インタビュー

「MEDIAS X N-04E」開発者インタビュー

「MEDIAS X N-04E」開発者インタビュー

目にやさしい、人にやさしいスマートフォンへ

MEDIAS X N-04E

 3月1日発売のNECカシオモバイルコミュニケーションズ製「MEDIAS X N-04E」は、デザイン性と性能のバランスにこだわった全部入りのAndroidスマートフォン。同じタイミングで発表された2画面で折りたたみ型の「MEDIAS W N-05E」に話題をさらわれてしまった感もあるが、目の疲労を軽減するという「ブルーライトカットモード」のほか、おくだけ充電、「映像高画質化」エンジンなど、多数の先進機能を備えた高性能モデルが登場した。

 先日開催されたMEDIASシリーズ春モデルの説明会で、「SMARTPHONE IS MEDIAS」をスローガンに掲げた同社。MEDIASシリーズの中でもこのN-04Eは、幅広いユーザー層にマッチする製品として位置付けられており、今後のブランド展開や事業戦略において大きな鍵を握っている端末と言えるだろう。

 今回は同社が初めて採用するブルーライトカットの機能をはじめ、同端末のテーマや注目ポイントについて、開発に携わった同社商品企画部の凌晶氏と酒井健一氏、事業推進部の田島尚幸氏、そして同社クリエイティブスタジオの吉村義崇氏にお話を伺った。

「ブルーライトカットモード」は流行に乗ったわけではない

凌晶氏

――まずはMEDIAS X N-04Eの概要について教えていただけますか。

凌氏
 前モデルとなるMEDIAS X N-07Dから約8カ月ほどお時間をいただき、今回発表させていただいたのが新しいMEDIAS X N-04Eとなります。MEDIAS Xシリーズならではの高級感のあるデザインに、クアッドコアCPUや色鮮やかな有機ELディスプレイを搭載していまして、“エレガントなデザインの中に全部入り”という点は従来のMEDIAS Xシリーズをきっちり継承しました。

 4.7インチの色鮮やかな有機ELディスプレイを採用しただけでなく、「映像高画質化」という動画を美しく見ていただける機能を取り入れています。NOTTV対応ということもありますし、YouTubeや、自分で撮影したフルHD動画をきれいに見たいというお客様に向けたものでして、シーンに応じて彩度などを自動調整し最適な画質で表示します。

 また、今回はおくだけ充電にも対応しています。端末を充電パッド上に置くだけでなく、立てかけるようにして充電もできるという、2 Wayで使えるワイヤレスチャージャーとスタンドを同梱して、日常の使いやすさというところにも注力したモデルとなっています。

 前回のN-07Dはフィーチャーフォンからの買い換えユーザーをターゲットにしていたんですけれども、N-04Eについては、そういうお客様だけでなく、スマホからスマホに買い換えるお客様もカバーしています。すでにスマートフォンを自分らしく使いこなせるよ、というお客様にも、「ブルーライトカットモード」をはじめとした機能を充実させて、魅力あるものに仕上げました。

――N-04EはDisney mobileのN-03Eのベースとも言える端末ですが、スペック的に見ればN-03E自体が元々ポテンシャルの高い製品だったと思います。そこからN-04Eになって変わった部分はありますか?

凌氏
 おくだけ充電を搭載したのと、microSDカードスロットを搭載した事、それとブルーライトカットモードと「スタンバイモード」が搭載されたことですね。重量が約10g重くなっているのは、おくだけ充電のためのコイルを追加したことが影響しています。

 ソフトウェア上の細かいところで言えば、Android OSが4.0から4.1になりました。また、N-03Eから通知パネル内の機能切り替えボタンをカスタマイズして使い勝手を高められる設定も行えるようになっていて、N-04Eでは新たに「ブルーライトカットモード」が切り替えボタンに加わっております。

――メインとなるウリはやはりブルーライトカットモードでしょうか。

凌氏
 もちろん今申し上げたような弊社独自の機能を盛り込んでいるのもあるんですけども、やはり新しく追加したブルーライトカットモードには特に注目していただければと思います。

 このブルーライトカットモードを搭載するにあたっては、エネルギーが強く目の疲れの原因になると言われているブルーライトを何%カットするべきか悩みながらも、最終的には30%カットとしました。50%もカットするようなパソコン用のメガネが出ていたりするのですが、カットする割合に応じて実際にどれくらい疲労軽減に効果があるのか、専用の装置を用いて検証した結果なんです。

酒井健一氏

酒井氏
 まず初めにお断りしておきたいのですが、ブルーライトをカットするメガネが流行っているからこの機能を搭載した、という安直な考えはありません。急激にスマートフォン市場が伸び、WebやSNS、動画を長時間閲覧するような人が増えて、スマートフォン・シンドロームといいますか、“VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群”というのが問題になってきました。スマートフォンのような機器を長時間使用し続けることによって、目や身体や心に支障をきたす病気が増えたりして、最も身近なスマートフォンが人体に悪い、というマイナスのイメージができあがりつつあるのかな、と思っています。

 そんな中、我々NECグループのビジョンというのが、「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバル・リーディング・カンパニー」となっています。“スマートフォン=悪”というようなイメージを払拭したいという思い、人にやさしいスマートフォンでありたい、というところから出発して、ブルーライトカットモードを搭載することになったわけです。

 しかし、ブルーライトカットの機能をただ搭載するというのではなく、きちんと評価して、効果があるとわかったものでないと出してはいけないと思いました。その評価にはかなり時間がかかりまして、N-02EやN-03Eはその評価が間に合わなかったので載せられなかったという経緯があります。

――具体的にはどのような方法で評価を?

酒井氏
 被験者に1日中スマートフォンを使い続けてもらったり、長時間ゲームをやり続けてもらって、その前後での眼疲労の度合いを測るなど、識者の意見をもとに多角的な評価を行いました。この眼疲労というものを数値化するために、フリッカー装置というもの使ってフリッカーテストを行っています。眼科医院でも使われているもので、疲労度評価を行う際の基準を作る際に使われるものなんです。

 装置の中を覗いていただくと、赤い点が見えます。テストをスタートすると最初は点灯していますが、その点が徐々に大きくちらつき始めます。点滅し始めたと思ったところで手元のボタンを押してください。目が疲れているほど大きなちらつきも認識しにくくなるため、ボタンを押すタイミングが遅くなって、検査結果の数値が小さくなる、ということになります。

覗き込むと見える赤い点が点滅し始めたと思ったら、手元のボタンでストップ。計測結果は数値で表示される

 つまり計測した数値が低いほど疲れていることになります。ただ、この数値は絶対値というわけでもありません。普段疲れていないときの数値がいくつで、疲れたときにどれくらい下がるか、というのを見るものなので、人によっても変わります。実際にはこのフリッカーテストと、問診評価とを合わせて総合的な疲労度を検証しました。

左が通常画面、右がブルーライトカットモードをオンにした状態。わずかに赤味がかっているのがわかる

凌氏
 こういったテストを行いつつ、20~50%の間でブルーライトのカット率を変えて疲労度の数値と見比べながら評価を行ったのですが、30%を超えると黄色味や赤味が増えてきて見づらくなる、ということがわかりました。その結果、一番効果があると考えられる30%に決めたんです。

 社内ではカット率を変えられるようにしたらいいのではないか、という意見もあったんですが、我々としてしっかり効果があるものをお客様に届けたいというところから決めた数値となります。

――逆にカットしすぎても疲れてしまうということですか?

凌氏
 そうですね。黄色味や赤味が強くなってしまうと、逆に画面が見づらくなってしまう、といったところでの疲労感というのが出てきてしまうんです。

 これは問診評価でわかった部分なのですが、たとえば空は本来青いはずなのに、なぜ黄色や赤になってしまっているんだろうと、人間が頭の中で考えてしまってかえって疲れてしまう、ということがあるみたいなんですね。

――ブルーライトカットの機能はソフトウェアで実現しているのでしょうか。もしそうであれば旧機種にも応用できるのでは?

酒井氏
 デバイスに依存しているところもありますが、ソフトウェアで実現することも可能かもしれません。もちろん、その機種ごとにきちんと効果があるか、というところも改めて検証しなければいけないと思います。

スタンバイモードによる17%の節電は、皮1枚の削減

――ブルーライトカットモード以外の注目ポイントとしては他に何があるでしょうか。

凌氏
 電源ボタンを長押しすると現れるメニューに「スタンバイモード」を追加しています。これを選ぶことで仮想的な電源オフ状態を作り出して、通信をすべてオフに、画面も真っ暗にして、アプリのアラームなども一切音がしなくなります。ユーザーからはほとんど電源オフ、という見え方になります。

 通常の電源オフでは、オンにしても使い始めるまでに時間がかかってしまうという課題がありました。オフの間にメールや電話着信が溜まっているかもしれないのに、確認できるまでしばらく待たなければなりません。スタンバイモードは、あくまでも仮想の電源オフですので、電源ボタンを2秒間長押しするとその後0.6秒で端末が使用可能な状態になります。

 スリープ状態よりも電池持ちを長くできるのが利点で、17%ほど電池が長持ちしますので、仕事中など画面をほとんど見ることがないときに使っていただければと思います。

――17%という数値だけ見ると、一般的にはさほど大きな省電力になっていないように感じる気がします。

酒井氏
 そもそもスリープ状態でかなり省電力化できていて、そこから皮1枚削って17%という数字を絞り出しているんですよね。とはいえ我々としては、ユーザーの利用シーンを制限してまで省電力化を図ることよりも、普通に使っているときにどこまで省電力化を図れるか、というのが一番の目指すべきところだと思っています。

――ちなみに、飛行機に乗るときは機内モードとスタンバイモードのどちらを使えばいいのでしょうか。

凌氏
 航空会社の指示通り、電源OFFもしくは機内モードにしていただければと思います。というのも、スタンバイモードでは全てのアプリを終了させる仕組みを入れてはいるものの、我々の想定外の挙動をするアプリが世の中に出てくることもありえますので、病院ですとか、飛行機の中など、制限のある場所では機内モードか、電源をオフにしていただくのが鉄則となります。仮想の電源オフ、という言い方をしています通り、決して完全な電源オフではありませんので。

――ホームボタンのような位置に画面をオン・オフするためのボタンがあります。これを用意した理由は?

凌氏
 N-03Eから引き続き搭載しているボタンで、「ウェイクアップ/スリープキー」というものになります。側面にある電源ボタンで画面をオン・オフする端末が多いのですが、スマートフォンでは親指で操作する場合が多いですから、画面と同一面上にオン・オフのためのボタンを設けることで、「画面表示した親指でそのままタッチ操作に移れるようにしたい」というユーザーの方の要望をかなえたものになります。Androidでは標準的には存在しない機能のボタンですので、構造チームが頑張って作りました。

 ボタンの長押しを別の機能に割り当てる、という使い方も検討しましたが、やはりシンプルに画面をオン・オフできるというところ訴求するために専用ボタンにしています。

――その他にも注目してほしい機能はありますか?

凌氏
 Disney mobile N-03Eでも実は搭載していたのですが、にぎやかなところを歩いていたりして着信に気付かなかった場合、立ち止まったことを加速度センサーで検知して再度お知らせしてくれる「受信リマインダー」という機能があります。電話着信やメールなど、再度お知らせしてほしいものとお知らせしてほしくないものをユーザー側で選べるようになっていて、何回でも気付くまでお知らせを繰り返してもらう、といった設定も可能です。

 それから、「Wi-Fi自動ON/OFF」も活用していただきたいですね。帰宅したときや、会社に出社したときなど、Wi-Fiに切り替えてほしい場所に着いたら自動でWi-Fiをオンにして接続するというものです。3G/LTEの基地局に個別に割り当てられているセルIDを見ていますので、自宅を離れて異なる基地局に切り替わった場合はオフになって、一度Wi-Fi設定したことのあるオフィスなどに着いて既知のセルIDの基地局に切り替わったらまたオンになる、という仕組みになっています。

 Wi-Fiが自動でオフになることで省電力になりますし、いちいちユーザー自身がオン・オフを切り替える手間もなくなるというのがメリットですね。自動でオンにする場所はメモリが許す限り、何カ所でも登録できるようになっています。

コーティングとチューニング、デザインの工夫でサクサク動作を実現

田島尚幸氏

――ハードウェア、ソフトウェアを含め、操作性の面でもさまざまな工夫がなされているとのことですが。

田島氏
 ディスプレイ表面に特殊なコーティングをしています。今までのコーティングとはかなり変えた、最新の技術を用いたものです。指との摩擦をかなり軽減していまして、実際に画面に触っていただくと、非常に滑らかな感触になっていることがわかると思います。フリックなどもしやすく、ゲームなどもプレイしやすくなっています。

 このコーティングには指紋がつきにくい特長もありまして、まず摩擦が軽減されていることから、そもそも指紋が付着しにくく、もしついてしまっても拭き取りやすい、というメリットがあります。他の端末のディスプレイだと、拭いたときに指の脂が延びる感じがあると思うんですけども、N-04Eでは簡単に、すっと拭けるんです。

――新しい端末だとどうしても画面に保護フィルムを貼りたくなってしまう人もいそうです。

田島氏
 もちろん貼っていただいてもいいんですが、貼らなくても滑らかで汚れがつきにくいですし、まず買った直後に感触を確かめていただいて、「貼らなくてもいけるんじゃない」というのを感じていただければと思っています。Corning Gorilla Glass 2を採用していて傷にも強いですから。

――ソフトウェアにはどういった工夫があるでしょう。

田島氏
 たとえば文字入力はよく使われる機能だと思うんですが、これにもこだわりがありまして、キーボードの縦横サイズを入力モード時に自在に調整できるようになっています。キーボードサイズが大きすぎる、というお声をよくいただくんですけども、そのご要望に応えた機能ですね。簡単な操作ですぐにキーボードを小さくできて、利き手に合わせて左右どちらかに寄せることもできるので、より使いやすく、文字入力が快適になります。

凌氏
 縦置きと横置きで別々のキーボードレイアウトを保存できて、シーンに合わせて使い分けられるようになっているのもこだわったところですね。

キーボードの縦横サイズを最も縮めて右寄りにしたパターン
最大サイズにすると画面のおよそ半分以上を占めることになる
横置き時は縦置き時と異なるレイアウトにしておくこともできる

――ハイスペックな性能だけが操作性を良くしているわけではないと。

田島氏
 お客様に快適な操作性を提供するという観点から、社内で“サクサクプロジェクト”というものを発足して活動しています。1.5GHzのクアッドコアCPUと、2GBのRAMを積んだことによる速度アップもありますが、タッチの正確性や追従性はもちろんのこと、スクロール動作についても速すぎず、遅すぎず、お客様が心地よく使えるようチューニングを施しています。さらに、スリープからの復帰時間の速さや、「瞬撮カメラ」と呼んでいるカメラの起動時間約0.6秒、撮影間隔約0.2秒というのも実現することで、全体的なサクサク感に寄与しています。

 先ほど申し上げたとおり、スマホからスマホへの乗り換えユーザーとともに、フィーチャーフォンから初めて乗り換えされる方も想定した機能を実装しています。

 たとえばフィーチャーフォンではボタン操作だったものが、スマートフォンではほとんどタッチパネルで行いますので、ボタンを押したときのクリック感がないと本当に押せているのかわかりにくいという不安があります。これについては、文字を入力するときにわかりやすい振動で伝えることで、しっかり入力できていることを知らせる「フィーリングタッチ」をN-07Dから継続して搭載しています。フィーチャーフォンからの乗り換えでも安心、快適にお使いいただけるはずです。

吉村義崇氏

――操作性という点では、端末のデザインも重要な位置を占めるかと思います。

吉村氏
 前モデルのN-07Dはラウンドフォルムで持ちやすさを意識していたところがあるので、今回のN-04Eもラウンド感を意識してデザインしています。正面から見るとわかるのですが、両サイド近くのガラスを曲面にすることで、よりラウンド感を感じられる見た目にしているんです。

 また、おくだけ充電に対応したワイヤレスチャージャーとスタンドを同梱していますが、ワイヤレスチャージャー表面には印刷ではなく凹みをつけて端末を置く方向を示すガイドを付けたりするなど、細かい気配りをしています。ワイヤレスチャージャーをスタンドに立てかけたとき、正面から見てできる限り物量を感じさせないように削ぎ落とした見た目にしているのもデザイン上の工夫です。

凌氏
 従来のパッド型のワイヤレスチャージャーのみですと、さっと端末を置いただけでは微妙に位置がずれて充電が始まらない、ということになりがちなんですが、このN-04Eではスタンドと組み合わせて使ったときに自動的に位置決めされる構造になっていますので、確実に充電できるという利点があります。

ワイヤレスチャージャーはパッド部分とスタンド部分に分かれている
正面や斜めから見たときに余計なエッジ部分が見えないスリムなデザインになっている

――さまざまな機能や工夫が盛り込まれた端末になっていますが、ブルーライトカットは今後その中でも大きな要素の1つになるでしょうか。

酒井氏
 元々ブルーライトカットモードが商品訴求の武器になるとは考えていません。目にやさしく、人にやさしい端末を目指すための1つの機能であって、これがあるから買う買わない、というお客様の判断基準になるようなものでもないと個人的には思います。ブルーライトカットに止まらず、さらにその先の、もっと目にやさしい、もっと人にやさしいという部分をどう進化させていくかしっかり考えて、NECカシオのファン獲得につなげられればと思っています。

――本日はありがとうございました。

日沼諭史