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スマートフォンアプリ開発のツボ

ゲーム・エンタメ系アプリへの展開を加速するコロプラ


 元々はフィーチャーフォン向けのWebゲームを個人運営し、その後、法人化したコロプラは、ユーザーの移動距離などに応じて街が成長していくWebゲーム「コロニーな生活」を始めとする“位置ゲー”関連の取り組みで急速にユーザー数を拡大してきた。数々の企業とのコラボやキャリアとの提携を行い、「コロニーな生活」のスマートフォン対応なども果たす一方で、2012年に入ってからはスマートフォンアプリを立て続けにリリースし、ビジネスの方向性を転換し始めている。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへと市場が移りゆく中で、同社がスマートフォンアプリをリリースする狙いはどこにあるのか、さらには今後の展開なども含め、同社代表取締役の馬場功淳氏に詳しくお話を伺った。

スマートフォンアプリはすでに800万ダウンロード

――昨年2011年9月に最初のスマートフォンアプリをリリースしてから、すでに多数のアプリが出揃っています。これまでの状況はいかがでしょうか。

馬場氏
 弊社では、スマートフォン向けとして2つのブランドを立ち上げていまして、1つは「Kuma the Bear」というクマのキャラクターをメインに据えたネットワーク通信なしのライトゲームです。これまでのところ8本リリースしていて、合計で600万ダウンロードを超えました。

 もう1つは「秘宝シリーズ」と呼んでいるゲームで、「秘宝探偵」と「プロ野球PRIDE」の2本がこれに当たります。HTML5+CSS3などのWeb技術を使用したアプリで、ソーシャルゲームに近い位置付けのものですが、ダウンロード数は今のところ150万ほどです。2種類合わせると約800万ダウンロードということになります。

コロプラ代表取締役の馬場功淳氏

――それらのスマートフォンアプリを提供することになったきっかけは何だったのでしょうか。

馬場氏
 かなり以前から、市場はフィーチャーフォンからスマートフォンへと置き換わることになるだろう、少なくともフィーチャーフォンはだいぶ数を減らすだろう、ということに気づいていました。しかし、その頃のコロプラは、フィーチャーフォン向けの「コロニーな生活」を中心に運営している会社でした。「コロプラ」というプラットフォームも含め、スマートフォンにも対応はしましたが、フィーチャーフォンベースだったものをそのままスマートフォンに流用するのは無理があるな、ということが実感としてわかってきました。そこで、スマートフォンに特化したアプリを作ってみたらどうか、という発想が出てきたんですね。

 手始めに、僕自身が「Kuma the Bear」の第1弾として「きらきらドロップ!」というアプリを作ってみたところ、そこそこダウンロードされました。さらにそこから、音も出て、ぐりぐり動くWebベースのアプリを作ってみよう、ということでできあがったのが「秘宝探偵」です。1月末頃にリリースしてかなり人気が出たので、“これならいけるんじゃないか”と考えていろいろ検討をし始めた、というわけです。

――最初のアプリの開発スタートはいつ頃ですか。

馬場氏
 「きらきらドロップ!」は、2011年8月頃から始めて、9月中にはリリースしました。自分でこのノートPCで作り始めただけなんですが(笑)。

――1カ月で完成したというのはかなりのスピード感ですね。

馬場氏
 「Unity」というゲームの開発環境がありまして、最初は勉強のためにインストールしたんですね。で、チュートリアルを見ていたら、できそうだなと思って、すぐに作ったのが「きらきらドロップ!」で、その後の「Kuma the Bear」シリーズもすべて「Unity」を使っています。「Unity」は学習コストが非常に低くて、ある程度開発のコツがわかっている人であれば制作期間は通常の半分以下で済んでしまいますね。
きらきらドロップ! 秘宝探偵

――100名ほどの社員がいた中で、なぜ社長自らが開発を?

馬場氏
 他の人はみんな忙しかったので(笑)、とりあえず“1人プロジェクト”でしか始められなかったんです。

――話は変わりますが、コンプガチャなどのソーシャルゲームにおける問題については、御社としてはどのようにお考えですか。

プロ野球PRIDE

馬場氏
 我々の「秘宝探偵」と「プロ野球PRIDE」については、ガチャはありますが、コンプガチャのような仕組みは入っていません。ですので、コンプガチャが法令違反となったことによる影響は特にないと思っています。規制されたからといって手を変え品を変え、別の形で類似した仕組みを導入するやり方は、個人的にはよくないんじゃないか、と思います。いずれ自分で自分の首を絞めることになるのではないかなと。

 ガチャ自体は面白いコンテンツですので、やるにはやるんですが、コンプガチャに似たような激しいことはやらないですね。弊社は社風的にも過激なことには向かないと思っていますし、やりすぎてしまうとユーザーさんも離れていってしまうので、そういう点は非常に気を遣っています。

――御社の方向性としては、ゲームの根本的な面白さや品質を上げる、というのを目指すことになるんでしょうか。

馬場氏
 これは難しいところなんですけどね……。半年くらい前までは、「秘宝シリーズ」でやっているようなインタラクティブ性のある、リッチな表現のゲームがユーザーさんに好まれるんじゃないかな、と思っていて、そういったものをずっと作ってきました。それが評価されている部分もあるかもしれないんですけど、フィーチャーフォンのコンテンツをそのままスマートフォンに流用したようなもの、Webゲームそのものでも、ユーザーさんは意外に納得して遊んでいたりする場合もあるわけです。

 ユーザーさんがWebゲームのようなものを支持するのであれば、その方向性も正しいのかなと思います。我々ディベロッパーとしては、もっと表現の凝った、スマートフォンらしいコンテンツを作っていきたいんですが、実は、ユーザーさんにとっては不要なのかもしれない、と最近思い始めるようになりました。Google Play Storeにアクセスすれば、他にもゲームらしいゲームアプリがたくさんある一方、Webゲームのようなゲームをやっている人が多いという状況を見ると、結局それでいいんじゃないのか、という気もしてきています。とはいえ、我々ディベロッパーとしては、スマートフォンらしいゲーム、スマートフォンじゃないとできないゲーム、というのを追求していきたいとは思っています。

 いずれにしてもスマートフォンゲームのリッチ化は進むでしょうね。単なるポチポチゲームからよりインタラクティブ性を増して、品質の高いゲームに徐々に移り変わっていくんだろうなと思います。

リアル連携やグローバル展開も積極的に進めていく

――御社が元々得意とされていた位置情報を活用したゲームは今後出す予定はありますか。

馬場氏
 すでに「秘宝シリーズ」で位置情報を使った機能を取り入れたりはしているんですが、位置情報とは別に、7月から“球場連携”というリアル連動企画が始まります。「プロ野球PRIDE」のゲーム上のインセンティブが付いたプロ野球の試合のチケットが買えるというもので、生の野球の試合を楽しみながらゲームも楽しめる企画となっています。最初は千葉ロッテマリーンズ様との提携からとなりますが、ご賛同いただけたチームに順次このサービスを広げていくつもりです。今までは「コロニーな生活」とリアル事業者さまとの連携を行ってきましたが、今後はスマートフォンアプリでのリアル事業者様との連携というのも積極的に拡充していきたいと考えています。

――“位置ゲー”やプラットフォーム事業、スマートフォンアプリと、いくつかの柱がありますが、それぞれどういったバランスで今後は展開していくのでしょう。

馬場氏
 毎月新しい位置ゲーを提供し、位置ゲーの拡充ももちろん図っているのですが、会社として今力を入れているのはスマートフォンです。スマートフォンアプリで世界一になりたい、という思いがあります。「コロニーな生活」のユーザー数は290万人を超え、ここまでくるのに10年かかりました。一方のスマートフォンアプリは、1年も経たないうちに800万ダウンロードです。会員数とダウンロード数という違いはありますが、良いものを作ればユーザーはついてくる、というように感じています。しかしながら、我々はスマートフォンのディベロッパーとしてはまだまだ未熟な存在です。今後さらに多くのディベロッパーが参入し、競争が激化するこの市場において、他のディベロッパーに負けないコンテンツを作っていくためにも、今は一生懸命スマートフォンアプリをつくって経験を積んでいく必要があると感じています。

――グローバルに向けた展開はいかがでしょうか。

馬場氏
 たとえば「Kuma the Bear」シリーズのアプリでは、日本語版を1つ作ったら、英語版、韓国語版、中国語版も合わせてリリースしています。アプリは運用の必要がないので、コストを抑えながら、ローカライズできてしまう。これは今後も継続的に行っていきます。

 また、運用が必要なWebゲーム系のコンテンツも、海外に展開したいと考えていますが、現在検討中です。スマートフォンでは、言語が違ってもとりあえずそのまま動作するので、動作面で改良の必要がないというのがすばらしいですね。あとはローカライズやカルチャライズ、運用体制をどう敷くか、というのを考えていく必要があります。

――日本独特の射的ゲームは、海外でも受けているのでしょうか?

馬場氏
 射的については、実は韓国版だけはカルチャライズまでしていて、レーティング審査も受けて国のお墨付きをいただいています。背景やクマの衣装、射的の賞品も韓国のものに変えているんです。ユーザーからの反応も良くて、アジア向けについては、面白いものは国を越えるんだな、と実感しました。ただ、まだ太平洋は越えられない感じがします。絵柄の問題か、文化の違いによる問題か、まだわからないんですけども。

 スマートフォンでは、有望な市場は現時点では日本、韓国、アメリカの3つだと思っています。ですが、日本向けに作るとアジアは行けるものの、アメリカでは流行らなそうですし、逆にアメリカ向けに作ると日本が難しくなってくる、というジレンマがあります。

the射的!(日本版) the射的!(韓国版)

――リリースしたアプリの数は10本となりましたが、今後どのような形でビジネスを広げていくのでしょうか。

馬場氏
 基本的には、広告モデルと課金モデルというのが収益の柱です。スマートフォンの所持率は全ユーザーの2割を超えてきているわけで、ビジネスをする上では十分なボリュームになっています。市場は間違いなくさらに広がるでしょう。ただ、新たに参入してくるディベロッパーも多いので、それに負けじと、今より上に行けるようにどんどんやっていきます。

――アプリのリリースは、これからはどのくらいのペースで?

馬場氏
 「Kuma the Bear」のシリーズは月に2〜3本、「秘宝シリーズ」については3ヶ月に1本出すことを目標にしています。「Kuma the Bear」シリーズについては、ゲームジャンルにこだわらず、いろいろな種類のゲームを作っていきたいと考えています。コンシューマーゲーム機で活躍されていたようなゲームメーカーが参入してくる前に、いや、もう参入し始めていますけど(笑)、本気で始められる前に、技術的にもノウハウ的にも負けないようになって、多種多様なものを出していきたいと思っています。

アプリを開発している人、開発しようと考えている人へ

――同じようにスマートフォンアプリを開発したいと思っている人に、アドバイスをいただけますか。

馬場氏
 特にスマートフォンはコンシューマーゲームと比べて、見た目のきれいさなど、作品のクオリティ面での完成度が低いものがまだまだ多いように思えます。それでもランキングの上位にいたりして、つまり見た目だけで人気の度合いが決まるわけではないんだな、という側面もあります。本質的な面白さが効いてくる市場なので、個人開発者でも小さな企業でも、チャンスはいくらでもある、という風に思います。

 もう1つは、マーケットをよく見ることですね。たとえば僕が開発を始めた9カ月前と今を比べても、全然市場感が変わってきています。常に最新の動きと流れを見ていくことによって、2カ月後はどんなものが来そうなのか、というのがなんとなく読めるはずです。ただ、4カ月後とか5カ月後というのは全く読めないので、2カ月程度の短期で開発してリリースするというのが大切だろうと思います。あとは、AndroidとiOSの両方で出すのがいいと思いますね。

――御社の場合はAndroid版が先でiOSが後となっていますが、どういう意図があるのでしょう。

馬場氏
 まず、僕がAndroid端末を持っていたからです(笑)。それと、Androidアプリはすぐにアップデートできるので、改善箇所やユーザーさんの要望があればすぐに対応して、さらに改良していきます。その後iOS版をリリースする、という手順になっています。

――AndroidとiOSとでユーザーからの反応の違いというのはありますか。

馬場氏
 一概には言えないですし、あくまでも僕のイメージなんですが、どちらかというとAndroidユーザーのほうが“優しい”ですね。レビューの内容を見ると、“柔らかい”、“優しい”という感じで弾力性のあるゴムっぽい。iPhoneのユーザーは“堅”くて、跳ね返ってくる感じです(笑)。

 iPhoneユーザーというのはいわゆるアーリーアダプターな人たちだと思うんですけれど、iPhoneには品質の高いアプリがたくさんあって、ユーザーの目が肥えているんじゃないかな、と思います。そういうアーリーなユーザーの気質として、良いものは良い、悪いものは悪い、とはっきり区別するんじゃないかと。Androidについては、iOSより後に出たプラットフォームではありますが、トータルではAndroidの方がiOSより端末の数は出ていて“マス”なイメージがあり、“日本人感”がある、というように思っています。

――スマートフォンではマーケットのランキングの上位にならないとなかなかダウンロードしてもらえないわけですが、それに対する施策は?

馬場氏
 アイコンの見映えを良くすること、タイトルを短くわかりやすいものにすること、それにアプリの説明文もきっちり書いておくというのが重要だと思っています。アプリ間で誘導も図るようにしています。とにかくダウンロードを増やそう、という活動をしているんです。その結果、ランキングの順位が上がって、さらに相乗効果でダウンロード数が増える、ということもありますね。

――ライバルと考えている相手はいますか。

馬場氏
 良いゲームを出しているところはすべからく。たとえば海外のディベロッパーさんも、個人開発者の方も手強いです。最近の注目はガンホーさんですね。すごくいいゲームを作っていらっしゃるので、大変リスペクトしています。ガンホーさんに負けないゲームを作りたいですね。

――最後に読者に向けて伝えたいことがあれば、一言お願いします。

馬場氏
 クソゲーは作りません(笑)。とりあえず、クマのマークや“コロプラ”という文字を見かけたら、一度ダウンロードして遊んでみてほしいですね。それで趣味や好みに合わなければアンインストールしていただいても構いませんので。

――本日はありがとうございました。




(日沼諭史)

2012/6/26 09:00