされた理由というと?

井之村氏
 昨年の934SHをみなさまに紹介したとき、サブディスプレイにタッチしようとされる方がいらっしゃいました。そこに本質があるのでは、と考え、タッチ対応を実現しました。サブディスプレイに表示される情報は、サイドキーやメインディスプレイを使うことなく、サブディスプレイをタッチするだけで操作できます。

――タッチパネルで何ができるのでしょうか。

井之村氏
 まずサイドキーを押すことでメニューアイコンが表示され、それをタッチして操作します。3つのホームパネルがあって、それを切り替えて使います。ホームパネルに自分がよく使う機能をショートカット的に貼り付ければ、いつでも見ることができます。表示は1分に1回、自動更新されます。

 メモリ液晶とメインディスプレイを連携させる機能もあります。たとえばメールを受信するとメモリ液晶に受信通知が表示されます。ここでサイドキーを押し、メールアイコンをタップすると、メールの本文が表示されます。この状態でタッチ操作から定型文を使った「クイック返信」も可能ですが、端末を開くと、そのまま返信メールの作成画面が表示されます。これは、開いても本文表示のままにも設定できます。

任意のWebページをメモリ液晶に表示できる

 逆にメインディスプレイからメモリ液晶に連携する機能もあります。たとえばブラウザで何かのページを表示しているとき、ショートカットボタンを長押しして本体を閉じると、そのページがメモリ液晶側に表示されます。このページからリンクをクリックしたりはできないのですが、10分に1回など、ページの自動更新ができるようになっています。

――ケータイ係長もメモリ液晶に対応しているのですね。

井之村氏
 今回はメモリ液晶用のコンテンツを追加しています。ダウンロードにも対応していて、プライムワークスさんの配信サービス「キャラタイム」では、944SH向けにメモリ液晶用のコンテンツも入れていただいています。


8シリーズにはGENT、SOLAR HYBRID、簡単ケータイ

――8シリーズのご紹介をお願いします。

上段が841SH、下段が841SH s。デザインはほぼ共通となっている
SOLAR HYBRID 842SH

後藤氏
 まずはGENTシリーズの最新モデルであるGENT 841SH sです。5月中旬より発売を開始していますが、簡単に紹介しますと、今回は防水に加え防塵にも対応しました。背面をヘアラインデザインとし、裏印刷で金属のような質感を実現しました。キー側はラウンドフォルムにして持ちやすさにも配慮しています。

 ソフトウェア面では、あらたに「楽ともリンク」機能を搭載しました。あらかじめ10件まで登録した連絡先に対し、メールや電話の発信が簡単にできるほか、顔写真やメモを登録することもできます。

 続いての842SHは、ソーラーパネル搭載のSOLAR HYBRIDのセカンドモデルになります。まず前モデルの936SHから何が変わったかというと、ソーラーの充電効率が向上しました。充電30分で今回は連続通話約6分となっています。

 それともうひとつ、今回は背面のサブディスプレイとして常時表示のメモリ液晶を搭載しました。メモリ液晶はコントラストが強いので、明るい場所でもはっきり視認できます。従来、ソーラーの発電ステータスは背面のイルミネーションLEDで表示していて、直射日光下などでは見づらい部分もありましたが、今回はメモリ液晶により見やすくなっています。

 あとはソーラーパネルのデザイン処理を変更し、同心円状のスピンデザインとしました。ソーラーというデバイスばかりが強調されがちなモデルですが、そうしたデバイスを意識させないようなデザインを意識しています。中身のソフトウェアは841SHと同等のものが入っています。

――SOLAR HYBRIDの前モデルはハイエンドの9シリーズでしたが、今回8シリーズに変わったのはなぜでしょうか。

吉高氏
 「実際にソーラーが欲しいユーザー層はどこだ」と考え、今回はターゲットのイメージを20代前半の男性にシフトしました。若いユーザーさんに手軽にお使いいただきたいと考え、今回は8シリーズとしています。

――今回はかんたん携帯の843SHも投入されますね。

843SH
キーの配置や印字もかんたん携帯仕様

後藤氏
 843SHは、シャープとして初めてのかんたん携帯となっています。GENTの方は40代後半から60代後半の男女をターゲットとし、端末の機能を絞らずに使い勝手を訴求しているモデルになりますが、843SHの方は60代、70代のシニア層をターゲットとしています。

 ユーザー調査を行うと、60代、70代のケータイユーザーも、思ったよりアクティブな方が多いと言うことがわかりました。旅行や趣味など自分の時間を満喫したい、健康意欲が強い、直感操作を求める、インターネットはパソコンで利用する、こういった動向を見て、商品を企画しています。

――こちらも防水・防塵に対応されていますね。

後藤氏
 シニア層がケータイに求める機能を調べると、ある調査では防水がナンバーワンになりました。たとえば庭で園芸を楽しむ、といった用途などがあり、シニア層も防水を求めています。

――簡単ケータイの定番要素である文字の見やすさや使いやすさなどは?

後藤氏
 シニア向けケータイ市場はすでに他社が先行しているところもあるので、そこは市場で評価されている要素を押さえつつ、その上でシャープらしいアプローチをしています。

 たとえば文字の大きさや読みやすさ、わかりやすさ、メニューの文体表現をシニア向けにかみ砕いた表現にするなどしています。ウィザード形式のメニュー操作も取り入れています。

 ワンタッチボタンは、下筐体に搭載しました。色つきにして、待受画面でも相手の名前が表示されるようにするなど、デザイン的なところを含めてわかりやすいというのが特徴となっています。

 カーソルキーにもショートカット機能を割り当てました。待受中に「電話」と書かれた左キーを押すと、電話機能が起動します。シニア層が使うような機能は、8割方、これらのショートカットから利用できるかと思います。

――聞き取りやすさ、という機能もあるのですね。

シャープの後藤氏

後藤氏
 通話音声の聞き取りやすさも、ベーシックな部分ではありますが、シニア層にとっては大切な要素だと考えました。今回はディスプレイのフロントパネル自体が振動してスピーカーの役割を果たすという、パネルレシーバーを採用しています。ディスプレイの上部に受話レシーバーの穴があるように見えますが、これはあくまで耳を当てる位置をイメージさせるデザインで、本当はディスプレイ全体が音を出すようになっています。通常はレシーバーの穴に耳が当たっていないと聞き取りにくいですが、パネルレシーバーならば細かい位置を考えず、耳にかざすだけで音を聞き取れるようになっています。穴がないので、防水面でも有利に働いています。

 聞き取りやすさというところでは、スロートークという機能を搭載しました。通話時に左キーを押すと、相手の声がゆっくり聞こえるようになります。

――楽ともリンク機能は?

後藤氏
 電話やメールを送るためのショートカットとしての機能に加え、その人とやりとりしたメールや通話の履歴、送られてきた画像のスライドショウを見られるような機能です。楽ともボタンに登録している人に関連する情報・機能がひっくるめて見られるように、わかるようになっています。

サブディスプレイは視認性に有利なメモリ液晶を採用する

――スペックシートを見ると、シニア層向けの端末にしては機能が豊富に感じられます。

後藤氏
 アクティブシニア層を想定し、防水防塵に加え、歩数計機能、GPS機能、GSM機能に対応しました。海外旅行というところでは、ローミング時にネットワークから時刻を設定する自動世界時計も搭載しています。

 シニア向け端末は、家族に進められて買うパターンがあるので、そういったところで、家族に安心してもらう機能も搭載しています。そのひとつが緊急ブザーです。サイドキーの長押しでブザーが鳴ります。あまり大げさなものではなく、周りの人の注意を喚起するくらいの機能にしているので、防犯ブザーとは謳っていませんが、ブザーと連動して位置情報付きのメールを自動送信することもできます。

 家族に安心いただくための機能としては、「元気だよメール」という機能も搭載しています。これは、1日に1回でもケータイを開くと、ケータイを操作したことをメールで自動通知する機能です。歩数計とも連動し、前日の歩数計データを知らせる機能にも対応しています。

 あとは「読んだよメール」という機能を搭載しています。これは、家族からメールがあったとき、メールを読んで既読になっただけで、自動的に読んだことだけを通知するメールを送るというものです。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/8/3 13:50