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REGZA Phone「T-01C」「IS04」開発者インタビュー

防水に対応した日本仕様のAndroidスマートフォン


T-01C(右)とIS04(左)

 東芝の携帯電話事業を引き継いだ合弁会社、富士通東芝モバイルコミュニケーションズは、今冬、ドコモ向けに「T-01C」とau向けの「IS04」という、2機種のAndroidスマートフォン、「REGZA Phone」を投入する。これら2機種は、キャリアこそ異なるものの、それ以外の見た目や性能がほとんど同じ、兄弟モデルとなっている。

 REGZA Phoneには、日本のフィーチャーフォンでおなじみの数々の機能・性能が搭載されている。先行するシャープ製「IS03」同様に、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信をサポートするのはもちろん、REGZA Phoneでは防水仕様にも対応した。防水スマートフォンは、日本はもちろん、世界的に見ても珍しい。

 今回はこのキャリアの異なる2つのREGZA Phoneについて、開発を担当した富士通東芝モバイルコミュニケーションズの開発本部 モバイルフォン事業部 ハードウェア開発二部の吉崎臣輔氏と富士通のマーケティング統括部 第三プロダクトマーケティング部の影長宜賢氏の両名に話を聞いた。

――まず今回、2機種のご紹介をしていただくのですが、この2機種の違いはどのあたりなのでしょうか。

吉崎氏
 ドコモ向けのT-01Cとau向けのIS04は、いわば兄弟機になります。通信方式が異なりますが、ハードウェア的な違いは主にそこだけで、開発も一緒に行っています。

――通信方式以外に違いは?

吉崎氏
 ドコモは卓上ホルダによる充電に対応しています。ハードウェア的な違いはこのくらいで、それ以外はプリセットされるソフトウェアの違いになります。

――スマートフォンに「REGZA」のブランドを持ってきた意図とは。

影長氏
 スマートフォンにはユーザーを惹きつけるさまざまな楽しさがあります。それら楽しさの中でも、マルチメディア機能は大きなウェイトを占めます。そして東芝には、このジャンルではREGZAという大きなブランドを持っています。先進性や楽しさをPRするにも最適なブランドだと考えました。

――今回のREGZA Phoneは防水が大きなポイントとなっていますが、なぜ東芝として最初のAndroidスマートフォンが防水となったのでしょうか。

富士通の影長氏

影長氏
 これまでの日本のフィーチャーフォンでは当たり前の機能が「ない」、というのが逆にスマートフォンの当たり前になっていました。しかし日本のユーザーが迷わずに移行するには、慣れ親しんだ機能を搭載しないといけないだろう、と考えました。このように日本のユーザーが迷わず手に取れるスマートフォン、ということでスタートし、そのための機能としてワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信と組み上げていき、できれば防水、ということになりました。開発中は何度も防水仕様実現を挫折しかかりましたが、技術陣の努力もあり、このサイズの筐体で防水を実現することができました。

――従来、東芝製スマートフォンというと、Windows Mobile系というイメージがありました。今回、Androidを採用された理由とは。

影長氏
 海外の流れを見ると、いまはAndroidの波が来ています。コンシューマ向けスマートフォンのプラットフォームとして素性の良さもありますし、オープンなプラットフォームなので、日本のフィーチャーフォンの機能を搭載するにあたってのカスタマイズ性の高さもありました。いままでWindows Mobileスマートフォンで培ってきたものを捨てるわけではありませんが、たとえイチからやることになっても、Androidをスルーできないだろう、と考え、Androidに取り組むことを決定しました。

 実際、東芝は日本のメーカーとしては早い段階でOHA(Androidの開発を行うOpen Handset Alliance)に加盟しました。商品化するには決断が必要でしたが、日本のメーカーとしては迅速に対応できたと考えています。

――日本のフィーチャーフォンの機能で、REGZA Phoneに搭載するのにハードルが高かった機能は?

富士通東芝の吉崎氏

吉崎氏
 やはりおサイフケータイやワンセグは、セキュリティに関わるデータを扱うところが難しかったです。ワンセグは録画や再生、さらにT-01CはREGZA連携として、フルセグのテレビ録画を変換し、転送して視聴できる機能も搭載しています。Androidはオープンな仕様になっているので、こういったコンテンツをエンドユーザーにハックされないよう、工夫しています。

――防水はイヤホン端子にキャップがないという珍しい構造になっていますが、どういった仕組みになっているのでしょうか。

吉崎氏
 そもそも3.5φのオーディオジャックは、これまでの東芝のスマートフォンでは積んだことがなく、たとえばT-01Aでは変換アダプタを使っていました。しかしオーディオジャックを搭載するに当たり、防水だからといってキャップがあると使いづらいのでは? と考え、そのまま挿せるように作っています。

――ここの防水はどのような仕組みなのでしょう?

一般的なイヤホンを挿せる3.5φジャック

吉崎氏
 端子穴の中に電極がある構造ですが、通常の防水構造の場合、筐体の継ぎ目にパッキンを貼り合わせ防水処理するのですが、このオーディオジャックではそれとは違った構造で防水にしています。そのために、部品ベンダーと協力し、新規で開発しました。

――そもそもオーディオジャックがなくても、どうしてもヘッドホンを使いたければBluetoothでもいいのでは、とも思うのですが。

影長氏
 スマートフォンのユースケースで、音楽を聴くことが多い、と考えました。とくに今回、音楽系の機能としては、音楽ファイルをメモリカードのどのフォルダに入れても、検索し、再生リストに追加するようなソフトウェアを搭載しています。音楽機能は、とにかく使いやすくしています。

 そこにきて「ヘッドホンはBluetoothでいいでしょ」と言えるほど、まだBluetoothヘッドセットを持っている人も多くないと考えました。好みに応じた高音質なヘッドホンをそのまま付ける方が良い、と。防水は非常に難しかったのですが、頑張って実現しています。

――静電容量のタッチパネルですと、水に濡れた状態では操作ができませんが、そのあたりはどのように対処されているのでしょうか?

背面カバー内で防水になっているのは電池部の開口部だけで、ほかの部分は浸水しても良い構造

吉崎氏
 水没した状態での使用は想定していませんが、水に濡れた後、軽く拭けば使えるようになります。どのような条件でも完全に、とはいきませんが、それなりに使えるはずです。また、電話がかかってきたとき、とっさに拭かないと電話に出られない、というのでは困りますので、サイドキーだけでも受話できるようにしています。

――フルタッチ以外のデザインという可能性は?

影長氏
 形状はいろいろなものが考えられると思うのですが、スマートフォンの楽しさを何に感じるか、というと、「大きな画面を指でサクサク操作できる」という要素が大きいと思います。たとえばキーボードを付けるとボディが大きくなってしまいます。いちばんユーザーに対してアピールする形として、いちばん最初の端末は王道のスレート形状にしました。

――このほか苦労されたポイントは?

吉崎氏
 いろいろな部分で苦労したので、どこ、というのは難しいですね。たとえばタッチパネルについては、どのメーカーも苦労していると思います。チューニングでも苦労しますけど、世界的なタッチパネル需要で部材確保も難しくなっていたりします。

 あとは、たとえば電池には1300mAhの大きなものを採用しているのですが、これでFeliCaアンテナを搭載するのがなかなか難しかったりします。このほかにも携帯電話回線やGPS、Bluetooth、ワンセグなど、アンテナをたくさん載せないといけないので、その設計にも苦労しました。

 ちなみにメインのアンテナは、弊社の独自技術により、おそらく他社のどのアンテナよりも小さいのですが、性能は良いものになっています。

下端にキャップの付いた端子がある

――ほかのスマートフォンでは側面にあることが多い充電・データ端子が下端にありますが、これはアンテナに影響はないのでしょうか。

吉崎氏
 どのメーカーも同じポリシーでデザインされていると思いますが、携帯電話の場合、通話中にアンテナを人体に近づかないようにします。そうなるとメインアンテナは電波的な性能が重要なので、下端が最適な位置になります。ところがそこに端子を置くと、アンテナの性能が悪くなりがちです。T-01Aでも端子は側面に持っていきました。しかしREGZA Phoneではアンテナに工夫を施し、端子と同じ下端にあっても十分な性能を得られるようにしています。

――この端子はキャップレスにはならないのでしょうか。

吉崎氏
 この端子は電源を扱うので難しいところです。実はこの端子、USBのホストにもなり、キーボードやマウスにも対応しています。そうなると、5Vの電圧で出力されるので、その端子をむき出しにするのは危ないと言うことで、キャップ付きとしています。

――以前のWindows Mobileのときは、グローバルで展開されていましたが、REGZA Phoneについてもグローバル展開されるのでしょうか?

影長氏
 検討はしています。しかし、ワンセグやFeliCaは、ほとんどの国では用をなさない機能になります。海外にニーズがあれば、FeliCaなどの機能を抜いた上で展開するかも知れませんが、いまはまだ検討中という段階です。今回のREGZA Phoneは「国内のユーザーを満足させる」ということを目指しましたが、もちろん、これで終わりではないので、今後はグローバル展開を考慮したデザイン・設計もあると思います。

――今冬、各社からAndroid搭載のスマートフォンが多数登場しますが、その状況でズバリ、REGZA Phoneの差別化ポイントは?

背面のデザインテイストは、T-01C(右)とIS04(左)で微妙に異なる

影長氏
 いちばんはっきり言えるのは、唯一の防水端末であることです。お風呂はもちろんですが、それ以外でも、使えるシチュエーションを一気に広げられます。外ならばウインタースポーツから水関連のレジャーなど、使える場所を選ばないという意味では、防水の意義は、フィーチャーフォン以上に大きいのでは、と考えています。

 カメラも12メガと、今冬の他社スマートフォンに比べ、もっとも高解像度なものを搭載しています。ここもセールスポイントになるかと思います。

 全体のサイズとしては、もうちょっと小さいように、という声もありますが、しかし大画面が重要だと考えました。フルタッチなので、物理サイズを小さくすると、使い勝手が悪くなってしまいます。解像度だけでなく大きさにこだわり、4インチのフルワイドVGA液晶を搭載しました。

 動画関連では、「モバイルレグザエンジン3.0」を搭載しました。東芝のテレビで培った超解像技術により、画素の荒い動画も、美しく再生することができます。ただワンセグを綺麗にするだけでなく、YouTubeやビデオプレーヤーなどでも超解像技術が働きます。ここも大きな強みかと思います。

――今回はAndroid 2.1での発売ですが、春には2.2へのアップデートを準備されていますね。

吉崎氏
 そのような予定になっています。

影長氏
 苦労も多いポイントですが、しかしスマートフォンであれば最新のOSを使いたい、というところもあるかと思いますので、ここは頑張らないといけないと考えています。

 今回のモデルではワンセグやおサイフケータイなど、標準Androidにはないセキュリティを守らないといけない部分があるので、そういったところをバージョンアップするのは大変な面もあります。しかし今後の展開も考えると、やっていかなければいけないポイントです。

――今回は「REGZA」ということで東芝色が強いですが、今後は富士通東芝として、たとえば、らくらくホンなど、富士通のテイストも入ってくるのでしょうか。

影長氏
 現時点ではなんともいえませんが、そういった可能性はあると思います。らくらくホン系だけではない使い勝手の部分や、富士通の得意なセンサーを使った機能、コンパクトな防水端末を作る技術を含め、東芝の資産と合わせてパッケージングすれば、魅力的な製品になると考えています。

――逆に今後もREGZA Phoneは登場するのでしょうか。

影長氏
 そういった方向で検討しています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/12/8 11:34