キーパーソン・インタビュー

最新技術と地域ごとのカスタマイズで生み出されたGALAXY S


GALAXY S(韓国版)

 NTTドコモからサムスン電子製のAndroidスマートフォン「GALAXY S」が10月下旬より発売される。GALAXY Sは先行して発売している海外では大好評で、すでに販売台数は500万台に達している。日本での発売は少し遅れたが、その分、Android 2.2標準搭載やspモード対応など、日本モデル独自の強化も施された。海外で人気のモデルだけに注目度も高い。

 今回はGALAXYのUX(ユーザーエクスペリエンス)部門の担当首席であるリ・ソンシク氏と、GALAXYの首席デザイナーであるリ・ミンヒョク氏に、複数のプレスによるグループインタビューをする機会を得たので、その模様をお伝えしたい。

──Android端末は日本でもすでに数機種が発売されています。サムスンがAndroidをGALAXY Sに搭載するにあたり、UX面で独自のカスタマイズを施されていますか?

リ・ソンシク氏
 元々のAndroidの使い勝手に良くないところがあると考え、フレーム部分から作り直しています。足りないところはサムスン独自のアプリや機能で埋め合わせをして、総合的なUXを完成させています。たとえば文字入力には、キーボードをなぞるようにして入力する「Swype」を導入するなどしています。

──日本向けにとくにカスタマイズされたところは?

リ・ソンシク氏
 基本的なUXはグローバルをベースとしていて、コンテンツを中心にローカライズを施しています。文字入力部分も強化しています。

──Androidのバージョンアップにはどのように対応される方針でしょうか。

リ・ソンシク氏
 次のバージョンに備えることは非常に難しくなっています。サムスンはGoogleとの協力関係を維持しているので、できるだけ早く情報をもらい、できるだけ早く対応を準備するよう努力しています。

 Googleのやり方としては、新しいバージョンを発表するとき、特定のメーカーを選び、最初の端末を開発しながら、新バージョンを一緒に発表するという形式をとっています。いわばリファレンス機です。今後は変わることを期待しています。

──そもそもGALAXYシリーズはなぜプラットフォームとしてAndroidを採用されているのでしょうか?

リ・ソンシク氏(左)とリ・ミンヒョク氏(右)

リ・ソンシク氏
 スマートフォンにとって一番重要なことは、アプリケーションのエコシステムです。Androidは成長率が高く市場も大きくなると思われますし、オープン戦略も追求しているので、Androidを選択しました。

──フィーチャーフォンからスマートフォンへと移行する流れの中で、ケータイのUXをどう考えていますか?

リ・ソンシク氏
 フィーチャーフォンの場合はデバイス自体を重要視します。折りたたみやスライドなど、デバイスの形状に合わせ、総合的なUXを作り上げます。一方のスマートフォンは、どの端末もアプリが同じように使えることが重要です。つまり、フィーチャーフォンは独自性やユニークさを重視し、スマートフォンは汎用性を重視したUXとなっています。

──スマートフォンは端末ごとにカスタマイズしていく部分が少ないのでしょうか?

リ・ソンシク氏
 Android自体の仕様が向上しているので、大きなカスタマイズの必要性はありません。しかし差別化のために、Swypeなどサムスン独自の価値を追加しています。また、サイズに合わせて仕様をカスタマイズもしています。今後、Googleがタブレットデバイス向けのUI(ユーザーインターフェイス)を発表するので、それが出てくればまた変わってくるはずです。

──iPhone 4が韓国でも発売されましたが、それに先行してGALAXY Sは韓国国内でかなり売れています。売れている理由とは?

リ・ソンシク氏
 韓国においてGALAXY Sは初日から販売記録を更新しています。このように好評な理由は、お客様のニーズにあった製品として発売しているからです。グローバルで同じ製品、とは言っていますが、実際のところ、中身は地域ごとにかなりカスタマイズしています。どの地域でも、その地域のお客様にあったものを出すから売れるのだと考えています。

 また、Androidだから、ということもあると思います。Androidはカスタマイズ性の高いOSです。スマートフォンの特徴でもありますが、お客様ごとに自分に合わせてカスタマイズができるので、その部分の価値も高いと考えています。

韓国版はテレビチューナー用のアンテナを搭載している

──韓国版GALAXY Sは、グローバル版に対してどれくらい変更を加えているのでしょうか?

リ・ソンシク氏
 韓国モデルは、ユーザビリティ部分はグローバルと共通です。一方で、韓国で好まれる教育系のコンテンツを充実させています。このほか、DMB(日本におけるワンセグに相当)に対応し、高画質でテレビ放送を楽しめるようにしています。

──テレビチューナー内蔵となると大きなハードウェア変更だと思うのですが、どこまでローカライズをするものなのでしょうか。たとえば日本ではワンセグやおサイフケータイも入れることもあるのでしょうか?

リ・ミンヒョク氏
 お客様のニーズにあった製品を提供するのは、メーカーにとって基本的なミッションです。そうした地域ごとの深いニーズにも素早く対応していけるのがサムスンの大きな強みです。今後の日本市場でどのようにするか、まだ決まっていませんが、ニーズがあると判断すれば、それに応える努力は必ずします。デザイン面でも、たとえばカラーについては地域ごとの文化を反映するといったことも行っています。

──日本では防水ケータイが多いですが、防水スマートフォンはどうお考えでしょうか?

リ・ミンヒョク氏
 防水にもニーズがあると認識していますので、準備はしています。

リ・ソンシク氏(左)とリ・ミンヒョク氏(右)

──デザイン面についてお聞きします。さまざまなメーカーからフルタッチタイプのスマートフォンが登場していますが、GALAXY Sの特徴はどこになるのでしょうか。

リ・ミンヒョク氏
 GALAXYシリーズは、フラッグシップモデルとして、サムスンの最新技術とともに、最先端のデザインも取り入れています。

──実際に手に持ってみるとその軽さに驚きますね。

リ・ミンヒョク氏
 軽さについては、長い時間をかけて努力を積み重ねています。本体が軽くなれば、落下したときのダメージも軽減され、壊れる確率も減るので、軽量化は重要な要素として取り組んでいます。

──GALAXY Sでは、最新技術をどのようにデザインに取り入れ、ユーザーインプレッションにつなげているのでしょうか。

リ・ミンヒョク氏
 搭載するディスプレイ、「Super AMOLED」が大きな特徴となっています。既存のディスプレイでは、表面パネルと表示部の間に空気層がありましたが、製造工程を工夫することで空気層をなくし、表面パネルと表示部が密着させています。これにより、既存のディスプレイでは表示が奥まって見えるところが、表面に表示されるようになっています。また、表示部と表面パネルの間にギャップがないので、タッチ時にもエラーを減らすことができます。

 こうした技術面での要素も開発前からデザイナーに伝えられ、それを元にデザインを行っています。

──スマートフォンは全面がタッチパネルディスプレイのタイプが主流になっています。デザイナーの立場から、この状況をどのようにお考えでしょうか。

リ・ミンヒョク氏
 非常に難しい質問ですね。たとえば、昔のテレビには足が付いていました。しかしいまはフォトフレームのようにシンプルになっています。ケータイも同じような道を歩んでいると考えています。

──最後に、日本市場にGALAXY Sを投入されるにあたってのメッセージをお聞かせください。

リ・ソンシク氏
 GALAXY SはオープンなOSであるAndroidを採用するスマートフォン、という特徴も持っていますが、サムスンにとっては、ユーザーニーズに合わせて作った製品です。そのまま使ってもらうだけでなく、お客様が愛情を持って育てていただきたいと考えています。

リ・ミンヒョク氏
 私は個人的に日本製品が好きで、いろいろなものを使っています。それら日本製品と同じように、GALAXY Sも評価してもらいたいと思っています。いま足りない部分があっても、研究して改善していきます。日本のお客様にも、サムスンのGALAXYシリーズを愛してもらえればと考えています。

──本日はありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/10/15 06:00