「MEDIAS WP N-06C」開発者インタビュー

防水になっても超スリムなAndroidスマートフォン


N-06C

 NECは今夏、ドコモ向けにAndroid端末の「MEDIAS WP N-06C」を投入する。N-06Cは春モデル「MEDIAS N-04C」の防水バージョンで、引き続きワンセグ・おサイフケータイ・赤外線通信に対応する。通常、防水端末は構造的にサイズが大きくなりがちだが、N-06Cの場合、ベースモデルとほとんど変わらないスリムなデザインを維持している。また、カラーバリエーションにプレミアムロゼが用意されるなど、非常に女性向けにシフトしているのも特徴だ。

 今回はこのN-06Cについて、開発を担当したNECカシオモバイルコミュニケーションズのNTTドコモ事業本部 商品企画グループ プロジェクトマネージャーの有田行男氏、主任の清水秀人氏、事業戦略本部 ブランド&プロモーショングループ マネージャーの有満陽子氏に聞いた。

――まず製品の概要からご説明をお願いします。

新アプリのひとつ、「Topics」

清水氏
 前モデルMEDIAS N-04Cと比較すると、薄さ7.9mmと、0.2mm増しただけで防水になりました。OSは最新のAndroid 2.3を搭載し、前機種で800MHzだったCPUは1GHzへとアップして、さらにタッチパネルの操作感もブラッシュアップしています。カラーバリエーションとしても、スマートフォンというと白黒基調が多いところですが、カラフルな色を選び、amadanaとのコラボモデルも用意しました。

 アプリとしては、SNS情報を一覧する「Topics」というものと、自分のライフログを自動でダイアリーのようにまとめてくれる「Days」、あと「MEDIAS WELLNESS」などを搭載しています。日本語入力面では、ATOKに加え、NECのケータイの特徴でもあった「T9」にも対応しています。

――カラーバリエーション的に女性らしさが見えますが、今回のターゲット層は?

清水氏

清水氏
 メインターゲットは若い女性になります。もちろん女性だけというわけではありません。これまでのスマートフォンというと、アーリーアダプターや男性向けでしたが、今回はより広い、一般的なケータイユーザーをターゲットとするべく、まず女性にアピールして周知をしていきたい、という思いがあります。

――この3色のカラーリングで黒がないなどは、スマートフォンのラインナップとしてはかなり珍しいですね。

清水氏
 カラーバリエーションについては、前モデルとのバランスも考えて決めている面もあります。

N-06C(右)と前モデルN-04C(左)

――タッチパネルの感度が良くなった、とのことですが、何が変わったのでしょうか。

清水氏
 実際にN-04CとN-06Cを並べて、両方を同じNECカシオのホーム画面にしてスクロールさせてみるとわかりますが、指の追従感が向上しています。両機種ともにタッチパネルのハードウェアは同じなのですが、N-06Cではソフトウェアのチューニングにより、操作感を高めています。

――単純にOSのバージョンアップだけでは操作性は向上しないのでしょうか?

清水氏
 結果的にそうでしたね。タッチパネルは難しいと感じています。理想は、ユーザーが「押した」というポイントが反応することなのですが、センサーの反応とユーザーが押したと思っている場所は、人によって違ったりします。センサーの数値では円弧で描いているとき、実際にはどのように操作されているのか、そういった感性の部分に沿うようにチューニングしています。

――OS以外の部分で、そうしたチューニング面や新しいアプリなど、いろいろな取り組みをなされているようですが、このあたりはN-04Cのソフトウェアアップデートとして提供される可能性はあるのでしょうか?

清水氏
 提供できるものもあると思うのですが、どれを提供するかは検討中です。可能な限りアップデートで、というパソコン的な対応の方が喜んでいただけるとは思いますが、ハードウェアの違いだけでなく、コストや差別化の問題もあります。

――電話帳はグループ分けが使いやすかったりSNS連携するなど、便利な機能もありますが、まだまだの部分もあります。こういったところも今後、アップデートで改善されていくと良いな、と思うのですが。

有田氏
 問題点は認識しているのですが、どこまで手を入れるかの判断は難しいと思っています。いったん作り込むと、その端末の完成度は高まりますが、OSの変更によって、次の機種につなげられるかわからないところが、悩ましいところです。

防水ということもあり、卓上ホルダの充電に対応

――N-04CとN-06Cを比較すると、ハードウェア面ではCPUが高速化されていますが、そのほかの部分ではどう違っているのでしょうか。

有田氏
 基本構造は変わっていません。N-04CとN-06Cはほぼ同時に開発していたので、内部構造としてはほぼ同じになっています。N-06Cは防水仕様となっているので、パッキンなどが追加されていて、N-04Cと同じくサイドフレームによって固定する構造も、より高い精度が必要になっています。

――防水にするにあたって、この薄さというのは難しそうですね。

有田氏
 フィーチャーフォンでも同じなのですが、防水パッキンを圧着させるために、複数のビス(ネジ)で均等に締め付けます。ビスをたくさん使えば楽なんですが、そうすると実装面積が必要になり、小型化薄型化の障害になります。N-06Cではサイドフレームで固定することで、ビスを最小限としています。

――ホームキーやメニューキーは、N-04Cではハードウェアキーでしたが、N-06Cではタッチセンサーになっていますが、これは防水のためですか?

有田氏
 N-04Cではキーの位置が下すぎて押しにくいという意見があったので、よりディスプレイに近づけるために一体化させた、という理由もあります。

右がN-06C、左がN-04C

――N-04CとN-06Cを並べてみると、ほとんど厚みやサイズ感が違いません。防水を実現させながら、どうしてこうできたのでしょうか。

有田氏
 逆に言うと、N-06Cが防水で7.9mm、というのを見越してN-04Cの7.7mmを作った、という面もあります。まず防水にしても7mm台にしたいよね、と目標値を設定し、防水のマージンをとらないといけないので、そのベースモデルとなるN-04Cを7.7mmとしています。

――防水ということもありますが、卓上ホルダで充電できるというのは良いですね。

有田氏
 ありがとうございます。

――プリインストールアプリも充実していますね。「Days」というアプリ、ライフログを自動で記録ということですが、どういったものなのでしょうか。

有田氏
 どのような人と連絡を取ったか、とか、カレンダーに記入されていた予定とか、撮った写真やメールでやりとりされた写真などを自動でまとめ、日記帳のように見ることができます。データが貯まればスライドショーとして見ることも可能です。

MEDIAS WELLNESS

――「MEDIAS WELLNESS」というアプリはどのようなものなのでしょうか。

有満氏
 健康やダイエットをサポートするサービスになります。自分の食事や運動などのデータを登録してそれをもとに診断します。3人の著名なトレーナーをたてていて、それぞれのコースを選ぶことができます。ヘルシーレシピ情報もあります。カルテをサイトと連動させて評価もできます。MEDIAS WELLNESSはプライムワークスさんの「Karada Manager」をカスタマイズしましたものなので、さまざまな機能が搭載されています。

 N-06Cには歩数計が内蔵されているので、この数値が自動的にアップロードされるようになっています。

――こういった機能、NECカシオ内部で実際に試したりするのでしょうか。

有満氏
 それをMEDIASのポータルサイト、MEDIAS女子部でやります。女性3名、男性1名で「絶対痩せ隊」というのを結成しました。ご期待ください。

――こういった機能はプライベートな情報ではありますが、ソーシャル機能みたいなものはあるのでしょうか。

有満氏

有満氏
 現時点ではありませんが、ダイエットをするときは励まし合うことも効果的なので、そういった要素も重要なカギと考えています。

――これは主に女性向け機能のようですが、男性も使えるのでしょうか。

有満氏
 現時点では女性向けに振っていますが、今後は男性もご利用いただきやすくなるよう、強化したいと思います。ダイエットや健康ではなく、ターザン系の身体作りなど、そういったトレーナーを増やすようなことも検討しています。

――amadanaコラボモデルは、ほかのモデルと違うのでしょうか。

amadanaモデルに付属するケース

有田氏
 アプリなど専用コンテンツを内蔵するほか、オリジナルケースも付属し、販売価格も異なる見込みです。

清水氏
 「Delivery DJ」というオリジナルアプリをプリインストールしています。こちら、amadanaでセレクトした音楽をストリーミングで楽しめるというアプリで、気に入った曲をダウンロード購入することもできます。

有田氏
 音楽を楽しむ感覚も、だいぶ昔と今では変わってきているのかな、と考えました。私の学生時代は、レコードやCDを買ってオムニバスを自分で作ることに意義がありました。しかし今は、選ばれた曲を気軽に聴くことに意義があります。選ぶのが自分でなくても良い、という感覚があるのではないでしょうか。そこで、amadanaブランドがセレクトした曲を聴く、というものが成り立つと考えています。インターネットラジオと同じ仕組みではありますが、そのセレクションに価値がある、という理解です。

 今回のこの取り組みは、まずamadanaとのコラボで開始しましたが、これから拡げていくという発想もあります。たとえばAndroidマーケットに提供する可能性もあります。

――今回、カメラも高速起動が可能になりましたが、こちらはどういった仕組みで実現されているのでしょうか。

有田氏
 ソフトウェアとハードウェアの両面から取り組んでいます。Androidの標準インターフェイスを使うと、なかなか速く起動できないので、ここはNECカシオ独自のチューニングを施しています。

――独自チューニングをすると、OSアップデート時に作り直す必要が出てくるなど、手間がかかるのではないかと思うのですが。

有田氏

有田氏
 カメラの瞬撮には力を入れているので、多少苦労してもやりたいという強い思いがあります。デバイスに依存する部分なので、機種ごとに手を入れないといけないのですが、OSバージョンアップ時にも、このカメラ部分に関しては汗をかいても良いかな、と思っています。

 やはりフィーチャーフォンからスマートフォンに移行し、カメラに対するとらえ方も変わってきていると思います。フィーチャーフォンは画素数一辺倒でしたが、そこから一歩脱却し、日常的に撮れる、ということが重視されるようになりました。そういった意味で、速く撮れる、速く起動する、といったことは重要ですので、今後も力を入れていきたいと思っています。

――今回は普通のCMOSですが、NECカシオのフィーチャーフォンはすべて裏面照射CMOSを採用されています。スマートフォンへの採用の可能性は?

有田氏
 今後は取り組みたいと考えています。

――だいぶ内部構造は苦労されてデザインされているようですが、今回、N-04CとN-06Cとで同じ内部構造となっています。この内部構造は、今後のモデルでも継続して使われるのでしょうか。

有田氏
 技術の進歩により部品の進化があるので、内部構造のパズルは必ず定期的に組み直し、最適化していく必要があります。そのときどきに最適なデザインで出していこうと思います。

――同じNECカシオでは「G'zOne」のスマートフォンが北米でも展開しています。MEDIASの海外展開はどうなのでしょうか。

有田氏
 Androidの世界でのこれまでの流れでは、海外が先行していましたが、いま日本の市場でもパラダイムシフトが起きています。今夏は海外から見ても、日本が追い越したとは言えないかも知れないですが、パラダイムシフトは見えているのではないでしょうか。そしてパラダイムシフトは、一回起きるとすぐに安定するというものではなく、さらに次へと向う、大きな新しい流れになるのだと思います。新しい流れによっては、日本が海外に影響を与えられるようになるのではないでしょうか。

――期待しています。本日はお忙しいところありがとうございました。




(白根 雅彦)

2011/6/21 11:26