「GALAXY S II」担当者インタビュー

デュアルコアCPU搭載で快適操作を目指した2代目


 6月23日にNTTドコモから発売予定のサムスンの「GALAXY S II」は、韓国では発売後3日間で10万台を販売、33日後には100万台を突破、グローバルでは5~6月で300万台を受注したという大人気モデルである。日本向けの端末では、デュアルコアの1.2GHzの自社製CPUを搭載し、ワンセグやインカメラを新たにサポートしている。さらに、今回から純正のバッテリー内蔵ジャケットを発売するなど、周辺機器の提供にも力を注いでいるのが特徴で、GALAXY Sに続いてヒットを予感させる仕上がりだ。

 この「GALAXY S II」の特徴やこだわった点について、サムスンテレコムジャパン 端末営業部 部長の呉昌珉(オウ チャンミン)氏と、端末営業パートの次長である阿部崇氏に伺った。

サムスンテレコムジャパン 端末営業部 部長の呉昌珉氏

――今日は「GALAXY S II」についてお伺いします。すでに韓国やヨーロッパの反響がすごいようですが、あまりの人気で日本への出荷が遅れるなんてことはありませんよね(笑)。

呉氏
 いえいえ、それはありません。日本向けはプライオリティNo.1で生産してますのでご安心ください(笑)。

――それではまず、「GALAXY S II」の特徴を教えてください。

阿部氏
 大きく3つあります。1つめはGALAXY Sでも好評だったSUPER AMOLEDの有機ELディスプレイが進化して、SUPER AMOLED Plusになり、さらに鮮やかさと細やかさがアップしたことです。

 2つめは、今回の夏モデルでは唯一になると思うんですけれども、デュアルコアの1.2GHzのCPUを搭載したことですね。これによって、アプリケーションや動画の立ち上げがものすごく早くなっています。毎日使うものだけに、お客さまが遅さによるストレスを持つことなく満足いただけると思っています。OSもAndroid 2.3になっているので、ホーム画面の一覧表示方法がより簡単になり、サクサクと速く動きます。

 3つめが、バッテリーをパワーアップしたことです。今回Androidのバージョンが2.3ということで、比較的省電力に向いたものにはなっているんですが、バッテリーも1500から1650mAにアップさせました。スマートフォンへの不満として、バッテリーが持たないという話がありますが、その不満も解消されると思っています。加えて、サムスンブランドのオプション品として、ジャケットタイプの外付けバッテリーも、ドコモショップでお求めいただけるようにしておりますので、電池への不安は一気に解消されるものと思っています。

 そのほかには、いくつかUIを新しくしています。センサー系がしっかりしたこともあって、たとえば、傾けることでWebブラウザとかを拡大縮小するというようなことも可能です。今回は、ディスプレイを持ったまま前後に動かすことで、好きな大きさに変えられるなんていうUIも入れていますので、楽しみながら便利に使っていただけるんじゃないかなと思っています。

サムスンテレコムジャパン 端末営業パート 次長の阿部崇氏

――今回からワンセグに対応されています。スマートフォンにおいて海外メーカーさんが対応されることは珍しいと思うんですが、それだけワンセグに対するニーズが高かったということでしょうか。

阿部氏
 確かにもともとワンセグに対するニーズはありましたが、3月11日の震災を境に、ワンセグでリアルタイムに情報をとりたいというニーズがより高まったといえますね。もう1つ、ベースモデルの点でスムーズに載せられる環境だったことが挙げられます。

 GALAXY Sには大きく分けて3つのベースモデルがあるんです。1つはヨーロッパ等で売っているモデル、もう1つは韓国、日本もその派生になるんですけれども、最後はそれ以外の3つです。今回ベースとなったのが、韓国で発売されているモデルですが、この韓国版は、実はDMB(Digital Multimedia Broadcasting)という韓国のテレビのチューナーとアンテナを搭載しています。ですので、日本向けにカスタマイズすることで、スムーズにワンセグを載せることができたと思っています。NFCに関しては、まだまだ日本でNFCに対応したインフラが整っていないということもありますので、今回は搭載しませんでした。

――ワンセグに対応する一方でおサイフケータイには対応していませんが、搭載できない理由として、何か技術的なハードル、もしくはそれ以外の要因があるのでしょうか。

呉氏
 技術的なハードルは一切ありません。他の事業者さん向けに出している端末にはFeliCaが載っていますので、技術的な資産はすでに確保しています。ここでポイントになるのが、スマートフォンを求めるお客様のニーズですね。お客様が実際に何を求めていらっしゃるかに関して、弊社なりの解析をしています。もちろんその国その国の独特のサービス、日本の場合はFeliCaだったり、そういうサービスはあるんですが、今、実際スマートフォンを求めていらっしゃるお客様は、スピード、バッテリーに加えて、最新のOSの環境を求める声が常に大きいと見ています。常に最新のOS環境をお客様のところにお届けするためには、OSはなるべくスタンダードの方がいいですね。その環境を維持するというのは非常に重要なポイントだと思っています。その意味では、第三者のスピードと頼らないといけないというのは、結構大きなリスクだと思っています。

GALAXY S II(左)とGALAXY S(右)

 

――CPUですが、バルセロナでの発表時には1GHzでしたが、1.2GHzにクロップアップしています。当然速ければ速いほどユーザーはうれしいのですが、特別な変更理由があったのでしょうか。

呉氏
 日本は、非常にユーザビリティにこだわるお客様が多いマーケットなんです。ユーザビリティにもいろいろありますが、UIがどのような環境なのか、どういう風にできているのか、メールの入力のしやすさはどうなのかなどがあるんですが、特に反応の速さ、つまりサクサク感を非常に重視してるとみてます。GALAXY Sを出したあと、日本のお客様のニーズを調査した結果を見ると、全体のサイズ感、軽さ、反応の速さに非常に高い評価をいただいてました。ですので、日本のお客様にもっとご満足いただくために、求められるところのさらに一歩先のスペックを、とした結果、最先端の1.2GHzを採用することに決まりました。

――デュアルコアのメリットとしてよく言われるのは省電力やスピードなどですが、デュアルコアの採用理由は何でしょうか。

阿部氏
 反応スピードの速さをさらに伸ばすのはもちろんですが、CPU自体もサムスンのグループで作っているものですので、CPUも含めて、最新のハードウェアを、そのタイミングでいいものを選べる環境にあったことが挙げられます。

呉氏
 スマートフォンは、手のひらのPCという見方ができると思います。そう考えたとき、こんな小さなものでもPC以上のことができるようにするというのは、メーカーとしてのミッションだと考えています。ただ、小さいので、バッテリーの容量には限界があります。限られた容量の中で、最大のことができるような環境を提供するためには、やはり省エネで、速いものを選ばなくてはいけないんです。そういう観点からのデュアルコアですね。そういうものをいち早く提供するのは弊社のミッションとして考えています。実際、消費電力は20%以上削減できていますので、実際にお使いいただけば、バッテリーの持ちがさらに良くなっていることを実感いただけると思います。

――自社のCPUを採用されたということですが、一般的なSnapdragonではなく、自社製を選んだのはなぜですか。

呉氏
 自由度の限界、価格、そして消費電力の3点から自社CPUにしました。SnapdragonはベースバンドとCPUが1チップになっていますが、CPUの変化やベースバンドの進化というのは、いつもバランスよくいっているものじゃないので、どういう進化をしていても、一番最適なものを作るには、やはり分離したほうがいいという判断です。開発スピードや効率にも影響しますし、省エネも意識したいですし、いろんなバリエーションで、自由度の高いものが作れますので。実際にGALAXY S IIと他の端末を比較すると、数多くの項目でワールドベストが得られています。

――今回は新たにインカメラを搭載されました。

阿部氏
 GALAXY Sは、グローバルモデルにはインカメラがあったんですが、日本版は諸事情から搭載しなかったという経緯がありました。しかし日本は女性が自分撮りをするという使い方もあり、インカメラへのニーズは高かったんですね。そこで、今回はグローバル同様に載せていこうということになりました。

オプション品も純正品が登場

――先ほどもご紹介いただいたジャケット型のバッテリーとか、今回オプション品を純正で揃えられているようですが、そういう要望が結構あったんでしょうか?

呉氏
 そうですね。GALAXY Sのときは、お客様が何を求めているのか、まだよくわかりませんでしたし、ドコモさんと弊社の間で十分準備する時間の余裕がありませんでした。それで、弊社の製品をお金を出して買っていただいたお客様が、満足できない他の要素を、海外から個人輸入をするなどして、ご自分のリスクでカバーしなければいけないということを、非常に心苦しく思っていました。

 GALAXY Sを出してみて、具体的なニーズを少しずつ理解できるようになりましたから、できる限り準備していきましょうということになり、ドコモさんと一緒にソリューションの準備を進めさせていただいております。なかでも、やはりバッテリーに対する要望は非常に大きかったので、外さずにそのまま使えるアクセサリーとして用意しました。バッテリーって、物としては危ないじゃないですか。それを、お客様のリスクで、他のバッテリーや、あるいは似たようなものをお使いくださいとは、メーカーとして言える話ではないと思いまして。やはり弊社が責任を持てるものを提供すべきだと思いますね。

 しかもこの軽さで1300mAですから、我ながらすごいと思います(笑)。

阿部氏
 バッテリー自体、単体で充電する方法というのがないので、このアクセサリーを使うと単体でも充電できるし、つけた状態でも両方とも充電できるというよさがありますよ。会社として、アクセサリー類をきちんとやっていきましょう、というスタンスが、最近非常に明確になってきたなと思いますね。

――今回外部接続端子の位置が端末下部になっています。下にあることで、このようなオプション品を作りやすい環境にはなっているのかなと思うんですが、それは意識されたことなのでしょうか。

呉氏
 日本の端末は下が多いですよね。アクセサリーも、スタンドを含めて結構豊富にあります。それはやはり下が有利だからだと思います。最優先で下に作ったわけではないんですが、全体的なプライオリティのバランスをとってみたら、下になりました。下になったおかげで、アクセサリーのオペレーションが非常に増えてきているのは事実です。

 弊社には、公式パートナーのアクセサリーメーカーさんが3社いらっしゃいます。弊社がデザインをしたり、あるいは3社がデザインしたものを、サムスンとして品質をチェックするんですね。この3社の場合は、外部接続端子が下になったことによって、彼らの製品のバリエーションも一緒に増えてきてます。発売日にあわせて、その3社の製品も一緒に紹介させていただきたいと思っています。

ジャケット型のバッテリー

 

――これはおもしろいジャケットですね。これは背面のパネルをまるごと交換すると、液晶カバーまでついた手帳タイプに早変わり。まさに着せ替えですよね。

呉氏
 これは韓国向けモデル用なので、ちょっとパネルの形状が違いますが、雰囲気は確かめられますね。おしゃれなだけでなく、不思議なことに、液晶カバーが追加されているのに、取り付けて見るとオリジナルの状態より小さく見えるという効果もあるんです。これは特許を取っているので、この会社でしか作れないんですよ。日本でも販売するようなので、デモ機と一緒に展示する方向で考えています。

 

――この三角形のクレードルは、かつてないほどデザインに凝っていて、どの向きでも使えそうで非常に便利ですね。販売は日本と韓国のみなんですか?

呉氏
 販売はワールドワイドです。

阿部氏
 今までは逆に「置き台ないの?」と言われるケースが多かったので、実はこういうのもできますという感じで用意してみました。これは「GALAXY S II」本体を縦にして置いてもいいし、ワンセグの視聴時には横にできますし、アンテナの邪魔にもなりませんから非常に便利ですよ。アンプは内蔵していませんが、背面にスピーカーの穴があるので、増幅されて大きくは聞こえるようになっています。今までのFOMAの置き台というと、純粋な充電用が多かったんですが、これは家において、ちょっと使うときには便利なものになってるような気はしますね。安定感もあります。

縦・横どちらにも対応する三角形のクレードル

 

日本や女性を意識したところも

――ソフトウェアの面で日本向けにチューニングした点や、カスタマイズされたところはありますか。

阿部氏
 極力他の機種にあってサムスンにはないよね、というものはないようにしたいなと思っていますし、ドコモさんのサービスや、UIは一通りカバーはしてます。それから、GALAXY Sにも入っていますが、メール受信やSNSのアップデートがプッシュで受けられる「Social Hub」という機能がプレミアムエディションに進化しました。日本向けにはmixiやFacebookといったSNSはサポートしていますので、楽しんでいただけると思います。

右がGALAXY S II

――特に女性ユーザーを意識した点はありますか。

呉氏
 この軽さですね。たとえばGALAXY Sと「GALAXY S II」を持ってみたとき、どちらが軽いと思います? 実は「GALAXY S II」はディスプレイが大きくなっている分、全体のサイズは大きくなっていて、重さとしては2gではありますが、重いんですよ。でも実際持ってみると、GALAXY Sより「GALAXY S II」のほうが軽く感じるはずです。

――本当ですね。これは驚きました。

呉氏
 端末のサイズが大きくなると、女性が使うには不便さを感じてしまうこともありますが、このディスプレイの大きさが与えるベネフィットは大きいので、それは諦められません。ここで、女性に何を提供するかというと「軽さ」です。ゆえに、軽く感じていただくための工夫は、会社としてかなり力を注ぎました。

 GALAXY Sも、ベストを尽くしてあの軽さを実現していますが、「GALAXY S II」では、それ以上にがんばって、軽く感じるような部品の配置や、全体のバランスを考えて作っています。それでいて本体は1mm以上薄くなって、液晶の鮮明度は4倍くらいアップしていますから、特に本などを見ると綺麗に見えますよ。おまけにバッテリーは1500mAから1650mAに10%アップしています。なのに軽く感じる。これは絶対手に取って感じていただきたい部分ですね。

阿部氏
 あとは、やはりインカメラでしょうか。アウトカメラにはフラッシュも載せているので、結果的に写真を撮るのがお好きな女性のみなさんに喜んでいただけるようになったかなと思います。

六本木ヒルズに「GALAXY CAFE」ふたたび

――手に取るというお話しがありましたが、ユーザーが自由に触れるようなイベントは企画されていますか。

阿部氏
 今後の予定ですが、6月10日からドコモショップで予約を開始し、23日に発売になります。予約受付の日にはデモ機は展示用に並べますが、それとは別に、13日~28日の間、また六本木ヒルズに「GALAXY CAFE」を設けて、タッチアンドトライできるようにする予定です。説明員も立ちますので、そこで良さを分かったうえでご購入いただけたらと思います。このようなタッチアンドトライの機会は、これからはもっと増やしていきたいと思いますね。

呉氏
 今回は、サービスの面でも、サムスンとして遠慮なく日本のお客様に紹介していきましょうというスタンスです。GALAXY Sのときはかなり遠慮して、あまり「SAMSUNG Apps」をPRしませんでしたが(笑)、今回は「SAMSUNG Apps」において、グローバルなアプリで、日本でも問題なくご利用いただけるものは、なるべく積極的に紹介していく予定です。「GALAXY CAFE」でもアプリケーションの紹介は行います。

 実は、「SAMSUNG Apps」はアクセスしていただくと分かるように、一切お金をいただいていません。すべて無料なんです。事業者さんをサポートする側面で、うちがサポートできるものであれば一生懸命やります。利害関係がないところで、コンテンツプロバイダ、あるいはお客様のためになるものであれば、弊社は本当にフリーに掲載することができるので、その辺りの貢献も少しはやっていきたいと思っています。

――最後に、読者やユーザーに一言お願いします。

阿部氏
 内覧会を行ったとき、お客様に一番驚かれたのが、実はGoogleマップでした。拡大縮小も移動も全くストレスなく、スピーディに動かせるんです。今、Googleマップ自体も機能アップしていますから、それと併せてぜひ「GALAXY S II」の性能を体感していただきたいと思っています。HSPA(High Speed Packet Access)の下り14Mbpsにも対応していますので、通信上のメリットも受けられ、なおかつ端末そのものが速い。本当に困ることは少ないと思います。ぜひ直接ご確認いただきたいと思います。

呉氏
 そして、ディスプレイの綺麗さも見てください。搭載しているカメラは8メガです。12メガや16メガモデルに劣るんじゃないかと思われがちなんですが、まったくそんなことはありません。撮影したときの画像がどれくらい綺麗にみえるのかというところをぜひご覧いただきたいと 思っております。動画の臨場感もすばらしいですから。

――本日はどうもありがとうございました。

 




(すずまり)

2011/6/15 12:34