インタビュー

格安電話サービス「G-Call」担当者インタビュー

格安電話サービス「G-Call」担当者インタビュー

基本料なしで国内電話も国際電話も安くなる秘密

 キャリア各社がスマートフォンへと舵を切り、LTEへの対応が進むにつれ、無料通話分のあるプランが無くなってしまったことに不満を募らせているユーザーもいるのではないだろうか。そんな中、格安で電話をかけられるということで話題を集めているサービスが、株式会社ジーエーピーの提供する「G-Call」だ。

 「G-Call」に申し込んでから、相手の番号の頭に4桁の数字(プレフィックス)を付加して電話をかけるだけで、国内の通話料金であれば通常の半分以下となる30秒10円に、海外宛の電話は6秒単位の従量課金になるというサービス。データ通信で実現するIP電話などとは異なり、通常の電話と同じ品質で通話できるのも大きな特長となっている。

 この「G-Call」のiOS/Android用アプリが2013年1月にリリースされ、プレフィックスを手動で付加する手間なく、スマートフォンでより手軽に「G-Call」を利用できるようになった。通常の電話と同じ通話品質でありながら、なぜここまで安価に提供できるのだろうか。また、スマートフォンになってなぜ注目を集め始めているのだろうか。「G-Call」を運営するジーエーピーの江川光徳氏にサービスの詳細を伺った。

30秒10円で、通話料はキャリアの半額以下に

株式会社ジーエーピー 企画部 部長 江川光徳氏

――「G-Call」という電話サービスを始められた経緯を教えてください。

 弊社ではもともと米国宛の電話が1分間130円というような時代から国際電話の割引サービスを提供していました。高価な国際電話回線を、登録ユーザーみんなで使ってバルクで安くしましょうというものです。当社が大口割引で回線使用料を支払い、それを小口に分けて使用されたお客様に請求するというイメージです。

 それは国際電話ですが、実は国内通話についても昔から同じ仕組みで提供していたんです。ところが、これまで国内通話に関してはキャリアのプランに“無料通話分”というのが常に付いていました。当時「G-Call」を使った場合は、携帯電話宛が1分30円、固定電話宛が1分20円という料金設定で、それでも普通に電話をかけるよりは安かったとはいえ、この“無料通話分”が邪魔して「G-Call」の使いどころが少なかったわけです。“無料通話分”を使い切った後に「G-Call」を使うとお得だとわかっていても、切り替えるのは結構面倒な話ですから。そのため、当時は法人向けの契約が多かったんですね。

 でも、スマートフォンになってLTEが主流になり始めると、キャリア間の通話で無料になることはあっても、“無料通話分”というのがプランとしては無くなってしまいました。そうすると「G-Call」の通話料の方が圧倒的に安いんですよ。

――IP電話とは仕組みが異なるというのもユーザーにはメリットが多そうです。

 IP電話だと、インターネット回線の品質に左右されたり、050のように電話番号が変わってしまうのがネックです。LINEもViberも050 plusも、通信環境が良ければいいですが、常に安定して通話できるわけではありません。たとえばビジネス用途で使う場合、音声が途切れる、安定して通話できないというのは致命的です。

 しかし、「G-Call」は通常の電話と変わらないですし、自分の電話番号からそのまま普通に発信することができます。携帯電話宛であれば、相手には080や090などから始まる自分の電話番号が通知されて、しかも通話料金は半分以下になる。だからユーザーが増えてきているんだと思います。今はキャンペーンで料金を下げているのもあるとは思いますが。キャンペーン中にお申し込みいただければ、キャンペーン終了後もずっと30秒10円です。

 現在はキャリアと同じ30秒単位の従量課金ができるようにもなっています。どのキャリアでも基本は30秒21円と決まっていますし、仮にソフトバンクの「ホワイトプラン」(980円/月)に、さらに980円/月をプラスして「Wホワイト」にしても、30秒10.5円です。「G-Call」は、基本料なしで非課税の30秒10円ですから、絶対に安くなるんですよ。

電話番号の頭にプレフィックスを付けるが、相手には通常の電話番号が通知されるようになっている

――最近になって急激にユーザーが増えているとのことですが、その実感はありますか?

 ありますね。2012年7月に30秒10円のキャンペーンを始めて、2013年1月にスマートフォン向けのアプリをリリースし、インターネットで告知し始めたところ伸び始めました。レンタル携帯など他のサービスも合わせると、現在の会員数は20万人ほどで、最近新規で申し込まれた方の75%くらいの方が利用されています。アクティブユーザーの比率は非常に高いですね。

 まだFOMA端末を使っている方が半分くらいいた頃は、「携帯電話で通話料金が安くなりますよ」という売り方をしていたんですけれども、最近は「スマートフォンの通話料の節約に」という言い方しかしていません。その上で、便利な「G-Call」アプリもありますよ、と案内しています。今も伸びている理由としては、スマートフォンに限定してアピールしていることと、アプリがあるということ、この2つが大きいと思っています。

――「G-Call」アプリを開発することになったのはなぜでしょうか。

 このアプリは、簡単にプレフィックスを付加して「G-Call」経由で電話をかけられる上に、端末の電話帳とも連携して標準の電話機能と同じように使えるものです。

 フィーチャーフォンでしたらプレフィックス機能で番号を付加して電話をかけることができたのですが、スマートフォンだと付いていないんですね。スマートフォンが出てきた当初から、こういったアプリがあれば便利になるだろうと考えてきたのが、2013年1月になって実現できました。

直接ダイヤルすることもできるが、電話帳や発信履歴から電話をかけることもできる
発信する際には「G-Call」を使うか、通常発信するかを選択可能
プレフィックスが付いていても、電話帳に登録している情報がしっかり表示される

 我々が「G-Call」を始めた時に、電話帳に登録している電話番号全部にプレフィックスを付けて登録している人がいました。しかし、それだと相手から電話がかかってきた時にそれが誰であるかわかりません。だから、着信用に登録している番号とは別にもう1個、発信用にプレフィックス付きの番号で登録する必要があった。でも、これはすごく面倒でした。

 フィーチャーフォンのプレフィックス機能は機種によって設定方法が違う場合もあり、プレフィックス機能で国内電話をかけるという人はまれだったのではないかと思います。一方、国際電話ではプレフィックス機能で電話会社を選択することで料金が異なるため、プレフィックス機能を使うことに拒否感はありませんし、そもそも国の識別番号を頭に付ける必要があってプレフィックスになじみもある。

 国内電話ってプレフィックスを付ける理由も機会もないからわかりにくいし、プレフィックス機能があることも知らない人が多い。そういうこともあって、以前は我々としては非常にやりにくかった状況だったと言えます。

――個人ではクレジットカードでの利用が前提となるようですが、「G-Call」に申し込んでからだいたいどれくらいで使い始められますか?

 平日の場合は、午前中に申し込んだら、登録上問題無ければ翌日から利用できます。土・日曜日はお休みで、金曜日の午前中に申し込んだ場合でも翌日の土曜日から使えるんですが、登録完了の案内メールが翌週月曜日の送付になります。だいたいは1営業日で使い始められることになりますね。ちなみに、申込時には発信に使用する自分の電話番号を登録する必要がありますけども、この電話番号の登録件数は無制限です。登録料や基本料は一切かからないので、所有している電話の番号は、すべて登録しておくといいんじゃないでしょうか。

――利用にあたって注意すべきことは?

 MNP(モバイルナンバーポータビリティ)で電話番号を変えずに他のキャリアに乗り換える場合は問題ありません。携帯電話を解約した場合に、しばらくたって他のユーザーの携帯電話に同じ番号が割り当てられた時、プレフィックス付きで電話をかけられてしまうと、以前その電話番号の持ち主だった方に通話料が請求されることになります。ですので、もし携帯電話を解約したら、我々にもご連絡いただいて「G-Call」に登録している電話番号も解約していただければと思います。

――本来の電話番号がそのまま通知されるので、相手側も違和感なく電話に出られるとのことですが、固定電話宛だと制限があると伺っています。

 固定電話宛には非通知になってしまいます。でも、相手がナンバーディスプレイを契約していない限り、あまり気にされることはないでしょう。

――国内電話だけでなく、国際電話についてもサービスを提供されています。

 国際電話の場合、キャリアの回線ですと30秒か1分単位の課金になりますが、G-Callは6秒単位の課金というのがポイントになります。それでも我々が儲けられるということは、日本の通常の国際電話がいかに高額か、ということですよね。もし我々のサービスを使うユーザーが1000万人くらいになったら、キャリアも無視できないでしょうから、きっと値下げされることになるんでしょうが(笑)。

「G-Call」はいたってシンプルなサービス

生産者と消費者のギャップを埋めるのが「G-Call」、と江川氏

――ところで、御社ではショッピング事業も行っていますが、電話サービスとはどういった関わりがあるのでしょうか。

 今は昔のように、電話をたくさん使う時代ではありません。国際電話にしても、時差を考えてそれほど頻繁に使われることはなくなってきています。メールやSNS、IP電話など他の連絡手段もあり、一般的な電話のマーケットは全体的にシュリンクしているんです。そんな中で、我々は富裕層をターゲットにして、付加価値の高い商品を電話代と一緒に支払って購入できるというサービスを展開してきました。

 我々が最初に扱ったのはお米です。今メインにしているものも米と水で、どちらも重いものなんですよね。それに、毎日食べたり飲んだりする物なので毎月のように必要になる。ショッピングを利用されるお客様の年齢層は結構高くて、60代の方が多い。デパートで買うと5kgで4800円くらいの商品と同じものを、我々は産地直送で3800円くらいで提供していますから、自宅で頼んで取り寄せる方がずっと便利なのではないでしょうか。

 旬の果物などを旬の時期にお届けするということもやっていますが、繰り返し消費するお米は、いいと思ったらずっと食べてくれますし、電話もそれと同じで、いいと思ったらずっと使ってくれるじゃないですか。利益自体は薄いですが、いいと思ったら毎月継続して使っていただけるというその積み重ねが大きい。我々にとってみたら電話もお米も一緒なんです。

オフィスの打合せスペースにはショッピング事業で取り扱っている高付加価値商品が並んでいた
旧バージョンのAndroid版「G-Call」アプリ。最新版ではこの画面は表示されず、ログイン操作が不要になっている

――「G-Call」の話題に戻りますが、アプリの今後の改善の方向性などがありましたら教えていただけますか。

 当初はアプリを初回起動した時に、申込時に登録したユーザーIDとパスワードを入力するようになっていました。Android版については、9月5日のアップデートにより、これを不要にしました。端末の電話番号を自動で取得することで実現しますので、Androidではできますが、iPhoneは仕様上できません。ですので、iPhoneの場合は電話番号を手入力して設定していただくことになります。あとは着信履歴を参照できるようにするなど、アプリの使いやすさについてはまだ改善の余地があると考えています。

――「G-Call」のサービスとしてはいかがでしょうか。料金を変更するようなことは?

 30秒10円というのがもっと下がることになるかどうかはわかりません。キャリア各社が通話料金を下げてくれば我々としても下げるかもしれませんね。それから、「G-Call」に登録したらすぐに使いたいというご意見もいただいていますが、これを短縮するのも難しいところです。今は申し込みから使えるようになるまでだいたい1営業日となっているわけですが、回線の卸元に対応していただく作業がどうしても発生しますので。

――最後に読者にコメントを一言お願いします。

 もし今のキャリアの電話料金に不満があるなら、ぜひ利用を検討してほしいですね。仮にキャリアがどーんと通話料金を下げたら、我々のサービスをやめて普通に電話を使えばいいんです。「G-Call」に加入したからと言って、キャリアの電話が使えないわけでもありません。だから、お客様にとってのリスクは何もないんです。基本料も無料なので、使わなければ料金は一切かかりません。使いたい時だけ使えばいいだけなので、いたってシンプルですよ。

 ほとんどの方はまだ「G-Call」のことを知らず、普通に電話して、8000円、9000円、1万円という月額になる人が多いのではないでしょうか。個人も法人も関係なく、クレジットカードさえあればすぐに登録してお得になるので、そういう人たちにぜひ使ってほしいですね。

――本日はありがとうございました。

日沼諭史