キーパーソン・インタビュー

LTE対応・海外展開など、NECカシオの「MEDIAS」戦略


NECカシオの田村氏
MEDIASのラインナップ

 携帯電話各社から秋冬春モデルが発表され、メーカー各社にもさまざまな動きが見られる。NECカシオモバイルコミュニケーションズでは、MEDIASのブランドを強く打ち出し、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアにスマートフォンを投入し、さらに海外にも事業を拡大させる。今回、秋冬春モデル以降の展開が注目されるNECカシオの代表取締役 執行役員社長の田村義晴氏に「MEDIAS」の戦略について聞いた。

MEDIASのブランド展開、開発サイクル

――今回の秋冬モデルはNブランドのMEDIASのみでした。今後、カシオや日立のブランドはどうなるのでしょうか。

 基本的に他のブランドを排除はしていないんです。G'zOneシリーズでいえば、auさんやベライゾンさんの中でポジションをしっかり確立しているので、継続してブランド展開していければと思います。

 EXILIMというブランドもNTTドコモさん向けに使いましたが、フィーチャーフォン自体の販売数が伸び悩んでいることもあって、売れ行きは残念な結果になっています。カシオのイメージと重なるプロダクトブランドは、今後ともニーズに合わせてやっていけたらと思っています。日立さんのWoooブランドについては、今のところ未定です。排除するつもりはないので、メーカー側の考えというよりも、顧客にどう受けるかということを基点に考えてやっていきたいです。

――MEDIASの開発サイクルですが、我々から見ると春先に登場するモデルがもっとも薄く、夏に少し機能的に肉付けしたモデルが登場し、秋冬でさらにもう一つ機能を足していき、春でまた薄型化するように見えます。

 結果的にそういう風になりましたね(笑)。薄型を追求したのは、テクノロジー・ドライバーというか、そこに向けて全てが作り込めれば、いろいろなバリエーション展開が可能になるはずだと考えたからです。また、せっかく薄さを実現したので、薄いということもお客さんにしっかり訴求していこうと思っています。

第2世代のMEDIAS

――2012年に登場する第2世代のMEDIASというのは、CEATECでも展示していたジャケットなど、必要な機能を付け足していけるような組み合わせのモデルをそう呼ぶんですか。

 第2世代は「MEDIAS PLUS」(ジャケット)というわけでなく、内部の構造やプラットフォームの作りなど総合的な進化をさしています。チップセットの世代変化やクロックスピードの変化、薄型を追求するための技術など総合的なものとなっています。ジャケットは、薄さを核として商品のレンジをあげられないかと試作的にやってきたものでした。それではこれを商品にしたらどうなるのか、ということをビジネスモデルも含めて検討している段階です。おそらく、ジャケットは結果的にではありますが、薄型の第2世代と同時にいろいろ始まるのかなぁと思っています。

――秋冬モデルで、ディスプレイが限りなく5インチに近づいてますが、どこまでいくと見ていますか。

 どうですかね。さまざまなサイズの試作品を作っていますが、5インチはそこそこ大きいですね。ディスプレイを囲む額縁と呼ばれる部分もできるだけそぎ落としていますが、5.0~5.5インチぐらいがマックスかもしれません。

 6インチまでいくともうタブレットに片足つっこんでる感じですよねぇ(笑)。持ち運びという面では、7インチサイズでもぎりぎり胸のポケットに入りますよね。じゃあそれをスマートフォンと呼ぶのかっていうと少し気が引けます。同じ5インチでも、縦横比で長さ方向に逃げるのか、幅方向に逃げるのかというところもあるかもしれません。

LTEとWiMAX

LTEに対応した「MEDIAS LTE N-04D」

――今回、LTE端末が発表されましたが、WiMAXをどう考えていますか。

 WiMAXについても出せるように検討しています。ユーザーニーズがあって、さらに対応モデルが採用されるかどうかということもあるので、時期については申し上げられません。auさんは最終的にLTEにすると言っていますが、WiMAXに注力されています。こうしたタイミングで我々も端末を出す以上、全部WiMAXを入れようと考えています。

――過渡期で中継ぎとなる通信方式にどれだけ開発費を投じられるかというとことが気になります。

 WiMAXもハードもソフトもいくつかコアのテクノロジーがあるので、0から開発するというのではなくそれらを使った上で使いこなしていければと考えています。たとえばWiMAXでも、どれだけ電池を持たせるのかといった部分での開発はあるでしょう。

ハードキー付きスマートフォン

――他社ではテンキー付きなどのハードウェアキー付きのモデルも登場しています。ハードキー付きモデルについてはどうお考えですか?

 実は過去には企画の段階ではそういったモデルも案が出ていて、どこかは明かせませんがキャリアさんにも提案しています。キャリアさんとしても半信半疑のところがあるようで、結果的に提案は商品化されませんでした。

 現在はシャープさんがハードキー付きのモデルを出されていますが、そういったモデルが広がっていくのならば、とくに考えないわけではありません。過去に提案までしているので、やろうとすればすぐできる状態です。

――ユーザーの中に、「折りたたみのN」という記憶があるうちに、そういったスマートフォンが登場すると面白いかもしれませんね。

 そうですね、もう一度検討したいところです。今回フィーチャーフォンとして出す「N-02D」はハイエンドモデルで、フルタッチスクリーンを採用しています。端末OSがオリジナルLinuxなので、ハードウェア的にあの端末にAndroidを入れるってなれば……、たぶん入るだろうね。企画させてみようかな(笑)。

Androidスマートフォンの課題

MEDIAS PP

――Android端末を複数開発してきて、ノウハウもたまってきたところかと思いますが、現状で今もっとも課題と認識されている部分はどこですか。

 やっぱり電池の持ちだと思います。もちろんサクサクと動くといったこともありますが、通常、1台の端末を使っているユーザーが多い中で、そこは慣れの世界かなと思っています。

 不満の最大のポイントは、電池です。今回のラインナップでは、「MEDIAS PP」を投入しますが、MEDIASなのに薄くないという声もあろうかと思います。とにかく、最大の不満点を解消するためには少し厚くなってもいいから大きめの電池を積めと、それだけでなくチューニングすることで他社が同じ電池を搭載した場合でも動作時間が長くなるようにしろと、開発陣に最後の最後まで要求しました。実は最後にポコンと伸びたこともあって、PPの電池容量で630時間というのは使い勝手としても良いものになったかと思います。なかなか数値化しにくい実使用時間の面でも向上しています。

――チューニングというのはソフトウェアのチューニングですか? ソフトならば過去のMEDIASにも展開できるということになるのでしょうか?

 ハードとソフトの両方です。そういったこともあり、ダウンロードで過去のものに入れてもうまくいくというものではありません。申し訳ないですが、そこは今後のモデルで適用させてもらいます。

――OSのバージョンアップについてどうでしょう。

 冬モデルについては、1つか2つ先にバージョンアップできればと考えています。我々としては、動く限りは提供していきたいところですが、ハードウェアが進化に追いつかない場合もあります。

スマートフォンとフィーチャーフォン

――Androidとフィーチャーフォンとのバランスを今後どうとっていかれますか。

 僕ら供給側が考えている以上に、高機能を求めるユーザーは今更フィーチャーフォンの高機能モデルを買い換えるよりは、スマートフォンに買い換えたいというのが多いんじゃないですかね。もちろんそうじゃない人もいると思いますが。

 フィーチャーフォンに求められているのは、必要十分な機能で、丈夫でバッテリーが長持ちして、使い勝手がいいものかと思います。そういうニーズをN-03Dでとっていきたいですね。市場の中で数として残っていくフィーチャーフォンはそういうモデルだろうなと思います。価格が手ごろで我々も原価をがんばったとしても、実はそれは数年前のハイエンド端末のスペックなんですよね。必要十分なものでしょうね。

――機能を整理してそぎ落としていくと、Androidのスマートフォンがかなりフィーチャーフォンのようなものになるかと思いますが、フィーチャーフォンのプラットフォームについてどうお考えですか。

 フィーチャーフォンの現行プラットフォームに大きなお金をかけることは計画していません。かなり進化したフィーチャーフォンのプラットフォームに少し味つけをして展開していくことになるかと思います。

 フィーチャーフォンの形のAndroid端末というのは、現行のプラットフォームを改造してAndroidを載せるというより、ベースをAndroidにして上に載せるものを工夫する方がトータルのエンジニアリングのパワーは少なくて済むのかなと思います。

――らくらくホンがスマートフォン的なSymbian OSの上で動作しているように、エンドユーザーにとって余計なものを省く形でAndroidを活用してもいいのかなと思います。拡張するメリットと同時に、機能をそいでいくことでうまく製品化していく形もありそうです。

 そうですね、そもそも拡張性の高いAndroidを全部機能を見せるのではなく、一部だけ使うという形はあると思います。エンドユーザーにAndroidを意識させないのであれば、今のフィーチャーフォンのプラットフォームで開発する方がいいのか、Androidをシュリンクダウンしてフィーチャーフォンを開発する方がいいのか、コストを考えると今後は後者になっていくのでしょうね。フィーチャーフォンのプラットフォームは現行のものをできるだけ触らず、目先を変えていくような方向で考えています。

海外展開


海外向けのグローバルマスターモデル

――海外展開での反響はいかがでしょうか。

 製品に対する反応はなかなか手応えを感じています。営業が世界に売り歩いた結果、具体的にいくらで何台納入するかという話になっているところもあります。ただ、NECとして一度海外を撤退していることもあり、必ずしもガンガン進めているというわけではありません。

 製品としては、海外であの薄さで防水防塵モデルというのはなかなく、価格的にも反応がよいです。あとは我々が腹を据えて海外やりますというところをもっと見せたらいいのかなと思っています。

――G'zOneは北米で展開されていますが、MEDIASシリーズはどちらに展開される予定ですか?

 売れそうなところには紹介して回っています。その中でビジネスリスクや売価原価などを検討して、ビジネスとして成立するところでやっていきたいと思っています。

 MEDIASとして力を入れていきたいのはやっぱり北米中心に考えています。キャリアさんが端末を直接買い上げてくれるところで、安定したビジネスができそうなところが北米方面のためです。欧州は2~3割のオープンマーケットで、多くはキャリアの買い上げモデルのようです。

 中国などオープンマーケットが中心の市場については、かなり慎重にやらなければいけないなと思っています。中国市場をやらないというわけではありませんが、かなり慎重に進めて失敗を繰り返さないようにしないといけないでしょう。プライオリティとして、キャリアが直接買い上げてくれるところを中心に考えており、余力が出てきたらオープン市場という感じです。

――基本的には3G回線付きのモデルを出して行くのでしょうか? オープン市場にWi-Fiモデルという選択肢も考えられそうですが。

 今のところプライオリティは低いですね。Wi-Fiモデルも検討はしましたが、やはりキャリアさんに提供していくことを考えると、3GやLTEがないと難しいでしょうね。今後のタブレットもそうですが、MEDIASの名前をつけたものは基本的に3Gは入るでしょう。

――国内と海外でMEDIASのブランドイメージに違いは出てくるのでしょうか

 MEDIASという名称は、MEDIAに複数形のSがついていますが、そもそも複数形のMEDIAにSがついていることが英語としてはおかしいです。そこは語感でとらえていただいて、なんとなくゴロがいいと感じていただいているようです。

 調査すると、ウケがよい国がある一方で、そうではない国もあります。国内だけでなく海外でも原則的にMEDIASのブランドを展開していくつもりですが、受け入れられないところでやっても仕方ないですし、キャリアさんに提供するのでそちらの判断もあります。投資効果としては1本にしたいところですが、ケース・バイ・ケースで対応していくことになるでしょう。地域によってはNECブランドになるかもしれません。

――国内と海外のバランスは今後どうなりそうですか。

 国内と海外の割合が半々ぐらいになるまではキャリアさんに提供していくことになるかと思います。2012年度に1200万台とすでに発表していますが、その中身は、国内700万台、海外500万台です。早ければ来年度までに半々に、遅くとも2013年度にそうなっていなければ厳しいでしょうね。

 ――本日はお忙しいところありがとうございました。

 




(津田 啓夢/湯野 康隆)

2011/11/7 18:24