インタビュー

シャープ、ソフトバンク冬春モデル開発者インタビュー

3辺狭額縁デザイン「EDGEST」のインパクトをユーザーに

 今冬、シャープはソフトバンク向けに「AQUOS PHONE Xx 302SH」と「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」の2機種のスマートフォンを投入する。

 この両機種は、左右辺だけでなく上辺も細い3辺狭額縁デザインとなっている。シャープはこの3辺狭額縁デザインに「EDGEST」というブランドネームを付け、積極的にアピールする構えだ。実機を見てみると、まるでコンセプトモデルのモックアップかのように思えてしまうほど、インパクトのあるデザインとなっている。

 また、303SHは4.5インチディスプレイを搭載するコンパクトモデルだが、大きさ以外のスペックは302SHとほぼ共通で、ハイエンドモデル扱いとなり、「Xx mini」の名前を冠している。従来のコンパクトモデルは「AQUOS PHONE ss」や「PANTONE」として、ハイエンドモデルより少しスペックが劣っていたが、ここも今シーズンの新しいポイントだ。

302SH(左)と303SH(右)

 今回はこの302SHと303SHについて、開発を担当するシャープの通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第二商品企画部 部長の林孝之氏、同企画部 副参事の澤近京一郎氏、同企画部の岩越裕子氏にお話を伺った。

AQUOS PHONE Xx 302SH

澤近京一郎氏

――まずは画面の大きい方、302SHの方からご案内をお願いいたします。

澤近氏
 AQUOS PHONE Xx 302SH、フラッグシップの名前が付いたモデルになります。これまでもフラッグシップにおいては機能追加や画面の大型化など、ユーザーニーズに合わせて進化してきましたが、今回は飛躍的な進化を遂げています。ポイントは3辺狭額縁の「EDGEST」になります。これまではフルセグやカメラなどの機能進化とともに、画面は迫力のある大画面になっていますが、それに伴って端末サイズも大きくなってしまいました。これをなんとか解決したいと考え、端末をコンパクトにしながら画面を大きくするために、「EDGEST」と名付けた3辺狭額縁デザインを採用しました。

 実際に3辺狭額縁化にあたっては、開発が大変なところもありました。左右の額縁については、従来から狭額縁化に取り組んでいましたが、上辺は近接センサーや照度センサー、レシーバー(通話用スピーカー)が必要なので、狭額縁化が難しくなっています。これらのセンサーなどは外せませんが、そのままいくとスマートフォンに進化はありません。そこで、近接センサーと照度センサーを独自の方法も用い、実装しました。このうっすら見えるところから照度センサーが光を取り込んでいます。レシーバーに関しては、ダクト方式で、内部の音をダクトで表に出すようにしています。こうした技術の組み合わせにより、上辺を狭額縁化することができました。この上で防水仕様とするのはハードルが高いのですが、こちらも特殊な技術で実現しています。既存の機能を削ることなく、狭額縁を実現したというのが、302SHの大きなポイントです。

 もちろん、狭額縁化だけではお客様に驚きを与えられないので、いくつかの改良を加えています。その一つはロック画面です。これまで、各種情報を表示するインフォメーションエリアと壁紙は分離して実装していましたが、今回は一つにまとめました。全体が壁紙になっているので、画面の大きさをすぐに実感していただけます。

200SH(左)と303SH(右)。3ラインホームの表示が大きく変わっている

 同様に3ラインホームも仕様を変更しています。従来はステータスエリアとナビバーは別でしたが、今回、両方ともに透過処理して壁紙が背景に表示できるように作り直しています。

 もう一つ、カメラのアプリでも、ナビバーを透過するようにしました。液晶全体を使ってカメラファインダーを表現しています。撮った写真を見るときも、ナビバーが消えて全画面表示できるようになっています。16:9の画像を見るとき、従来はナビバー以外の部分で表示するので、黒い帯があり、大画面を生かし切れなかったところを改善しました。このように、3辺狭額縁化でいかにお客様に楽しみや驚き、感動を与えられるかを考え、アプリに手を入れています。

 カメラについては、前モデルと同様にF値1.9という明るいレンズを搭載しています。これにより、ボケ味を活かした写真を撮影できます。しかしボケのない、奥から手前までフォーカスの合っている写真を撮るニーズにも応えるために、新たに多焦点撮影機能を搭載しました。この機能では、複数点のフォーカスの写真を撮影し、合成しています。これを実現するためにはオートフォーカス速度を上げる必要があるので、そのためにオートフォーカスに新方式を採用しています。

 もう一つ、NightCatchという機能を追加しました。普通にISO感度を上げると、明るく撮れますが、ノイズが増えて綺麗ではなくなります。ナイトキャッチでは、複数の写真を撮影し、合成することで、ノイズを増やさずに明るく夜景などが撮れるようになっています。

 カメラを使った機能としては、翻訳機能も搭載しています。英語の看板などにカメラを向けるだけで、素早く正確に翻訳ができます。

本体カラーに合わせた卓上ホルダが同梱される

 それから、フルセグにも対応しています。5.2インチの大画面でフルセグなど映像を従来以上に楽しめるのでは、ということで、卓上ホルダも同梱します。今回は本体のカラーに合わせた卓上ホルダを用意しています。206SHのときに好評だったダクト構造を採用し、音がちゃんと前から聞こえるようになったので、テレビを見ているような感覚をお客様に提供できるかと思います。

――3辺狭額縁は構造的に難しいと思いますが、近接センサーや照度センサー以外に従来から変更している部分はあるのでしょうか。

澤近氏
 サブカメラを下に配置したり、いろいろな工夫をしています。狭額縁でありながら防水、ということで、画面をどのようにして貼り付けるか、というところで新技術を導入しました。狭額縁だからといって防水を外すわけにはいきません。ここは難しかったポイントですね。

細い上辺にレシーバーと近接・照度センサーが組み込まれている

――レシーバーはダクト構造とのことですが、ここはパネルレシーバーを採用する手もあったのでは。

澤近氏
 いくつかの方式を検討した結果、今回の構造がベストと考えました。この302SHで別の方式のレシーバー構造を採用すると、狭額縁は実現できなかったと考えています。筐体設計によってはパネルレシーバーの方が有利な場合もありますが、302SHでは、ダクト構造がもっとも額縁を狭くできます。

――3辺狭額縁は当初から製品コンセプトにあったのでしょうか。

澤近氏
 この商品を企画するとき、いかにしてお客様に驚きを与えられるか、ということを考えながら検討しました。大きな画面というニーズもありますが、筐体は大きくない方が良い、そこをどう解決するか。ここまできたら、この課題に取り組まないといけない。製品の差別化も難しくなっていますし、そこに対応するために取り組みました。最初の課題はやはり近接センサーでした。搭載できないので外す、という話もありましたが、機能を削った上での狭額縁では意味がありません。同じ機能を搭載した上で、狭額縁を提供したいと考え、くじけずに取り組みました。

――次はやはり4辺狭額縁なのでしょうか。

澤近氏
 難しいですね。筐体設計全体に言えますが、無線特性の確保が困難になります。とくにこのモデルからHybrid 4G LTE(FDD-LTEとTD-LTEの両方を使うソフトバンクさんのサービス)なので、通信方式が増えています。増えていますが、以前のモデルより縦方向に短くなっています。この下の部分は無線にとって重要なところです。

 ほかにも構造的な問題があります。まずは3辺狭額縁を確立して、お客様に違った感動を与えたいと考えました。

――左右と上の3辺が狭額縁になっていますが、下ではなくて上が狭額縁なのには理由があるのでしょうか。

澤近氏
 映像を見るにあたっては、上が狭い方が影響があります。下は手で持つのに必要で、ボリュームキーもあるので、そこははっきりしていますね。

――大画面で狭額縁にすると、指を伸ばしたとき、親指の根元部分が画面に当たりそうになりますが。

澤近氏
 誤操作が気になるという声も想定していて、それを回避する仕組みも入れています。3辺狭額縁を入れつつも、操作が不利になるところにはしっかりと手を入れました。

――ディスプレイがIGZOではないのは理由があるのでしょうか。

澤近氏
 従来モデルから進化させたい、という考えが根底にあります。そういった意味で、5インチを超え、5.2インチにしました。5.2インチにして、さらに3辺狭額縁もやるとなると、このタイミングではS-CGシリコン液晶しかありませんでした。新たな感動を提供することにこだわったためです。IGZOも優れていますが、S-CGシリコン液晶も省電力性能は優れています。

林孝之氏

林氏
 EDGESTをやるにあたっては、画面の大きさが最重要ポイントです。大きな画面を選びつつ、かつ筐体サイズの優位性を示すコンセプトを立たせるために、5.2インチのS-CGシリコン液晶を採用しました。

――秋モデルではソフトバンクだけで3辺狭額縁を採用していますが、これは何か理由があるのでしょうか。

澤近氏
 ソフトバンクさん向けの担当としては、フラッグシップモデルにふさわしいものを作りたいと考えました。普通の商品の流れではなく、どこかで新しいものを提供したい、と。

――フィーチャーフォン時代から、シャープはソフトバンクさん向けに新しい技術やコンセプトを先行して導入していくイメージがあります。その流れで、「ソフトバンクさん向けは一歩先に行かないといけない」のようなプレッシャーがあるのでしょうか。

林氏
 良い意味でプレッシャーは常に感じています。新しい取り組みについては、結果としてそのようなイメージに受け取られているかもしれません。ソフトバンクさんに限らず各キャリア様との間でやりとりさせて頂き、商品の特長・差別化などいろいろな議論をしています。今回、EDGESTはソフトバンクさん向けに商品化しますが、これはいろいろなご提案を経て、スマートフォンの新しいカタチを受け入れていただいたものだと考えています。

――内部構造的には、バッテリーは取り外せない内蔵式ですが、本体のフットプリントが減ったので大きな容量は難しいかと思われます。

澤近氏
 前モデルの206SHから少し小さい2600mAhのバッテリーを搭載しています。液晶も大きく、CPUも早くなっていますが、省電力化により、電池の持ちはほぼ同等で計測できています。

 省電力化の取り組みとしては、各アプリの消費電力を削ったり、CPUのクロック制御などを含め、いかに無駄な電力を抑えるか、というところにノウハウを投入して取り組みました。地道な努力により、2600mAhでも2日間を超える実使用時間を達成しています。

――対応通信方式も増えているのに、すごいですね。

澤近氏
 やはり機能が増えたことによるデメリットを出したくないと考えました。無線通信方式をいくら増やしても筐体サイズを大きくできない、という思いで、なんとかこのサイズに全部を埋め込みました。実際問題、本当に厳しいのですけどね。

――他キャリア向けではバッテリーを大きくするのが一般的になっています。何を優先させるかは難しいですね。

澤近氏
 バッテリーを大きくするのも解決策です。しかし、このモデルでは3辺狭額縁で画面を大きく見せたい、というコンセプトがありました。そうなると、バッテリーを大きくするのが難しいです。だからといってバッテリーの持ちが悪くても良いというわけではありません。3辺狭額縁でありながら、いかにバッテリーを長持ちさせるか、というところが気を遣ったポイントになります。

林氏
 バッテリーに関してはいろいろな見方があるかと思いますが、どれだけ使用時間を長くしても、お客様に満足いただくのは難しいかもしれません。フィーチャーフォン時代も、バッテリーの持ちに対する要望は高かった。スマートフォンで環境が変わっていますが、今回は「余裕の2日間」をキープしています。そのためにどのくらいのバッテリーサイズが必要か、ということで、2600mAhを選びました。もっと大きなバッテリーを搭載すると、厚みが増えてしまいます。かといってフットプリントを増やすと、EDGESTのコンセプトが破綻してしまいます。違和感のない厚み・サイズがどのくらいなのかを探りました。

AQUOS PHONE Xx mini 303SH

303SH

――続いて小型版のAQUOS PHONE Xx mini 303SHについて伺います。今回、名前も揃って「Xx」を採用していますが、その狙いとは。

林氏
 今回、あえてブランドネームを合わせました。今まで、筐体の小さいモデルは「スペックが低い」というとらわれ方が強かったので、そこを払拭したいと考えました。今回の303SHは、使っているCPUも一緒で、画面についても4.5インチでフルHDとなっています。現時点で高精細さでは世界最高です。機能を凝縮したようなイメージです。フラッグシップモデルといっても十分に通じるモデルにしたいと考え、「Xx mini」という名前を採用しました。

――外観デザインも揃っていますね。

林氏
 そうですね、異なるデザインアプローチをすると、EDGESTというイメージが付きづらいのではと考えました。EDGESTという名前を使うにあたり、最初のモデルと次のモデルでデザインのイメージも合わせるようにしています。

302SHは側面にUSB端子があるが、303SHは下端にある。いずれもキャップレス防水仕様

――3辺狭額縁ということで、中身の作りは基本的には302SHと同じなのでしょうか?

澤近氏
 配置が100%違うというわけではないですが、かなり違います。たとえばサブカメラの位置が違うので、アンテナの位置も違います。USB端子の位置も違います。どこにどのようなスペースを確保するかでせめぎ合いがありました。

――ボディがこれだけ小さいと、アンテナ実装は大変そうですね。

澤近氏
 かなり大変でした。まだ開発試作段階ですので、これからもまだまだ大変です。

――CPUなどはほぼ302SHと同じで、ディスプレイだけ違うようですが、こちらはIGZOを採用されています。これは何か理由が?

澤近氏
 今回、ハイエンドを狙いながら筐体サイズを小さくして、その中に入る最大サイズ、最高解像度の液晶を入れたいと考えました。4.5インチでフルHDです。フルHDでこのサイズ、しかもバッテリーは2120mAhです。そのためにはIGZOを使い、バッテリーの持ちを2日間というのが必須条件かな、と考えました。

 実際に2日間持つのか、というのは大きな課題でした。302SHより303SHの方が厳しかったです。筐体が小さいのにスペックが変わらない、と。液晶は小さいですが、同じ解像度でサイズが小さいと、液晶の場合、開口率(光の透過率、バックライトの消費電力に影響する)が低くなります。それでいてボディサイズが小さいので302SHよりバッテリーも少なくなります。このコンパクトさで2日間、となると、IGZOで行くしかない、と考えました。

――このサイズならば2日間なくても、とも思うのですが。

澤近氏
 ボディが小さいことを言い訳にバッテリーが持たないようにはしたくなかったので、2120mAhでありながら、バッテリーの持ちには自信の持てる端末としました。

岩越裕子氏

――303SHの特長というと?

岩越氏
 液晶ですね。今回、3辺狭額縁のEDGESTというコンセプトを踏襲しつつ、4.5インチのサイズでフルHD解像度としました。ここがこの端末の特長になります。487ppiということで、現時点で世界最高と考えています。302SHはフルセグを搭載するなど、大画面で高精細なコンテンツを楽しみたい人向けですが、303SHはビジネスマンなど、荷物を減らしたい人向けのモデルでもあります。

 カラーバリエーションは8色で展開します。背面のデザインも従来のコンパクトモデルとは違っています。200SHや205SHだと、背面にきれいなラウンドをとって丸いイメージになっていますが、今回は背面にキャラクターラインを入れてもらっています。塗装についても、金属粒子感のある塗装としました。ハイスペックをアピールする狙いもありますが、塗装処理もデザインも含め、廉価モデルと思われないようにしています。

――303SHはちょっと後の発売(2014年2月予定)となりますが、発売後、303SHと302SHが店頭に並んだとき、どちらが売れると見込まれてますか。

岩越氏
 303SHの担当としては、303SHと言うべきかも知れませんが、目指しているターゲットが明らかに違うモデルになります。302SHは大画面でフルセグなので、そういったところを使いたい、ハイエンド志向のお客様向けです。

今シーズンのソフトバンク向けシャープは大型ディスプレイの302SH(下段)、コンパクトな303SH(中段)、フィーチャーフォンの301SH(上段)が並ぶ

 303SHについてはコンパクトでありながらハイスペック、というところを押しています。「ハイスペック端末が欲しいけど5インチは大きすぎる。かといってコンパクトな低スペック端末はイヤ」というようなお客様に提案したいと考えています。

――たしかに従来のラインナップだと、コンパクトなモデルはスペックやOSが古くてストレスが、という印象がありました。しかし303SHはそういったところが一切ないのがいいですね。

林氏
 市場的に売れてるモデルはハイスペックなハイエンドモデルです。小さいモデルは性能が低いです、となると、とくに男性には、大きいものが選ばれがちです。しかし、状況はちょっとずつ変わってきているかな、とも思っています。コンパクトでありながら中身はハイエンド仕様となれば、男女隔てなく、選択肢の幅が広がります。あとはどのように使いたいか、というところで、お客様に選んでいただければ、と考えています。

 また、現在は出荷数で言えば、ほぼスマートフォンになってきていますが、まだフィーチャーフォンユーザーは半分以上います。そういった人たちにもアプローチしなければいけないというとなると、こういったコンパクトなモデルは手が届きやすいのではないでしょうか。

 逆にすでにスマートフォンをバリバリに使っていて、大きな画面に慣れてしまっていると、大きな画面から離れられない、というケースもあると思います。302SHと303SHのどちらかというわけではなく、両方受け入れられると考えています。

THE PREMIUM 10 WATERPROOF 301SH

左から301SH、302SH、303SH

――フィーチャーフォンの「THE PREMIUM 10 WATERPROOF 301SH」も今回、出されますね。

澤近氏
 今、スマートフォンの出荷台数が増えていますが、フィーチャーフォンにも根強い人気があります。そこは良い製品を投入し、お客様にしっかり使っていただきたいと考えています。スペック的には、109SHとほぼ同等ですが、カラーをより高級にしました。

 フィーチャーフォンにおいて機能をどう進化させるか、という考えもありますが、フィーチャーフォンユーザーにとっては、使い勝手の良い商品が揃っていることが重要ですので、そういったニーズにフィットした商品として開発しています。

――フィーチャーフォンも根強いニーズがありますよね。

林氏
 301SHのような高級クラスだと、機種変更が多いですね。以前のような2台持ちについてはあまり聞かなくなりましたね。

――最後に一言お願いします。

澤近氏
 302SHと303SHは、3辺狭額縁のEDGESTというブランドを付与した新しい商品になります。画面を点灯させたときのインパクトが強いので、この驚きを一刻も早くお客様にお届けしたいと思っています。3辺狭額縁を活かしたフラッグシップとして、こだわりポイントをちりばめていますのでご期待ください。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

(白根 雅彦)