インタビュー

シャープ、ドコモ端末開発者インタビュー

液晶で攻め、移行ユーザーも気持ちよく使える3端末

 2013年のドコモ夏モデルとしてシャープから供給されるのは3機種。フラッグシップ機となるスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」と、コンパクトさ重視の「AQUOS PHONE si SH-07E」、そしてフルセグに対応したタブレット「AQUOS PAD SH-08E」だ。

 他社製端末も含め、ハードウェアスペックが横並びに見えがちな中、シャープは独自の省電力IGZOディスプレイなどをアピールしているが、それだけでなく、他社にはないこだわりや、フィーチャーフォンで培ったノウハウをふんだんに盛り込んできた。そんな3機種の魅力を、各端末の開発に携わった担当者に伺った。

ドコモの夏モデルとしてリリースされるシャープの3端末

“リアリティ”にとことんこだわった「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」

シャープ 通信システム事業本部 マーケティングセンター マーケティング企画部 副参事 小林繁氏

――今回のドコモ夏モデルでは3機種を揃えてきましたが、それぞれのポイントを簡単に教えていただけますでしょうか。

小林氏
 「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」からお話しさせていただきますと、前回の秋冬モデルで「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」というIGZOディスプレイの電池持ちで勝負をかけた端末を出しましたが、SH-06Eはその正統進化版になります。より“リアリティ”を追求し、4.8インチ、フルHDのIGZOディスプレイを搭載しました。すでに発売していますが、お買い上げいただいたお客様にはご好評いただいています。

 もう1つのスマートフォンが、6月21日発売の「AQUOS PHONE si SH-07E」になります。サイズ感、使い心地にこだわった秋冬モデルとして「AQUOS PHONE si SH-01E」がありましたが、それを進化させ、さらに狭額縁の技術などを用いてハードウェアを詰め込みました。4.3インチの液晶サイズがありながら、コンパクト感とカジュアルな使い勝手を極めたモデルです。

 最後の「AQUOS PAD SH-08E」は、こちらもIGZOディスプレイを搭載したタブレットでして、大きな特長としてはフルセグ対応、それと電池持ちの長さで、ドコモさん向けとしては「AQUOS PAD」ブランドで初めて出すモデルになります。従来製品よりハードウェアも中身も進化していて、サイズも7インチと手頃ですし、日常から便利に使えるのではないかなと思います。発売予定は7月下旬です。

 以上の3端末は、いずれも液晶の技術を核において商品展開していくものになります。

シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事 三枝卓矢氏

――その中では「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」がフラッグシップモデルになるかと思います。こちらのコンセプトや特徴などをお聞かせいただけますか。

三枝氏
 今説明がありましたように、「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」はIGZOディスプレイを採用し、それがフルHDに進化したモデルです。前機種のSH-02Eが「余裕の2日間」というキャッチコピーで電池持ちをアピールしていたように、お客様にとってはスマートフォンの電池持ちが大きなメリットの1つだろうと我々は考えています。それを今回フルHDにしてさらに消費電力が増えやすくなるのもあり、SH-02Eの「2日間」をどう超えていくか、というところにチャレンジした機種でもあります。

 また、2012年の夏モデルから「Feel Logic」という開発コンセプトで、無機質なスマートフォンに人間の感性を反映させていくにはどうしたらいいか、本質的な部分での使いやすさをどう向上させていくか、という点も考えながら開発してきました。

AQUOS PHONE ZETA SH-06E

――ハードウェア面ではどのあたりを重視して開発したのでしょうか。

三枝氏
 電池持ちと、液晶の見やすさに的を絞りました。“シャープといえば液晶”といったイメージがあるので、“IGZOディスプレイだから省電力”という単純な話にするのではなく、高精細なフルHDでも電池持ちは前回を上回ろうという気持ちで、開発陣が余分な電力を少しずつ削っていきながら、なんとかテレビCMにあるように「2日間を超えて」という形に仕上げました。

 カメラは前機種が約1630万画素であるのに対して、SH-06Eが約1310万画素と画素数は落ちるのですが、その分写真を撮った時の美しさにこだわり、F値1.9のレンズを搭載しました。光学手ブレ補正も搭載して、暗い場所でもブレることなく明るく撮れるようにしたので、いつでもどこでもきれいに撮れるはずです。

 さらに、ポータブルデバイスという観点から、音楽関連の機能にも力を入れました。イヤフォンを挿入した時に音楽アプリを起動したり、FMトランスミッターとの連携機能を備えたり、さらにはWolfson製のオーディオチップを使って音質を向上させるだけでなく、75時間の長時間再生も実現しています。

 常に身近にある端末なので、手に持った時のデザイン性はもちろんのこと、触り心地にもこだわりました。サウンドフィードバック技術のハプティクスを使って、アイコンのタップで端末を生きているかのように振動させたり、リスト画面の上下スクロールの端でバウンドした時に振動させるなど、画面を見た時の“リアリティ”だけでなく、触れた時の“リアリティ”も実現して、心地よさを追求しました。

背面のラベルにも濡れている場合は充電しないようにという注意書きがある

――防水でありながらもUSB端子はキャップレスを実現しています。これにはどういった狙いがあるのですか?

三枝氏
 充電時にカバーをいちいち開けて……というのは、お客様がわずらわしさを感じるのではないかと考え、調査した結果、やはりカバーがない方がいいという声が多かったんです。社内でも議論しながら、少しでも使い勝手を良くしたいという気持ちでキャップレスを実現しました。おくだけ充電にも対応していますが、今回は充電パッドを同梱していませんから、少しでもUSBでの充電がしやすくなるんじゃないかと思っています。

――キャップレスのUSB端子を使う際に注意しておいた方がいい点はありますか。

小林氏
 お客様に対しては、濡れていたら必ず水を抜いてから充電してください、もし何か付着してしまった場合はむしろ水で洗ったあと、しっかり水を抜いてください、とお願いしています。端子そのものに水が付くことは危険ではないですし、端子部分も水が留まりにくく、抜けやすいという安全面に配慮した設計になっています。端末を振っていただければ水は出ていきますから問題ありません。

――卓上ホルダー、あるいは充電パッドを同梱しなかったのはなぜでしょう。

小林氏
 USBがキャップレスですぐにケーブルを差せるというのが、卓上ホルダーを用意しなかった理由の1つでもあります。それと本体のデザインによる影響もありますね。本体の側面がまっすぐ立ち上がった形状であれば卓上ホルダーを作りやすいのですが、SH-06Eのように“手当たり”を重視したラウンドフォルムでは、卓上ホルダーのデザインに与えるインパクトもそれなりに大きいのです。フルセグ搭載端末のように、卓上ホルダーで端末を立てて使う用途が明確なものであれば同梱の必要性も高いとは思うのですが。

 充電パッドは、我々としても同梱していた方が利便性が高いだろうとは思っていました。けれども、非接触充電が普及し始めてから結構時間が経っていまして、すでに1個目の充電台をお持ちの方も多いんですね。充電台はかなり値も張りますので、コスト面からも同梱すべきかどうかという議論があり、今回は同梱しませんでした。とはいえ、最近はワイヤレス充電台がお店などに置いてあることもちょっとずつ増えてきましたので、パッと置いてパッと充電、という感じに、出先で手軽に充電できるメリットはあるかと思います。

――シャープでは以前から端末の内部構造にもこだわっていますが、SH-06Eの内部構造について具体的に教えていただけますか。

小林氏
 端末の断面で言うと、前面となる上が液晶、中央に電池、背面が基板という順に重なっています。今回の特別な部分としては、店頭で電池を交換していただけるところですね。特殊工具を使って、端末の下部から電池を抜ける構造になっています。

 お客様ご自身による電池交換が不可である従来の内蔵方式ですと、交換のためにショップに預ける際に端末をリセットして、ユーザーデータをすべて消さなければなりません。預けている間は使い慣れたスマートフォンから離れて代替機で過ごさなければならず、これはユーザー体験としてあまりよくありません。ショップですぐに交換できるのは、そういう面で大きなメリットだと思っています。店頭でも電池の在庫や、本体の状態によって、即日その場で交換できない場合もあるかもしれませんが。

 実は、この電池の部分は技術的に最も苦労したところなんです。本当はお客様ご自身に交換していただけるのが理想的ではあるんですけれども、工具を使わないといけないですし、今回はショップで対応していただくこととなりました。

――一般的な端末では最下層が電池になっているかと思います。なぜSH-06Eは中間に電池が、背面に基板がある構造にしたのですか?

小林氏
 1つは放熱対策です。基板は良く熱を通すので、チップセットなどで出た熱が基板を伝って広がるようにしているんです。弊社では基板を薄く、広い面積にすることで、基板全体から外殻にも熱が逃げやすいようにしていています。熱は局所的に集中してしまうのが一番良くないのです。

 また、厚みのある電池を最下層に配置してしまうと、デザイン上どうしても端末のサイドが立ってしまうんですね。そうならないようラウンドフォルムに合わせて電池を内側に寄せていくと、今度は電池容量が少なくなってしまいます。おくだけ充電の充電コイルを入れて、これだけの電池容量(2600mAh)で、この薄さに収まっているのは、従来の技術ではなしえなかったものになります。そこは我々として誇れる技術かなと思っています。

ガラスインサート成形でコンパクトさを追求した「AQUOS PHONE si SH-07E」

シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 林里奈氏

――次が「AQUOS PHONE si SH-07E」ですね。こちらの特徴はどういったところになるでしょう。

林氏
 「AQUOS PHONE si SH-07E」で一番こだわったのは、サイズ感になります。端末幅が約59mmと狭いながらも液晶が4.3インチで、片手で持てる大画面というところを追求しました。この狭額縁とコンパクトなサイズ感を実現したのが、ガラスとキャビ(フレーム)を一体成形する「ガラスインサート成形」技術です。

 4.3インチというのは、今回の夏モデルのラインナップでは一番画面サイズが小さいことになるんですけれども、ホームなどの3つのキーをハードウェアキーとして画面外に配置していますので、ソフトウェアキーの端末で言えば4.5インチ並みの広さと言えます。画面の小ささはそれほど感じないだろうと思っています。

 初代の「AQUOS PHONE si SH-01E」もそうでしたが、スマートフォンは普段から使うものなのでスペックでは妥協したくないお客様も多い。ですから、フラッグシップであるSH-06Eと同様のクアッドコアのチップセットや、大容量メモリをきちんと搭載して、より長く、毎日安心してガシガシ使っていただけるような端末を目指して開発を進めました。IGZOディスプレイではないのですが、省エネ設計ということで、さまざまな箇所の電流値を抑えることにより、ドコモさんの基準で60時間以上、つまり2日を超えた実利用時間を実現しています。

 SH-06Eとは異なり、このSH-07Eの構造は一般的な液晶、基板、電池という順番でサンドしていて、背面カバーを外してお客様ご自身で電池を交換していただけます。

AQUOS PHONE si SH-07E

――ターゲットユーザーはどちらかというと女性寄りでしょうか?

林氏
 はっきりとした女性向けの端末はすでに発売している「AQUOS PHONE EX SH-04E」になるんですが、今回はそれよりはもう少し中性的なところを狙おうと考えました。カラーバリエーションもスポーティーっぽいものにして、サイズ感にこだわりたい女性のお客様から、小さいものがいいとおっしゃる男性の方まで、広い層をターゲットとしています。SH-01Eのときも後から2色、BlackとBlueを追加販売して、男性のお客様に人気が出ましたので、今回もそのラインを狙っていきたいなと思っています。

小林氏
 以前ほど“大きかったら男性、小さかったら女性”みたいな感じはもうないですね。ポケットに入れる方も多いので、男性が小さいものを好まれる傾向もあります。AQUOS PHONE siは、初代がなんとなく女性っぽい雰囲気でデビューして、プローモーションもそれを狙った内容にしていましたが、今回のモデルでは商品企画段階からあまり女性を意識していません。端末の壁紙も結構クールな感じにしています。

新技術「ガラスインサート成形」で組み立てられ、ガラスとフレームは完全に一体になっている

――5インチクラスの端末が多くなる中で、4.3インチというコンパクトサイズの端末は貴重かもしれません。

小林氏
 Android端末がどんどん大きくなってきたせいで、コンパクトなサイズのゾーンがガラッと空いています。そのあたりのサイズゾーンの製品が比較的手薄なように見えますし、こういうサイズ感の端末が欲しいお客様には響くんじゃないかなと思います。

 それに、この「ガラスインサート成形」技術は実物を見ると驚きますよ。普通はガラスをはめ込む時に力を加えすぎるとガラスが割れてしまいますし、パーツの冷却の仕方によっては品質が悪くなったりします。ガラスと色の付いたキャビネットが一体で組み立て用機械から出てくるのは、私自身も初めて見た時には本当にびっくりしました。

――SH-06EとSH-07Eを比べた時、差別化のポイントはどこにありますか。

小林氏
 SH-06EはIGZOディスプレイを使っていてフルHDである、というところが大きく、“リアリティ”をとことんまで追求しています。さきほどハプティクスについてお話させていただきましたが、振動でまさにスマートフォン自体が“生きている”かのような反応をするわけです。そういう意味でのリアリティや、見た目の画質面でのリアリティ、専用チップによる音質面でのリアリティなど、それらを突き詰めていったのがSH-06Eということです。ナンバーワンを目指すフラッグシップという扱いですね。

 一方でSH-07Eは、どちらかというとカジュアルに、気持ちよく使ってもらうというところにフォーカスしています。気張らずに使えるサイズで、片手でしっかり使えます。スマートフォンではFacebookとLINEとメール、あとはWebブラウジングができればいいや、と考えている方も多くいらっしゃるようで、かといってそのWebブラウザーが従来機種で快適に動いていたかというと、ちょっと不自然さが残るところもあったんじゃないかと思います。そういう部分でのパフォーマンスは犠牲にせずに、日常的に使う部分がものすごく快適になるように仕上げた端末です。

――他社端末ではホバリングやマルチウィンドウなど、ソフトウェア面で工夫して使い勝手向上を目指す動きがありますが、御社として何か工夫されている部分はありますか?

小林氏
 AQUOS PHONEでは、テレビを見ながらとか、YouTubeを見ながら操作できる「アナザービュー」や、SH-06Eではホバー機能にも対応しています。ありとあらゆるアプリを同時に動かす、というところには今は対応していません。マルチウィンドウはある程度今後のトレンドになってくるかなと思ってはいますが。

――カメラ機能の方は、AQUOS PHONEだけでなく、他社もUIがシンプルになってきています。

林氏
 カメラの機能を極力省いて簡単・確実にキレイに撮れるようにしたのですが、偶然被りましたね(笑)。カメラで一番に求められるのは、すばやく起動して、簡単にシャッターを押すだけできれいな写真が撮れることです。これまで弊社では、いろいろなことができるのがお客様にとって良いこと、という考え方だったのですが、シャッターを押すだけできれいな画質で撮れますよ、と訴える方向性にシフトしていこうと考えました。細かい設定やUIはできる限り隠してしまって、シンプルなUIを初期設定にしています。

 ただ、弊社が今までやってきた技術を信頼していただいているお客様も多いですから、ワンタッチで詳細設定が可能なカメラUIに切り替えることができるようにもしていますよ。

IGZOでフルセグを存分に楽しめる「AQUOS PAD SH-08E」

シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 丸山晋由氏

――そして最後はタブレットの「AQUOS PAD SH-08E」です。具体的にどういった製品なのでしょう。

丸山氏
 「AQUOS PAD SH-08E」の最大の特長は、他社のタブレットにはない、片手でしっかりホールドできることと、フルセグに対応していることです。東京スカイツリーから電波が送出されるようになり、かなりの広範囲で端末単体で地デジを受信できるようになってきています。

 一度これを見てしまうと、もうワンセグには戻れないほど、インパクトのある高画質映像ではないかと思っています。もちろんこれだけではなく、フルHDを超えて、WUXGAという1920×1200ドットの新開発IGZO液晶を搭載していますので、フルHDの地デジ放送を余すところなく表現できます。それをこの7インチというサイズに収めているのは、きっと画期的な特長だろうと思いますね。

AQUOS PAD SH-08E

――フルセグのアンテナを内蔵していますね。

丸山氏
 端末内蔵のアンテナを引き出して、外はもちろん場所によっては室内でも電波を受信できます。とはいえ、必ずしも常に電波状況が良いとは限りません。家の中では電波が届きにくいこともあると思いますので、そこにも配慮して、同梱の卓上ホルダーにアンテナ端子を用意しています。壁からアンテナ線を引っ張って接続するだけでバッチリ映りますので、家の中でもフルセグを楽しんでいただけます。しかも、録画して、外で録画した番組を見る、ということができるのもポイントとなります。

――搭載しているのは地デジチューナーのみなんでしょうか。

丸山氏
 はい、そうなります。BS/CSは見ることはできません。ただし、一部のケーブルテレビは見ることができるかもしれません。パススルー方式で周波数が地デジと同じであれば、そのケーブルテレビのBS/CSチャンネルを見ることはできます。

内蔵アンテナを伸ばしたところ
同梱のホルダー背面にはアンテナ端子も用意。宅内でも確実に地デジの電波を受信できる

――解像度が1920×1200ドットと、フルHDより広いですね。

丸山氏
 Androidの仕様として、動画の再生時にツールバーなどが画面の上下に表示されますので、それが表示されている状態でもある程度動画全体を見ることができる、というのがWUXGA解像度にした理由の1つになります。また、電子書籍などを縦置きで見る時、フルHDだとコンテンツがすごく縦長に見えてしまうんですね。紙に近いより自然なスケール感での見え方にできるという点で、1200ドットというやや幅広の方が適しているのではないかと考えました。

――他にはどんな特徴がありますか。

丸山氏
 弊社のタブレットとして以前からこだわり続けているのが、「手書き」です。従来からシャープのタブレットではペンで手書きできることをアピールしてきていますけれども、SH-08Eでは、地デジアンテナがある位置の反対側にペンを内蔵していまして、この細いペンでオリジナルの手書きアプリの画面に文字や絵を描けます。

 手書きアプリには、これまでになかった機能の1つとして、「フィット機能」を追加しました。文字を大きく書いてOKボタンを押すと、手書き文字を縮小して罫線に沿って整列してくれるというものです。これによって、きれいにすばやく手書きメモを取ることができ、より使いやすく、より実用的になりました。さらにスタンプ機能も追加していまして、あらかじめ用意しているスタンプをワンタッチで手書き画面に貼り付けるのはもちろんのこと、スタンプを自作して貼り付けられるようにもなっています。

 また、このアプリには「探す」という機能もありまして、手書きした内容を手書きで検索できます。ペンの色でも探すことができます。そしてなんと、スタンプで探すことができるようにもなっています。自作したスタンプを検索できますので、たとえば特別な意味のあるスタンプを作って貼り付けておけば、何カ月もしくは何年も前に作成したメモでも、スタンプをキーに瞬時にそのメモへジャンプすることができるんです。

 これで、手書きする、手書きでまとめる、手書きで探す、というように、手書き入力を一貫して使っていただけるようになるのではないかと思います。タブレットというのは、見る、閲覧するというだけでなく、書いて活用するというところまで使っていただきたいというのが、シャープとして込めたい思いです。

――手書きの筆圧感度を認識することはできるのでしょうか。

丸山氏
 筆圧感知の機能は備えていません。タッチパネルのチューニングでより自然な書き味になるようにしているのと、手書きアプリでは手書きしている時の速度などを判断して、ソフトウェア処理でナチュラルな手書きの雰囲気を再現するような工夫をしています。

 仕組みとしては静電容量式のペンを使ったものではありますが、感度をここまで高められるのは、液晶とタッチパネルとペンの特性をしっかり把握していないと難しい部分なんです。今のところ付属の細いペンで手書きを実現できているのは、他のタブレットにはない特徴だと思っています。

――シャープのタブレットというと電子書籍のイメージが強かったのですが、最近はザウルスのような雰囲気が出てきているような気もします。

丸山氏
 そうですね。2年半ほど前、ちょうどGALAPAGOSという初代電子書籍リーダーを発売したのが、今のタブレットに至るきっかけになったのは間違いないと思っています。ただ、GALAPAGOSによる電子書籍分野への参入というのは、ある意味当時としては必然的な姿だと考えた上で作ったのだろうと思うんですけども、その後タブレット用OSとしてもAndroidが使いやすくなってきたこと、電子書籍のサービスそのものをいろいろな端末向けに配信できるようになってきたことから、サービスはサービス、端末は端末で、それぞれ違ったアプローチで進化していこうと舵を切ってきたんです。

 その後、IGZOという有用な技術を使えることで、よりビジュアル面も重視できるようになったことから、テレビと同じAQUOSという名前を使うことにしました。スマートフォンはAQUOS PHONE、タブレットはAQUOS PADとして、AQUOSというシリーズの中でタブレットをアピールしていこうという取り組みを進めることにしました。

 ザウルス色があるのは我々もちょっと自覚しています(笑)。手書き機能もその1つの要素かもしれません。シャープに根付いている遺伝子、というと大げさかもしれませんが、モバイルでより良いものを作っていきたいという思いが脈々と受け継がれていて、開発陣から要望していた以上の機能を提案されたり、社内からアイデアが次々と上がってきたりもしました。そういうのがまさしくザウルスの文化なのかなと。ということもあり、SH-08Eは、モバイルで長年戦ってきた人たちの力を結集することができ、とてもいい端末に仕上がったのではないかと思っています。

――10インチではなく、7インチというサイズを選択したのはなぜでしょう。

丸山氏
 10インチになると、家庭のみんなでどう楽しむか、というのがテーマになってくると思うんですが、7インチクラスですと持ち出してなんぼの世界になると思います。ですので、7インチというサイズを決めてこのAQUOS PADを作ったというよりは、持ち出して1人で楽しむ端末として、片手で持てるのはどれくらいなのか、どれくらいが最大サイズなのか、と考えた時に、7インチがベストなのかなと。

 コンテンツを見る時にも、7インチあればスマートフォンとも違った使い勝手でしっかり表示できます。片手での持ちやすさや、コンテンツの見映えの両面からこだわって7インチのタブレットを作り込んだわけです。

片手でもしっかりホールドできる7インチサイズ

――音声通話にも対応していますね。タブレットでありながら、音声通話もできるようにしたのはなぜでしょうか。

丸山氏
 シャープとしては、これ1台でなんでもできる、というのが一番やりたいところだったので、音声通話も実装することにしました。ただ、このサイズの端末を耳につけて電話する……という人もいるにはいますが、見た目にちょっと厳しいところもあります。それよりはスピーカーフォンやヘッドセットを使って通話していただく方が、シャープとして提案したい利用スタイルではあります。

――Android 4.2がサポートしているマルチユーザーには対応していませんね。

丸山氏
 対応しなかった最大の理由は、やはり音声通話ができることと、マルチユーザーというのが相反する概念だったからです。

小林氏
 GoogleのCompatibility Listの中にも、Telephonyがあるものはマルチユーザーに対応してはいけないと書いてあるんです。マルチユーザーでAさんとBさんが使っていて、Aさん宛にしか電話がかかってこない、ということも発生し得るので、電話とマルチユーザーの混在というのは確かに違和感のある仕組みなのかなと思います。

――そうすると音声通話のないWi-Fiモデルも期待したいところですが。

丸山氏
 期待は非常に大きいです(笑)。

小林氏
 ただ、まあこのサイズはやっぱりモバイルですよね。端末重量が暫定値で285gと、ずっと持っていられる軽さです。Wi-Fiモデルというとやはり自宅での使用がメインになるでしょうけども、その場合はもう少し大きいサイズの画面がほしいかな、と思います。

――AQUOSブルーレイなど、レコーダー機器で録画した番組を外から見られるようDTCP+に対応することは考えてらっしゃいますか?

丸山氏
 もちろん方向性としてDTCP+をサポートするというのもありでしょうし、不要な機能だとは思っていません。ですが、やっぱり端末単体でフルセグを見られて、録画でき、持ち出した番組を見られるというのも、使い方としてはシンプルで、誰にとってもすぐに活用しやすいという面でメリットがあるとも思っています。

――3機種ともハイスペックな端末ではありますが、スマートフォン・タブレット初心者にとってはどんな端末でしょう。

小林氏
 フィーチャーフォンからの乗り換えという観点から言えば、ものすごく気持ちよく使えると思いますよ。細かい部分ですけれども、端末内に録音データを保存する「伝言メモ」機能や、休日には鳴らないようになっている「アラーム」機能とか、以前からこだわってちゃんと作っているんです。

 特に「伝言メモ」機能は、最近になって他社も実装するようになりましたが、今まで搭載されなかったのは、技術的に難しかったからではないか推測しています。通話で外から入ってくる音声を、端末のメモリに音声データとして残すように流し込むのは、かなりテクニカルなんですね。弊社ではそれを最初からド根性でやっていました(笑)。

 それ以外にも、歩数計しかり、辞書しかり、フィーチャーフォンの時代には当たり前に使われていたものを、スマートフォンにも継続的に搭載して使えるようにしているのは、シャープがこだわりとしてずっと持ち続けている部分なんです。

 そういう細かい部分まで作り込んであるという意味でモノには自信があるんですけれど、カタログやこういったインタビューでも語りつくせない部分があります。作っている人間1人1人がめちゃくちゃ細部までこだわるので、この3端末は随所にそういうものが見える端末になっていると思います。ぜひ店頭で触ってみてほしいですね。

――本日はありがとうございました。

(日沼諭史)