インタビュー

キーパーソンインタビュー

ツートップは順調、TizenはLINEと連携――ドコモ加藤社長に聞く

 これまでフィーチャーフォンを使っていたユーザーもスマートフォンへ移行しつつある中、NTTドコモは、ユーザーに対して“スマートライフのパートナー”を目指す方針を掲げ、さらに夏モデルでは「ツートップ」の2機種を選び、積極的に販売を推進している。

 今年後半には、新たなソフトウェアプラットフォームであるTizenの投入も控え、ネットワークのさらなる高速化も予定されている。代表取締役社長の加藤薫氏に話を聞いた。

ドコモの加藤社長

ツートップ、販売数は120万台に

――まずは“夏のツートップ”「Xperia A」「GALAXY S4」の2機種の最新動向から教えてください。

 「Xperia A」は83万台(6月18日、株主総会時点で64万台)、「GALAXY S4」が40万台(同32万台)です。お客様にわかりやすく選んでいただけるように、として始めたツートップですが、ここまで順調に来ていると思っています。

――この2機種は、ドコモのスマートフォン販売数のうち、どれくらいの割合を占めているのでしょうか。

 具体的な数値は明らかにしていませんが、結構な割合ですね。

――ユーザーとしては、明確に2機種が示されるとわかりやすくなる一方で、他の選択肢がないということも言えそうです。

 株主総会でも指摘されましたが、そこは難しいところです。ただ、以前は20機種以上用意してわかりづらい、といった指摘がありました。正直申し上げて、正解はないと思います。また、冬モデルについては何も決めていません。

――夏モデルではキャンペーンで販売価格を安価にするという手法でしたが、そういったやり方もまだ決まっていないということでしょうか。

 そうです。やり方も機種もまだ決まっていません。

――昨年は秋発売モデルもありましたが、今年はどうなるのでしょうか。

 いえ、今年は秋には新機種はなく、次は冬モデルということになります。ワントップなのか、スリートップなのか、わかりませんが、ラインナップを絞って提供することになります。

導入前には悩んだ「ツートップ戦略」

――メーカーによっては、厳しい状況と受け止めているところもあるようです。

 ツートップ戦略を打ち出すときには、半年近く悩んでいました。作用・副作用がありますから。その一方で、スマートフォンの立ち上げ期は過ぎて、機能・性能は一定の水準に達してきた今、どうすべきかと。メーカーさんにはここ3年ほど、ずいぶんと「特徴のあるものを」「ユーザーから選んでいただけるものを」とお願いしてきましたが、結果として、凸凹がある形となっていたわけで、今の状況に至ったということになります。

――他社はiPhoneを中心に据えている、という販売現場の状況もありました。これがツートップ戦略を強く後押しする要因にもなったのか、とも思えるところはありましたが、実際はいかがだったのでしょうか?

 それもないとは言えませんが、それよりも機種がありすぎて何がオススメかわかりにくいという声が強くなってきていました。そして、今はアーリーアダプター層から次の層でスマートフォンが普及してきており、iモードユーザーの移行期です。

――iモードからの移行ということであれば、フィーチャーフォン風の操作メニューを搭載する「ELUGA P」「MEDIAS X」のどちらかがツートップの一角になってもよかったのでは、と思えます。

 機能・性能をみたときに、そこは(iモードユーザー向けとして)「Xperia A」のほうが適していると判断しました。そして実際にiモードからの乗り換えが「Xperia A」の総販売数のうち6割を超えているのです。

 ドコモの目的としてはスマートフォンユーザーのベースを増やし、その上でバリエーションがあって喜んでいただけるアプリ、サービスを提供したい、というところですから、現状はありがたいところだなと思っています。

――「Xperia A」と「GALAXY S4」の販売数はちょっと違いがありますね。

 その違いはあまり気にしていません。両機種のテイストには違いがあって、「GALAXY S4」のほうが先端的なスペック、「Xperia A」は初めてスマートフォンに触れる方にも使いやすいモデルです。

――iモードユーザーのスマートフォンへの移行期だから「Xperia A」の販売数が伸びている、ということでしょうか。

 そんな気がしています。値段の違いも(影響が)あるのかもしれませんね。

ドコモが考える「MNP純減の要因」

――毎月のMNP(携帯電話番号ポータビリティ)でポートアウト(転出)のほうが多い状況が続いていますが、6月の結果はどうだったのでしょうか。

 まだ最終的な数字は出ていませんが、劇的に改善したかというと、なかなかそうではなく、もう少し努力する必要があります。

――MNPの純減傾向を招く、一番の要因は何だと見ているのでしょうか? 報道ではiPhoneの取り扱いの有無という点が良く挙げられますが……。

 (強い調子で)それだけではないでしょう。それも理由の1つかもしれませんが、市場全体として、かつてほど伸びない状況では、自然とMNPで他社から乗り換えるユーザーには手厚くしますよね。当社もポートイン(転入)してきてくれるユーザーには基本的に端末価格0円という形ですが、それに加えて……(テーブルに何かを載せる仕草で)、時においてはもっと(MNPユーザーへの手当が)深くなっていきますから、それも効いているのでしょう。
(※編集部注:MNPを利用するユーザーに対してキャッシュバックなどの施策が行われることが多い)

――その状況へ対抗するには、ドコモももっと手厚い施策を行うしかないのでしょうか。

 それしかないのですが、それは本当に望ましい状況か、正常な競争なのかな、という気はしますが……。

――では、今の流れは続いてしまうことになりませんか。

 端末ラインナップの強化を含めて、そういうところ(MNPへの施策)も必要であれば手を打ちますが、サービスにも魅力を感じていただいて、「ドコモがいいね」という形にしていきたいですね。

――サービスと販売、という意味では、店頭でオプションとして契約すると端末価格を安くするという場面があります。

 販売店でいろいろ工夫はいただいていますね。ドコモとしては、ガイドラインはあるものの、統制はしていませんから、いろんな販売スタイルがあるのでしょう。ただ、ユーザーが混乱したり、あるいは負担になったりすることは避けたほうがいいと思います。

 MNP関連の場合、来店する方はそんなに多くありません。予約番号を発行した後は、当社ではなく他社のお店を訪れます。だからこそ転出の阻止というものは難しいところがあります。どうしても本質的に、シェアが大きく、契約者数が多い事業者には、転入超過になるのは難しいところですね。

“ファブレット”はどうする?

――最近、スマートフォンとタブレットの中間に位置するような端末は“ファブレット”と呼ばれることが増えてきています。日本以外のアジア圏で人気になりつつあるようですが、どう見ていますか。


 そんなジャンルがあるのですね。まさに「GALAXY Note」シリーズが切りひらいてきたような端末のことですね。ぜひそういうものは、2回線目として利用していただきたいところです。

――たとえばタブレットとiモード端末(フィーチャーフォン)という組み合わせですね。

 メールと電話はフィーチャーフォンのほうが使いやすい、という声は根強いですよね。私も、iモード端末と「Xperia Z」を利用しています。2回線目としてXiをお安く利用できる形も提供しています。

――あるいはフィーチャーフォン端末にテザリング機能の搭載、といったことはいかがでしょうか。

 フィーチャーフォンにテザリングですか。それは今はあまり考えていません。テザリングはスマートフォンの領域かなと。必要であれば作るかもしれませんが……。

―― 一方でドコモ回線を利用したMVNOから、月額980円のプランが数多く登場してきました。

 そもそもMVNOはそういう分野を担われる事業者だと思います。価格からするとスピードや使い勝手は必然的に、ある程度制限的になっていくでしょうが、そうしたサービスが登場することは良いことだと思います。

 それに対してドコモが迎え撃つか、というと、それは考えていません。規模や使い勝手からするとちょっと(ドコモが提供するサービスと)違う方向かなと思います。

Tizen搭載スマホは「LINE」と連携へ

――今年後半、新たなソフトウェアプラットフォームである「Tizen」を採用する端末を投入する計画が明らかにされていますが、どれくらいの機種数、どういった端末になるのでしょうか。

 OSの最初の時期ですから、作り込みにも時間がかかるでしょうし、何機種も、ということにはならないでしょう。

――では、どういったユーザー層に向けた端末になるのでしょうか。

 これから検討を深めていきたいところですが、特徴のあるものにしたいと思っていて、その特徴の1つとして、「LINE」を使いやすいような端末になると良いなと思っています。「LINE」のなかでも新しい側面が出てくると、さらに良いなと思います。

――では「LINE Phone」と言えるような端末に?

 そう言い切るかどうかですよね(笑)。

――夏モデルの発表時でもLINEとの繋がりを深めたいということでしたが、端末との融合をより深めたいと?

 「LINE」はチャットを中心とするプラットフォームですよね。融合は深めたいですね。ただ、「Tizen」での形がどうなるかは、まだ明らかにできません。

――Tizen搭載端末は、iモード端末の代替、というわけではなく、スマートフォンの1つとして、ということですか。

 はい、そうです。

――「LINE」との提携では、ドコモ専用ボタンが用意される予定だそうですが、無料通話が特徴の1つである「LINE」に有料通話というところでギャップを感じることもありそうです。

 そのあたりは動向をよく見ていく必要があるでしょう。ただ「ケータイ Watch」をご覧になるような方は使い分けられるでしょうし、クオリティを重視するよりも音が通じればいいという方は、これまで通りのVoIPを利用されるのかもしれません。

dtab販売は8万台程度

――Wi-Fiタブレットの「dtab」は、発売当初、勢いよく販売数を伸ばしたようですが、現況はいかがでしょうか。

 これまでで8万台程度の販売ですね。当初の勢いほどではありませんが、一定の勢いは維持しています。ただ、もうちょっと努力してもいいのかなと思います。また、モバイル通信非対応のため、ショップでは販売しづらいところはあるようです。ドコモとしては、各種サービスをさまざまな環境で利用できる形を目指していますし、マルチデバイスの1つとして今後もやっていきます。

――現状を踏まえた、次モデルの考えは? たとえばラインナップの拡充ですとか。

 それはまだまだ検討段階ではありません。半年ごとに投入するような機種ではありませんし、ラインナップの拡充も今後の販売動向などを見て考えていきます。

通信ネットワークについて

――夏モデル発表会では、今年度中に東名阪で下り最大150Mbpsのサービスを開始することが明らかにされました。

 東名阪ではより高速なサービスを、と考えて、前倒しすることにしたのです。想定していたトラフィック(通信量)の伸びと比べて、現状は同程度、あるいは少し下回る程度だと思っています。ただ、油断することなく、インフラ整備は続けていかねばなりません。

 前倒しという面では、人口カバー率もそうですし、基地局数も大きく増加させます。端末の性能がある程度のレベルに達すると、基本的な部分が問われることになります。ネットワークの広さ、スループット、あるいは端末の電池の持ちといった部分ですね。そろそろそういった段階に達してきたと思います。

「接続率」について

――ソフトバンクが“接続率”という指標を提唱し始めています。


 接続率って一体なんでしょう。わからないですねぇ。

――ソフトバンクが優位という主張ですが、反論はしないのでしょうか。

 根拠がわかりませんから、反論のしようがありません。ただユーザーから見て、わかりにくくなったりするのはよくありません。ドコモがその土俵にのって主張すると余計混乱を招きますし、土俵に乗る気もありません。

 そもそも電波割当の際、人口カバー率を○年間で○%に、という目標があります。ですから人口カバー率が業界共通の一定の指標ではありますが、それがお客様の感覚にマッチしない場合、統一した指標があれば決めて出していくほうがいいと思います。そこは3社が言いたいことを言っても仕方ないので、総務省も動いていただけると思います。

 接続率という指標が本当に良いのか、議論の余地はあるでしょう。通信環境は時間や場所などで、大きく変わりますから。

通信障害について

――ドコモでは2012年に多く発生した通信障害ですが、最近ではauでも発生しています。これはスマートフォンを導入する上で避けきれないもの、と見るべきなのでしょうか。

 それは、固定で経験してきたこと、フィーチャーフォンで経験してきたこと、そしてスマートフォンで起こることがやっぱり違った、ということですね。我々で発生した障害は信号系でのトラブルで、スマートフォンならではの要素ということは障害発生前に把握しており、交換機に手を加える予定でしたが、その工事の2日前に障害が発生してしまいました。何を言っても弁解にしかなりませんが、気付いていたものの、予想よりも早く発生してしまいました。

――最近はトラフィック急増には対応できているのでしょうか。

 設備面では対応できているつもりですが、油断してはいけません。何が起こるかわかりませんから。

――それは他社の通信障害は油断していた、ということに……。

 いえ、実は総務省の指導もあって、発生してしまった通信障害は他山の石とせよ、ということで、他社と情報は共有していたのです。それ以外(共有していた部分以外)でトラブルがあったのではないかなと思います。ネットワークの作りは各社で微妙に異なるのでしょう。

VoLTEは検討中、「通話定額とは別」

――LTE上でのパケット通信による通話サービス、いわゆるVoLTE(ボルテ、Voice over LTE)は検討されていると思いますが、いつからスタートするのでしょうか。

 検討はしていますが、時期はまだ明確にできません。目標を立ててやってはいますが、「とりあえずやってみて、ダメなら替える」というわけにはいきませんから。ユーザーからすると、現状の通話サービスもVoLTEも同じ音声通話ということで、変わりない形になります。QoS(品質を維持する仕組み)もありますから緊急通報も可能です。通信事業者にとっては、音声を伝送する媒体が変わることになりますがパケットでやり取りすることで、トータルコストが安くなるなら導入しましょう、という考え方です。ただ、それと通話定額は別の話です。

――コストの低廉化が見込めるのであれば、通話定額がやりやすい面はないでしょうか。

 なるほど。しかしVoLTEでの音声通話では、アクセスチャージ(接続料)はどうなるかなという疑問はあります。米国では、A社ユーザーがB社ユーザーに電話をかけると、A社とB社、両方に通話料を支払う、いわゆる“ぶつ切り”設定ですが、日本はぶつ切り設定ではありませんので、通話定額はしづらいところがあります。

 と言いつつ、ドコモユーザー間の通話定額サービスを組み合わせた「Xiトーク24」はちょっと踏み出したサービスだと自負しています。

――昨年のインタビューでは、Xiでの無料通話について検討するということでした。1年経過しましたが、「Xiトーク24」で満足するユーザーが多い、ということなのでしょうか。

 まだ検討中です。どういう形がいいのか、悩むところです。

――VoLTEの話に戻りますが、韓国ではVoLTEでも、より高品質な通話サービスを提供しているようですが、VoLTEでのこういったサービスはどう見ていますか。

 高品質通話に価値を見出して、使いたいという方はいらっしゃるでしょう。一方、先日、会ったKTの李会長(李錫采氏)は「なかなか難しいんだ」と述べていました。そのサービスに価値があると、ユーザーに捉えてもらえるかどうか、ですね。高品質サービスを提供できる一方で、QoSの効いていないVoIPでもいい、という方もいますから。

ドコモメール、dショッピングについて

――ドコモメールの提供開始が遅れて今秋となっています。

 今までの部分を引き継ぎつつ、新しい要素を取り入れるということで、なかなか難しく苦労しているところがあります。spモードメールにもいろいろとご意見をいただいたことも承知していて、開発を急いでいますが、「やってみました、あ、やっぱりダメでした。待ってくださいね」というわけにはいきません。

――遅延した分、未発表の新しい要素を搭載する、ということはあるのでしょうか。

 いえ、それは正直申し上げて難しいところです。

――ドコモメールに対するユーザーのニーズは依然として高いのでしょうか。

 まだニーズはあると思っています。ただし、一方で「Gmailで良い」という方もいて難しいところです。そうした中でも、キャリアメールのほうが安心して利用できる形かなと。

――話は変わりますが、dショッピングの利用動向はいかがでしょうか。

 非開示ですが、数億円程度の規模になっています。品数はもうちょっと増やしたり、ドコモの資産を活用したりする形にしていきたいですね。

――以前、唱えていた「総合サービス企業」というコンセプトですが、各分野で中途半端な形でのサービス提供を危惧することはありませんか?

 それは十分気をつけたいと思います。今は「総合サービス企業」ではなく、「スマートライフのパートナー」と銘打っていますが、ドコモだけで実現できるものではなく、各分野のしっかりした提携先と手を組んでいきます。提携していただく企業にとっては「ドコモならね」と言っていただけるようにしていきます。

――昨年の社長就任時で、七分で良しとせよ、という言葉を掲げていましたが、この1年、実際に「七分」でローンチしたサービスは何でしょうか。

 dマーケットの拡充は、その考えで進めてきた部分ですね。最初は100%でなくていいということで進めており、実際にそうなってきたと思います。ただし、ネットワーク系や、先に触れたドコモメールといったあたりは「七分で良し」とは言えませんのでしっかりと進めていきたいです。

――本日はありがとうございました。

(関口 聖)