気になる携帯サイト 制作者に聞く

大切な人と安心してつながれる「ドコモコミュニティ」


 NTTドコモの「ドコモコミュニティ」をご存知だろうか。誰かを「探す」ことを目的とした昨今のSNSとは正反対に、家族や友達といった、すでに顔なじみの人同士のつながりを密に楽しむ環境を提供するコミュニティサービスで、完全クローズドが最大の特徴。すでに30万人以上の会員を有する。

 その「ドコモコミュニティ」が10月5日にリニューアルした。そこで、「ドコモコミュニティ」とはどんなサービスか、現状と今後の展開について、NTTドコモ ユビキタスサービス部 IPサービス企画 担当部長の中村雅彦氏、同部 ドコモコミュニティ推進担当 課長 土方久明氏、末次達弘氏、竹中一郎氏にお話を伺った。

「ドコモコミュニティ」について

――まずは「ドコモコミュニティ」とはどのようなサービスなのかを教えてください。

竹中氏
 「ドコモコミュニティ」とは、「身近な人々との絆を深める、かんたん、あんしん、たのしいコミュニティ」をコンセプトに、2009年3月2日よりスタートしたクローズドなコミュニケーションサービスです。月額利用料無料のパケット通信料のみで、日記や写真のやりとりができます。

――クローズドとは具体的にはどの程度なのですか。

竹中氏
 最近のSNSは自由に登録し、参加した後も内部で誰かを検索して友達申請することができますが、「ドコモコミュニティ」は完全に招待制で、検索機能も持ちません。つまり、新たな出会いを求める場所ではなく、身近な人々、例えば家族や親しい人など、すでに面識のある方同士が、気兼ねなく安心してコミュニケーションを楽しんでいただける場です。

――現在どれくらいの方が利用されているのでしょうか。

竹中氏
 2010年9月末現在で約33万人となっておりまして、メインユーザー層は20代、30代の女性で、ページ閲覧数のおよそ4割を占めております。また、中高年層のページ閲覧数の比率が比較的高くなっていること、40代、50代以上の方々が3割ほどいるというところが特徴として挙げられます。今、一般的なコミュニティサービスでは、若い方々が多く使われるのですが、「ドコモコミュニティ」は、祖父母、親、子といった3世代に渡ってご利用いただけるサービスになることを目指しています。

――みなさんどんな使い方をされているのですか?

竹中氏
 メインの利用シーンは、お子さんの成長記録や、その日にあった出来事を日記にして見せるという使い方ですね。お誕生日なら、デコメ日記を投稿していただいて、それに対して、家族や親友、ママ友などからおめでとうというコメントをいただく、という感じで楽しんでいただいているようです。一般のコミュニティサイトでは公開できないような、非常にプライベートな写真や内容でも、気軽に見せられるというのがメリットです。

――なるほど。最近のコミュニティサービスは、友達や仲間を増やそうという方向に向いていますが、逆に閉じた世界で楽しもうというわけですね。ユーザーの反応はいかがでしょうか。

竹中氏
 主な利用層として、家族、ママ友、友人が挙げられますが、おおよそ共通して評価いただいているのは、やはり公開範囲が限定されているので、プライベートなことでも安心して日記が書けるということですね。

 実際に家族で利用している40代の方は「直接いうと喧嘩になったり、押しつけがましくなることも、『ドコモコミュニティ』であれば、さらっと知らせることができて、円満な解決方法だと思った」とおっしゃってますし、ママ友仲間とご利用いただいている30代の方からは「限定の人だけが見れるので、角も立たず、遠慮なく内輪のノリを満喫できて、ほかのサービスよりもみなさんのびのびして、さらに、書き込みや更新もそれにともなって多かった」という感想をいただいております。また、お友達同士でお使いいただいている方からは、「長い付き合いの友人と利用したんですけど、サービスを通じて、意外と知らなかったことが分かって、ますます仲良くなりました」「時間を気にせず利用できることが本当に役立ちました」という感想も届いております。

土方氏
 「ドコモコミュニティ」は画像の投稿で見ると、約3割くらいがお子さんの顔写真がそのまま出ているんです。検索機能がない、出会う機会がない(見つけられない)というところで、安心感があるところから、普段のネットでは出しづらい部分も使っていただいているのかなと分析しています。

――安全性についてはどのような対策をとられていますか。

竹中氏
 ユーザーの検索機能をあえて省いている、日記等の公開範囲についても、初期設定では友達まで、自分が招待した方のみとなっていることが挙げられます。ユーザー設定によっては友達の友達まで公開できますが、原則として全体公開はありません。運営体制としても、24時間365日で投稿監視を行っています。

 その中で、万一不適切な投稿があった場合は非表示化という処理をするんですが、こちらの比率は、9月実績で0.007%です。これは非常に低い比率です。今のところ非常に健全な使い方をされているというのが、実績からも明らかになっています。

――サービス開始されてから1年半ですが、容量は今どれくらいですか? 使い切ってる方はいらっしゃるんでしょうか。

末次氏
 容量は現在100MBです。写真は圧縮しており、5000枚まで保存できるため、使い切っている方は現状ではまだ少ないですね。

土方氏
 よく使っていらっしゃる方でも、今の段階で10MB前後かなぁというところですね。ただ、一部の方でいらっしゃいますね。おそらく動画を入れて試されているのかなという方々なんですけれども。

土方久明氏

――メインがお子さんを持つ母親ということですが、父親の利用はいかがでしょうか。

土方氏
 いろいろ調べていくと、やはりお母様方が書いたものを見るのがメインで、コメントまで残すというのは多くないようですね(笑)。ただ、いつも夜遅くなるようなお父さんや、あるいは単身赴任されてる方は、うちに帰ったときの会話につながるようです。

中村氏
 昼間に日記を見て、帰宅後に「こうだったんだね」というだけでも家族のきずなが深まります。会話のきっかけになるんです。

竹中氏
 さっきお客様の事例でもありましたけど、なかなかメールでは残しづらいとか、メールだと時間や相手の状況が気なるという方々がいらっしゃるんですけども、「ドコモコミュニティ」であれば、時間や相手の状況も気にせずコメントを残しておけるし、都合のいいときに見られるわけです。でも、たとえ「ドコモコミュニティ」内でレスポンスできなかったとしても、それがまたリアルな会話につながれば、それはそれで「ドコモコミュニティ」が核として家族のコミュニケーションが促進されたというところにはなるので、我々としては嬉しい話です。

――息子さんなどのリアクションはあるのでしょうか。

土方氏
 ユーザー層としては、小さい赤ちゃんのいる夫婦とその周りの人というイメージを持っていたんですが、中学生や高校生の息子さんでも参加してる例はあるようですね。たとえば、飼っているペットの様子をお母さんがアップすると、帰宅後にそのことについて話すらしく、お母さんは「あ、見てくれてるんだ」と思うそうです。足跡を見れば一応見ていることは分かるんですが、家族のコミュニケーションにつながっている例ですね。直接やりとりせず、電話やメールで用件を済ませることも多いかと思うんですが、そうじゃない、ゆるやかなコミュニケーションが生まれているのではないか、と考えています。

 こういう部分は、広告や課金で稼がなくてはいけないSNSではカバー仕切れない範囲ではないかと思います。だからこそ、我々コミュニケーションをやってるインフラ会社がやっていく意義があるのではないかなと思っていますね。

――拝見した資料の年代別のグラフを見ると、他のSNSに比べて10代の利用が圧倒的に少ないですが、利用促進のための対策などは考えていらっしゃいますか。

土方氏
 意識していくことになると思います。これまで「EMA」認定を取得していないということもあり、お母さんや家族を軸にしていましたが、お子さんが初めてケータイを持つとき、いきなりネットの世界に放り出されるより、まずは家族や学校のクラス、近所の友達のいるクローズドで安心感のあるコミュニティの中で、どう振る舞うべきかを学んだうえで、オープンな世界に出て行く、というように、ネット上でのコミュニケーション方法や振る舞い方を練習するエントリーサービスの役割を担ってもいいのではと思っています。

――ちなみに御社としては、当然iモード契約をして使っていただきたいんだと思うんですが、他のキャリアさんでも招待を受ければ使えるようにされています。どういう意図でそのようにしたんですか?

土方氏
 家族は比較的ドコモユーザーで固まっているケースが多いと思うんですが、お母さんの兄弟姉妹だったり、あるいはママ友などがドコモユーザーじゃないから共有できなくて残念、という声が当初から多かったんです。そこでそういう身近なコミュニケーションを満足していただくためには、ドコモの契約者で「ドコモコミュニティ」ユーザーの方が招待すれば、他のキャリアの方もご利用いただけるようにしました。

――ドコモ以外の端末で、サービスの機能制限などはありますか。

土方氏
 基本的には、自主登録ができないこと、トライアルサービスで提供しているiアプリが使えないこと、あとパソコン版は今ドコモIDでやってますので、それが使えないことですね。それ以外、基本的なところは同じように使えますし、友達招待もできます。

知育ゲームなどのトライアルサービスも用意

中村雅彦氏

――日記や写真以外にもコンテンツを用意されているようですが、ご紹介いただけますか。

竹中氏
 子育てで忙しいお母さんでも、ちょっとした空き時間に、ケータイを使ってお子さんとコミュニケーションできるよう、20代、30代のお子さんを持った女性向けに、親子で一緒に学べる「おやこでまなぼう!」という知育ゲームを用意しています。そのほかに、、写真を使った着せ替えやフレームが楽しめる「写真で遊ぼう」、かわいい日記が簡単に作れる「デコメ日記素材」、星座や場所を入力すると、おでかけにいいおすすめスポットを教えてくれる「おでかけ占い」などをご用意しました。

 知育ゲームは、発達心理学の先生にご相談しながら作っています。「おやこでまなぼう!」は、3~6才くらいの子供が対象ですが、「あいさつできるかな?」「おとあて」「おなじかな?」など、三択くらいから選べる問題があり、お子さんにケータイを見せながら、コミュニケーションをとることができます。クリアした成果は「スタンプ帳」にスタンプとしてたまる仕組みで、視覚的にも、お子さんがどれだけ学んだかが分かりやすくなっています。またその問題をモチーフにしたデコメ素材を無料で提供しています。さらに、一緒に学んだ記録は「ドコモコミュニティ」の日記で、ご家族や祖父母、ママ友といった方々に報告することができるので、あとで直接褒めてもらえるきっかけにもなります。

 ただし、子供のケータイの長時間使用というのを避けるために、1日15問しか進めないという制限も設けています。

中村氏
 今、世の中的にはSNSのゲームがヒットしていますけども、それとは少し違って、なんとなくあたたかく、楽しく、ちょっとしたトリガーとなって、家族でよりコミュニケーションが深まって、仲良くなっていくという場を演出していきたいというのが、このサービスを試している理由ですね。

――コンテンツは、順次増やしていかれると思いますが、御社のほうで用意されるんですか。それともプラットフォームとして大きくして、いろんな方が乗り入れる形にするのでしょうか。

土方氏
 おっしゃるようにプラットフォーム化していろんなサービスに入っていただくパターンと、知名度の高いサービスをセットにしてお見せするというパターンもあるなかと思っています。常に知らない新しいものというよりは、すでに知られているサービスのほうが、試す上で安心感もあるでしょうから。

 この機能そのものはトライアル機能という形で、「ドコモコミュニティ」本体のサービスとは、別サイトで提供させていただいてるんですね。そこで反応がよければ本サービスに取り込もうと考えています。現状はやりながら模索してるような状況です。

リニューアルと今後の展開について

竹中一郎氏

――10月5日に「ドコモコミュニティ」がリニューアルされたということですが、どのような点を改善されたのでしょうか。

竹中氏
 「ドコモコミュニティ」は3世代、いろんなリテラシーを持つ方が使われるということがありますので、どんなお客様であっても直感的に利用できるように、非常にグラフィカルに、かつ、サイトの縦幅を減らして、情報をスッキリまとめました。

 これまでコミュニティに加入したはいいけど、何をすればいいか分からなかったという声を頂戴していたので、加入してから14日間は使い方ガイドを表示します。また、思いたったときにすぐ日記が書けるよう、トップページから直接日記のフォームにアクセスできるようにしました。さらに、友達や家族の新着情報を最大5件まで、タイムラインで確認できるようにし、iアバターも使えるようにしました。

――このデザインやレイアウトは、他のSNSなどを研究されたんですか?

土方氏
 一番最初のバージョンのときは、他のSNSサイトを参考にさせていただくところもありましたが、今回はUIの専門家と相談する中で、コミュニティサービスとしてどうかというよりは、はじめてこのようなサービスに触れられるにとって、どういう配列や、どういう見え方がいいかを考えながら作り込みました。

――サイトのつくりというよりは、ケータイのメニューの構造を作っていくのと同じような発想でしょうか。

土方氏
 はい。「ドコモコミュニティ」は、他のSNSサービスを使ってる方が、家族や友達などの閉じた人と使うという、2つ目のコミュニティサービスとして使われたり、あるいは、そもそもいろいろあるのは知ってるんだけど、今まで不安でやらなかったという方が、初めてやるサービスになり得ることもあるので、できるだけ簡単登録できて、見やすく、分かりやすく、無駄なものをそぎ落としたような形にしているのが特徴になっています。

末次達弘氏

末次氏
 実際に、50代のお客様がご利用方法をヒアリングして知ったのですが、ブックマークの仕方を知らないというケースもあるんですね。そういう部分は盲点でした。ですから、ブックマークの仕方を最初に案内したり、他のサイトではありえない部分でも、丁寧に意識して作っています。

――スマートフォン対応というのは当然検討されているんだろうなとは思いますが、いつ頃から対応されるのでしょうか。

中村氏
 お客様からも「スマートフォン対応はしないんですか」という声は結構いただいていますので、様子をみながら進めていくつもりです。スマートフォンだけでなく、フォトフレームや、タブレット端末など、いろいろな機器に対応して、そこから簡単にアクセスできるというのは目指していきたいと思いますが、現状は女性の利用者が中心で、標準機をお持ちの方が多いので、iモード上でサービスの中身、コンテンツや使い勝手を改善するということを優先しました。

――「ドコモコミュニティ」はクローズドだから保たれている健全性の高さがあると思いますが、他のSNSの場合、オープンになっていく傾向もあります。この先、“「ドコモコミュニティ」も盛り上がってきたんで、どこかでオープンにします”というのはあり得るのでしょうか。

中村氏
 それは今のところ考えていません。我々キャリアがやってるコミュニティサービスですので、安心、安全というところがまず大前提。そこを最重要視してやっています。クローズドな中で、自分の大切な家族や、子供の写真をアップしても全然不安がないよ、という状態は、やはりひとつ大きなメリットだと思います。その中で、楽しさや誰でも簡単に使えますという部分をうまく演出していけるかがポイントだと考えています。

――サービスとしては、ドコモの契約(ドコモID)と紐づける形で、1対1で登録することになると思います。例えば、家族はそれでいいですが、家族に見せるのとは違う顔で付き合っている友達ともコミュニティを作りたいというケースはあると思うのです。家族内でも、お父さんには見せたいけど、子供には見せたくない情報もあるとか。そのあたりはいかがでしょうか。

土方氏
 その点は社内でも議論になるところです。やはり親しいといっても、家族とママ友は違いますから、出し分けたい部分も当然出てくると思います。その点は今後のお客様の動向もみながら、グループ管理的な機能が必要であれば追加していきたいと考えています。

――特に広告が出るわけでもないのですが、なぜ無料でやられているのかな、という大きな疑問があります。

土方氏
 この企画はかなり前からありましたが、結局延びに延びて、開始が去年になりました。もっと早くスタートしていれば、容量の拡大や機能追加での課金というのも可能だったかもしれません。あるいはターゲティング広告的なところと組み合わせていこうか、という考えもありました。しかしそうこうしているうちに、世の中の動きも加速し、それら以外のビジネスモデルも考える必要がでてきたと考えています。ですので、今までのモデルも再検討しながら、ある程度ターゲットを絞った形でのアプリケーション提供など新しいモデルも検討しています。

中村氏
 広告を載せたとして、そこに不適切とまではいかないにしても、安心してコミュニケーションできないようなメッセージみたいなものがでてくると、この場の存在意義が変わってくるのかなという懸念があります。ですから、簡単ではないですが、新しいモデルを模索しながらやっていかなくてはいけないのかなと考えています。それがキャリアがやってるところの意味なのかな、というのは常々議論しながらやってますね。

――では広告は載せない?

中村氏
 直近のスケジュールには入っていません。

――最近は店頭でもPRすることがあるようですが、PRしユーザーが増加することにともなって、問題が発生する確率が増えていく心配はないですか?

土方氏
 8月、9月と店頭で勧奨してきましたが、非表示化率で見ると、当初から変わっていません。そうはいっても、どこで使われるか、誰が使うかによっては危険性も出てくると思います。投稿監視はきっちりしていますので、そこで状況をみながら必要な対応はとっていこうかと考えています。

――すでに発売済みの「らくらくホン」にはメニューに「ドコモコミュニティ」がありました。端末におけるSNSへの対応は、日本メーカーより海外メーカーが割と積極的で、端末の中にアプリケーションを取り込んでいこうとしています。御社の場合、こういうものを機能として、たとえばアドレス帳とかの中に持たせるというのは当然考えれるのかなと思うんですが、そういった取り組みはいかがですか。

中村氏
 そういう連携はしていきたいところですよね。アドレス帳みたいなものはキャリアの1つの強みなので、そういうものと組み合わせることで、また一般のSNSと違う所を打ち出していけるのかな、と思いますね。

――それでは最後に一言お願い致します。

竹中氏
 今後は、家族や親友といった身近な人々で楽しめる家族向けアプリ・親友向けアプリの提供を検討しています。さらに3世代の誰もが使えるように、対応デバイスを拡大します。そして、学校や地域というリアルコミュニティでも利用できるように拡充を図っていこうと考えています。

 また、現在サンリオさんと協力しまして、9月6日から12月8日までキャンペーンを実施中です。登録と友達招待それぞれに応じて、「ハローキティ」や「しんかんせん」といった、女の子や男の子に人気のあるキャラクタのデコメ絵文字やデコメテンプレート、着せ替えツールやFlash待受がもらえますので、ご家族やお友達同士のコミュニケーション促進に、ぜひ「ドコモコミュニティ」をご活用いただければと思います。

――本日はどうもありがとうございました。



(すずまり)

2010/10/14 11:57