記事検索
インタビュー過去記事

「GALAXY Note」開発者インタビュー

グローバルで人気の新カテゴリー端末の秘密


GALAXY Note。写真は韓国版だが、日本版と韓国版はモバイル放送やLTEなど仕様が似ていて、背面カバーなども流用が可能だという

 グローバル市場で人気を博している「GALAXY Note」がついに日本市場にも投入される。今回はこのGALAXY Noteについて、サムスンのデザインやUIの開発、商品企画の担当者らにグループインタビューをする機会を得たので、その模様をお伝えする。

 まずはグループインタビューに先駆け、サムスン電子のInsight Marketing 課長のキム・アルム氏にGALAXY Noteの製品概要を説明いただいた。

 GALAXY Noteは5.3インチのディスプレイを搭載し、筆圧感知にも対応するペン型入力デバイスに対応したスマートフォンである。ちなみに便宜上、スマートフォンと呼ぶが、サムスンではこのGALAXY Noteについて、スマートフォンでもタブレットでもない、新しい「Note」というカテゴリの製品と位置づけている。
キム・アルム課長

 GALAXY Noteの基本コンセプトは、「いつでも持ち歩いている端末でいろいろなことをしたい」というニーズを満たすことにあるという。そのために、スマートフォンやタブレットといったほかのモバイルデバイスの要素を集め、1つの端末でいろいろなことができるデバイスとしてGALAXY Noteはデザインされている。

 GALAXY Noteの特徴は、「5.3インチの大画面による新しいディスプレイ経験」と「ペンを使ったクリエイションや画面キャプチャ」といった要素と、それらを可能にする「ハイパフォーマンスなスペック」の3つの柱を持っている。

 まず画面については、5.3インチという一般的なスマートフォンよりも大きなサイズで、Webやニュースリーダー、SNSなどのアプリも、より快適に利用できるようになる。オフィス文書も見やすく表示できるのでビジネス用途にも有利で、ゲームもこれまでのスマートフォンより違った楽しみ方ができる。

 大画面化する一方で、いつも持ち歩くスマートフォンとしてのサイズ感も維持している。このためにサムスンでは、見た目や手に持つとき、ペンを使うとき、電話をするときなどの各シーンについてユーザー調査を行い、その結果、大画面化による利便性と携帯性のバランスのよいところとして、GALAXY Noteの画面サイズを5インチ台に設定したという。

 一方で画面が大きくなりすぎると、片手で操作するのが困難になる。しかし、サムスンでは、GALAXY Noteを常時持ち歩くメイン端末と考えているので、片手操作は重要な要素と見なし、従来のUXを維持できるように開発を進めているという。

 こうした新しいディスプレイによるユーザーエクスペリエンスは、すでにGALAXY Noteが発売されているグローバルではいろいろな評価をされている。当初は「大きい」という評価もあったが、実際に使った人からは「元には戻れない」という評価も多いという。

 もう1つの特徴は、「S Pen」と名付けられたスタイラスペンを使った機能である。このS Penは、パソコンなどで使われているペンタブレットで高いシェアと人気を持つワコム社の技術を使っている。静電容量式ではないため指によるタッチとは区別され、ペン先はより細かく、筆圧感知にも対応し、S Penについたボタンを押しながらの操作を別のアクションに割り当てることが可能など、これまでのスタイラスを採用したPDA/スマートフォンとは一線を画する特徴を持っている。

 GALAXY Noteは指でもS Penでも操作ができるようにデザインされているが、S Penならではの操作要素も多数用意されている。たとえば簡単な操作で画面キャプチャを撮り、そこにS Penでコメントを書き足したり切り出したりして、作った画像を共有する、といったことができる。キム氏は、絵を描くようなデザイナーやアーティストにとっても便利な機能だが、ビジネスマンも活用できるとアピールする。

 S Penは、指による操作の代替として使えるほかにも、S Penに特化したアプリも用意されている。公開されているS PenのAPIを使うなどして最適化されたアプリは、サムスン独自のアプリ配信サービス「S choice」にまとめられている。これらのアプリの多くは、すでにGALAXY Noteが発売済みのグローバルで開発されたものだが、基本的に日本でも利用可能で、中には「7notes with mazec」のように日本で開発されたアプリのGALAXY Note対応版なども準備されている(「7notes with mazec」はドコモ版にプリインストールされる)。
Studioでの似顔絵の模様。15分ほどで書き終わる。ちなみにこの写真で絵を描かれているのは、本誌「みんなのケータイ」などでもおなじみのジャーナリスト石川温氏

 GALAXY Noteの展開にあたっては、世界各国で「World Tour」と「Studio」という2つのプロモーションが行われている。World Tourは要するに発表会だが、従来のようにグローバルの製品発表会を最初に1回やるのではなく、GALAXY Noteでは世界の各地・各国で発売のタイミングで個別の発表会を行っている。3月28日に開催されたイベントも、こうしたサムスンのWorld Tourの一環で、ローンチが最後となった日本でのWorld Tourは、いわばツアーファイナルともなっている。

 Studioは街角に特設スペースを作り、訪れたユーザーにGALAXY Noteを体験してもらうというもので、すでに82カ国、491の街、1725カ所で実施されている。日本では100カ所以上のStudio設置を目指しているという。Studioは常設ではないが、街中や販売店などに設置される。StudioではGALAXY Noteの実機を触って試せるだけでなく、似顔絵アーティストを招き、来場者の似顔絵を描いてプリントしたりするといった企画も行われるという。

 今回取材を行った韓国では、サムスン電子本社にある総合ショウルーム「d'light」やソウル市内の大型ショッピングモール「COEX MALL」にある常設のGALAXY専門ショウルーム「GALAXY ZONE」に設置されているStudioを見ることができた。通常のStudioは、1カ所あたり数週間の期間限定となるが、d'lightやGALAXY ZONEは常設の展示スペースということもあり、Studioも半ば常設となっている。ただし似顔絵描きについては、似顔絵アーティストがいなくては行えないこともあり、実施する時間帯が決められていた。

 また、これらの常設Studioでは、GALAXY Noteの背面カバーに好きな文字などをレーザー刻印するというサービスも行われていた。GALAXY Noteは背面のバッテリーカバーが交換可能で、絵柄の入ったものやフリップ付きのカバーなども市販されているが、それらにも刻印が可能となっていた。このレーザー刻印サービスは、工作機械が入手困難なこともあり、すべてのStudioで実施されるわけではなく、国内での実施についても今のところ予定されていない。

d'light内のStudioに設置されていたレーザー刻印機 レーザー刻印の例。刻印といっても、高熱で素材を変質させているイメージ。中央下のSAMSUNGのロゴ以外はすべてレーザーで刻印してある

デザインとUXの開発担当者に聞く

 続いてGALAXY Noteのデザインを担当したパク・サンシク氏とUIなどユーザーエクスペリエンス全般を担当したパク・ヨンソク氏に、主にGALAXY Noteの製品の特徴について伺った。なお、多数のメディア関係者が質問者として参加するグループインタビューの形式となっている。

――ディスプレイサイズが5.3インチというのは、どのように決定されたのでしょうか。

製品デザインを担当する責任研究員パク・サンシク課長

パク・サンシク氏
 いろいろな国で調査を行い、使いやすさなどを考慮してこのサイズに決めました。

――では、ディスプレイサイズが先にありきでデザインをされたと?

パク・サンシク氏
 はい。サイズを決めてから、デザインを作りました。ディスプレイサイズを決めた上で、見た目や使用感を考え、このサイズの中でも良いデザインになるように作っています。

――デザインの基本的な原則はスマートフォンと基本的に同じなのでしょうか。

パク・サンシク氏
 GALAXY Noteはスマートフォンでもタブレットでもないと位置づけていますが、どちらかというと、ポケットに入れたりするのでスマートフォンに近いです。コンパクトさが必要なので、たとえばスマートフォンのように画面周囲のフレームは狭い方が良いですし、そうしたスリム化の技術は弊社の得意とする部分でもあるので、スマートフォン同様にコンパクトさを重視して設計しています。

――画面の下にハードウェアキーのホームキーやタッチセンサのメニューキー、バックキーを搭載している理由は?

パク・サンシク氏
 サムスンとしてのアイデンティティによります。中央にハードウェアのホームキーがあり、その左右にタッチセンサキーという配置を統一することで、サムスン製品を使う人はすべて同じ感覚で使っていただけるようにしています。

――S Penはワコムの技術を使っているとのことですが、このS Penの形状的デザインはどのように作られているのでしょうか。

パク・サンシク氏
 ペン先からボタンのあたりまでは、ワコムさんと開発して最適化したものなので、ここは独自にデザインをしてはいません。それよりも上の部分は、本体に内蔵させるということもあり、違和感が無いように仕上げました。

――S PenはGALAXY Noteの下側に収納するようになっています。なぜ下なのでしょうか?

パク・サンシク氏
 下の方が自然に使うことができると考えました。一部地域ではモバイル向けテレビ放送(日本ではワンセグ)のアンテナなどがあり、それらの部品配置との関係もあります。

――本体カラーについては、従来のGALAXY Sシリーズ同様にブラックとホワイトになっています(日本国内はホワイトのみ)。これはシリーズとして統一されているのでしょうか?

パク・サンシク氏
 本体カラーはマーケットごとに調査をして、お客様の望まれるものを商品に採用しています。さらに補足しますと、色は同じように見えて、ほかのGALAXY Sシリーズからも微妙に調整しています。ホワイトに関しては、少しシャイニーな感じにしつつも、マットなホワイトになっています。

――UI面で言うと、ほかのGALAXYと同じTouchWizを採用されています。5.3インチの大画面でも同じUIで良かったのでしょうか。
UXデザインを担当する責任研究員パク・ヨンソク課長

パク・ヨンソク氏
 GALAXY Sシリーズの流れがあるので、それぞれとの統一感を維持し、基本を同じようにしました。画面のサイズが大きくなったことで、リサイズなどの調整はしていますが、統一感が大事だと考えています。

――Android 4.0(ICS)になってもGALAXYシリーズの流れをくむUIを維持されるのでしょうか。GALAXY S II LTEあたりは、すでに一部エリアでICSへのバージョンアップが始まっていますが、引き続きTouchWizを搭載し、操作感は維持されています。GALAXY Noteも変わらないのでしょうか。

パク・ヨンソク氏
 基本的にはTouchWizを搭載します。GALAXY NoteはS Penを使うようになっていますが、それ以外のところまでも別物になっていくわけではありません。

――S Penとタッチの両方を使うにあたり、たとえば「文字入力はS Penを使う」といった、UI的なコンセプトはあるのでしょうか。

パク・ヨンソク氏
 基本的なコンセプトとしては、指とS Penのどちらか、ということは考えていません。どちらでも同じ操作が可能で、人によって好きな方を使えるようにデザインしています。

――S PenをUIに追加することで、ユーザーがどのような使い方をするのかなど、UX面で想定されていたことはありますか? また、その想定はどうだったでしょうか?

パク・ヨンソク氏
 これは説明が難しいところです。GALAXY NoteはS Penを使うことで、アナログ的な方向性など、いろいろな使い方が考えられます。その中でお客さまがそれぞれ、好きなように使っていただければ、と考えていました。とくに具体的な想定をして用途を絞ったりしていません。

――フィーチャーフォン時代やその前のPDA時代にもスタイラスペンを採用したモバイルデバイスはありました。そのときとの違いは?

パク・サンシク氏
 昔のペン入力は感圧式でしたが、GALAXY Noteではワコムの技術を使っています。ディスプレイもガラスになり、感圧式は採用できなくなっています。ペンの書きやすさなどにもこだわってデザインしています。

――iPhoneが登場したとき、アップル前CEOの故スティーブ・ジョブズ氏は「ペンは不要」と言っていました。そのペンを採用するにあたり、どのような議論があったのでしょうか。

パク・サンシク氏
 iPhone登場時、つまりスマートフォンの導入期には、そのような考え方がありました。ボタンからタッチパネルにUIが変わるときです。しかし、今は技術も発達し、画面も大きくなりました。そうした中で、人間が慣れている「ペン」という要素を取り入れられる環境が整いました。技術の進化によってもたらされたプラスのバリューとして、ペンを採用しました。

商品企画担当者にもインタビュー

 最後に商品企画チームのトップであるキム・ジョンイン常務にもお話を伺った。なお、同氏とのインタビューでは、日本での営業を担当するキム・ソンシン常務に通訳をしていただいている。

――すでにグローバルではGALAXY Noteは発売されていますが、反応はどうでしょうか。

商品企画を担当するキム・ジョンイン常務

キム・ジョンイン氏
 韓国市場での反応をご紹介します。まず韓国では携帯電話は毎日平均7万台が売れています。そのうち6万台がスマートフォンで、その6万台の半分、3万台がLTE採用機種で、その半分、1.5万台がGALAXY Noteです。つまり、販売されているスマートフォンの25%がGALAXY Noteになります。

 先週はこの韓国でマーケット調査を実施しました。「次に買うケータイは、より大きな画面サイズが良いか」という質問に対し、GALAXY S IIのユーザーは、70%以上が同じサイズ、あるいはより大きなサイズが欲しいと回答しました。iPhoneユーザーは、90%がより大きなサイズが良いと回答しました。しかしGALAXY Noteのユーザーは、より大きなサイズが欲しいのは20%、50%が同じサイズが良いと回答しました。要するに、GALAXY Noteでは70%が、このサイズか、もう少し大きなサイズを望んでいます。人間は慣れていってしまうものなので、GALAXY Noteの5.3インチのサイズに慣れてしまうと、このサイズ以下には戻れないようです。

――韓国で人気を博し、よく売れている理由は、画面サイズなのでしょうか、それともS Penなのでしょうか。

キム・ジョンイン氏
 正直に申し上げると、まったく新しいカテゴリーを作ったので、まずは手書きを使ったアプリなどを公開し、これを使って欲しいと考えました。しかし、調査結果では、S Pen機能よりも、大きなサイズを評価する声が大きかったです。今後の課題として、S Pen機能を活用するアプリを開発し、GALAXY Noteの先進性を高める努力をしています。

 S Pen自体にも課題があると思います。GALAXY Noteに内蔵しているものは、ちょっと小さいので手に力が入ります。どうやったらもっと使いやすいペンになるのか、と考えています。

――2月末のバルセロナでは10.1インチのGALAXY Noteも発表されました。5.3インチに加え10.1インチもラインナップするのは、これは当初から予定されていたのでしょうか。

キム・ジョンイン氏
 まずは5.3インチのGALAXY Noteの開発を進め、その中で成功が確信されてから、タブレットにもNoteのソリューションを載せた方が良いのでは、と考えました。最初からラインナップとして考えていたわけではなく、Noteカテゴリーを作ってみてから、10.1にも広げましょう、となりました。

――今後はほかのサイズにも展開されるのでしょうか。

キム・ジョンイン氏
 それは市場の反応を見ながら考えていきたいと思います。

――GALAXY Noteのコンセプトはどのように固めていったのでしょうか。
キム・ジョンイン常務(左)と日本営業を担当するキム・ソンシン常務(右)

キム・ジョンイン氏
 まず製品の構想のとき、まず新しいセグメントの商品を作ろう、と考えました。ケータイはすでに電話をするためのデバイスというより、情報を見るためのデバイスになっています。話すケータイではなく、見るケータイとして考えたとき、ディスプレイサイズがどのくらいだと快適なのかを考えました。

 過去にも5インチクラスのデバイスはありましたが、そのデバイスが成功しなかった理由は、サイズにあったコンテンツや価値を提供できなかったから、と指摘されています。ある程度の携帯性を維持しながら、大きなディスプレイに見合った価値を提供する必要があると考えました。

 マーケットでは今、半分以上がスマートフォンになっています。ユーザーはサイズが大きければ大きいほど良いと感じるので、タブレットではなくスマートフォンのサイズでもっとも大きく、それでいて快適なサイズはどこなのか、それを研究しました。5インチというだけでは買ってもらえません。さらに市場調査をした結果、半数以上の人がペンを使って書きたいという要望がわかりました。大きな画面でブラウジングをして、ペンを使って資料を編集したりする、そういったニーズに対するふさわしいソリューションを考え、その結果、GALAXY Noteが誕生しました。

――5.3インチというサイズは、手の小さい人が片手に使うにはちょっと大きすぎると感じます。

キム・ジョンイン氏
 それは十分に理解していますが、人によっては限界もあり、100%全てのお客様に満足いただくことは無理かも知れません。このサイズのグリップ感を気に入っていただいている人もいれば、片手では不便と感じている人もいます。いろいろなお客さまがいます。これからはこういった課題を解決するために、ディスプレイのサイズ感を維持しつつも携帯性をよくしたりと、いろいろな工夫を考えています。

――日本ではフリップカバー付きのバッテリカバーが同梱されます。グローバルではさまざまなアクセサリが販売されていますが、そういったものの展開は。

キム・ジョンイン氏
 サムスン製の純正品だけでなく、サードパーティの製品にもいろいろなカバーなどが用意されています。それらも日本市場に展開する予定です。




(白根 雅彦)

2012/3/28 10:30