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「モバイルプロジェクト・アワード2010」受賞者に聞く

位置ゲー人気に火をつけた「コロプラ」


 2003年にウィルコム端末専用サイトとしてスタートした「コロニーな生活☆PLUS」(以下、コロプラ)は、足かけ約7年で着実に成長し、今や「位置ゲー」の代名詞的な存在になっている。そんなコロプラだが、元々は、代表取締役の馬場功淳氏が個人で運営していた“趣味のサイト”だった。特に宣伝もしていなかったが、サイトのコンセプトが受け、クチコミでユーザーは急増。現時点での会員数は143万人となっている。2009年5月には、長らく非対応だったソフトバンク端末でも利用可能になった。では、多くのユーザーを引きつけるコロプラの魅力はどこにあるのか? 気になる今後の展開は? これらの疑問を馬場氏にぶつけた。

コロプラ 代表取締役の馬場功淳氏

 

生活をエンターテイメントにする「位置ゲー」の魅力

 コロプラとは、ケータイのGPSや基地局情報など、位置情報を利用したゲームのこと。ボタンを押すと位置が送信され、移動距離に応じて「プラ」と呼ばれるゲーム内通貨がたまる。1kmは1プラ。これを利用して水、酸素、食料を増やし、自らのコロニー(居住地の意味)を発展させていくのが、ゲームの基本的な流れだ。現在地によっては、その土地その土地のお土産を買うこともできる。ゲームに終わりはなく、「オープン当初からずっと続けている方もいる」という。近隣ユーザーとの交流が可能(ただし、実名登録はできず、あくまでバーチャルな関係が基本)で、SNSとしての側面も持ち合わせている。そんなコロプラの基本コンセプトは「生活をエンタメにするゲーム」。馬場氏は次のように語る。

 「通勤、通学のような、あまり面白くない、日々の“移動”を楽しめるようにするというのが、コロプラの基本思想。これがあれば、辛い出張も楽しくなる。その意味では、サラリーマンにとってはエポックメイキングだと思う」

コロプラ トップ画面 メイン画面 コロニーの成長過程
新規登録画面 メトロ タイアップページ

 

 2点間の距離を利用したのも、そのためだ。特定の場所を登録するだけのゲームだと、一度行ったら終わりになってしまいかねない。通常の生活をしていれば、毎日全国各地を飛び回るようなことはできず、必然的に生活範囲は限られてしまう。スタンプラリー型だと「すぐに飽きる」可能性がある。「普段の積み重ねがインセンティブになるようにしたかった」というコンセプトには、移動距離の活用が最適な解だったのだ。

 一方で、馬場氏は「同時に位置情報の不正との戦いだった」と振り返る。

 「システムの穴をつかれたり、ケータイの電波に固有の仕組みを使って不正されたりすると、ゲームの世界が崩壊してしまう。そうした不正を検知し防止するための技術を開発し、運営面でのノウハウも含め、7年間蓄積してきた。位置情報の不正防止技術については特許も申請している」

 コロプラには、プラという通貨があり、それを元に購入するアイテムが存在する。アイテムとプラは、サイト内で他のユーザーと交換することもできる。「実社会の経済と似ていて、相場が大幅に崩れるとゲームが成り立たなくなってしまう」というわけだ。「アイテムの合成に一部投機的なところがあったので、ルールを変更で対応した」というように例外はあるものの、コロプラは、(実際の日本政府とは異なり)不正以外の相場に関しては「原則として不介入」という立場を貫いている。介入せずに技術で守るという、こうした努力もあって、コロプラはユーザーが安心して遊べる場になった。コンセプトの斬新さや信頼感が功を奏し、ユーザー数は急増。趣味で作ったサイトは徐々に巨大化していき、「サーバー増強や品質安定のために、背中を押されるような形で法人化した」という。

 

店舗などとの提携でリアルな接点を増やす

 昨年には、リアルな店舗との提携も始めた。「コロカ」と呼ばれる仕組みがそれで、現実に存在する全国各地の70店舗で、一定額の買い物をするとカードがもらえる。カード裏面に書かれたシリアル番号を入力すると、限定アイテムを購入できる権利が付与される。ただし、アイテムはあくまでコレクション用。「何か機能があるわけでもないし、お土産という位置づけなので代理購入や個人間でのやり取りはあるが、ゲーム内の市場等で売ることができない」という。また、コロカ提携店は必ずしも電車ですぐに行ける場所だけではなく、時には飛行機、電車、車を乗り継ぐ必要もある。にも関わらず、コロカ提携店の仕組みは人気を博し、「売上が大幅にアップしたというエピソードは多い」という。

 「初日からいきなり来客があったという話は日常茶飯事。元々、あまり人が来ないような場所だと、創業以来、初の行列ができた等、これがきっかけで街のちょっとした話題になることも少なくない。8月の例を出すと、全国で約2万人の方が買い物をしているイメージ」

コロカ提携店で購入できるものの一例 シリアル番号の入ったコロカをもらえる
江戸切子 高村武志牧場

 

 ビジネスモデルは非常にシンプル。ユーザーが実際にその店舗を訪れ、商品を買ったら一定額がコロプラに入る。いわゆるアフィリエイトのリアル版といった位置づけだ。ただし、すでに提携店舗の上限は200と決めている。理由は次のとおりだ。

 「店舗を増やしすぎてしまうと、ユーザーが全てを回れなくなる。逆に100ぐらいだと、ヘビーユーザーにとっては簡単すぎる。その中間の難易度になるのが200。1カ月に2店回っても、8年以上かかる(笑)」

 店舗は1県に4つ、残りは離島に振り分けているという。あえて店舗を絞りこんだのは、「わざわざ旅費をかけていく価値のある、日本のよいものだけを紹介していきたい」という想いがあるからだ。

 その一方で、移動しながら身近な地域を再発見してもらいたいというコンセプトのキャンペーンも始めた。同社はJR九州と提携、「コロプラ☆乗り放題きっぷ」を発行し、九州各地を回るゲームを企画した。今年は、別の企画で東京メトロとタイアップ、「コロプラ☆専用一日乗車券」は5万枚以上の販売実績をあげたという。この2つが非常に好調だったことを受け、一気に提携を15社に拡大。同社は散歩から宿泊を含めた旅行までを“お出かけ”と定義し、「遠近両方のお出かけをコロプラで楽しんでほしい」と語る。ケータイ片手にプチ旅行を楽しむユーザーを見かける機会も増えるだろう。

鉄道会社などとタッグを組み、専用の切符を発行

 

順調に進むスマートフォン対応

 当初はウィルコムのサイトとして始まったコロプラだが、その後はドコモ版やau版をオープン。前述のとおりソフトバンクからも、2009年に利用可能になった。いわゆるiモード、EZweb、Yahoo!ケータイ対応端末だけだったコロプラだが、2010年からはスマートフォン対応も加速させている。きっかけは、「ユーザーの要望」だという。

 「iPhoneやAndroidに対応してほしいという声が非常に多かった。お待たせするのは申し訳ないが、リソースには限りがあるので、要望順に対応している」

 国内でもiPhoneやXperiaを筆頭とした、スマートフォンが急速に普及している。こうした端末に機種変更したらコロプラができなくなるという事態は、これで回避された。ちなみに、iPhoneは、ケータイと同じくブラウザからアクセスする仕組みを採用。一方のAndroid版は、アプリにWebブラウザを内包する形にした。「1日に何回もアップデートするので、アプリだと更新が間に合わない」というのが、その理由だ。さらに、位置登録はできないものの、パソコンからの閲覧にも対応した。コロニーやアイテムの管理は、仕事のちょっとした合間にパソコンのブラウザから行うことが可能になった。このパソコン版はiPhone、iPadやAndroid端末はもちろん、Windows Mobileのブラウザでも閲覧できるため、位置登録は手軽なケータイで、管理は操作性に優れたスマートフォンでという使い方も想定されている。

iPhone版 Android版

 

 端末の幅を広げていくとともに、コロプラ自体のプラットフォーム化も進めていく。Twitterとの連携は「その前哨戦」だという。

 「コロプラにはメールの機能もなく、匿名性が高い。そこを新規に作るよりも、Twitterをそのまま中に取り込もうと考えた。連携するからには、コロプラらしさを出すことも考え、位置情報を扱える上に、クマのアイコンからコロニーへリンクできるようにした」

 今後はリアルな事業者を巻き込んだプラットフォーム化も検討していく。mixi、GREE、モバゲータウンが自社サイトをプラットフォームとして開放し、サードパーティーのアプリを配信しているが、馬場氏は「それよりはリアルな事業者が多くなるはず」と違いを強調する。コンビニエンスストアがスタンプラリーをやるために利用するといったイメージを想定しているようだ。「位置ゲー」の先駆けとして成長してきたコロプラが、どのように水平展開していくのか。正式発表が今から楽しみだ。

 



(石野 純也)

2010/10/6 06:00