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ドコモのLTE「Xi」が12月24日サービスイン

担当者に聞く「Xi」のこれから


 NTTドコモが12月24日、LTE方式を採用した新サービス「Xi(クロッシィ)」の提供を開始する。

 LTEとは、Long Term Evolution、つまり“長期的な進化”という言葉の略称であり、3GPPという業界団体により、現行の3G方式を発展させ、標準化された規格だ。第2世代(2G)、第3世代(3G)に続き、日本では“3.9G”として扱われるLTE方式を、国内で初めて提供するドコモは、どのような考えで舵取りしていくのか。

 同社経営企画部 経営企画担当課長の大井達郎氏に、その特徴や料金・エリアの考え方などを聞いた。

まずは高速性をアピール

――LTE方式を採用した「Xi」ですが、発表会では“高速”“大容量”“低遅延”という3点が特徴と紹介されましたが、エンドユーザーに対して、まず打ち出していく訴求点は何でしょうか。

 データ通信端末を提供する開始当初は、まず高速性が一番の訴求ポイントになるでしょう。3つの特徴を挙げていますが、その中でも、高速性というのは一番わかりやすいと思います。低遅延については、ハンドセット(音声端末)が登場し、そこで利用できる、低遅延の特徴を活かしたアプリケーションとともに訴求したいと考えています。

ドコモの大井氏

――LTEがもたらす特徴として、現時点ではわかりにくい“低遅延”“大容量”といった部分を含めて、今回メッセージを出したわけですが、たとえば低遅延という特徴がどういったメリットをもたらすか、現時点でどういったものを想定しているのでしょうか。

 データ端末だけが「Xi」の全てではありません。将来的には、高速性以外の特徴も十分体験できるようになる、ということですね。低遅延の活用として、端末とネットワークのシームレスな連携が進むと考えています。いわゆるクラウドサービスですね。また同時翻訳、AR(拡張現実)を使った電子教材なども想定できると思います。LTEの導入自体は、技術競争という側面からスタートした部分もありますが、サービスの側面についてもクラウドとの親和性、といった概念が当初から想定されていました。

――こうした新しい規格のサービスについて、ドコモではFOMA立ち上げに時間がかかった、という過去があります。これまでも山田(隆持)社長をはじめ、御社のキーパーソンから「世界の先頭グループでLTEを導入する」という発言がありました。

 国内では最先頭という形になりますが、既に海外でLTEによるサービスを提供する事業者さんも存在していますし、その中で先頭グループとして展開する形になっていると思います。FOMA初期の教訓としては、先頭を行きすぎて、他社と違う規格になった、ということがあり、装置の価格も安くならなかった、といった点があります。

端末について

――「Xi」対応端末として、データ通信端末2機種が発表されました。FOMA立ち上げの際も、HSDPAサービス開始のときもハンドセットがまず投入されていました。こうした新技術のサービスがデータ通信端末から、というのは、かつてと比べると大きな変化に思えます。当時と市場の状況は大きく違いますが、そのあたりはどのように考えているのでしょうか。

 (当初にデータ端末を投入するのは)やはり、現在、LTEによるサービスが最も求められているのは、パソコンによるデータ通信市場だと考えているからです。FOMA導入時との大きな違いは市場の状況です。現在は成熟した市場ということで、LTEは必要とされるところへ、着実に展開する形を考えていましたので、ある程度、自然な流れかもしれません。

――「何としても最初はハンドセット」という議論は、あまりなかったのでしょうか。

 そうですね。ただ、ハンドセットへの需要は大きいと思いますので、早期に提供できるよう準備を進めたいと思います。

――富士通東芝とLGという2社による端末が第1弾となります。海外でのLTEの導入の動きは影響していないのでしょうか。

 通信サービスとして、「Xi」で打ち出している性能は、十分アピールする力があるとは思います。この2社さんの端末、というのは、このタイミングで端末を用意していただけるメーカーさんだったというところです。

――W-CDMAとのデュアルモード、というのも現在では当然と受け止められていますが、過去と比較すると、新たな取り組みですね。まずはどこでも使えることが必須と判断されたのでしょうか。

 はい、FOMAのときの経験を活かすと言いますか、高速性を体験できることも訴求点の1つですが、サービス提供エリアを充実させないと満足していただけないと思います。

人口カバー率が示すエリア展開の考え方

今後の投資額とエリア展開の予定(ドコモ第2四半期決算 説明会資料より)

――11月8日の発表会で、エリア展開についても明らかになりました。まず東名阪、次いで県庁所在地、という展開は、定石と言える形ですが、人口カバー率の進捗予定を見ると、他社よりも遅いペースに感じられます。実際はどのようにエリア展開について考えているのでしょうか。

 人口カバー率は、市区町村の役所をエリア化することで、その市区町村がエリアになった、と仮定する指標の1つです。そのため、必ずしも実際のエリア展開を正確に反映するものではないのですが、ドコモとしては「ニーズの高いエリアに対して展開する」という考えです。ただ、その色がかなり“強く出た”という計画になっています。この投資額、基地局の展開でこの人口カバー率というのは、ニーズが高いところを重視する計画だからです。

――LTEの技術要素、用いる周波数帯の影響というよりも、ドコモとして高トラフィックエリアを重点的にカバーする、ということですか。数字で見るとマイナスの影響があるかもしれませんが、ビル内や地下街のカバーを早期に行う方針ということですね。

 はい、そうです。

――利用できるようになる、具体的な場所としてはビル内、地下街というところでしょうか。

 空港や主要駅といった場所です。パソコンによるデータ通信を外出先で利用するような場所は、早期に利用できるようにしていきます。

――最近モバイルWi-Fiルーターも人気の商品になってきたところで、ドコモでも来年度前半に投入する方針を明らかにしていますが、「PCデータ通信を前提にしたエリア展開」という考え方は、やや心許なく思えます。

 空港・主要駅のほかでは、イベントでよく利用される主要施設、ホテルといった場所も早期にカバーするエリアです。現在明らかにしているエリア拡充予定のうち、開始直後に展開する場所の優先度は、どれも甲乙つけがたく、いずれも重要な場所です。主要施設での展開と並行して、面的にもエリアを拡充していきます。

――エリア拡充については、当初の計画を前倒ししたことも明らかにされていますが、そう判断したのはなぜでしょうか。

 当初の計画を打ち出したときの状況と比べ、現在は環境が変化して、ニーズがより高くなっていると考え、前倒しすることにしたのです。トラフィック増の主要因は、パソコンでのデータ通信ですね。

まずはFOMAと同等の料金で

――「Xi」の契約をしたのにそのエリアで利用できないじゃないか、とユーザーから評価される可能性について、不安はないのでしょうか。

 不安はあります。ですので、県庁所在地級都市にエリア展開されるまでの料金施策として、2012年4月末まで上限4935円という形にしました。

――そのキャンペーンで提供される料金体系ですが、安価にしているという点が打ち出される一方、通常のプランとして示されたプランは利用しようとすれば上限なしで利用できる、という形になっている点が特徴的です。料金上限の考え方について教えてください。

 利用の公平性という観点ですね。かなり少数のユーザーがトラフィックのかなりの部分を占め、よく利用される方とそうではない方と間で格差が出ているのです。そこへの対策として、ですね。

11月8日の発表会で示された料金と、キャンペーン価格

――どの程度、ヘビーユーザーが占めているのでしょうか。

 発表会では「(第一段階の上限である)5GB以内の利用は、FOMAユーザーの99.6%」と案内しましたが、ほとんどの方は5GBも通信していないという形です。

――ただ、現在のFOMAと、高速化するLTEで、その比較はどの程度意味をなすのか、という疑問があります。

 確かにそうです。未来永劫「99.6%の方が5GB以内」とは考えていません。ただ、注意深く動向を見ながら、基準値を必要に応じて変更していきたいですね。

――キャンペーンが2年間、ということは、そういった状況が今後2年間、手を付けないことになるのでしょうか。

 当面は、このキャンペーンの料金プランでいかせていただき、利用動向や満足度といったところを確認したいです。

――ただ、いつまで様子を見るのか、という疑問も抱いてしまいます。

 そうですね……キャンペーン期間が2年間としたのは、ユーザーの動向を見るという意味もありますが、エリア拡充スケジュールも大きな要因です。まずは県庁所在地級都市にエリア展開できるまでは、FOMAと同じ水準で提供しなければいけないのではないか、と考えたわけです。

――なるほど。先の話になりますが、エリア拡充後の料金については、どのように議論されているのでしょうか。新サービス、あるいは高速なサービスの料金は、ある程度高くなるのかなと思ってしまいます。現在も64Kの通信サービスは、一段低い料金になっています。

 料金については社内で議論しても難しいところがあります。やはり競合他社の動向次第というところが大きいですから、先を見た検討ができない部分があります。ただ、料金水準だけではなく、ネットワークの利用やトラフィック増を押さえた想定はある程度しながら、検討しなければいけないですね。

――LTEの料金に限らない話かもしれませんが、多彩な通信対応機器の登場など、「他社との競争」以外の要因は、どう見ているのでしょう。

 ハンドセットやデータ端末だけではなく、タブレットのような端末が既に出てきていますし、全く従来と概念が違う端末に通信モジュールが組み込まれることもあるでしょう。それらに対して1つ1つ、料金プランを用意するというのは、混乱を招いてしまう可能性もありますので、もっとシンプルな概念で料金を組む必要があるのではないか、という課題はあります。ただ、具体的な施策までは詰めていないですね。

通信制御やLTE対応ケータイの音声通話について

――300万パケットの利用で通信制御の対象に、という現状のルールが、LTEでも適用されるとのことですが、そのあたりはどのように考えているのでしょうか。

 通信制御という仕組みを取り入れているのは、ネットワークの安定性を確保するためです。全てのユーザーが安心して使うためには、どうしても制御は必要になります。現状から「3日で300万」というしきい値は設けていますが、今後もずっとそうか、といえば、それは違います。今後も適宜検討していくことになります。

 ただ、制限対象になれば翌日必ず制限されるのではなく、混雑する場所で利用する場合に制御する、という形です。

――まずはデータ通信端末からですが、ニーズを掘り起こすというか、より多くの一般層に浸透するには、ハンドセットから、ということでしょうか。

 はい、データ通信はある一定のビジネスシーンなどでの利用かなと考えています。

――そうしたハンドセットでは、パケット通信だけLTE経由ということになるのでしょうか。それとも音声通話まで担うのでしょうか。

 いわゆるVoIPは検討中ですね。最初は現行のFOMAネットワークを利用します。

――海外では、TDD版LTEの導入を検討する事業者も存在しますが、端末への影響はどう見ていますか?

 1つの方式にまとまることが理想なのかもしれませんが、TDD版といえLTEですので、ネットワーク装置の価格低減に繋がるのかもしれません。

 端末については、デュアル対応ということになるのではないでしょうか。そのあたりは、うまくやっていかなければ、パイを拡げて端末を安く確保、ということに繋がらないでしょう。ただ、そういった点は現在の計画にはまだ反映されていません。

――LTEの国際ローミングはどうでしょうか。

 開始当初は、3GとGSMでローミングすることになりますが、LTEでもローミングを実現したいと考えています。LTEに賛同する海外オペレーターさんはかなり存在しますので、いずれは実現すると思います。ただ、装置の価格低減という観点もありますし、サービスレベルの違いという観点もあります。ローミング先でも日本国内と同じようなサービスレベルを維持して提供する、ということは実現したいです。

――なるほど。ありがとうございました。

 



(関口 聖)

2010/12/10 12:42