気になる携帯サイト 制作者に聞く

iPad/iPhoneで雑誌が読める「ビューン」の本当の狙い


株式会社ビューン 代表取締役社長 蓮実一隆氏

 「ビューン」とは、ソフトバンクグループの株式会社ビューンが6月1日より開始したコンテンツ配信サービスで、月々定額で、新聞・雑誌、テレビニュースなどが読めるというもの。iPad向けが30日間450円、iPhone/iPod touch向けが30日間350円、ソフトバンクの携帯電話向けが月額315円となっている。すでに配信されているコンテンツは、書店やコンビニでおなじみのものばかりで、いずれも1クリックで閲覧可能となっている。

 電子書籍への関心の高まりからか、サービス開始直後にアクセスが殺到。非常に利用しづらい状況に陥り、改修作業のため一時サービスを停止する事態に見舞われるなど、注目を集めた。

 なぜそのような事態になったのかも含め、「ビューン」が目指すものについて、ソフトバンクモバイルのプロダクト・マーケティング本部 副本部長であり、株式会社ビューン 代表取締役社長でもある蓮実一隆氏にお話を伺った。

立ち上げの経緯と、6月のあのトラブルを振り返る

――「ビューン」というサービスについては、iPadをきっかけに目にするところとなったわけですが、いつ頃から、どういう形で立ち上げようと思ったのでしょうか。

蓮実氏
 私がソフトバンクに来たのが2年前ですが、企画自体はそれ以前から始まっていました。つまり、もともとiPadやタブレット型とか、そういうことは関係なく、どうやればもっと新聞や雑誌の価値を、ネット上でお互いに高められるだろうか、というところから来ている話です。もっとリアルに言うと、こういうものを、有料課金でちゃんとビジネスにできないかということですね。これだけ技術が発達しているのに、なぜ新聞や雑誌を、もっと手軽にインターネットで読めないんだろう? それは読者にもプラスになるし、絶対にメディアのみなさんにもプラスになるはずなのに。しかし、ご存知のように紙も売ってますから、簡単ではありません。出版社のみなさんが嫌がらないやり方って何かないか、というところから始まっています。

 地道に活動している間に、時代が突然iPad的な世界に集約していきました。それがちょうど1年か1年半前でしょうか。もともとPCのモニターしかない頃から下ごしらえしていましたが、突然料理のイメージがバッと広がった感じですね。これはもうiPadに合わせてやるしかない、それしかないということになって、突然加速しました。

――出だしでちょっとつまづいた部分もありました。ある種プロモーション効果もあったのでは、という声もありますが(笑)。

蓮実氏
 いや、それはまったく思ってないですね(苦笑)。その当時はわざとプロモーションで、なんて、ウワサもありましたが、そんなことありませんよ。ほとんど寝られない日々が1カ月くらい続きました。

――原因を教えていただけますか。

蓮実氏
 これからのスマートフォンビジネスにおいては、意外と当たり前になってくることなんですが、それは、こういうデバイスなどのバージョンアップを、こちらでまったくコントロールできないということです。たとえば、私がiPadを見たのは「ビューン」の開発をほぼ終えた後ですから(苦笑)。iOSにしても、Androidにしても、1年に何度かバージョンアップしますが、どんなもので、何に一番使えて、今自分たちがやってるアプリをどうしたらいいだろう、という部分は、どのアプリ業者もコンテンツプロバイダもまったく分からず、推理合戦みたいな状態になっていくわけです。だけど、そういう時代なんですよね。そういう中で、これから大変だぞというのを6月に見せてしまったわけです。

 私はソフトバンクの人間でありながら、iPadの販売数がどれだけあるかなんて分からない。そんな中でサービスを開始してみたら、アクセスが想定よりも2桁以上多かった。普通ならもちろん嬉しい悲鳴になるはずなんですが、もうただの悲鳴でした。

 アクセスに耐え得るサーバー増強なら1日2日でできます。ところがアプリの振る舞いを、実際よりかなり少なくアクセスを想定していたため、動作がものすごく重たくなってしまいました。ですから、アプリそのものを改修せざるをえなくなったんです。

 当初は、起動時に雑誌の全データを読み込ませていました。うまく動いていれば、アクセスして10秒程度は待ちますが、待ったらどの雑誌のどこを開いてもすぐ読めるという挙動になってました。一人目が全部読む間、二人目は待っているわけです。同時アクセスはある程度許容してますが、セッションが切れないんです。このアクセス数ではサーバーがどれだけあっても足りないぞ、ということになり、トップメニューのサムネイルだけ読んで、あとはタップしてから通信を発生させる仕組みに変え、アクセスもWi-Fi限定にしました。そんなわけで使い勝手は当初より若干落ちています。

 ただ、仮に改修自体が10日で終わっても、その後Apple側の審査やテストを含めると、1カ月かかる作業になってしまいました。これがアプリビジネスのややこしさです。Webページだったら、サーバーを増強すれば何とかなりますが、アプリはそうはいかない。これがトラブルに拍車をかけました。

「ビューン」だからこその工夫

iPad版のビューン

――iPadとiPhoneとで端末にあわせて見え方を調整されてます。具体的にはどんなところに配慮されていますか。

蓮実氏
 たとえば、「西日本新聞」がありますが、これはiPad版ではズームしなくても読めます。これは別に私たちがどうこう言ったわけではなくて、西日本新聞さんがやりたいとおっしゃってやっていることです。一体何文字だったら読みやすいのかとか、写真データはこう撮っておくと使いやすいぞとか、自分たちの今後のために、いろいろとノウハウを試されているのだと思います。私たちは素直に「実験していただいて結構です。どういう効果があったかはフィードバッグします」と伝えています。

 もう1つの例として「フライデー」があります。雑誌だと写真が白黒なんですが、「ビューン」では全部カラーなんです。もともと写真は白黒で撮ってるわけではないですよね。みんなカラーで持っているけれど、紙に刷るとコストがかかる。でもデジタルならコストが一緒なので、こっちはカラーでやろうというわけです。「フライデー」は基本、トップ記事だけなので、雑誌全部は読めないですが、最初の5~6個の記事って「フライデー」の中でいうと、多分全体の価値の85%は占めていると思います。それがカラーで楽しめる。実際「フライデー」は結構な人が「ビューン」で読んでくれています。

 もちろん、その一方で、まったく何もせずそのまま出しているところもありますが。

――コンテンツそのものの制作やそのようなチューニングは、どこかが一括して請け負っているわけではないんですね。出版社なり編集部なりが独自にやっていて、一定のルールに基づいて作業して、入稿してくださいということですか。

蓮実氏
 CMS(Contents Management System)を持ってますので、CMSに入れる前段のところまでみなさんが最適化していただいてから、それぞれで入稿してもらいます。その先で我々が何か触るということはありません。ちょっとしたデバッグレベルのことはありますが、基本的にはみなさんがやっています。

 ですから、例えばトップメニューの上にあるスライドする中吊り広告のようなパネルですが、ここもいろいろなんです。ここも全部出版社がそれぞれのノウハウで作っています。このオシャレさを再現するのは簡単そうに見えて、実はかなり難しいですからね。

 ご覧いただくと分かると思いますが、たとえば、「週刊朝日」はほとんど全記事読めるので、中吊りと同じレベルで作れるわけです。もしかしたら、電車と同じものかもしれないですけど。一方で、「フライデー」は記事が限られているので、編集部さんは、わざわざ「ビューン」向けに読めるもののだけに絞っています。

価格設定は難しい

iPhone版のビューン

――有名な雑誌が多数参加されてますが、現在までで、何か手応えは感じられていますか?

蓮実氏
 まず、参加されてるみなさんの温度が違います。こういう世界でなんとかしてやらなきゃというところもあるし、まだちょっと消極的で様子見段階のところもあります。それぞれの思惑も違う。とりあえず「ビューン」だったら、たくさんある中の1つだし、全ページ出さなくても済むなど、いろんな条件で参加していただいています。

 トラブルでちょっと遅れたものですから、実際に課金が始まったのが8月頭からなんです。しかもそのときはiPadだけです。今iPad版は2カ月目ですが、iPhone版はまだ1周していませんし、ケータイに至ってはまだ1週間くらいなので、ユーザーの動きはまだ評価するに至っていません。

 実際お金を取られるようになってから、ユーザーがどうするか。もしそれでいなくなるユーザーさんがいたとして、彼らが何を求めているのか、逆にどうすれば来てくれるのか。その知見を溜めるのが第一ですね。

――課金のお話がありましたが、現在iPhoneとiPadは別ですよね。2台で持っている人は両方で見たいと思うんです。iPadは自宅で使い、出先ではiPhoneを使うケースもあると思います。たとえば先にiPad版を買った人はiPhone版も無料にするとか、割引するとかあると嬉しいですね。

蓮実氏
 その件については、そのうち解決します。まったくおっしゃる通りで、当初から侃々諤々の議論もありました。けれど、やはりサイズの違いが与える価値があまりにも違うんです。テレビとラジオくらい違うと思っているんですが、そこを共通化するのはコスト的に難しいところがあり、ご容赦いただきたいという感じです。

 アプリビジネスというのは、その辺りの料金の融通性や価格設定が難しい。無料でも気に入らなければボロクソ言われてしまいますから。結局、値段設定は、パイが大きければいくらでも安くできますが、アプリのパイって実は全然大きくない。無料で配って別で儲けるやり方か、若干高いがエイヤって売るしかないんです。「ビューン」のように無料で配って、都度有料というアプリはほとんど見かけませんよね?

 アプリというのは、30日経つと使用する人は買った人の5%以下になると言われています。つまり100人買ったら、30日後にそれを使っている人は5人以下だと。我々はそれから課金するモデルですからね。その辺りは我々だけじゃなくて、あらゆるアプリビジネスのみなさんが七転八倒、知恵を絞っているところだと思います。

 でも面白い世界でもありますね。料金施策やバーゲンなど、今までケータイではなかなか手軽にできなかったことができる反面、月額課金ができないとか、クレジットカードがどうしてもいるとか、縛りもある。アプリビジネスが始まったのは、事実上、iPhoneからですよね。しかも多くの方が利用しているのは、ほとんど無料なわけですから、有料課金ビジネスはまだまだこれからだと思っています。

キャリアとして取り組む意図とは

――電子書籍ジャンルに、キャリア自身で手を付けていくという形になりました。メーカーのApple自体「iBookstore」があり、そのほかにも電子書籍をやっている業者がたくさんいます。そういう状況の中で、キャリアとして取り組むというのは、どういう意図があるのでしょうか。

蓮実氏
 2つありますね。これからはスマートフォンの時代になって、メディアやコンテンツプロバイダのみなさんと、もう一歩深く付き合っていかないと、スマートフォン自体が単なる土管になってしまうという危機感があります。今まではキャリア内のいろんなサービスで済んでましたが、スマートフォン自体はそうはいかない。アプリに限らず、定額料金の通信料の上に新しいビジネスを作っていかなければならない。

 それと同時に、メディアのみなさんと深く付き合っていく中で、キャリアが持っている様々な営業チャネルを活用したいということですね。こういうのは、プロモーション力や、大きな面積がないと、うまくいかないだろうと思います。どこか1社が小規模にやっても、これっぽっちじゃ紙のほうがいいや、ということにならざるを得ない構造になっています。

 ご存知のように今年は「電子書籍元年」なんて言われてますが、ほとんどは個人が“自炊”して、タブレット端末で見て楽しんでいる状態で、「実際、誰か電子書籍で儲けましたか?」といわれると、まだ何の成功例もないんです。ケータイコミックはもちろんお金になってますが。

 ですから、こういうものはキャリアがプッシュするとか、キャリアの背景にある店なり何なりが全部一丸となって市場を形成して、最初のハードルを超えさせないと簡単にいかないと思います。電子書籍は百花繚乱のように見えてますが、実はまだまだ。「何かありそうだけど、あるんだっけ?」という状態ですよ(笑)。全体で電子書籍という業界を盛り上げて、マーケットを作り、新しい価値を生み出さないと意味がないと思います。

 その中で、我々はキャリアのプッシュ力と、とれる面積の大きさによって値段を下げる。あるいは、一流のみなさんに集まってもらう、その辺りのかけ算でメディアビジネスが面白くならないかなと、そういうチャレンジをしているわけです。「ビューン」によって、それまで見たこともなかった「CanCam」や「フライデー」を見たおじさんやお姉さんが現れる。そういうことが、店頭からここに来た意味があると思います。

――確かに「ビューン」にはコンビニの棚から雑誌をとるような気軽な感覚で、それまで見たことのない雑誌を読めますね。このインターフェイスというのは、何かをモチーフにしたのでしょうか?

蓮実氏
 特に何もないですね。これに行き着くまでにも相当いろいろ議論がありましたが、どうしても何か1つと言われれば、キオスクでしょうか。ポスターも貼ってありますし、本はひたすらずらっと並んでいますし。

 ITをよく知っている方がサイトでアカウントを作成して、パスワード入力して、あれこれ操作してから書籍を入手するのではなく、ポンと置いてあるから読んでください、という方がいいですよね。本当は、トップメニューの中吊りのような部分をみて、この記事読みたいな、と思って押すともう読めるという状態が理想ですが、まだそこまでは行ってません。

 ユーザーの反応を見ながら、すごい勢いで進化しなくてはいけないと思います。あと半年もすれば、いろんなデバイスが登場してきます。そのとき、この画面がどうであればいいかというのは、デバイスに応じていちいち違うわけです。それがいつ確定するのか見えない中で、開発を進めていくことになるでしょう。

アプリか、HTML5か

――端末にあわせてサイズは全部最適化していくんですよね。

蓮実氏
 もちろんです。当然ながら解像度も変わってきます。

――今回これはアプリという形で提供されていますけど、HTMLやJavaScriptを組み合わせれば、Webブラウザ上でもある程度のことはできるのかなと思うんですが、いかがでしょう。

蓮実氏
 いい質問ですね。若干踏み込んで言えば、HTML5のほうが絶対いい。今のアプリとまったく同じことがHTML5でもほぼ実現できると思います。そのうち、アプリなのかWebなのかよくわからなくなると思います。使い勝手でいえば、ブラウザさえあればなんでもOK、と言いたい。PCでもいいし、テレビでも見られます、と言ってしまいたい。まさにマルチデバイス状態を実現するには、ブラウザであれば絶対間違いありません。

 ところが、それはDRM的な世界(著作権管理)が簡単じゃない。セキュリティの面を含めて、やはり命のデータをどう守るか、という点でいうと、若干脆弱なんです。そこを解決できないとなかなか難しい。

 もちろん、いずれ解決できると思いますが。そうすればトラブルにも速やかに対処できますし、インターフェイスを変えたくなってもすぐ対応できますし。

――そういう意味でいうと、御社はAndroid端末なども出されてますが、iPhone、iPad以外のプラットフォーム向け、スマートフォン向け、さらには他のキャリア向けというのは検討されているんでしょうか。

蓮実氏
 もちろんやっていきます。他のキャリア向けというのもやりたいですね。作ったときから、クローズドではやらない、キャリア内で閉じるつもりはないとは申し上げてきています。ただ、一方で、1キャリアと親密になることによって、できることもたくさんあるので、その強みを放棄するか、という点は悩ましいですね。また、Kindleや、Googleなどが来る中で、我々は同じ野原に出て行って戦うことが本当に得策か、という点についても真剣に検討しなくてはいけないと思っています。

まずは魅力ある市場形成が大事

――ケータイのマルチメディア放送の免許がmmbiに付与されましたが、そのようなプラットフォーム上で、書籍配信というのは考えていらっしゃいますか?

蓮実氏
 当然そうでしょうね。「それをやらないで何をやるのか?」と。書籍なのか雑誌なのか分かりませんが、データが重くて、日時更新していく情報的な世界というのは、マルチメディア放送と親和性が高い。それこそあまりネットワークのことを難しく考えないで済むプラットフォームは、当然ながら視野に入れています。

――現状、「ビューン」で見られるコンテンツは、既存の雑誌が中心だと思いますが、たとえば、動画を含め、新たに何か作り込むみたいなことは、取り組みとしては出てきそうですか?

蓮実氏
 それもやらないといけないと思っています。やるなら、今ある雑誌に少しと手を加えたというようなことではなく、もうちょっと本格的に電子書籍ってこういうことなんだね、というところに行かないと、やっている意味はあまりないと思っています。

 何かが動いたから面白いかというと、別にそんなことないですよね。テレビを観ていれば、もっと質のいい動く画像がたくさんある。だから、動けばいいということではありません。たとえば、めくるごとに、それぞれの個人に最適化されたものが出てくるとか、つまり、ある決まった本というものがなくて、人によって違う本になっているとか、場合によっては違う雑誌に飛んでしまっても構わないわけです。あるいは自分の信頼している人が読んでいるページがどんどん出てくるとか、いろいろ考えられますよね。そういうソーシャルな世界や、動的な世界というのがないと、インターネットでやってる意味があまりないですから、そこは当然やりたいですね。

 でも簡単ではありません。そういうことを始めるために、今は、みなさんとまず信頼関係を作っているところですね。実際に始める二歩ぐらい手前のところという気がします。

――雑誌のビジネスモデルは、購読者からの売り上げと広告の収益でまかなわれていると思いますが、中に広告を入れて行く予定はありますか。

蓮実氏
 出てくるでしょうね。今はまとめておいくらという、言い方はよくないですが、ビュッフェ的なやり方です。これはiPadにあわせた最初のサービスだからやっているだけで、今後これをいくつも作っても仕方ありません。それはビュッフェ屋の隣に、またビュッフェ屋を作るようなものです。ビュッフェ屋を作ったら、2階にはちょっと高級なアラカルトが食べられる店にしようかとか、逆に、地下には立ち食いの串焼き作ろうかということになるわけですね。

 我々は、あくまでも「ビューン」という名前をとって基幹サービスにしていますが、この先、次なる展開の大きなところは、まさに広告やECだったりします。それから、これとは全然違う考え方で、こういう電子書籍のビジネスがあったらいいね、というイメージもあります。具体的には言えないんですが、ある程度ゲリラ的に、企画的にやっていきたいと思っています。ストアを作って本を置いたから、みんながこれで本を読みましたなどと、そんな甘いものじゃありません。その点は、早めに始めたので、誰よりも分かっているつもりですし、だからこそ誰よりも早くやりたいと考えています。

――販路を見出しにくいマイナーな雑誌が「うちのもぜひビューンで」という話もあるのではないですか。

蓮実氏
 確かにそういうお話は非常にたくさんいただいていますが、お請けしていません。

――今はあくまでも大手で、というスタンスですか。

蓮実氏
 そういう理由ではありません。レベニューシェア型なので、まずは最初に入っていただいた方々に、ちゃんと利益を還元しないといけませんから。途中で参加者が増えると取り分が減ってしまいますからね。

 これまでも言ったように、これはアプリビジネスですから、この「ビューン」というサービスを強化すればいいというものでもありません。強化するなら、専用ジャンルを設けて、別のアプリを作ったほうが全然目立ちます。あるいは、この中からある部分を抜き出して、小さいものをつくるとか。アプリビジネスは、とにかくアプリをある程度量産しないと回らないので、その辺りをちょうど今調整をしているところです。

――そこが書店というよりは、コンビニの本棚みたいなイメージになるんですね。

蓮実氏
 その通りです。大型書店ではなくて、コンビニというか、おしゃれなセレクト本屋をイメージしていますね。

――今、iPad、iPhone、そしてYahoo!ケータイと3つのプラットフォーム向けに出されていますが、ユーザー数的にはやはりiPhoneが一番多いですか?

蓮実氏
 iPhone全体がどれくらいか分かってないんですけど、数ではiPhoneのほうが圧倒的に多いですね。それでもiPadの満足度が一番高いでしょうね。iPadのほうが単純に画面が大きいですから、利用し甲斐があると思います。その分、利用料は高くしていますが。ケータイ版は始めたばかりなので、まだまだ論外です。

――この冬から続々と登場してくるであろう7インチサイズというのが、落としどころとしては悪くないのかなと思うんですが。

蓮実氏
 7インチや5インチあたりですね。ただ、そうは言っても、次のiPadがどうなってるか分かりませんからね(笑)。そういう恐怖と戦うわけです。イバラの道です(苦笑)。だから、みんなお互いを潰すというよりも、みんなでいい大通りをつくること。今はそれぞれがあれこれ言ってる場合じゃないと思いますね。

――まず日本で市場を作らないと、ということですね。

蓮実氏
 まさにその通りです。

――本日はどうもありがとうございました。



(すずまり)

2010/11/5 06:00