気になるケータイの中身

「Yahoo! Phone」を投入するヤフーの狙い


 日本最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」。ソフトバンクモバイルからそのブランド名を冠にしたスマートフォン「Yahoo! Phone」(009SH Y)が発表された。同端末を投入する狙いについて、ヤフー R&D統括本部 開発部長の坂本守隆氏、同じくR&D統括本部の菊地裕信氏に伺った。

「Yahoo! Phone」(009SH Y)

――そもそも、なぜヤフーがこのような端末を出そうと考えたのでしょうか。

坂本氏
 iPhoneと比較すると、Android端末はまだ操作がわかりにくく、そのわかりにくさを解決してあげたい、と考えたのがきっかけでした。スマートフォンを買ったはいいが、使い方がよくわからないというユーザーが本当に多いんです。買ってすぐに使えるというのは、ヤフーのポータルの思想と合致するところですし。

 検討を始めたのは、1年前ぐらいでしょうか。Androidが普及してくるというのはその時点でわかっていたので、きっと戸惑う人が増えていくんだろうな、と予測していました。そこで、ヤフーとしてどういったサービスを提供できるのか、と考えたのが始まりです。

――シャープ製の009SHがベースになっているということですが、どこが違うのでしょうか。

菊地氏
 アプリをダウンロードしなくても買ってすぐに使えるように、専用のホーム画面を設けました。Yahoo!の各種コンテンツを表示できる専用アプリも用意し、基本的にはこれだけで満足できるように作り込んであります。また、一般的な携帯電話のような目的別メニューも初心者向けに用意し、ワンセグ、赤外線通信、カメラといった端末の各種機能の呼び出しも、今まで使っていた端末と同じように行えるようにしてあります。

 009SHとの違いでいうと、ちょっと宣伝みたいになってしまいますが(笑)、Yahoo! Phoneのユーザーであれば、Yahoo!プレミアムの会員費(月額346円)が2年間無料になったり、Yahoo!ショッピングのユーザーランクが2年間ゴールドになったりします。普段からYahoo!のサービスをよく利用される方には本当にお得です。

メニュー画面通常のAndroidのホーム画面

――Yahoo!内でアプリマーケットを運営することもあり得るのでしょうか。

坂本氏
 もちろん、それも検討中です。ポータルとしての役割ということになりますが、ある環境においてよく使われるサービスに対するナビゲーションは持っていないといけないと考えています。

――しかし、Android=Googleと考えると、ライバル関係でもありますよね?

坂本氏
 たしかにそういう側面もありますが、我々はOSに手を出すつもりはありません。端末内にGoogleのサービスが残っているのは、正直、ちょっと気持ち悪いですが(笑)、そこはAndroid端末の一定のレギュレーションを守る形でやっています。Androidに限らず、最近話題のWindows Phoneについても、普及すれば検討することになるでしょう。

(左から)坂本守隆氏と菊地裕信氏

――最近話題のタブレット型端末への対応についてはいかがですか?

坂本氏
 タブレットのサポートは、戦略的に重要だと思っています。ただ、スマートフォンは予想より早く普及したのに対し、タブレットはそれほどでもないという面もあります。最適化したサービスは順次提供していきたいですし、タブレットだから実現できるようなサービスを実現したいですね。

――スマートフォンを取り巻くトレンドとしては、TwitterやFacebookのようなソーシャル系のサービスに勢いを感じます。失礼にあたるかもしれませんが、そこはYahoo!の弱いところですよね。

坂本氏
 我々としては、TwitterやFacebookと直接対決していくつもりはありません。Yahoo!の強みは、生活に密着したところです。「生活インフラ」としてインターネットがあり、地震が起きた時に真っ先にアクセスされるのがYahoo!です。Yahoo!にとっては、そこで使われることが大事で、その分野でマストな存在になれたらと考えています。逆に、生活基盤としてなくてもいいという部分は弱いかもしれません。足りなければ、提携や買収も考えていくでしょう。

サービス一覧画面

――Yahoo! Phoneについて、今後の課題はありますか?

坂本氏

 例えば、Yahoo!オークションなど、Yahoo!のサービスと端末の機能の連携について、端末の機能を全て活かしきれているかというと、そうでもありません。こういう部分は、これからやっていきたいところです。

 また、アプリかHTML5(Webアプリ)かという点では、今はまだ過渡期にありますが、徐々にWebアプリの方にシフトしていかないといけないと考えています。とりわけ、情報系のコンテンツはリアルタイム性を期待されるところがあり、おそらく3年後くらいからアクセルが踏まれることになると見ています。当社でもそこに向けていろいろと仕込んでいきたいと思います。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。




(湯野 康隆)

2011/9/6 11:08