シャープ、ソフトバンク向け秋冬モデル開発者インタビュー

「AQUOS PHONE」4モデルと「PANTONEケータイ」新モデルの魅力


左から、シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 吉田周太氏、内藤遥介氏、同部 部長の林孝之氏

 シャープは、ソフトバンクの2011年冬モデル・2012年春モデルにスマートフォン「101SH」「102SH」「103SH」「104SH」と、フィーチャーフォン「105SH」の5端末を投入する。

 スマートフォンは同社のスマートフォンブランド「AQUOS PHONE」の端末となり、高精細HD液晶を搭載したハイスペックモデルや最新OSのAndroid 4.0を搭載した端末、女性をターゲットとした端末、コンパクトな防水端末と4モデルを揃えた。さらに、フィーチャーフォンでは人気のPANTONEケータイの新端末を投入と、幅広いニーズに対応したラインナップになっている。

 今回は、発売中の「101SH」「102SH」を中心に、これら5端末の特徴やこだわりの点などを、シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 部長 林孝之氏、同部の内藤遥介氏、吉田周太氏に伺った。

コンパクトなスライドスマートフォン「101SH」

吉田氏

――まず、「101SH」について教えていただけますか。

吉田氏
 「101SH」は、スライド式のボディにテンキーを搭載したスマートフォンです。フィーチャーフォンから気軽に乗り換えられる“スマケー”の第2弾で、「スマートフォンは欲しいけど、使い勝手が不安」と感じている方も多いと思いますが、そのようなユーザーで、特に女性をターゲットにしています。“スマケー”の第1弾の「007SH」は、折りたたみ式でしたが、今回はスライド式となっています。スライド式は、コンパクトで手軽に使える人気の形状です。

 コンパクトなボディもコンセプトのひとつで、女性の手にもすっぽりおさまるサイズです。フルタッチはもちろん、キーを出しても使いやすくなっていて、片手で操作できますし、歩きながらでも手軽に使えます。

林氏
 ソフトバンクの秋冬モデルのラインナップでも、若い女性向けの「for Girls」に分類されています。キーの入力のしやすさに加えて、コンパクトで背面もラウンド形状になっているので、持ちやすい形になっています。

――とくに女性向けということで、こだわりの点はあるでしょうか?

吉田氏
 常にケータイを手元に置いておきたいという女性の方も多いと思います。「101SH」であれば、電話やメールに“即レス”が可能です。電話がかかってきたら、ボディをスライドするだけで通話が開始できますし、メールもテンキーを使ってすばやく入力して返信できます。

 また、スマートフォンにハードルの高さを感じている方にも、今までのフィーチャーフォンと同じ使いやすさを提供する端末になっています。ハードキーでの操作が可能なので、終話キーでアプリを終了できるほか、メールの送信もキー操作で行えます。ブラウザやメールに加えて、赤外線通信もハードキーで起動できますので、赤外線通信をよく使う若い女性にも便利だと思います。

 ボディカラーは、ビビッドピンク、ターコイズ、ホワイト、ネイビーブラックの4色展開です。個性豊かでファッショナブルなカラーを揃えましたが、デフォルトの壁紙の色をカラーごとに変えているのもこだわりです。加えて、アプリ一覧を表示するランチャー画面の背景色もカラーごとに違う色になっています。

「101SH」

――フィーチャーフォンからの乗り換えを考えている人にも、バッテリーの持ちを心配する人は多いと思います。バッテリーの持ちに関して工夫はされているのでしょうか。

吉田氏
 バッテリーの持ちについては、単に電池の容量を上げればよいと考えるのではなく、ソフトウェア面でのアプローチを行なっています。これは「101SH」だけでなく、以降のAQUOS PHONEにも搭載されている機能ですが、バッテリーの消費を自動で抑える「エコ技」機能を搭載しています。シャープ独自の省電力機能を駆使した「技ありモード」を利用することができ、画面消灯時に一部のアプリの動作を制限する省エネ待受け機能などによって、高い省電力効果が得られます。「101SH」の場合、「技ありモード」に設定すると、実使用時に通常の約1.3倍の連続待受時間を実現できました。

 省エネ機能については従来から搭載していましたが、「エコ技設定」は、利用シーンに応じて省エネモードを使い分けられるほか、ウィジェットで簡単にモードを切り替えたり、時刻や電池残量によって自動でモードを切り替えることができるのがポイントです。

 また、晴れた日の屋外などでも画面を見やすくする「アウトドアビュー」にも対応していますが、この機能ではバックライトの輝度を強くして見えづらさを解消するのではなく、コントラストを調整によって見やすさを改善します。バックライトでバッテリーを消費しすぎることがないので、省電力にもつながります。

「101SH」の背面

――CPUはクアルコム製の「MSM8255」で「007SH」と同じものを採用していますが、パフォーマンス面で改良されている部分はあるのでしょうか。

吉田氏
 はい。代表的な例は、撮影した写真を表示するピクチャーアプリですが、今回メンテナンスを行い、起動や表示切り替えがよりスピーディーになり、スムーズに操作できるようになりました。待たされている感じやもたつき感は、ほとんどなくなりました。そのようなアプリの見せ方の面で、パフォーマンスを強化しています。

林氏
 画面タッチの追従性も追求していて、タッチパネルの動作もより滑らかになっています。タッチパネルはフィーチャーフォンの頃から扱ってきましたが、スマートフォンを経て、ノウハウがどんどん蓄積されてきていますので、今後もさらに進化していけると思います。

――端末としてはコンパクトで防水にも対応し、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信と日本仕様にも一通り対応しています。一番大変だったのはどの点ですか?

吉田氏
 一番大変だったのはコンパクトなサイズ感です。日本仕様を全部搭載しようとすると、どうしても端末は大きくなってしまいがちです。しかし、フィーチャーフォンからの乗り換えを考えるとサイズが重要なので、その点は譲ることなく、このサイズを実現しました。

――形状について、「007SH」は折りたたみ式でしたが、今回はスライド式です。テンキー搭載の端末については、今後はスライド式になるのでしょうか?

林氏
 形状に関しては、とくに「こうでなければいけない」とは決めていません。ニーズに合わせて対応していくことになりますし、フルタッチ、折りたたみ式、スライド式と、いろんな選択肢があると考えています。

ハイスペックな“スマホの王道”「102SH」

内藤氏

――次に、「102SH」について教えてください。

内藤氏
 「102SH」は、4.5インチの高精細HD液晶とディアルコアCPUを搭載したほか、ソフトバンクのULTRA SPEEDにも対応したハイスペックなスマートフォンです。今回のAQUOS PHONEのラインナップでもフラッグシップモデルという位置付けでして、いわゆる“スマホの王道”を行っている端末です。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった日本仕様や防水にも対応していますが、ターゲットとしては、情報感度が高く、ITリテラシーの高いユーザーを想定しています。

 一番の特徴は、画面がより大きく、より綺麗になったことです。ディスプレイが4.5インチであるのに加えて、解像度は1280×720ドットとHDサイズで、329ppiと高密度になっています。さらに、フルカラー1677万色にも対応して色再現性もアップしています。大画面ですので、PC同様にブラウジングなどを行うことが可能です。

 また、大画面になると、外から見えやすくなってしまうので、のぞき見を気にする方もいるかもしれませんが、のぞき見防止機能の「カラーベールビュー」も向上しています。周囲からののぞき見防止効果がアップしたほか、正面からはより見やすくなっています。

――デュアルコアになったCPUについて詳しく教えていただけますか。

内藤氏
 CPUは、テキサス・インスツルメンツ製の1GHzデュアルコア「OMAP4430」を搭載しています。デュアルコアで同時処理が可能なので、マルチタスクで複数のアプリが動作していても、スピーディーかつ快適に操作することができます。

――御社が「OMAP4430」を採用するのは初めてだと思いますが、採用した理由は何かあるのでしょうか。

林氏
 「102SH」は、下り最大21MbpsのULTRA SPEEDに対応しています。ULTRA SPEEDの通信方式であるHSPA+への対応に見合ったCPUとして、「OMAP4430」を採用しました。

内藤氏
 デュアルコアCPUによる処理速度の速さと、ULTRA SPEEDによる通信速度の速さという2つのアプローチで、「102SH」ではスピーディーで快適な操作性を実現しています。ULTRA SPEEDは下り最大21Mbpsと高速なので、動画のストリーミングやファイルのダウンロードも快適に行えます。Wi-Fiは屋内など、特定の場所でしか使えませんが、ULTRA SPEEDは対応エリア内であればどこでも使えるというのがメリットです。

「102SH」

――ULTRA SPEEDへの対応は、今後もアピールポイントになりますか?

林氏
 はい。高速通信への対応は各キャリアでも進んでいるので十分アピールポイントになると考えています。今回のラインナップでULTRA SPEEDに対応しているのは、この「102SH」と「104SH」だけです。通信速度に対するユーザーの要求は高くなっていると感じているので、今後も積極的に対応していきたいと思います。

――カメラは1210万画素のCMOSカメラを搭載していますね。

内藤氏
 はい。1210万画素というのは、コンパクトデジカメでも売れ筋の解像度となっています。撮った写真を端末で表示するときはもちろんですが、1210万画素であれば印刷しても綺麗に見ることができます。また、裏面照射型CMOSセンサーを搭載しているので、薄暗い場所でも明るい写真を撮影できますし、画像処理エンジンの「ProPix」と組み合わせでより美しく写真を表現することが可能です。

 さらに、今回は光学手ぶれ補正を搭載しています。従来はソフトウェアで手ブレ補正を行なっていましたが、光学手ぶれ補正では有効画素をすべて利用できるので、ぶれを抑えて、より美しい写真を残せるという特徴があります。

――前モデルにあたる「006SH」はツインカメラでしたが、今回はツインカメラではありませんね。理由はあるのでしょうか。

林氏
 「006SH」で3D撮影に対応したツインカメラを搭載して、さまざまな反響をいただきました。ですが、今回は光学手ぶれ補正や裏面照射型CMOSセンサー搭載といった撮りやすさを重視して、あえてツインカメラにはしませんでした。ただ、ディスプレイの3D表示には対応しているので、3Dコンテンツを楽しむことは可能になっています。

「102SH」の背面

――スマートフォンとPCやTVを連携して使っているユーザーも多いと思います。PCやTVとの連携機能で改良した点はありますか?

内藤氏
 AQUOSやAQUOSブルーレイとコンテンツを共有できる「スマートファミリンク」では、プラスアルファの部分を改良して、より使いやすくなりました。まず、「102SH」で撮った動画をAQUOSブルーレイにアップロードしてバックアップ保存することが可能になっています。また、AQUOSブルーレイのチューナーから放送波を「102SH」に転送して、端末で番組を視聴することができます。ワンセグと比べて綺麗な画質で楽しめるのが特徴で、地上波に加えて、BSやCSも端末で視聴することが可能です。

 PCとの連携では、連携ソフトウェアを従来の「BeatJam」から「MediaJet」に刷新しています。これまでは、ソフトウェアをWebサイトからダウンロードする必要がありましたが、「MediaJet」はPCとUSBケーブルで接続するだけでインストール操作を開始できます。同期方法も従来はUSB接続のみでしたが、Wi-Fiでの同期が可能となっています。PCを母艦とした自動同期も行えるほか、ソフトウェアに静止画の編集機能を搭載しているので、「102SH」で撮った写真をPCですぐに編集することができます。

――他社製品と比べたときに、差別化できるのはどのような点でしょうか。

内藤氏
 一番のポイントは大画面で高精細の液晶と、高性能なカメラになるかと思います。そのようなスペック面で差別化したうえで、ソフトウェアの部分でも改善を繰り返して、他社製品との差別化を図りたいと考えています。

 また、紹介させていただいたスペック面での特徴以外に、バッテリーの持ちでも妥協しない端末となっています。「101SH」で紹介した「エコ技」機能も搭載していて、「技ありモード」を利用すれば、通常と比べて実使用時の連続待受時間は約1.6倍になります。

「103SH」「104SH」「105SH」

林氏

――発売は少し先になりますが、「103SH」「104SH」「105SH」についても、簡単に教えていただけますか。まずは、「103SH」からお願いします。

林氏
 「103SH」は、4インチのQHD液晶を搭載したスリムで軽量なスマートフォンです。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信などの日本仕様や防水にも対応していて、肩肘張らずに気軽に使える端末で、幅広いユーザーにアプローチできると考えています。

 ソフトウェア面で特徴的なのは、ランチャー画面のメニューの構成です。従来のアイコンがずらっと並んだものではなく、目的別にグループ分けされているので、アイコンが探しやすくなっています。後からインストールしたアプリは、ユーザーが振り分けられるようになっていて、グループのカスタマイズも可能です。

 そのほか、800万画素のカメラで利用するアプリケーションも充実していて、「102SH」で紹介した「カラーベールビュー」や「スマートファミリンク」にも対応しています。

――前モデルにあたる「009SH」と比べると、防水に対応して薄く、軽くなったのが改良点でしょうか。

林氏
 はい、そうですね。加えて、CPUが1GHzから1.4GHzになって、動作の機敏さも向上しています。また、電池容量もアップしていますが、消費電力は控えめで、さらに「エコ技設定」も搭載していますので、コンパクトでしかもバッテリーの持ちの良い端末になっています。

「103SH」「103SH」の背面

――続いて、「104SH」について教えていただけますか。

林氏
 「104SH」は、Androidの最新OSの4.0(Ice Cream Sandwich)を搭載したスマートフォンです。発表時は、“次期プラットフォーム”を搭載すると言っていましたが、Android 4.0になります。この端末では日本向けの仕様は省いています。これは、先進ユーザーの方に最新の端末をいち早く送り出すことを開発目標として、開発スピードを優先させたからです。

 CPUは、1.5GHzデュアルコアの「OMAP4460」を搭載しています。先進的なユーザーの方に快適に使ってもらえるように、最高のスペックにしています。また、ULTRA SPEEDにも対応しています。

――ハードウェアのデザインは、従来のAndroid端末と同じように前面にハードキーを搭載したものになっていますが、Android 4.0のリファレンスモデルなどは、ハードキーを搭載していません。デザインに変更はあるのでしょうか?

林氏
 ハードウェアのデザインに変更はなく、ハードキーを搭載したデザインになります。Android 4.0の画面に表示されるソフトウェアキーは、画面上に出さないようにすることもでき、ハードキーで操作することも可能です。今回は、画面をできるだけ大きく使っていただきたいという理由から、ソフトウェアキーを表示することなく、ハードキーで操作できるわかりやすい端末になっています。

――メールや電話帳などアプリのUIは、従来のAQUOS PHONEと同じものになるのでしょうか。

林氏
 はい。主要なアプリのUIや機能については、従来の端末を引き継いだものになります。

「104SH」「104SH」の背面
「105SH」

――最後に、「105SH」について教えてください。

林氏
 「105SH」は、ご好評をいただいているPANTONEケータイの新モデルです。今回のソフトバンクの秋冬モデルでは、唯一のフィーチャーフォンになります。前モデルとの違いは、通信方式のGSMに対応し、国際ローミングサービスへの対応を強化したことです。海外でも安心して使っていただける端末になっています。

 また、ボディカラーは全8色ですが、新しいカラーとしてオレンジ色を入れました。デザインは少しだけ変わっていますが、基本的には前モデルを踏襲していて、コンパクトなボディにラウンドフォルムを採用した持ちやすい形状です。

――今後もフィーチャーフォンは投入されていくのでしょうか。

林氏
 はい。スマートフォンはアプリやブラウザなど、さまざまなことができますが、フィーチャーフォンの用途は電話とメールで、使い方が明確に違っています。フィーチャーフォンに対する強い需要がまだありますし、「105SH」のような端末を今後も継続的に出していきたいと考えています。

――本日はありがとうございました。




(鈴木友博)

2012/1/10 12:21