GALAXY Note IIインタビュー

グローバルで人気のNoteシリーズの最新モデルの魅力とは


GALAXY Note II(ドコモ版)

 今年4月に発売されたGALAXY Noteの2世代目の製品、「GALAXY Note II」が11月にNTTドコモから発売される。前モデル同様、大きな画面と専用ペンを持つ、スマートフォンともタブレットとも違った方向性の端末だ。

 今回はサムスン電子本社のある韓国ソウルにてプレスツアーが開催され、GALAXY Note IIの日本版の開発に関わった各担当者にグループインタビューをする機会を得たので、その模様をお伝えしたい。


シリーズの特徴である画面とペンはともに強化

製品概要を説明したチョ・ウンジョン課長

 まずはMarketing Groupのホン・ジヨン課長とMarketing Relations PR担当のチョ・ウンジョン課長がGALAXY Note IIのマーケティング戦略と製品概要についてプレゼンテーションを行った。

 GALAXY Note IIは、グローバルでは2011年、日本では2012年4月に発売されたGALAXY Noteの後継モデルだ。前モデル同様、5インチ超のディスプレイを搭載し、Sペンと呼ばれる専用のペン型入力デバイスに対応している。

 前モデルでは5.3インチ、800×1280ドットだった画面は、5.5インチ、720×1280ドットになった。面積的には増えているが、幅は細くなっていて、より片手で扱いやすくなっているのも特徴だ。

 GALAXY Noteシリーズの特徴とも言えるSペンも強化されている。筆圧感知の分解能が細かくなったほか、形状やペン先の素材も変更されている。また、ソフトウェア面でも改良されていて、たとえばペン先を画面に近づけると、接触する前に画面上にポインタが表示される「エアビュー」やSペンで書いたコマンドで検索やアプリ起動ができる「クイックコマンド」などの機能も追加されている。

 Sペン以外の機能としては、マルチタスク機能が強化された。バックキーをロングタッチすると、画面の左サイドにアプリが並んだマルチタスク用のランチャーが表示される。ここから任意のアプリを画面にドラッグすると、画面が2分割され、同時に2つのアプリを表示させられるという仕組みだ。これにより、たとえばWebを見ながらメモを取ったりすることが可能になっている。


画面を2分割し、異なるアプリを起動できるマーケティングについて説明したホン・ジヨン課長

 GALAXY Noteシリーズは、5インチ超のディスプレイとSペンにより、スマートフォンともタブレットとも差別化された端末だ。独自の方向性を持つ端末だけに、GALAXY Noteシリーズがどのような端末であるか、一般消費者に知ってもらうために、サムスンは全世界でさまざまなPR活動をしているという。

 そのひとつが、グローバルでの発表とは別に、各地域で発売にあわせて開催される製品のお披露目イベント「WORLD TOUR」だ。こちらは主に報道関係者などに向けたイベントとなっているが、ケータイの単一機種としては異例なほど大規模なものとなっている。日本での「WORLD TOUR」は、前モデルでも開催されていて、今回のGALAXY Note IIでも11月8日に開催される。

 もちろんテレビ広告などのPR活動も行われる。しかしサムスンは、こうしたPR活動だけでなく、「消費者の体験」が重要だとも説明する。GALAXY Noteという新しいカテゴリの製品では、実際に使ってみないとわからないことが多い。そのため、「GALAXY Studio」という一般消費者向けのイベントも行っている。

 GALAXY Studioは、街角に専用ブースを設け、訪れた人たちに実際にGALAXY Noteを体験してもらうというものだ。すでに日本を含めた世界各国の100以上の都市で開催されている。こちらは端末の発売と同時に行うのではなく、各地を順番に巡っていくような形式となっている。

ソウル市内のGALAXY Studio。写真は平日朝、オープン直後の様子だが、このあと、一般の人たちも多く来場していた

 なお、第三者による企業ブランド価値の調査では、グローバルにおけるサムスン電子のブランド価値は、世界の企業の中でも9位に向上している。昨年の18位から大きな躍進だ。しかしサムスンではこれだけに満足せず、消費者ニーズを把握し、それを効果的に伝えられるマーケティングを続けていくという。

シリーズの特徴である「Sペン」はハード・ソフトの両面から強化

 続いて、外見のデザインを担当したProduct Designのジョン・ジェウン責任研究員とユーザーエクスペリエンス(UX)面のデザインを担当したUX Designのキム・ユラン責任研究員の2人に、GALAXY Note IIのハードウェア、ソフトウェアのデザインについて聞いた。

――前モデルからの主な変更点・改善点はどのようなところでしょうか。

外見のデザイン担当のジョン・ジェウン責任研究員

ジョン氏
 デザイン面で言うと、前モデルでは幅が大きく、グリップ感が悪いという意見がありました。それを改善するために、GALAXY Note IIでは横幅を小さくするよう、画面の縦横比率を変更しました。さらに、より快適にグリップできるように、ラウンドフォルムとして、グリップ感を向上させています。

キム氏
 UXの面では、前モデルのとき、大画面が好評な一方、SペンはSメモ(標準搭載のメモアプリ)以外ではあまり使われない、ということがありました。そこでGALAXY Note IIでは、いろいろな場面でSペンが便利に使えるような機能を搭載しています。たとえばエアビューのように、Sペンにより新しいことができるようになっています。

――前モデルに比べ、画面は大きくなったが、解像度は減少しています。今回の720×1280ドットという解像度には、どのような意図があるのでしょうか?

キム氏
 主に2つの理由があります。まず、前モデルは幅が広かったので、片手で持ちにくいという面があり、これを細長くしたいと考えました。2つめは、映像コンテンツなどと相性が良い16:9の比率を維持したいと考えました。

――片手での操作がしやすくなるような仕組みはあるのでしょうか。

UX担当のキム・ユラン責任研究員

キム氏
 片手で使うときに重要なことは、文字入力です。そのために、左右の利き手で使えるよう、ソフトウェアキーボードを左右に寄せる機能があります。

――Sペンはどのように変わったのでしょうか。

ジョン氏
 前モデルでは直径5.5mmでしたが、今回は5.5~6.5mmの楕円形になっています。断面は、上側が半円で、下は平面になる形です。これにより、ペンを握って書きやすくなりました。太くなるだけでなく、長くもなっています。さらに筆記感を高めるため、ペン先のチップも、従来はプラスチックだったところがラバーとなり、実際に筆記しているときのような抵抗感が得られるようになりました。

キム氏
 Sペンの側面ボタンを使った機能を追加しました。たとえばSノートでは、ボタンを押すことでブラシの種類を切り替えることができます。文房具屋で売っている3色ボールペンのような機能です。このほかにも、どのアプリを使っていても、ボタンを押しながら画面上の任意の場所を囲むように線を描くと、その部分を切り出してメモに這い付けるイージークリップ機能なども追加しました。

 Sペンは、これからも新しい機能を搭載して進化していきます。しかしもっとも重要なのは、Sペンがエコシステムとなることだと考えています。サムスンはSペンを使ったアプリを作るためのSDKを提供し、これによりさまざまな開発者が新しいSペンアプリを開発できるような体制を整えています。

――前モデルを日本に投入し、そこで得たユーザーからのフィードバックはGALAXY Note IIに反映されているのでしょうか。

キム氏
 Sノートには全世界で同じテンプレートを用意していますが、日本向けに年賀状やお誕生日カードなども追加しました。日本の祝祭日に関する独自の挨拶状もありますので、そこに対応しています。

Sペンの改善で日本での成功を狙う

 最後にGALAXY Note IIの日本での商品企画を担当したProduct Plannningのカク・カンレ次長らに話を伺った。

――日本でのGALAXY Noteの売れ行きとGALAXY Note IIへの期待はどうでしょうか。

商品企画担当のカク・カンレ次長

カク氏
 GALAXY Noteはグローバルでは成功しましたが、日本での販売状況は、期待していたほどではありませんでした。この理由として、日本のユーザーは新しいジャンルの製品について、完全な製品ではないと受け入れてくれないからでは、との印象を受けました。

 GALAXY Noteでは、Sペンの使いやすさについて、完璧ではなかった部分がありました。GALAXY Note IIではSペンの機能を改善し、アプリや機能を追加しているので、売れ行きには期待しています。個人的には、GALAXY Note IIがGALAXY Sシリーズのレベルで売れてくれれば、と思っています。

――グローバル市場でGALAXY Noteが成功した理由はどのように分析されているでしょうか。

カク氏
 たとえば韓国市場は日本に比べてアーリーアダプターが多く、大きな画面に対する抵抗感も少ないと思われます。また、韓国では昨年7月からLTEサービスが開始されていますが、この高速な通信回線と大画面がシナジー効果を持ったのではないでしょうか。マーケティング面でも、キャリアとサムスンが協力し、良い結果を出せました。今回は日本でも積極的にマーケティングしたいと考えています。

――韓国ではGALAXY Noteシリーズが売れているのですね。

カク氏
 韓国ではフィーチャーフォンを持っている人はほとんどいません。GALAXY Noteシリーズも、GALAXY Sシリーズより売れているくらいです。

――日本独自のニーズとして、防水仕様については同お考えでしょうか。

カク氏
 商品企画の課題だと考えています。今現在、端末を防水にするのは、技術的には問題はないものの、デザインやサイズの面で問題があります。防水仕様については検討中の段階です。

――GALAXY NoteからGALAXY Note IIになり、5.3インチから5.5インチへと画面が大きくなりました。今後、まだ画面が大きくなっていくのでしょうか。

カク氏
 いろいろな意見があるところですが、まだどうなるかは決めていません。

――一方のGALAXY S IIIは4.8インチにまで画面が大型化しています。もう差はペンだけになるのでしょうか。製品の棲み分け的にバッティングする部分もあるのでは?

カク氏
 個人的には、その可能性もあると考えています。しかし、GALAXY S IIIシリーズは最先端機能と新技術を楽しむものです。GALAXY Noteシリーズは、新機能は搭載しますが、Sペンで何かをする、感受性やクリエイティブな部分で訴求するシリーズです。画面サイズが同じくらいになっても、それぞれのカテゴリで両立できるのではないかと思います。

――他社も液晶の高度化などでスタイラスペンを使えるように、などの工夫をされています。ペンの分野においてのGALAXY Noteシリーズの優位性とは?

カク氏
 Sペンはワコムの技術を使い、サムスンのケータイに最適な機能を提供しています。GALAXY Noteシリーズでこのカテゴリの市場が拡大すれば、他社の製品にも似たような機能が入るかも知れません。しかし、いまは技術的にも企画的にも、サムスンがリードしていると考えています。

GALAXY Note 10.1。Wi-Fiモデルは実売価格5万円程度

――グローバルで言うと、10.1インチディスプレイのGALAXY Note 10.1という製品もありますが、そちらを提供する予定は?

カク氏
 それも悩んでいるところです。日本ではiPadが強いので、それにどう対応するか考えています。

――GALAXY Note 10.1などはWi-Fiモデルもラインナップされています。3G/4Gを内蔵しないWi-Fiモデルなら、安価に販売できます。これを日本に投入する可能性は?

カク氏
 日本メーカーは日本に販売チャネルを持っていますが、サムスンは日本において、販売チャネルを持っていません。Wi-Fiモデルを日本に投入しても幅広く展開できません。また、日本市場ではキャリアとの関係もあります。個人的な考えですが、現時点ではキャリアさんと一緒に展開するのが良いと考えています。

――もっと小さいGALAXY Noteという可能性はないのでしょうか。

カク氏
 いまのところはありません。まずはGALAXY Noteシリーズを消費者の間で定着させることが重要だと考えています。日本ではまだGALAXY Noteは定着していません。そこにまずは集中していきます。

――日本では画面が大きすぎても売れないという心配もあります。このあたりについてはどうお考えでしょうか。

カク氏
 ユーザーの間には、そういった抵抗感もあると思います。しかし、それは変わるとも考えています。日本でのスマートフォンの普及は、ほかの先進国に比べて遅いペースです。遅いですが、来年くらいになれば5インチくらいのサイズにも抵抗感がなくなるのではないでしょうか。

――前モデルのGALAXY Noteではグローバルでの発表・発売と日本での発売にタイムラグがありました。しかしGALAXY Note IIではタイムラグがほとんどなく、日本に投入されていますね。

カク氏
 発売タイミングのギャップを縮めることを目標とし、頑張りました。おサイフケータイやワンセグなど、グローバルにはない機能で苦労しました。しかしGALAXY Note IIの場合、開発初期の段階から、日本向け製品を考えて開発を進めました。

――日本向け商品企画の難しさとは?

カク氏
 商品企画チームも小さいし、販売数もグローバルと比べると少ないです。日本の企画チームが要望を出しても、日本のケータイの文化がわかってもらえないので、説得するのが難しい状態です。

――日本ではまだGALAXY Noteシリーズの認知度は高くなく、PRがまだ必要かと思いますが、マーケティングよりも商品企画に力を入れるのでしょうか。

カク氏
 いろいろな意見があると思いますが、個人的には、まずは商品力がないと売れないと考えています。

――d'light(ソウルのサムスン電子本社の下にあるサムスンのショールーム)ではさまざまなGALAXYシリーズ向けのアクセサリが販売されています。一方、日本ではドコモが扱っているアクセサリが少なく、ちょっとうらやましく感じます。こうしたものを日本でも供給する可能性は。

カク氏
 かなり難しい課題だと考えています。まだ日本での事業はそれほど大きくありません。GALAXY Sシリーズはそれなりに売れていますが、韓国とは状況がぜんぜん違います。しかし今後は順次、準備していくと思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。




(白根 雅彦)

2012/11/6 13:50