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気になるケータイの中身

クアッドコアで先行する「Tegra 3」とは


 4インチ超のHDディスプレイ、LTEなどの高速通信方式への対応、そしてクアッドコアCPUの登場と、スマートフォンの進化は今なおとどまるところを知らない。本誌では、スマートフォン・タブレットに搭載される技術の中でも、CPUやモデムなど、チップセットの進化に注目し、エヌビディア、クアルコム、テキサス・インスツルメンツの3社の担当者にそれぞれインタビュー取材を行った。3社が描く未来や戦略は、その出自の違いもあり、それぞれに異なっている。

 第1回目は、クアッドコアCPU「Tegra 3」を開発したエヌビディアの、テクニカルマーケティングエンジニアであるスティーブン・ザン氏に、「Tegra 3」について話を伺った。

 



エヌビディア テクニカルマーケティングエンジニアのスティーブン・ザン氏

 

クアッドコアは必要か

――まず、「Tegra 3」の概要について改めて伺いたいと思います。

 Tegra 3は海外の市場ですでに搭載スマートフォンが発売されています。また、初めてTegra 3を搭載した製品はタブレットでしたが、これからもTegra 3搭載タブレットは登場する予定です。

 Tegra 3については、クアッドコアが必要なのかという点、消費電力をどう抑えているかという点、そしてエコシステムについての3つで解説したいと思います。

 まず、モバイル市場でクアッドコアが必要なのかという点ですが、これはデュアルコアでも言われたのですが、一番身近なデバイスであるスマートフォンやタブレットはユーザーの期待も大きく、新しいサービスや機能が登場してくれば、高性能化が必要になります。ソフトウェアも進化し、そうした新しい性能をより使うようになります。

 通信環境もLTE搭載が当たり前になり、通信速度はこの1年で約10倍も高速になっています。つまり、モバイル端末からアクセスできるサービスやコンテンツは、少し前からは比べ物にならないほどリッチになっています。

 例えば弊社の事業であるパソコン用のGPUでは、毎回「この性能を使えるゲームは無いのでは」と言われますが、開発者は、そこに良い性能があると、それを使ってより良いものを作りたくなるのです。また、ユーザーもそれを求めています。なので、少し時間が経つとそうした新しい性能を利用したものが市場に出てくるようになり、やがて当たり前になっていきます。

――クアッドコアの可能性と消費電力への対策は注目されるところです。

 スマートフォンユーザーの不満の多くは、調査によればバッテリーの持ちとWebサイトの表示の遅さといったものです。バッテリーの持ちと速度(性能)については、満足できる性能はない、と思います。今日利用しているスマートフォンは数年前のものよりはるかに性能は良くなっていますが、ユーザーはもっと、バッテリーの持ちや性能を求めています。

 そうしたことから、理想的なモバイル向けのプロセッサをデザインするときに考慮する点は、最大のパフォーマンスを提供しながら、最小の消費電力を実現するという点です。

 Tegra 2は初のデュアルコアとして発表しましたが、Tegra 3も初のクアッドコア、つまりマルチコアのアーキテクチャを採用しています。マルチコアは高速道路のレーンがたくさんあるようなもので、より効率的に処理できます。

――パソコンの世界ではマルチコアがすでに主流です。

 パソコンの市場では、マルチコア化は数年前から始まっています。それまではシングルコアで動作速度を速めていましたが、3GHzぐらいで壁にあたりました。これ以上速くすると、消費電力が爆発的に大きくなってしまうという壁です。そこで、2005年ぐらいからデュアルコア、2007年ごろにはクアッドコア、そして6コア、8コアとどんどんとマルチコア化しています。効率良くパフォーマンスを引き上げるためにマルチコア化が進んでおり、そうしたトレンドがモバイルの世界にもまったく同じ形で起こっています。

 2010年ごろまでは(シングルコアで)1GHzのスマートフォンが登場し、1.2GHzも出ました。1.5GHzはあまり登場していませんが、やはりこのあたりで上限にきているのです。そこで、2010年にはデュアルコアが登場し、2011年にクアッドコアが登場しました。パソコンと同じマルチコア化、並列化で、効率良くパフォーマンスを向上させていくトレンドです。


エヌビディアのモバイル向けSOC。左からTegra、Tegra 2、Tegra 3

 

――パソコンと比較しても進化の速度が速いのはなぜでしょうか。

 パソコンと比較しても速いペースでマルチコア化されている背景ですが、パソコンのトレンドを追うだけではなく、パソコンの市場で培われたノウハウや資産が受け継がれているからです。

 AndroidでもiPhoneでも同じですが、ブラウザのベースになっているのはWebKitで、パソコン向けとしてマルチコアに対応していたものをベースにしています。Safariも同様です。そのほか、アプリの移植でも、パソコンのマルチコアに対応していたものは、そのまま対応できることになります。

 また、マルチコア対応を一から行う場合でも、開発者はどうプログラムを書くかというパソコン時代に培ったノウハウを持っています。こうしたことから、モバイル端末ではマルチコアに対応したアプリなどは早いペースで提供されているのです。

 

必要が無い時には最小の消費電力に抑える

――消費電力削減の具体的な仕組みについて教えて下さい。

モバイル端末では待機時間の制御も重要になる
Tegra 3の概要
Tegra 3の3つの特徴

 消費電力への対策ですが、クアッドコアでは常に4つを駆動させていると非常に無駄が多くなります。スマートフォンやタブレットでは、8割の時間が待機状態や、ポケットに入っているなどして使われていない時間と言われています。また、バックグラウンドタスクが動くのでCPUを完全に止めることはできません。理想的なモバイルプロセッサーとは、最大のパフォーマンスを必要な時に提供する、そして、必要が無い時には最小の消費電力に抑えることです。前述の8割の時間を最小の消費電力で過ごせば、結果的に電池の持ち時間を延ばすことができます。

 こうしたコンセプトを進めたものがTegra 3で、また世界で初めてクアッドコアのCPUを搭載した製品です。それに加えて、5つめのコアを搭載した「4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャー」を採用しています。

 全体的な性能では、Tegra 2の5倍、同じタスクならより低い消費電力で実現できます。ビデオ再生ではTegra 2と比較して消費電力を最大61%、Webブラウザでは最大30%削減できます。GPUは3倍の性能で、3D立体視の処理にも対応します。Tegra 3は、数年前に主流だったCore 2 Duoなどと同じレベルの性能です。

 Tegra 3のユニークな技術である消費電力を抑える技術ですが、1つ目は4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャー、2つ目は液晶ディスプレイの消費電力を抑える「PRISM Display」技術、3つ目が「DirectTouch」というタッチセンサーの消費電力を抑える技術です。

 4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャーは、ARMのCortex A9を基本にした4つのハイパフォーマンスのコアに加えて、1つの超低消費電力コアからなっています。超低消費電力のコアは製造プロセスの違いで実現しており、Tegra 3は40nmのGPで製造されていますが、この超低消費電力のコアの部分だけは40nmのLPで製造されています。GPとLPを比べると消費電力には桁違いの差がある一方、LPのコアはハイパフォーマンスな動作はできません。

 5つのコアをシーンと負荷に応じて使い分けるのが「4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャー」ですが、例えばゲームやマルチメディアアプリなど負荷の高い場合には4つのコアすべてが起動して動作します。Webサイトのロードでは1〜4つのコアが自動的に負荷に応じて動作します。スタンバイ状態であったり、音楽を聴いていたり、動画を再生しビデオデコーダー部分だけを駆動させたりしている場合は、5つめの超低消費電力コアのみで駆動します。コンパニオン・コアと呼ぶ5つ目のコアは自動的に動作するので、開発者は全く意識する必要はありません。これが、Tegra 3のみが搭載するVariable SMP(vSMP)という技術で、4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャーと呼んでいるものです。

 例えば、(サムスンやクアルコム、TIなどの競合)他社もクアッドコアの製品を近い将来に出すでしょうが、4-PLUS-1はエヌビディア独自の技術なので、消費電力の面では大きなアドバンテージを持っていると思います。

――Tegra 3を構成する「PRISM Display」はどのようなものでしょうか。

「PRISM Display」

 モバイルデバイスで最も消費電力が大きいのはディスプレイです。一般的に、デバイスの消費電力を下げるためにディスプレイの輝度を下げる、という動きをすると思いますが、そうすると見えにくくなり、画質も悪くなります。Tegra 3の「PRISM Display」では、画面上のピクセルひとつひとつを分析し、色が変わらないように調整しながら、ピクセル単位で色を明るくします。そして、ピクセルの色を明るくした代わりに、バックライトの輝度を下げます。そうすることで、目に見えるイメージは同じでありながら、バックライトの輝度を下げた分だけ消費電力を抑えることができます。ピクセルの色の変更で消費電力は変わらないので、結果的にバックライトの消費電力は最大で40%削減できます。

 もちろん、ピクセルの分析や演算などによる消費電力は発生しますが、Tegra 3などのSOCの消費電力は基本的に数百mW単位であるのに対し、バックライトは数W単位となっているため、トレードオフとしてTegra 3を駆動させても圧倒的にバッテリーの持ちを延ばせる技術になっています。ただし、この技術はバックライトを前提にしているので、有機ELなどには効果はありません。また、「PRISM Display」を搭載するかどうかは端末メーカーが選択でき、ディスプレイにあわせたチューニングを行って搭載します。

「DirectTouch」

 もうひとつの取り組みである「DirectTouch」は、タッチパネルのコントローラーの消費電力をカットするものです。今までのタッチパネルはセンサーからの信号をADコンバーターで変換し専用のコントローラーで処理した上でOSに渡していましたが、このタッチコントローラーを省き、代わりにTegra 3で行うというものです。これにより、タッチコントローラーが消費していた電力を削減でき、関連した周辺パーツの消費電力もカットできることになります。高性能なTegra 3で処理するのでタッチ操作の感度も上がります。ただ、こちらもタッチスクリーンのメーカーと互換性などでチューニングを行う必要があるので、すべてのTegra 3端末で採用されている訳ではありません。この技術では、Atmel、Cypress、Synapticsと協業して、Tegra 3と組み合わせて最適になるように開発しています。

 また、LTEモデムとの連携に関しては、ルネサス、GCT、富士通がパートナーになっています。これに加えて、自社のIceraのモデムもAT&Tの認証を通過し、市場に出る準備が整っている状況です。

 このように、すばらしい端末を作るために、チップだけでなく周辺のコンポーネントと連携し、よりバッテリーの持ちがいいといったことを実現しています。

 

速さだけではなく、新しい性能、新しい表現でユーザーにメリット

――Tegra 3を活かすコンテンツへの取り組みはどうなっていますか?

Tegra 3に最適化されたゲームは非常に高度なグラフィックス表現が可能

 前述したような連携やエコシステムは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアでも同様です。GPUはTegra 2と比較して3倍の性能で、12コアのGeForce GPUを搭載していますが、パフォーマンスだけではなく、これまでできなかった表現も可能になっています。

 弊社はTegra ZoneというWebサイトでTegra 2/3に最適化されたゲームを紹介しています。このゲーム開発者との協業はGPUメーカーとしてこれまで行ってきたことですが、ただ速く動くだけではなく、新しい性能や表現を実現できれば、ユーザーにとってもメリットがあります。

 Mobile World Congress 2012やCOMPUTEX TAIPEIでもいくつか発表しましたが、日本でも注目されているのが「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードII」(セガ)です。これは、プレイステーション3やXbox360でもリリースされていますが、それをそのままTegra 3向けに移植したものです。ほかの端末ではグラフィックやコンテンツの一部を削ってモバイル版を実現するのですが、Tegra 3版ではグラフィックも劣化していませんし、すべてのコンテンツが遊べます。Tegra 3ではUSB接続のコントローラーもサポートしているので、家庭用ゲーム機と同じ感覚で遊ぶこともできます。

 なぜコントローラーのサポートにも注力しているかというと、Tegra 2の頃に「見た目はいいけど、操作感が……」という意見が多かったからです。たくさんのゲームがありますが、すべてタッチパネルで快適に遊べるとは限らないので、ユーザーに選択肢を提供しています。このコントローラーのサポートもTegra 3のパッケージのひとつとして端末メーカーに提供しています。なので、すべてのTegra 3端末は、USBポートされあれば、USBコントローラーをサポートしていることになります。

 「ゴールデンアロー」というゲームでは、Tegra 3の新しい機能をフルに使い、新しいレベルのグラフィックを実現したゲームになっています。このゲームでは光の処理に高度なものが採用されています。例えばキャラクターの影ですが、今までのように丸だけではなく、キャラクターの形をしています。さらに、足の近くは影が濃く、頭の方にいくと影が薄くなる処理が施されています。これはダイナミックライティング、ソフトシャドウ、HDRなどの高度なライティング技術を採用した結果です。

 また、現実世界では、太陽が当たる明るい部分と影や屋内など暗い部分には通常、光の量に数億倍の差があるのですが、例えば屋外のシーンでは人間の目に写った時に自然になるように演算で算出しています。眩しい所、影がある所などのバランスがより現実的に表現されています。

 このように、Tegra 3はモバイルゲーム機という点でも優れています。3D立体視にも対応しているので、対応コンテンツをHDMI 1.4で対応テレビにつなげると、3D立体視でも楽しめます。

Tegra 3に最適化されたものには写真、動画の編集アプリなどもある

 ゲームだけでなく、さまざまなアプリもTegra 3に対応しています。写真編集アプリでは、これまでは写真を編集するならパソコンに転送していたところが、かなり高度な編集もスマートフォンやタブレットで、直感的に実現できるというものです。ワンタッチで効果を加えられますし、Tegra 3では効果の強さをリアルタイムに確認しながら決められます。編集をあまりしたことが無い人でも、トライ&エラーを繰り返すことなく直感的に操作できます。

 ビデオ編集アプリでは、外出先で撮影したさまざまな動画を、ひとつの動画に編集するアプリでも、Tegra 3向けアプリなら簡単にできます。複数の動画と音楽を選ぶとプレビューがすぐに表示されるのですが、リアルタイムで合成して表示しているので、順番を変えるなど変更はすぐに反映できます。パソコンでもこうした操作では、変更がある度に、プレビューが生成されるまで時間がかかっていたのですが、Tegra 3では快適に操作できます。

 

ワンチップはボリュームゾーン、2チップはハイエンド

――4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャーに代表される技術は、モバイル向けに注力した結果、実現できた技術ということでしょうか?

 パソコンの世界でも、ノートパソコン向けのGPUを手がけているので、どうやって消費電力を抑えるかという発想自体は共通している部分があります。Optimusという技術など、GPUを完全にオフにして内蔵グラフィックスを使うといった、同様の発想もあります。

――日本では、Tegra 3搭載スマートフォンはこれから発売されることになっていますが、スマートフォン、タブレットのどちらが中心と考えているのでしょうか。

 Tegra 3はどちらもターゲットにしています。Tegra 3の中にもタブレット向けとスマートフォン向けのパッケージがあります。

――日本のTegra 3スマートフォンはグローバルと比較して投入時期が遅くなっていますが、日本固有の難しさがあるのでしょうか。

 ひとつの課題は、通信部分でしょうか。端末は日本のキャリアの検証も必要です。

――エヌビディアとして、日本のキャリアの意向を汲んだような対応はありますか?

 どちらかというと端末メーカーがキャリアとそうした対応を行っているので、エヌビディアとしては、ほかのコンテンツなどの面での協業といった形になります。

――御社はGPUで有名な一方、モデムのIceraを買収し、新たに通信部分も積極的に展開していく方針だと思いますが、他社ではワンチップのメリットを打ち出しているところもあります。

 ロードマップにはワンチップ化もあり、2013年にはProject Greyというコードネームで開発されているソリューションが登場する予定です。これはTegraとIceraモデムをワンチップ化したものです。

――ワンチップ化された場合、今以上のメリットとはなんでしょうか。

 やはりワンチップはメインストリーム、ボリュームゾーンを狙うことになると思います。

 2チップも引き続き開発しています。2チップのメリットは、CPUの開発速度とモデムの開発・認証の速度が違うので、キャリアに認証されたモデムに最新のプロセッサーを組み合わせたいハイエンドモデルには2チップソリューションということになります。

――ビデオの処理に関して、メインの4つのコアではなく専用のコアを使うということですが、最適化されていれば消費電力は抑えられるということでしょうか。

 Tegra 3の中にある別のエンジンで処理しています。ビデオデコーダーがあるので、オーディオ専用回路と組み合わせて、処理しています。

 専用のハードウェアで再生したほうがはるかに消費電力は抑えられます。どんなアプリでも専用のハードウェアで処理したほうが消費電力は抑えられますが、すべてのアプリに専用ハードウェアを用意できませんから、ビデオ、オーディオ、カメラなどで専用のコアを搭載しています。

――ハードウェアで対応するということで、特定のフォーマットのみに対応するのでしょうか。

 そうですね。Tegra 3ではH.264、VP8など、現在使われているようなコーデックは幅広くサポートしています。

 

今後もTegra 3搭載端末が拡大

――Tegra 3を採用しているメーカーは、現状だと海外メーカーが多いようですが、今後日本のユーザーにも身近なところで採用メーカーは増えたりするのでしょうか。

 あります。Tegra 2のタブレットでは、シャープ、NEC、東芝、パナソニック、ソニーなどたくさんの日本メーカーで製品を出してもらえました。一方、スマートフォンではモトローラ、LG、Tegra 3ではやっと日本メーカーとして富士通で採用されました。

 今は案内できませんが、日本のユーザーにリーチしやすい身近なデバイスが今後発売されると思います。

――今はタブレット向けがメインというイメージですが……。

 それは、開発期間の都合ですね。スマートフォンは通信部分の検証を含めて比較的長い開発期間が必要で、実装しやすいタブレットのほうが早く市場に出てきます。

 Tegra 2では、結果的には搭載端末の機種数、販売台数ともにスマートフォンが多かったのですが、最初に出てきたのがタブレットなので、タブレットのイメージが強いのだと思います。

 キャリア向けという意味で、モデムの強化というのは時間の問題と捉えており、すぐに確立できない部分については、パートナーシップを強化していきます。

――OSサポートについてはAndroidがメインになると思いますが、今後はどうなるのでしょうか。

 Tegra 3はAndroidだけでなく、Linux、QNX、Windows CEなど幅広くサポートしています。顧客からサポートしてほしいという要求があれば応える方針です。車載機器などでLinux、QNX、Windows CEのサポートは既に完了していますし、Windows RTのサポートも他社に先駆けて行っています。

――Androidではリードデバイスの座をメーカーが重視する傾向もあると思いますが、OSを作っている側へのアプローチはどうでしょうか。

 Googleとは密に協業しており、Android 3.0のリードデバイスはTegra 2でした。Google I/Oでも多数の弊社のコードや功績が発表されています。Android 4.0に関しても、NEXUSの次にサポートしたのはTegraを搭載したASUSの「TF201」でした。Android 4.1では、リードデバイスの「Nexus 7」にTegra 3が搭載されています。

――端末の発熱に関して、国内の端末でも話題になることが増えてきました。防水対応させるために排熱で苦労されている面もあるようですが、クアッドコアにおける放熱対策をアドバイスしたりするのでしょうか。

 工夫のひとつは、ソフトウェアの制御によりどのようにコアを使うかというものです。あとは、ハードウェアのデザインになるでしょう。

 Tegra 3自体は4-PLUS-1クアッドコアアーキテクチャーの仕組みもあり、発熱が多い場合、4コアを動かし続けていたからと、理由が明確になります。たとえばASUSや東芝のTegra 3搭載タブレットではほとんど熱くなりませんし、そうした意味では設計の経験値やノウハウもあるのだと思います。ただ、メーカー独自のアプリがユーザーに何らかのメリットを提供するために、コアを動かし続けることもあるでしょう。

 開発への協力という意味では、メーカー担当の専任スタッフが弊社にいますし、約60名のエヌビディア・ジャパンのスタッフの約7割強がエンジニアで、エンジニアの6〜7割がTegraに携わっています。社内でも過去1〜2年でTegraに携わる人員が増えています。メーカーによってはグローバル市場を見据えているところもありますし、メーカーへのサポート体制という意味で他社に劣ることはないと思います。

――スマートフォンは販売面でキャリアの支援がありますが、タブレットではスケールメリットのある海外メーカーが価格面で優位と感じることがあります。

 コストに関しては我々も考えるところはあり、例えば前述の「DirectTouch」ではコントローラーの省略でコストを下げることにも貢献しています。メモリも通常のDDR3-Lを使用でき、ローコストのメモリを使って設計することも可能です。

 チップを売って終わりではなく、良い製品ができあがらなければいけないという視点は、ノートパソコンなどと同様、自然な感覚として持っています。既に弊社は199ドルといった価格帯のTegra 3搭載タブレットを開発するためのプラットフォーム「KAI」を発表しています(実際に、199ドルのNexus 7で採用された)。今後もこの価格帯の製品は登場する予定で、価格面ではまだ市場に動きはあると思います。

――ソフトウェア面でTegra 3の特徴を活かすような協業があるとユーザーにとってメリットも多そうです。

 我々のバックグラウンドであるパソコン市場では、ゲームメーカーと協業したり、その業界をリードするメーカーと協業して、世の中のゲームのクオリティを底上げしていく方針でした。Tegraでもモバイルゲームのクオリティを上げ、ハイエンドのゲームで市場を底上げしていくという方針は継承しています。ただ、コンパニオンコアのようなものはこれまでのパソコン向けGPUにはないので、そうした特徴にフォーカスするのは面白い取り組みかもしれません。

――本日はどうもありがとうございました。

 




(編集部)

2012/7/18 06:00