インタビュー

スマートフォンアプリ開発のツボ

Googleが太鼓判を押す「SmartNews」の藤村氏に聞く

 あらゆるニュースサイトをまとめて閲覧できる人気のスマートフォンアプリ「SmartNews」。記事の豊富さと、サクサクと快適に読めることがユーザーから支持され、iTunes Storeで平均4.5、Google Playで平均4.6の評価がつく。先日、Googleから発表された“Googleが選ぶベストアプリ2013”の「アプリオブザイヤー2013」を受賞した。

 “世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける”をテーマに2012年6月に会社を設立。「Antenna」、「Gunosy」などの類似サービスがひしめく中、独自のTwitterリアルタイム解析技術を基盤に運用を行う。2013年10月には、株式会社ゴクロからスマートニュース株式会社に社名変更した。「社名も変えたしSmartNews 1本で行く」と意気込む執行役員の藤村厚夫氏にお話を伺った。

スマートニュース株式会社 執行役員 藤村厚夫氏

新たな発見を届けるために“情報をパーソナライズしない”

――現在、提携関係にある媒体はどのくらいありますか?

 現状は66媒体です。100媒体にまで広げたいと考え、年内に100媒体を目指していたのですが、ちょっと難しいかな。まぁ、着実にやってきてはいるので年度内に達成できるようがんばります。

――記事の扱いに対する批判もあるようですが

 そうですね。著作権問題などもろもろ、言われていることはあります。ご批判に関しては、ちょっと誤解されている部分もありまして、「SmartNews」は検索エンジン+ブラウザとして振る舞います。キャッシュは十数分単位で消えていくようになっています。媒体社さんに対しては、きちんと顔を合わせて話をすることで、ご理解いただくということの積み重ねだと思っています。

――どういったしくみで、記事を掲載しているのですか?

 まずは、Twitter上にあるURLを含むツイートを収集しインデックス化することから始まります。集めたツイートをリアルタイム解析するアルゴリズムを構築しました。内容を「言語解析」し、どの分野の記事であるか自動でカテゴリ分類を行います。その後、「類似判定」を行います。類似判定とは、さまざまなメディアによる違う記事であっても、今、世の中で起きている同じ事件や事象に対して、アプリ内での記事かぶりを無くすためのものです。同じネタの記事の中からどの記事を選定するかを判断する「注目度判定」を行います。これは、ある一定の時間内、たとえば10分間でツイート数が20〜30くらいあれば、注目度が高いと判断します。これらを経て記事が「SmartNews」上に自動配信されます。

――ほかにもソーシャルサービスはあるが、「Twitter」に依存する理由は?

 必ずしも相互フォローではない「1対n」(1ユーザー、1ツイートに対して複数人)で対称性がないという、Twitterのフォロー関係の特性が、自動判断の材料としてマッチしていると考えています。たとえばFacebookであれば、ある事柄の“自分の友達が興味を持ったもの”に対して「いいね!」しますよね。Twitterでは、そういった要素が希薄であると考えます。数多くあるコンテンツの中から、より純粋によい情報を見つけ出すには“多くの人が読んでいるニュースがいい記事”を判断基準にしています。

――なるほど、馴れ合いでは偏った情報ばかり集まってしまうと?

 これまでのソーシャルの流れとは逆に向かっているようだけれど、特定のクラスタに最適化していくアプローチは狭い世界観をもたらしてしまいかねない。発見や驚きを広く届けるためにも、パーソナライズしすぎないことが「SmartNews」のアルゴリズムの原点になっています。

――記事をセレクトして掲載することもあるのでしょうか?

 人の手によってセレクトすることはしません。複雑なこと、人間的なことをいかに技術的に自動化できるかを目指し、チャレンジしています。それによって生まれるメリットは、対象になるコンテンツの規模を広げることができるという点です。スタッフは技術者が多いので、いかに手をかけずに簡略化するか、そのアルゴリズムについて議論しています。

いにしえの“違い棚”をヒントに、快適さを追求したUI

記事一覧は“違い棚”をヒントにしたレイアウト

――操作性やインターフェイスにこだわりはありますか?

 ページをめくるような見せ方と、独自のレイアウトにこだわっています。独自のレイアウトは、記事の一覧を見ていただくとお分かりになると思いますが、平安時代から伝わる“違い棚”方式で見せています。記事のブロックをあえて整列させず、互い違いに配置します。これによるメリットは、メリハリを持たせながら多くの記事を一画面に表示できることです。そして、見出しの文字配列では、自然に読めるよう“適切な箇所で改行する”ようになっています。ちょうどいい改行をすれば、文字がちょっと出っ張る部分も出てくるのですが、文字に少し長体をかけて自動調整しています。

――印刷物の組版に似ていますね?

 気持ちよく見せるためにそれは意識しています。あまり細かくて気付いてもらえない部分なのですが、気づいてもらえないくらいがちょうどいいんでしょうね。OS側でそのギミックが使えないので、これは自前で作り込んで実装しています。

ライバルはゲームアプリ、視野を広げて欲しいから

――類似サービスがいくつかありますが、ライバルはズバリ?

 スタッフ同士でよく話しているのは「ゲームとどう闘えるか」ということです。スマートフォンを持ち歩くようになって、電車での移動中、在宅中、さまざまなシーンで最適な情報が届けられる環境が整っている中で、なんだかんだ一番やっていることはゲームだったりしますよね。まぁあんまり言うと「せわしない」と思われてしまうかもしれませんが(笑)、時間の使い方次第で、もっと多くの情報に接することができると思うのです。混雑した狭い地下鉄に乗っている時でも、広い世界の情報が得られる。そのためには“ゲームより価値がある”、“ゲームより面白い”と思ってもらえるものを目標にチャレンジをしています。

――スタッフのみなさんは高学歴でエリートばかりのようですが……、人の集め方は?

 まあ、だいたい芋づる方式です(笑)。変な人が多くてね、宇宙について研究しているとか。仕事なのでふざけたことは言えないけれども、「仕事」というよりも、研究やクリエイティブなことをしているという感覚で、面白がってやってもらっています。オフィスも、自由で開けた空間をイメージしています。机に向かって「さぁ仕事」というよりも、好きな場所で自由に寝転がったりして、放し飼いの野獣みたいな感じで、仕事をしてもらっています。

寝転がって仕事もできる広々スペース。ハンモックやヨガマットも用意されている
ファミレスをイメージした打ち合わせスペース
オフィスの真ん中には、おしゃれなバーカウンター
サービス開始から1周年を迎えたそうだ

――最後に、今後の課題について教えてください

 もともとメディアにいた人間なのでなんとなく感じているのですが、この業界は人の勘に頼っているところが結構ありますよね。日本ではまだあまりないですが、アメリカではデータを分析することで未来を予測できる分野やビジネスに対して、メディアのデータを利用する取り組みが、積極的に行われています。データとして客観化されたものを、企画に活かすとか。我々が持つデータや技術を共有して、メディアビジネスの未来になにか貢献できればと思っています。

――本日はありがとうございました

(川崎 絵美)