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KDDI田中社長の考えるタブレット戦略とは


 11月30日、KDDIは「4G LTE」に対応したタブレット「iPad mini」「iPad」(第4世代)を発売した。同様にLTE通信機能をサポートした「AQUOS PAD SHT21」も12月中旬に発売する予定で、「iPad」シリーズを皮切りにLTEタブレットにも注力していく方針だ。一方で、製品ラインナップが少なかったこともあり、同社のタブレット戦略はこれまで明確に示されてこなかった。

 今回、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏にインタビュー取材を行う機会を得た。「iPad mini」の発売など新たな取り組みのほか、同社の戦略におけるタブレットの位置付けなど、全体像についても聞いた。


KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 

タブレットの普及時期「すぐそこに来ている」

――まず最初に伺いますが、「iPad」シリーズを扱うことで本格化するタブレットの戦略とは、どういったものでしょうか?

 KDDIとして、「3M戦略」を進めていくのがまずメインストリームです。スマートフォンのマルチデバイス対応はできていますし、先日からAndroid搭載のセットトップボックスも提供を開始しました。

 タブレットについては、伸びる、とずっと思っていました。日本は世界的に見てもタブレットのペネトレーション(浸透)が低い。ドコモさんもソフトバンクさんもいろいろ展開されていて、まだまだ時間がかかるなと思っていましたが、今は、そろそろかな、という感覚です。

 本当に、日本でタブレットが普及する時期がすぐそこに来ている。私達も気合を入れなければいけないし、躊躇しているユーザーを後押しする環境をつくらなければいけないと思っています。

 10インチサイズは、気軽な持ち運びという意味では難しい面もありますし、市場を立ちあげていこうと思ったら、もう少しハンディ(手頃なサイズ)なものが中心になるでしょう。今回、液晶がきれいでIGZOの、シャープの「AQUOS PAD」を発売しますし、「iPad mini」をラインナップします。これらを立ちあげることで、我々が本当に目指しているマルチユースの世界が来るんだと思っています。

 マルチユースについては現在、「スマートパス」として拡大していますが、もう一段階広げたいと考えていますし、iOS向けの提供もまだまだ不十分です。これを拡充していきます。

――すでに、auで扱うLTEタブレットを試用されていますね。いかがですか?

 自分で、今回のタブレットを使ってみてどう思うかというと、「いいよね」と(笑)。これまでも自宅でWi-Fi版を使っていましたが、“肌身感覚”として、ネットワークと(シームレスに)繋がっていないと感じていました。やっぱり、常に繋がっているのはいいよね、と。肌身離さず持ち歩いていると、そう実感します。朝や帰宅の移動中もタブレットを使うようになりました。

 私が思っているのは、ユーザーが外出中に使って「いい」と思われるようになったら、市場が立ち上がるということです。そのために何をするべきか。一つ目は買いやすくすること、二つ目はネットワークの拡充、三つ目はユースケース(機能/用途)です。この3つを揃えないとブレイクしないでしょう。

 先端層にはまず広がるでしょうが、大多数の一般的なユーザー層は、そもそも知らないことも多い。そうしたユーザー層が「これ欲しいよね」と言う状況にまで市場を立ち上げるのは非常に大変です。いかんせん、そこまではいっていないというのが現状ではないでしょうか。これまでのタブレットでは、「いいけど、いつも持っていたいとは思わない」ということも多い。7インチクラスのタブレットは、そうした意味でも市場を立ち上げるために、非常に良い製品です。私は、これで市場を広げられたら、さらに「3M」の世界観を実現できると思っています。

 

地下鉄は駅間もLTEで大幅にエリア拡大

 タブレット市場の立ちあげを目指して、いろいろな施策も行ってきました。まずは、LTEって速いよね、と(笑)。LTEの速さを一番エンジョイできるのはタブレットだよなぁ、と感じます。マーケティングワードとして言っているのではなく、“肌身感覚”としてですね。

 そのため、地下鉄のエリア拡大は、気合を入れまくっています。

――それはLTEで、という意味でしょうか?

 LTEです。タブレットはクラウドベースで利用する形になるだろうということもあります。

 地下鉄のエリア拡大は、2012年の12月末までに一気に立ち上げる方針で、全国の地下鉄の駅の94%以上をカバーする計画です。地下鉄の駅間については、全国で約47%、関東では約57%をカバーする計画です。

 2013年3月末までになると、関東の地下鉄の駅は100%、関東の地下鉄の駅間も90%弱までカバーする計画です。これって、スゴイですよ。

 タブレットは、立ちながら触るというよりは、ちょっと座って、じっくりと触れることが多いと思いますが、仕事の仕方、気持ち、そういうものが“繋がる”ようになります。今だと、スマホはスマホで少し世界が分かれている。

――なんとなく、スマホとそれ以外を使い方を分けているのは、実感としてありますね。

 そうですよね。集中が必要な調べ物とか、これは家のパソコンでやろう、これは会社のパソコンでやろうと考えてしまう。

 こうした、今までなら家や会社でやろうと分けていた使い方が、(タブレットにより)繋がる訳です。これは非常に重要なことだと思いますし、駅や地下鉄の駅間をエリア化していくことで、導線、気持ちが繋がると思います。地下鉄は相当、気合入れています。

――LTEの提供を機に、地下鉄も一気に拡大させることになったのでしょうか?

 そうですね、そういう世界にしたいなと思いました。まずはネットワークの構築が私達のできることですから。でもこれ(地下鉄のエリア拡大)って結構キーだよなぁ、と思っています。

 

「買いやすさ」「ネットワーク」「ユースケース」

 私達にとって、ユースケースは非常に重要です。まず端末(タブレット)を準備し、それも持ち運べる端末にし、「新たな世界はタブレットだよね」と打ち出していく。

 買いやすさですが、「ゼロスタート定額キャンペーン」を開始しました。auのスマホを持っていたら、基本料が0円〜で、au Wi-Fi SPOTの利用料490円が必要なので、合計の最低料金は490円〜になります。フラット型の定額やauスマートバリューを利用できるプランもあります。

 ユースケースとしては、「auスマートパス」をiPadやタブレットでも使えるようにします。すでに発表しましたが、iPhoneではスマートパスで提供しているHTMLベースのサービスを200件以上にまで拡大します。アプリについては、申し訳ないのですが遅れており、このまま有料化するのは忍びないということで、無料キャンペーンを2013年4月末まで延長することにしました。

 さらに、iOS向けに「うたパス」や「ビデオパス」なども、少し遅れますが提供する予定です。

 KDDIの戦略は「3M戦略」です。タブレットはラインナップに必須だと思っています。やっと7インチクラスのタブレットが揃い、本格的にAndroidとiOSで展開していきます。

 では、課題は何かというと、ネットワーク面では地下鉄で、ここはLTEで拡大していきます。料金については「ゼロスタート定額キャンペーン」を作ってユーザーにとっての障壁を無くし、端末価格についても購入しやすい価格のモデルがあります。

 私は「iPad mini」でメールをよく使うのですが、いいですね。すごく使っています。@ezweb.ne.jpのキャリアメールも、共通のアカウントで利用できますから、スマホと一緒に使っていても、非常に使いやすい。

 

au IDでマルチユースを実現、「一歩進んでいる」

――iOSとAndroidは、3M戦略の中では分けへだてなく扱われるのでしょうか?

 あまりどちらに傾倒するということはないと思います。それぞれ、ユーザーにも好みがあると思いますから。私は、スマホもタブレットも両方のプラットフォームを使っていますね。

 PCは相当ヘビーユーザーなんですが、今回のタブレットがやっとスマホとの間を繋いでくれると感じています。きっとみんな、そろそろ使いたい頃じゃないですかね(笑)。年末商戦は結構、タブレットがキーじゃないでしょうか。

――クラウドサービスについては、すでに3M戦略の中に組み込まれていますが、従来通りの方針で拡充していくのでしょうか。

 そうですね。重要なのは「au ID」で、au IDにはコンテンツへのアクセス、au Wi-Fi SPOTの認証、決済、の3つの役割があります。すでにau IDを利用し、マルチデバイスでコンテンツを共有できますし、タブレットへの最適化は現在も進めているところです。

 最初のステップは、障壁を無くすために低価格で提供することでした。広げることが重要で、コンテンツも良くし、次にキラーアプリとして「うたパス」や「ビデオパス」「ブックパス」などを提供してきました。ここは、もっと強化していきます。

 あとは、Facebook連携などもそうですが、ストレス無く繋がるように改善していかなければいけない。現在ではまだ、端末と利用するアプリ・サービスが一体化しています。タブレットがパソコンとスマホの間を繋いだように、アプリの世界も、端末とは関係無しに、途切れずに使えるようなところまで持っていかなければいけません。

 それでいて、欲しい物が揃っていなければならないとなると、まだまだやるべきことはたくさんあります。それでも確実に一歩進んできていると、自負しているところはあります。

 

LTE、クラウド対応で需要の予測は難しい面も

――iPad miniなどはすでにWi-Fi版が発売されていますが、LTE対応版の売れ行きはどう予想していますか?

 ちょっとよく分からないですね。というのも、これまでWi-Fi版はタブレットの8割を占めるとか言われてきましたが、世の中が変わり、ネットワークに繋がることが重要視されるようになったら、その比率は変わるわけです。今ネットワークはLTEですし、これから拡大する市場にどう出ていくのか。ユーザーに対し提案していかなければいけませんが、ちょっと先は見えない。半年ぐらいしたら、ああこうだったのかと振り返れるでしょう。

 私達のポイントは、来年はタブレットの時代がくると考えている、ということです。世界的に見れば日本の市場は“Late Comer”(遅れてきた/最後にきた人)だと見ています。

――タブレットがWi-Fi版で十分というのは、旧来の使い方だから、と考えることもできますね。クラウドの利用が基本になれば、どこでもネットワークに繋がる機能は必須にも思えます。市場動向という意味では不透明な材料かもしれませんが。

 でもそれって、明るい未来ですよね。3Gではぎこちない感覚もありましたが、LTEならストレスを感じなくなる。もっともっと、やりたいことが大きくなってきますね。

 

社長就任から2年が経過、自己評価は「70〜80点」


 この11月末で社長になってちょうど2年なんですよ。私の気持ち的には、iPad miniが11月30日に発売され、2年経って、やっとここまできた、という思いです。社長就任時は「3M戦略」を発表して、みんなに「なんや、こいつ」って言われたんですけどね(笑)、やっとここまでこれた。

 でも、来年はタブレットもセットトップボックスもみんな市場に出てきて、やっと、ユーザーに欲しい物を提供できる環境が整ったのかなと思っています。来期の方針は改めて発表します。

――社長就任時と、1年経過時にそれぞれインタビュー取材をさせていただきましたが、就任から2年を振り返っての手応えはいかがですか?

 正直な話、だいぶできたと思っていますよ。自分で点を付けるなら、70〜80点ではないでしょうか。ただ、ここでとどまってはダメで、「新しい自由、au」って言ったよね、と。もっとさまざまな、できることを提案しないといけないですね。

――本日はありがとうございました。

 




(太田 亮三)

2012/11/30 09:00