インタビュー

「詐欺被害を避けるには電話に出ないのが一番」

「迷惑電話チェッカー」担当者インタビュー

 「だれとでも定額」を契機にユーザーが増加し、会社更生手続きから脱したウィルコムは、主軸となる音声端末だけではなく、固定電話型の「イエデンワ」、フリスクサイズの「ストラップフォン」、窓の開閉をチェックする「お知らせ窓センサー」など、ユニークな端末を次々とリリースしている。

 そうした“異端”に見える端末群は、他にはない面白さが注目を誘い、ユーザーの目に触れる機会が増える、という効果が期待される一方、PHSならではの特徴を活かす、という性質を追求した結果、生まれたものもある。7月に発売された「迷惑電話チェッカー」もそうした系譜に連なる端末の1つだ。

 主な機能は、固定電話に繋いで、迷惑電話がかかってきた場合、音と光で通知するという機能を備え、詐欺などの“迷惑電話”からの被害を防ぐというもの。電話番号を確認するため、固定回線には「ナンバーディスプレイ」の契約が必要だが、迷惑電話とされる番号のデータベース(7月時点で2万件以上)は、警視庁から提供されるデータ、ユーザーが拒否して登録したデータが含まれる。なお、ユーザーが拒否したデータは、「迷惑電話チェッカー」のベースとなった端末の開発元である、トビラシステムズのアルゴリズムで解析される。

子供から親へ

ウィルコムの山田氏

 「迷惑電話チェッカー」は、シニア層の利用を想定した端末だ。しかし、ウィルコムで商品企画担当の山田聖人氏は「ターゲット層の方が来店して購入する、というシーンは想定していない」と語る。これは、20代〜40代など、「迷惑電話チェッカー」のターゲット層の“子供”にあたるユーザーが「だれとでも定額」を目当てに来店、端末を購入する際、あわせて「実家に置いたらいいかもしれない」と考えてもらうことで、購入に繋げる商品と位置付けられているのだ。

 迷惑電話に分類される電話番号は、強引な勧誘を行う営業電話も含まれるが、目玉は「母さん助けて詐欺」などと呼ばれる詐欺に用いられる電話番号だ。その手口は巧妙で、実際に被害にあった、あるいは被害にあいそうになった人が、ネット上で公開している電話の一部始終を見ると、普段、いかに警戒していても騙されてしまうかも……と自信を失いそうになる。

 そこで山田氏は「被害にあわないには、電話に出ないのが一番」と語り、事前に警告を発する「迷惑電話チェッカー」の意義をアピールする。子供から実家の親へ贈ることで、被害を防止する、という流れで、家族で守りあって欲しいのだという。

PHSを活かせる商品

 もともとのシステムを開発したトビラシステムズは、創業者の祖父がそうした詐欺の被害に遭ったことから設立されたとのことで、そうした経緯にも共感して、ウィルコムでは「迷惑電話チェッカー」の商品化を進めた。

左が迷惑電話チェッカー、右がトビラシステムズの「トビラフォン」
トビラフォンは、ネット接続できる固定回線が必要

 ただ、オリジナルの商品は、インターネットへ繋がる固定回線が必須となっていた。一方で詐欺の電話に狙われる世帯では、必ずしもそうした接続環境が整っているとは限らない。そこでウィルコムではPHSの通信ネットワークと組み合わせることで、より便利に、より幅広く利用できる商品になる、と考えて「迷惑電話チェッカー」を開発した。

3社で進めた開発

 オリジナルを開発したトビラシステムズ、今回の製造メーカーであるエイビット、そしてウィルコム3社ではアイデアを出し合って「迷惑電話チェッカー」の開発を進めた。

 「迷惑電話チェッカーでは、迷惑電話とわかっても、いきなりブロックすることはしていません。通信事業者として回線を塞ぐ、という行為はできません。ただし絶対に応答はしていただきたくありませんから、電話としては鳴らさず、音と光で警告しまくる、という形にしました」

 山田氏は、シンプルな形で警告を出すユーザーインターフェイスを目指した一方、新たに専用サーバーを用意して、迷惑電話の最新データベースを自動的にダウンロードできるシステムを構築したと説明。PHSの電波が弱い場合でのリトライの手順など、さまざまな環境で利用されることを考慮したシステムを整えた。ちなみに圏外で利用した場合は、固定電話回線を介してデータベースに繋がるが、そのダイヤルアップの利用料はウィルコム側へ着信課金される形となり、追加で支払う必要はないとのこと。

迷惑電話がかかってくると赤いランプなどで通知。これはデモモード

 ちなみに開発中にはデモ用の電話番号で試験を進めていたが、あるとき、データベースに登録されている本物の“迷惑電話”が開発担当者のもとへかかってきたことがあった。きちんと赤いランプが光って警告し、正常に動作したが、開発者は、正常に動作したことに興奮して、ついその迷惑電話に応答してしまった。このときは、詐欺ではなく、強引な勧誘の電話だったとのことだ。

今後はPHSへ搭載

 今回は固定電話向けの商品となった「迷惑電話チェッカー」について、山田氏は「今後、PHSへ搭載していく」と語る。時期は未定ながら、さまざまなデバイスでの展開を想定しているという。

 固定電話サービスでも、既に迷惑電話への対策となるサービスは用意されている。ただ、他社サービスでは電話番号の登録件数が限られることがある。一方、「迷惑電話チェッカー」はユーザーが申告した電話番号も用いるなど、データベースの存在が大きな特徴となる。

 これまでにない商品だが、その着眼点は、通信サービスそのものが社会へ貢献できる幅をさらに広げるものだ。今回、インタビューでは固定電話だけではなくPHSへ搭載される方針が明らかにされたが、より多くのモバイル機器、スマートフォンへの搭載を期待したい。

(関口 聖)