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「GALAXY S/GALAXY Tab」開発者インタビュー

「サムスンだからいい」を目指して


GALAXY Tab(左)とGALAXY S

 グローバル市場ではすでに800万台以上を出荷し、爆発的な売れ行きを見せている、サムスン電子のAndroid端末「GALAXY S」と、9月に発表されたばかりの通話機能も搭載したタブレット端末「GALAXY Tab」が、日本のスマートフォン市場にやってきた。両機種が日本に登場することになった経緯や、端末の特徴、同社の思いなどを、サムスンテレコムジャパンの端末営業部 部長の呉昌a(オウ チャンミン)氏と、端末営業部 端末営業パートの次長である阿部崇氏に伺った。

GALAXY S、GALAXY Tabの登場経緯

呉昌a(オウ チャンミン)氏

――まず、GALAXY Sについてお伺いします。ドコモ向けアンドロイド端末として日本国内に投入するのは初めてになると思いますが、ドコモから発売するに至った経緯をお伺いできますか。

呉氏
 各キャリアさんには、同じようにアプローチをしています。今回の場合も、今年の2月のバルセロナで端末を公開したのは、ドコモさん、KDDIさん、ソフトバンクさんまったく同じタイミングでした。各キャリアさんが、それぞれご自分にあった戦略を展開していらっしゃると思いますが、その中で、弊社の端末を一番必要としたのがドコモさんだったということだと思います。

――2月のバルセロナで見せて、ドコモは夏モデルの発表のときには「GALAXY Sを出します」と宣言しました。かなり異例の展開だったと思いますが、御社としてはどうお感じになりましたか。

呉氏
 弊社ももちろんビックリしましたよ(笑)。「隠し球としてやるよ」っていうのを直前に教えていただきました。商品の良さを分かっていただくというのは、メーカーとして非常にありがたいことなんですね。韓国には「10本指噛んで、痛くない指はない」という諺があります。自分の子供はすべてかわいいという意味です。年間多くの機種を出している中で、すべて情熱を入れて一生懸命やっておりますが、その中でも、特に情熱をかけてやっている物ってあるじゃないですか。その代表的なものが弊社としてはGALAXY Sなんですね。それをいち早く分かっていただいた。非常に嬉しかったですね。その分メーカーとしても、今まで以上に力を入れて頑張らないとっていう気持ちにもなりました。

――GALAXY Tabの日本発売が決まったのはいつ頃ですか。

呉氏
 夏モデルの発表の前にはもう決まっていたと記憶しています。GALAXY Sは最初から「絶対これだ!」とおっしゃっていたんですが、GALAXY Tabのほうは結構いろいろ見ていらしたようです。なので、GALAXY Sよりは遅れたんですが、発表会の前には決まっていました。

 GALAXY Tabは最初からAndroid 2.2で提案していましたが、実は、GALAXY Sは最初Android 2.1で、途中で2.2に変わったんですね。このタイミングで2.2が準備できそうだと分かった瞬間、提案させていただきました。すると、ドコモさんは私がイメージしていたより遙かに素早く対応してくださった。最初からAndroid 2.2で、spモードが搭載されていますよね。そのフレキシブルさに驚きましたよ。そこまで対応してくださるとは正直想像していなかったので、いままで持ってたイメージが結構変わりました(笑)。ドコモさんもかなりがんばってくださったんだと思います。

 GALAXY Tabも、当初の投入予定は年内じゃなかったんです。全体のラインナップを調整しながら、年内に投入すると決めていただいたことに関しましても、ドコモさんのGALAXY SとGALAXY Tabに対する思い入れ、また、ラインナップ戦略の中での、この2つの端末をどのような位置づけで考えていらっしゃるのかというのがよく分かるヒントになっているのかなと思いますね。

――他社も含めて、いま「電子書籍」の波が来そうな雰囲気になっている中、GALAXY Tabはかなりマッチした端末なのかなと思いますが、その辺りの流れや投入タイミングというのは、意識されていたのでしょうか。

呉氏
 電子書籍の世界は絶対来るという認識はあります。これは皆一緒だと思います。ただ、来るタイミングは国ごとに違ったりすると思いますし、どのソリューションも、標準化はモノより遅れてますよね。しかし電子書籍関係の市場を広げるためにも、こういう端末は早めに必要だという認識は一致してますね。

 電子書籍に関しては、弊社はグローバルな展開を意識しています。事業者さんをサポートしていくというスタンスについて、全世界の事業者さんにまったく同じようにアプローチしております。ドコモさんには、この弊社の展開の仕方に共感いただいていると思います。ですから、今後どういう展開になるのかは、楽しみの1つでもあります。

スマートフォン人気への手応え

――GALAXY Sは、先に北米その他の地域で発売されています。さらに日本にも投入されるにあたって変えた部分や、それぞれの市場に投入して感じた、国ごとの反応などを教えていただけますか。

呉氏
 新しい物好きの韓国とアメリカは、最初からものすごく火がつきまして、今まで経験のない台数が一気に売れました。GALAXY Sのディスプレイは非常に特殊なんです。これを生産できる会社が世の中に(サムスン)1社しかない。当然、生産量に限りがありまして……。アメリカと韓国で火がついたため、他にほとんど供給できなくなってしまいました。それで会社として一番心配したのは、今まで非常に長く戦略的にお付き合いいただいているさまざまな事業者さんに、十分な端末を供給できないことです。戦略的なパートナーにどう思われるのか。「サムスンのマネジメントは間違ってるんじゃないか」と思われるんじゃないかと非常に心配しました。全世界の事業者さんにご満足いただけるレベルに全然行ってないんですが、現在それなりに努力している姿はある程度認めていただいておりまして、大きなトラブルなく待っていただいている状況です。結局は迷惑かけているんですけれど(苦笑)。

阿部崇氏

――なるほど。では、日本での反響はどうですか。

阿部氏
 先日ドコモさんの内覧会がありました。3200人ほどのユーザーさんが集まったイベントでしたが、そこにいらしたお客様には非常に興味を持っていただきました。

 「これまでFOMAを使っていたのだけれど」というカップルや、親子連れのお客様が「アドレス帳はFOMAから変えられるの?」とか「アドレス自体もFOMAから引き継げるんだよね?」さらには「今のFOMAの料金とどう違うの」という質問を熱心にされるんです。想像以上のスマートフォン人気ですね。これまでのスマートフォンというのは、新しい物好きの方や、アーリーアダプターの方たちが買っていくというイメージが非常にあったんですが、そうでない方が初めて持つスマートフォンの選択肢の1つとして、GALAXY Sが入ってくるというのがかなり新鮮でしたね。

 あとは「予約したんだけど、いつ入るの?」という質問も多かったんですが(苦笑)、今、順次納品始まっているので、少しずつご予約いただいたお客様には行き渡り始めているのかな、という感じはしています。ただ、それでもまだお待ちの方多いという事実はありますので、そこはひたすらお詫びするしかない状況です。

――日本向けのモデルと海外モデルとの違いや、特に意識した部分を簡単に教えていただけますか。

阿部氏
 最も意識したのは「日本語」ですね。日本語で違和感なくご利用いただけるよう“きちんとした日本語にした”というのが一番大きいです。直訳であればもっと早くできたのかもしれませんが、使っているうちによくわからない言葉がメニューや説明にあったら、お客様にはご満足いただけませんし、不満が募ると思うんですよ。そうならないように配慮しました。もちろんメインは韓国本社の開発や商品企画での対応になりますが、日本でもきちんとフォローしながら対応していきました。これまでの日本でのビジネスで蓄積できた部分が今につながっているかなと思っています。

 あとは、日本の地図会社さんが作っている地図を入れたり、日本のお客さんがよく使うアプリケーションの追加を意識しました。ドコモさんのサービスでは、最初からspモードに対応できたというのも、かなり良かったのかなと思います。

――spモードは最初から対応するということになっていたのですか?

阿部氏
 対応したいという話はずっとしていました。Android 2.2になると決まったときどうなるかと思いましたが、ドコモさんに積極的にご協力いただいたおかげで実現できました。

――御社は独自でアプリマーケット「Samsung Apps」も運営されていますが、日本向けの取り組みなどは予定されていますか?

阿部氏
 徐々に拡張することは考えています。現時点では、まだ歴史が浅いため、アプリを多くご提供できていないというのは事実ありますが、海外のストアで人気のアプリを順次日本に持ってくることはできるかなと。そのほかに、まだAndroidマーケットに登場していないもので、日本で人気の出そうなアプリをうまく見つけられればいいなと思います。

機能面について

――GALAXY Tabに音声通話機能を搭載されたのは、どういった狙いからだったんでしょうか。

呉氏
 グローバルでは、1ナンバー2SIMというサービスがあるんですね。電話番号は1つですが、SIMは2枚で端末を使い分ける。例えば、普段はGALAXY Sでスマートフォン中心の使い方をしながら、WebブラウジングにはGALAXY Tabを使うとか。GALAXY Sはどうしても使用頻度が上がるので、ヘビーユーザーになると、バッテリーが1日持たないなんてこともあり得る。でも、GALAXY Sのバッテリーが切れてもGALAXY Tabでも通話できるので安心というわけです。なにせGALAXY Tabには4000mAhのバッテリーが入ってますから、1日は余裕なんです。なので、電話機能は必要とする機能となります。日本にはそういうサービスがないのが残念ですが。

――FeliCa、ワンセグの対応についてはいかがでしょうか。それらの利用頻度が高いユーザーは、乗り換えるときに気になると思います。

呉氏
 弊社は、基本的に1番最新のOSをお客様に体験していただく、というのを非常に重要に考えています。Android 2.1でほぼ完成したGALAXY Sをあきらめて、2.2に変えたのもそこに理由があります。2010年10月末に出る端末が、2.1というのはサムスンとしてはおかしいんですね。2.2を搭載可能であれば絶対2.2にすべきだと。ドコモさんも「それはそうだ」と同意していただいて、最初から2.2になっています。そうすることで、この端末がスペック的にも全体的のデザイン的にも、結構長く最先端の端末としていられると思います。

 ワンセグは2.2対応までは大して難しくないと思うんです。実際、ワンセグについては夏頃にサンプル機も作っていました。でもFeliCaとなると、弊社だけでどうにかできる問題ではなくなります。FeliCaが間に合わないんでアップグレードが遅れます、とはメーカーとして絶対に言いたくないんです。

――GALAXY SもGALAXY Tabも、両方ともタッチパネルで、キーボードがないものを投入されています。その他の形状というのは御社ではどう見られていますか。

阿部氏
 実際にアメリカでは、スライドのQWERTYキーボード付きのGALAXY Sがありますし、ニーズとして違う物が求められてきて、チャンスがあればサムスンとしてもぜひフルタッチ以外も入れていきたいと思っています。

 入力方法としてはQWERTYキーととテンキーが切り替えられて、テンキーもフリックと普通のフォーマットが選択できます。先ほどお話しした内覧会でも、設定がQWERTYになってるとお客様は「あれ、普通のは打てないの?」と必ず聞かれるんですね。やはりFOMAを持っている方は、まっ先にテンキーを求められるところはあるようですから、そういう進化もあっていいのかなという気はします。

――GALAXY TabとGALAXY Sですが、サイズ以外での違いを教えてください。

阿部氏
 ハード的には、ディスプレイが違います。GALAXY Sが「Super AMOLED」という有機ELを使っているのに対して、GALAXY Tabは、私たちがスーパーTFTと呼んでいる、従来のTFTよりもさらに性能を改善したTFTを搭載しています。

 ソフト的には、アプリケーションを一部変えて差別化を図っています。GALAXY Sは1台目として使われることが多いと考えていますので、SNS系の投稿ツールなども数種類ご用意しています。例えば「Write and Go」は、メモを書いて更新ボタンを押すと投稿先が選べ、一発で送れるアプリです。

 一方、GALAXY Tabは2台目という用途が多いかなと思いますので、大きなキーボードでゆっくり、みっちり書いてもらえるような環境をアプリで実現しています。画面が大きいからこそ見やすいものとして、共同通信のニュースのアプリを入れたり、取扱説明書のショートカットを入れるなどの工夫をしています。

呉氏
 GALAXY Sでちょっと表示がきついなと思われるものは、GALAXY Tabでは非常に楽にできるわけですね。ですから、例えばさまざまな教育用の問題集など、「Samsung Apps」の中ではGALAXY Tab用として用意してるんです。

 他には年賀状を作るアプリなどもありますよ。年賀状って全体の構図が重要じゃないですか。こっちに写真を配置して、こちらに挨拶の文字を入れてとか、そういうのって、GALAXY Sだとキツいなと思いますが、GALAXY Tabならちょうどハガキのサイズなので、いろんなことができます。作ったハガキはEメールで送れますし、Wi-Fi経由でプリントアウトできます。

――韓国には年賀状の慣習はあるんですか?

呉氏
 昔はありました。しかし、最近はもうみんなEメールですね(笑)。

――これまでにないこのサイズ感からいって、何気にGALAXY Tabは注目されそうな気がしていますが、反響はどうですか。

阿部氏
 先ほどもお話した内覧会でのことですが、私自身びっくりしたのが、20代の女性2〜3人連れが、いきなりGALAXY Tabのコーナーに直行したことでした。一番空いている時間だったので、一番ゆっくり見たい端末のところに行くわけです。それがGALAXY Tabのところに直行し、キャーキャー言いながら喜んでいるんですね。いきなりそういう人たちが食いついてきたというのは、正直面食らいました。画面が大きいものは欲しいけれど、ちょうど良い物がないと思っていた層が、結構興味を持ってくれているんじゃないかな、という気はしました。

 私たちも「ハンドバッグに入る大きさですよね」という言い方はしてるんですよね。女性は男性よりも一回り、二回り小さいハンドバッグをお持ちですから。

今後について

――この数週間の流れの中で、3D液晶も注目されていますが、その辺りはどのように見られていますか。

呉氏
 正直、3D映画をGALAXY Sサイズで見るというのは、多分無いんじゃないかと思うんですね。無いと思いつつ、ゲームなどちょっとした3Dで楽しめるものはどんどん出てくるのではないでしょうか。そういうときに3D対応と、そうでない端末とで比較されてしまうことはあるかなと思います。現在、日本はスマートフォンの拡大期だといえるので、ワンセグや3Dがあるモデルなどが出てきて、一緒に盛り上げて行ければ良いと思っています。

――今後のOSのバージョンアップや、あるいはまた違うサイズのものを検討されているのかなど、今後の展開について教えていただけますか。

呉氏
 OSはまだ完成しているものではないので、非常に早いスピードで完成度の高い物に進化していくものと思っています。サムスンとしては、進化と同じタイミングでお客様には経験していただきたいと強く考えています。法的環境と事業者さんのネットワーク環境、絶対にこの2つを合わせないといけないので、日本は特に厳しいのですが、アップグレードに関しては積極的に準備していくつもりです。

――最後に、今までスマートフォン使ってこられた方、そして使って来られなかった方に対しても、何か一言メッセージをいただけますでしょうか。

阿部氏
 これまでサムスンのケータイやスマートフォンって、あまり知らない方がほとんどだったと思います。我々もこれまでサムスンブランドを知ってもらおうと考えてきたわけですが、今回はGALAXY S、GALAXY Tabという商品を通じて「あ、これいいね。どこのだと思ったらサムスンなんだ」というアプローチになっています。そのためサムスンの端末を、初めて手に取ってもらう人というのも多いのかなと思います。いい商品を出して行けば、お客さんはいいものとして選んでくださるというのが分かってきましたので、ぜひそれを手にとって触ってみて、良さを知ってもらった上で買っていただけると非常にありがたいです。そして、これからはそういうお客様に、逆に「サムスンだからいいものを出してくれるだろう」と言っていただけるような商品を出し続けていきたいなと思いますので、今後もサムスンの商品を、そしてGALAXYを含めた商品にぜひご期待ください。

呉氏
 製品の良さで選んでいただける、日本のお客様に感動しています。その感動の気持ちを続けられるように、アップグレードも、次の端末も頑張っていきたいと思います。ぜひともよろしくお願い致します。

――本日はどうもありがとうございました。



(すずまり)

2010/11/26 16:53