インタビュー

シャープ、ドコモ向けモデル開発者インタビュー

シャープ、ドコモ向けモデル開発者インタビュー

スペックからは見えにくい“使いやすさ”を追求

 シャープからドコモの冬春モデルとして登場するスマートフォンは、合わせて3機種。11月7日に発売されたフラッグシップ機「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」と、コンパクトながらもハイスペックな「AQUOS PHONE EX SH-02F」(2014年1月発売予定)、子供向けスマートフォン第2弾の「スマートフォン for ジュニア2 SH-03F」(2014年2月発売予定)だ。

シャープが発表した2013-2014年冬春モデル4機種

 SH-01Fは新しいIGZO液晶を搭載し、3日間使えるスタミナがウリ。SH-02FはスペックとしてはSH-01Fに匹敵する性能を誇りながら、4.5インチ、フルHDという超高精細IGZO液晶が特徴で、どちらも魅力ある端末となっている。また、SH-03Fは、Wi-FiでのWebアクセス制限機能も追加され、子供をもつ親にとっては気になる存在だろう。今回はこれら3機種の開発に携わった同社の通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 副所長 第一商品企画部 部長の多伊良教文氏と同企画部 係長の佐伯和裕氏に、各製品の注目ポイントについてお話を伺った。

動画にも有効なIGZOの「液晶アイドリングストップ」をアピール

佐伯和裕氏

――今回のAQUOS PHONEの開発コンセプトはどういったものでしょうか。

佐伯氏
 まず、スマホのユーザー層がディスプレイの大型化やカメラの高画素化が進む中で、ご購入を検討されているお客様は、実際にそのスペックではなく、どの端末が自分の使い方に合っているのか、この端末では何が特長なのか、など、以前より迷っているのではないか。開発当初のコンセプトの1つは、そういうところからスタートしました。

 2012年冬、初めてIGZOを搭載したAQUOS PHONE ZETA SH-02Eを「心おきなく、2日間」のキャッチコピーでデビューしました。その結果、大きく販売を伸ばすことができました。これは、電池もちへの不安は私たちが思っている以上に大きく、お客様にとって電池もちが“価値”としてご評価いただいたのだと実感しました。と同時に、独自調査の結果、“電池がもつのがシャープの、IGZOのスマホ”といったブランドイメージが店頭の売り場からお客様まで幅広く認識されていることも分かりました。

 スマホの使われ方は、まだ進化の途中です。さまざまなアプリやサービスが日々登場しています。したがって、“IGZOの電池もち”を、今後もスマートフォンを購入する時の1つの尺度としてお客様へご提案していくことが重要という思いもあり、今回コンセプト的には変えることなく、基本的な特徴であるIGZOと、電池もちの強化を1番に据えています。

――電池もち以外では、特に「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」については操作性に関わる部分の変更点も多いですね。

佐伯氏
 スマートフォンは難しくて使いにくいというお声を、まだまだたくさんいただいているのが現実です。2年前くらいは、電池がすぐになくなる、思い通りに操作できない、片手で使いづらい、文字入力しにくいといったお声もありました。

 2012年冬のIGZOモデル以降から電池もちが改善され、クアッドコアCPUで操作性もスムーズになり、スマートフォンの不満、不安も確実に解消されつつあると理解しています。ただ、まだフィーチャーフォンのお客様や、古いスマートフォンをお持ちのお客様で、そういったイメージをを引きずっている方もまだたくさんいらっしゃいます。

 そういうお客様に改善された使いやすさをいかにご理解いただくか。使いやすさというのは、カタログのキャッチコピーやスペック表には表れにくい部分で、実際、目に見えない部分のチューニングの積み重ねが非常に利いてくる世界です。そういった“使いやすさ”という価値をお客様に提案したいという想いもありました。

――その“使いやすさ”のキーとなる部分について具体的に教えていただけないでしょうか。

佐伯氏
 今回のZETAの“使いやすさ”のポイントは3つ挙げられます。1つは、やはり電池もち。電池もちが良くなることで、充電の頻度が減り、使い勝手は向上します。IGZOのブランドと一緒に、電池もちをお客様にとって価値ある選択肢として訴求していきます。

 次は幅広いユーザー層で利用頻度が高いカメラ機能。画素数などの数字ではなく、いかにお客様にわかりやすいカメラの価値をご提案し、ご理解いただけるか。今回はそういう視点に立ってち、夜景や雰囲気のあるレストランでの料理や飲み会など少し暗いシーンでうまく撮影できない、ということを価値に変えて、お客様にわかりやすく伝えられないかと考えました。

 3つ目は新しい提案となる「グリップマジック」です。グリップセンサーによってさまざまな機能、特徴を盛り込み、これまでにない新しい使いやすさを実現しています。これら3つの特徴を狙いやコンセプトとして企画し、開発を進めました。

――バッテリーについて、2012年発売のSH-02Eは「2日間」、今回のSH-01Fは「3日間」という触れ込みです。さきほどおっしゃったように一番のコンセプトは変えていないんですね。

佐伯氏
 2012年冬の「2日間」というキャッチコピーが、お客様には実体の不満と合わせてわかりやすかったというのがありました。そこで、今回の2013年冬モデルのSH-01Fでは「余裕で3日間」という言い方をしています。

 ただ、単純に「2日間が3日間になったんですか」というだけでは、お客様その価値を伝えたことにはならないと考え、、3日間使えるというのは、こういうことなんです、楽しみがこんなに広がるんですと、伝えたいと思いました。そこで、電子書籍、静止画像、動画、音楽といった各機能を使った場合にこれくらい長い時間楽しめるんだ、とわかるようにしました。稼働時間が延びたことで楽しみ方が増えたんですよ、というのをわかりやすく説明するコピーで訴求するようにしています。

 たとえば音楽の連続再生だと最大で約117時間。ここだけをみれば、3日間どころか4日オーバーで、一般的な市販のポータブルプレーヤーの連続再生時間よりもかなり長い。音楽をずっと聴いていても、電池がなくなり電話できなくなって困るというご心配も少なく、安心してご購入いただけるのではと思います。

――バッテリーが3000mAhの大容量になった以外に、電池もちに関わる要素はありますか?

佐伯氏
 IGZOには当初から、表示が動かない間は液晶の描画を止めて省エネ駆動する「液晶アイドリングストップ」というテクノロジーが搭載されています。この「液晶アイドリングストップ」は、静止画だけで有効というイメージが強いのですが、実は動画にも有効なんです。たとえば30fpsの動画だと、は通常の液晶の60fpsのリフレッシュレートの半分ですから、見た目には分かりませんが、動画も液晶アイドリングストップで省エネになるのです。

 つまり、短時間ではありますが2回に1回液晶の駆動を休止している。15fpsの動画ならその分駆動を休止する時間も増えます。静止画だけじゃなくて動画にもきちんと「液晶アイドリングストップ」が利いています。

AQUOS PHONE ZETA SH-01F

――今回のSH-01Fが搭載するのは新しいIGZO液晶とのことですが、以前とはどういった違いがあるのでしょう。

佐伯氏
 新しい液晶カラーフィルターを搭載しました。液晶はバックライトのLEDからの光をカラーフィルターで調整し、色を表現します。このLEDから出てくる光の成分とカラーフィルターの成分をチューニングすることで、透過率を高めて、より少ない光量で同じような明るさ、同じような色を表現することができました。

 また、省電力駆動ICの世代も変わり、消費電力が下がっています。今回の液晶カラーフィルターとLEDのチューニング、省電力駆動ICを組み合わせることで、2013年夏モデルのAQUOS PHONE ZETA SH-06Eの表示システムと比較すると、約20%の省エネを実現しました。

――他に新しい要素はありますか?

佐伯氏
 独自の省エネソフトの「エコ技」も進化しています。これまで“標準”、“技あり”、“お助け”という3つから切り替えて使用するユーザーインターフェイスを、よりわかりやすくなるようオン・オフのみの形としました。オンにすると実使用時間が約11%アップします。

 以前はより細かく設定をしたいお客様向けのインターフェイスでしたが、今回は初めてスマートフォンをお使いになる方にも簡単に使っていただけるよう改善しましたので、より幅広い方に使っていただけると思っています。もちろん、今回も詳細設定画面で細かい設定もできます。

 また、急速充電にも対応しています。今回のSH-01Fのように3000mAhと容量が大きくなってくると、満充電にするのにも時間がかかります。別売の急速充電対応アダプタを購入していただく必要はありますが、それさえ使えば、1日で使う分を約30分で充電することが可能です。

 具体的には夜、自宅でWebを見ながら、またはゲームをしながら寝てしまって、朝起きた時にはほとんど電池切れのような状況でも、朝の食事や出かける準備の間に充電しておけば、その日1日はスマートフォンをきちんと使えます。バッテリー容量が大きいことだけでなく、充電が早いこと、短時間で丸1日使えることをアピールしたいですね。

――デザイン面でこだわったところはどういった部分でしょうか。

佐伯氏
 厚さ約8.9mm(最厚部約9.2mm)ということで、これまでのZETAシリーズで最も薄くシンプルなデザインになっています。背面の処理も通常はカメラレンズなどの穴を空けてからキャビネット(外殻)に塗装するんですけれども、今回は塗装した後にキャビネットに穴を開けるようにしています。こうすることで、パーツの隙間の精度を高め、デザイン全体の品位を上げることができます。

 もう1つ、5インチクラスとしては軽量な139gに仕上げています。これは開発当初からこだわっていたところでして、画面の大画面化が進む中、5インチクラスで普通に作ると簡単に150gを超えてしまいます。それをなんとか軽くするために、中身のシャシーなどの贅肉をそぎ落とすことで軽量化を実現しました。長時間手に持っていても疲れにくい軽さにできたんじゃないかと思っています。

――今回どのモデルも卓上ホルダーが用意されません。他社端末も含めおくだけ充電にも対応しておらず、残念に感じるユーザーも多いのではないかと思うのですが。

多伊良氏
 たしかにホルダーに置くだけで充電できる手軽さもあるとは思います。ただ、今回はMicro USBをキャップレス防水にしていますので、少ない手間でダイレクトに接続でき、急速充電の仕組みで短時間で充電できるという点がメリットとして挙げられます。

 おくだけ充電については、バッテリーが大容量になったことでワイヤレス充電だと充電時間が長くなってしまうという問題があります。コイルを端末に内蔵すると重さ、厚みも増えますから、今回の商品コンセプトとしてはQi対応は外して、SH-01Fについては3000mAhで9mmを切る薄さ、約139gの軽さなど、スタイリッシュさを中心において開発しています。

“時代に合わせた”充実のカメラ機能

――バッテリー以外のハードウェアの特徴について教えてください。

佐伯氏
 まずはカメラですが、先ほども申し上げましたが、今回のZETAでは夜景に強いです。これは、従来製品から搭載しているF1.9の明るいレンズに加え、今回から「NightCatch」というソフトウェア技術を新たに搭載しています。一般的に、夜景を撮る時はISO感度を上げていきますが、代わりにノイズの粒子感が目立ってしまうというトレードオフがありました。それを、ノイズが出ないよう明るさを上げられるソフトウェア処理を追加しています。

 この機能は、オート撮影機能の中に組み込まれているモードですので、カメラの設定を変える必要はなく、カメラが暗いと判断すれば自動的にオンになるので、簡単に撮影できます。また、カメラのプレビュー映像の時から「NightCatch」の処理を施したものをリアルタイム表示できるので、画面で見たままのものを撮影できます。静止画撮影だけでなく動画撮影にもしっかり活きるようになっています。

 さらに「高速オートフォーカス」もポイントです。新しく採用したオートフォーカス方式によりタッチフォーカスで約0.5秒の高速オートフォーカスを実現してます。F1.9のレンズも、「NightCatch」も、「高速オートフォーカス」も、最終的にはすべて「暗所に強い」というところに貢献してくるものですね。

――最近は、シャッターを押すだけできれいに撮影できるシンプルなカメラ機能に各メーカーが力を入れています。御社もそういう方向性なのでしょうか。

多伊良教文氏

多伊良氏
 スマートフォンは常に持ち歩くものですから、さまざまなシーンをきちっと簡単に撮れることが重要で、そこを大切にしています。フィーチャーフォンをデジカメに近づける、というような時代とは発想が違ってきています。スマートフォンになって、SNSへの画像アップロードが増えるなど、携帯電話としての使い方や用途もだいぶ変わってきました。今はそういう違いを考慮した上で機能を検討しています。

――そのような、ある意味“時代に合わせた”機能としては他には何がありますか?

佐伯氏
 一眼レフのブームにも見られるように、お客様は撮りたい写真にはさまざまなニーズがあります。一眼レフのように背景をぼかした写真を撮りたいというニーズや、前景から背景までピントをきれいに合わせて撮りたいというニーズなどもそうです。ということで、「多焦点カメラ」機能を搭載しました。これを応用すると、手前の人がいて遠くにも人にピントを合わせてまるで手の上に人が乗っているようなトリック写真なんかもきれいに撮れます。

 使い方も簡単で、ピントを合わせたい一番近いものにタッチしてシャッターを押すだけです。あとはカメラが焦点の異なる複数の写真を5~6枚ほど自動撮影して合成してくれます。

――あらかじめ焦点の異なる複数の写真を撮って、後で自分の望むポイントに焦点が合った写真を選べるカメラも注目されてきていますが、そういった使い方は?

佐伯氏
 今回は全体に焦点を合わせた写真を撮れるようにする、というコンセプトでしたので、その中から1枚だけ選ぶといったことはできません。今後そういった使い方も検討していきたいと思っています。

超低消費電流で常用可能な便利機能「グリップマジック」

――“使いやすさ”として3つ目に挙げた「グリップマジック」はどういうものでしょう。

佐伯氏
 このグリップマジックで新しい使いやすさの中でやりたかったことは3つあります。大画面化が進む中でも、やはり片手で操作したいというお客様はたくさんいらっしゃいます。これをどういう風に使いやすくしていくか、というのが1つ。もう1つは、スマートフォンのユーザーの裾野が広がる中で、高度な知識が必要な機能ではなく、初めてスマートフォンをご購入されるようなお客様にも使っていただけるようにすること。最後の1つが、心地よく、自然に使えるような、使う楽しみ自体を与えられるものを実現したい、というものです。

 最初にお話ししましたように、スマートフォンの場合、“使いやすさ”カタログやスペックでは見えない部分が多いんです。「グリップマジック」はシャープからお客様への新しい使いやすさの提案でもあります。

 「グリップマジック」では、端末下部の両サイドにグリップセンサーを搭載してます。2つのモードを用意していて、1つは端末を手に持つと時計が現れて5秒ほどで消えるものです。端末を持ってどこかへ移動し始めるというスタートの時に、フィーチャーフォンのサブディスプレイのように今何時なのかを横目で確認する、といった使い方ができます。もう1つは、端末を持つということは、端末を使い始めたいということだと判断して、ロック画面を表示するモードです。

 ベッドで横になって使う際、スマートフォンの機能で画面が回転して横置き表示になりますが、片手で持って縦画面を見ている時には横になって使っても画面回転を抑止する機能もあります。さらに、会議室や映画館、電車内でマナーモードにし忘れた時でも画面を見なくても端末を握れば着信音を最小にできます。ちょっとした気遣いですよね。アラームを止める時に握ってストップさせるといった使い方も可能です。

――“握る”という動作を認識する処理は難しかったのでは?

佐伯氏
 スマートフォンの持ち方って人によって本当にいろいろあって、同じ片手持ちでも小指を端末の下に引っかけて落ちないように持ったり、大画面端末の上部を操作したい時に重力にまかせて端末をずらしながら使うとか。もちろん両手持ちの人もいます。ですので、開発当初からさまざまな持ち方や利用シーンをヒアリングし、センサーの配置場所を決めました。

 センサー自体は静電型ですので、基本的に人の手以外の物にあたっても反応することはありませんが、商品化にあたっては、いろいろな使われ方と状況を想定する必要があります。例えば、ケースをつけて使うシーンを想定して、感度調節できるようにしてます。それ以外にも実はいろいろな処理が盛り込まれています。

――新たなセンサーということで、電池もちにも影響があるのではないかと心配になりそうですが。

佐伯氏
 このグリップセンサーの一番のポイントは、超低消費電流であるところです。通常こういった便利機能は電池を多く消費しがちで、設定をオンにすると、電池が持たなくなるということがあります。しかし、このセンサーのお陰で、「グリップマジック」に関しては最初の設定からオンでも、3日間の電池持ちを実現することができました。。

 これとは別に「Sweep ON」という電源ボタンを押さなくても、タッチパネルをなぞるだけでディスプレイをONする機能が以前からありました。「Sweep ON」も利用するには画面が消えている時もタッチパネルを常時オンにしておかなければならず、その分消費電力も多くなっていたわけですが、今回はグリップセンサーと連動させ、握っている間だけこのSweep ON有効にすることで、消費電力と便利な機能を両立することができました。端末を握りっぱなしの場合でも、再び使い始めたい時は画面をなぞるだけで、すぐ使い始められます。

――端末を持っているか持っていないかを判定する機能は、他社では加速度センサーを使っていたりもしますが。

多伊良氏
 加速度センサーは結構電力を消費します。今回、低消費電力で常時待受できるセンサーを作れたのが大きなポイントなんです。たしかに他にもいろいろやり方はあるんですが、長時間駆動を両立を可能にするために低消費電力のグリップセンサーを開発し搭載しています。

487ppiの超高精細IGZOを搭載した「AQUOS PHONE EX SH-02F」

AQUOS PHONE EX SH-02F

――少し先の2014年1月になりますが、コンパクトな「AQUOS PHONE EX SH-02F」も発売しますね。

佐伯氏
 SH-02Fのポイントは、この4.5インチの小さいサイズにIGZOが入ったところかと思います。IGZOは4.8インチフルHDサイズを軸に5インチ化し、その一方で4.5インチへの小型化も果たしたことになります。SH-02Fの4.5インチは画素密度が487ppiとなり、弊社調べでは10月10日現在で世界最高密度となっています。

多伊良氏
 通常は4.5インチですとHD解像度(720×1280ドット)です。フルHDにすると画素が小さくなって、どうしても光の透過率が落ち、画面も暗くなるためです。明るくするにはバックライトも明るくしなければならないんですけれども、そうすると電池もちに影響します。IGZOですとトランジスタを小さくできますので、フルHDにしても消費電力がぐっと上がることもなく、明るくきれいな映像にできるんです。

 4.5インチクラスの端末は需要として必ずあります。特に女性やフィーチャーフォンユーザーの買い替えという面では、ワンハンドで使える4.5インチくらいのサイズ感が重要です。そこに向けてきちんとした商品を作っていこうということで、チップセットなどの基本的な部分はフラッグシップのSH-01Fと同様にしました。コンパクトながらもプレミアム感、フラッグシップ性を取り入れたというわけです。

――SH-01Fを5インチに、SH-02Fを4.5インチのサイズに決定したのは、どういう理由からなのでしょうか。

多伊良氏
 我々は、横幅で60~70mm前後の範囲でモデルを作って調査を行っています。そうすると、4.5インチと5インチくらいのところでニーズが高くなります。ディスプレイのサイズ感は単純に選ぶわけにはいきませんので、定期的に調査しています。

標準色はMagentaとWhiteだが、背面カバーを交換してさまざまなボディカラーを楽しめる

――SH-01Fとの差別化という意味で、サイズの違い以外に何があるでしょうか。

多伊良氏
 背面カバーを交換できるようになっているのが大きな特徴ですね。従来はその外側にカバーをつけて、それによって異なるカラーリングを楽しめましたが、SH-02Fはカバーそのものを交換するタイプですので、サイズがひとまわり大きくなったり、重くなったりすることもありません。カバーを外した状態で防水性能を確保しています。ドコモさんからオプションで発売される予定で、標準色以外のさまざまなカラーを選べる形でご購入いただけます。標準のスタイルで多色展開的な対応ができるという新しい取り組みですね。また、端末正面にイルミネーションを搭載しています。相手によって電話着信イルミを変えることができて、色鮮やかにお知らせしてくれるので、家族や友達からの着信も一目で分かります。

――SH-02Fで「グリップマジック」を採用しなかった理由は?

多伊良氏
 「グリップマジック」は大画面化するスマートフォンに対応する機能として搭載しています。コンパクト化を追求したSH-02Fでは、サイズ感を最優先としています。

佐伯氏
 実は静電式のグリップセンサーも、開発側からするとアンテナみたいなものなんです。今のスマートフォンはご存じのようにアンテナだらけで、Bluetooth、Wi-Fi、FMトランスミッター、フルセグテレビアンテナ、3G/4Gもあります。ですので、最初の設計構想段階では、アンテナをどのように配置して特性を取るか、というところがとても難しいんです。

 それに加えてグリップセンサーというもう1つのアンテナをSH-02Fのような小さい端末に入れるのは、そういう意味で難易度が高いわけです。また、背面カバーを取り外すことになる点も実装が難しい理由の1つになりますね。

子供らしくないデザインにこだわった「スマートフォン for ジュニア2 SH-03F」

スマートフォン for ジュニア2 SH-03F

――子供向けスマートフォンの第2弾となる「スマートフォン for ジュニア2 SH-03F」では、第1弾と比べてどのような違いがあるでしょうか。

佐伯氏
 SH-03Fは、小学5~6年生から中学1年生に、親が安心して与えられるスマートフォンのスタート機みたいな位置付けです。前モデルもご好評いただいたんですが、いろいろとフィードバックをいただく中で、小学生の高学年ともなると意外と「“子供こども”したケータイはほしくない」と感じている、ということがわかりました。そのため、大人も自然に持てるようなデザイン仕様に変更しています。

 親からすると子供がいろんな有害サイトにアクセスしてしまうと困るので、それをフィルタリングする仕様も引き続き搭載してます。それに加えて今回からWi-FiをベースにしたWebフィルターにも対応しました。前モデルではモバイルネットワーク経由のWebアクセスについてはサーバー側で制限できていたんですが、Wi-Fi経由では管理できなかったためにWi-Fi機能自体を省いていました。今回のSH-03FからはWi-Fi機能を搭載しても、Webフィルターを利かせながらブラウジングできるようにしています。

――子供向けとしては、タブレットというのも最近の流れとしてはあるようですが。

佐伯氏
 タブレットは家で使う、学習で使うといった観点のものだと思います。ただ、子供に持たせるという意味では安心・安全の面から見ると不安が多い。電話やメールで連絡を取りたい、今いる場所を確認したいという親からのニーズがあるので、家に置いてる買う使うことが多いタブレットでそのニーズを満たすのは現状できないのではないかなと思っています。

フィーチャーフォン「SH-03E」は継続して発売。新色としてLight Blueが追加された

――子供向けということで、学習についてもやはり意識して開発されたのでしょうか。

多伊良氏
 学習系のアプリコンテンツはいくつかプリインストールしています。電子書籍サービスの「GALAPAGOS」アプリもあり、ジュニア向けの教育系書籍もダウンロードできる仕組みを用意しました。この端末では、アプリを起動するとジュニア向け書籍専用コンテンツにすぐアクセスできるようになっています。

――Google Playへの対応はやはり難しいでしょうか。

佐伯氏
 小学5~6年生って一気に価値観が変わる年頃というか、友達に「それ使ってると親に見られるぞ」なんて言われた瞬間にその端末を使いたくなくなる、みたいなところがあります。親としては安心できる端末を子供に使わせたいけれども、子供はいろいろな知識を身につけるタイミングでもある。もしかしたら制限をかけすぎない方がいいのかもしれないけれど、親として安心して与えられるのはものであるべきかと思います。と考えると、有害サイトのフィルタリングやGoogle Playなど、一定の制限は必要なのかもしれません。

――本日はありがとうございました。

日沼諭史