インタビュー

「AQUOS PHONE SERIE mini」「AQUOS PAD」開発者インタビュー

「AQUOS PHONE SERIE mini」「AQUOS PAD」開発者インタビュー

“EDGEST”デザインでクラスを超えたコンパクトさを実現

 auの2014年春モデルとしてラインナップされたシャープ製のスマートフォン「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」と、タブレット「AQUOS PAD SHT22」は、どちらも三辺狭額縁の“EDGEST”デザインで、同じディスプレイサイズでは従来にないコンパクトなボディが特徴のモデルだ。

 「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」「AQUOS PAD SHT22」の特徴や開発の背景について、シャープ 通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第三商品企画部 部長の後藤正典氏、同事業本部 グローバル商品企画センター 第三商品企画部の伏見聡氏、同事業本部 グローバル商品企画センター 第三商品企画部 主任の濱田実氏、同事業本部 パーソナル通信第二事業部 開発部の横畠博之氏の4名に話を伺った。

左から、横畠氏、濱田氏、伏見氏、後藤氏

「EDGEST」デザインで狭額縁を追求した2モデル

――auから春モデルとして発売されるシャープ製の2つの端末ですが、コンセプトなどはどのようになっていますか。

後藤氏
 今回のauの2モデルは、シャープが新しく進めているコンセプト「EDGEST」(エッジスト)に基づくもので、春モデルとしてスマートフォン1機種、タブレット1機種をラインナップしました。

 「EDGEST」は、スマートフォンなどの画面を操作する端末のサイズを、極限までディスプレイのサイズに近づけていく、というデザインのコンセプトです。ディスプレイ以外をなるべく排して、ディスプレイそのものを浮き立たせようというものです。

 スマートフォンの「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」は、ディスプレイが4.5インチです。Androidスマートフォンの画面は大型化のトレンドがあり、5インチを超えるサイズもあります。大型化したことで、片手操作ができる、ユーザーにとってちょうどいいサイズのAndroidスマートフォンが逆に少なくなっており、そこに大きな需要があると考えています。2013年の秋冬モデル「AQUOS PHONE SERIE SHL23」は、4.8インチでフラッグシップモデルでしたが、追加される春モデルとしては4.5インチのモデルを投入することになります。

 Androidタブレット「AQUOS PAD SHT22」は、7インチディスプレイのモデルで、auでは約1年前の「AQUOS PAD SHT21」に続く2モデル目です。「EDGEST」のコンセプトに従い、7インチなのにコンパクトに仕上がっています。

 タブレットについては、使い方を明確に想定しているユーザーはまだまだ少ないかなと考え、使い方を提案する取り組みのひとつとして、カメラをポイントにしています。au向けとして初代のモデルである「AQUOS PAD SHT21」を出した後、ユーザーからはカメラが不満点に挙げられ、もっとよいものを要望する声がけっこうありました。タブレットのカメラは8メガクラスが主流ですが、スマートフォンと比較すればミドルクラスという位置です。今回はタブレットでもハイエンドスマートフォン並の性能と機能のカメラを搭載しました。

 もうひとつのポイントは、多くのケースではスマートフォンとの2台持ちが前提になるだろうということで、2台持ちで便利に使える連携機能「Passtock」を搭載した点です。

「AQUOS PAD SHT22」(左)と、「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」

「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」

――まず、「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」について、具体的に伺いたいと思います。

伏見氏
 大枠のコンセプトですが、Androidのスマートフォンが大型化してきている中、コンパクトサイズへの需要を狙ったものです。コンパクトでありながら、スペックも妥協せず、重視して取り組みました。名前に“SERIE mini”とあるように、ハイスペックモデルのSERIEをコンパクトにしたモデルです。

 ターゲット層は、片手で持てるサイズや操作性を重視する若い男女、その中でも手の小さい女性を主なターゲットにしています。

 「EDGEST」は画面の左右の幅をできる限り細くして、ディスプレイだけを持っているような感覚で操作できるというもので、「EDGEST」により、コンパクトでありながら4.5インチのディスプレイを搭載できています。コンパクトサイズということで、重量も115gと軽量になっています。

――ポイントになっている「EDGEST」デザインですが、具体的にどのように実現しているのでしょうか。

伏見氏
 従来は、筐体と液晶パネルを接合する際に、筐体側に細い両面テープを貼って、筐体とパネルを接着するというものでした。

 「EDGEST」では新たに、より幅の細い糊に対して、レーザーで糊を溶かして接着するという手法を採用しました。

後藤氏
 いわゆる両面テープと呼んでいる従来の接着の手法では、防水性能や強度の面から、接着面の幅を細くすることに限界がありました。額縁を狭くするため、糊の幅を狭くすると、強度不足になります。

 その強度不足を補うために、特殊な糊のテープを貼り付け、ディスプレイのガラス越しにレーザーを照射して糊を溶かす手法にしました。これにより、強度を確保しながらも、より狭い幅での接着が可能になりました。これでないと、狭額縁と防水は両立できないのです。

 これまでも液晶パネル自体の狭額縁化は進んでいましたが、今回のような「EDGEST」デザインを採用しようとすると、新たに貼り付ける際の課題も出てきたということです。

伏見氏
 狭額縁化で上の辺も狭くなり、インカメラは下側に移動しています。レシーバー(受話口)も、今までは穴のすぐ後ろにレシーバーがあり、音を出していましたが、それだと額縁の幅が必要になるということで、レシーバー自体はディスプレイの裏側に上を向けて搭載し、ダクトを通して従来の位置から音が出る構造になっています。

――極端な狭額縁の「EDGEST」デザインは、ソフトバンクから発売された「AQUOS PHONE Xx 302SH」で初めて採用されましたが、液晶パネルの種類はIGZOではなくCGシリコン液晶でした。この時は、CGシリコンのほうが現時点では向いているからと説明されていました。

後藤氏
 今回の「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」はIGZOで、4.5インチ、フルHDという新開発のパネルです。CGシリコンのパネルほどではないですが、かなり狭額縁のパネルです。従来のIGZOのパネルと比較しても、少し狭額縁になっています。

伏見氏
 そのIGZOディスプレイは、4.5インチ、フルHDということで、487ppiという高い密度を実現しています。

後藤氏
 密度も、IGZOの特徴が出てきている部分ですね。IGZOは開口率が高いので、画素密度が高くなっても暗くなったり発色が悪くなったりすることが少ないのです。ここはやはりIGZOならではの部分です。

――コンパクトですが、ハイスペックも謳う端末です。

伏見氏
 機能的には秋冬モデルの「AQUOS PHONE SERIE SHL23」を踏襲する形で、さまざまな機能を搭載しています。

後藤氏
 カメラは13メガピクセルなので、「AQUOS PHONE SERIE SHL23」の16.3メガピクセルからダウンしていますが、撮影関連の機能はそのまま搭載しています。

伏見氏
 撮影関連で進化させた部分は、ファインダー画面です。「EDGEST」になって、風景をそのまま切り取る、という部分を強調するため、ファインダー上の表示もスッキリとさせました。シャッターボタンの円の中も透過表示にしています。

 インカメラは、「EDGEST」実現の関係で下側に移動していますが、そのままだと、シャッターボタンを押そうとする指でインカメラを覆ってしまいます。そこで、インカメラに切り替えると、上下を逆さまに持って下さいという表示を画面に出すようにしています。逆さまで撮影しても、正しい向きで保存されるので、見るときに上下逆さまの写真になることはありません。女性をターゲットにしていますし、インカメラも頻繁に使われるだろうということで、この機能を入れました。

――カラー展開も4色と、広がっていますね。

伏見氏
 シャープとしてもひさしぶりの4色展開で、ピンク、ブルー、ホワイトの人気のカラーに加えてもう一色、イエローグリーンを追加しました。ターゲット世代である20~30代の女性を対象にした事前の調査でも人気があった色です。特に30代の女性に人気がありました。

 外観では、単純に同じ色で全体を覆うのではなく、ボディ外周とカメラレンズの周りに、同系色ですが異なる色を使いました。

 背面側のボディに空いてる穴や窓ですが、これまでとは違い、塗装などをすべて終えてから切削しています。従来は穴を空けた後に塗装していましたが、それだと、どうしても穴の周囲に塗料が貯まり厚みが出てしまうのです。こうした細かい点にもこだわっています。スピーカーの穴も同様に、デザインを阻害しない細かな穴を、塗装した後に空けています。

 また、今回のモデルからUSB端子はキャップレス防水になりました。キャップの開閉の煩わしさが改善されています。卓上ホルダーを廃止し、卓上ホルダー用の充電端子が要らなくなったのも、デザイン面の阻害要素をできる限り排除したいという考えです。

――卓上ホルダーは、USB端子の防水キャップを傷めないためにも重要、という考えもあったかと思いますが、USB端子がキャップレス防水になったことで、重要度は下がったということでしょうか。

後藤氏
 充電する際の(キャップを開閉する)煩わしさを解消するため、という意味では、キャップレス防水になったことで、卓上ホルダーの役割は無くなったのかなと思います。ただ、映像を見る時のスタンドとしてなど、充電以外に使う要素もありますから、そういう用途を重視するなら考えていかないといけないでしょう。

 今回の「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」はデザイン面でスッキリとさせるという方針もあったので、あえて卓上ホルダーは非対応としました。

――コンパクトなモデルでスペックも魅力ですが、今後、大型のディスプレイを搭載した端末との棲み分けはどうなるのでしょうか。

後藤氏
 難しいですね。シャープの中で考えると、コンパクトモデルのウェイトは高いのですが、メインはまだまだ、従来型のフラッグシップモデルであることは間違いないでしょう。ただ、こうしたモデルが(シャープの)販売台数で1~2割よりも上になると見込んでいます。Androidスマートフォンという枠ではコンパクトモデルは少ないですし、スマートフォン全体を見ると、残念ながら、コンパクト系への需要はまだまだiPhoneが多いと思います。

――iPhoneはもうコンパクト系なのでしょうか(笑)?

後藤氏
 店頭などでは、薦められたAndroidスマートフォンの画面が大きくてイヤという場合に、iPhoneを選ばれる場合が多いという話も聞きます。この時に、店員が薦める選択肢はAndroidになく、iPhoneしかないと。

――機能よりもコンパクトさを重視するユーザーに購買層が移ってきたということでしょうか。

後藤氏
 今の買い替えには2種類あり、フィーチャーフォンからの乗り換え、もうひとつはスマートフォンの買い替えです。フィーチャーフォンから乗り換えるユーザーは、サイズ感を気にする傾向が強いようです。今まで使っていたフィーチャーフォンから、いきなり5インチクラスのスマートフォンを見せられても「ちょっとこれはデカイ」となりますよね。ほかにも、とりあえずスマートフォンを買ったけど、もう少し小さいのが欲しいと考えているユーザーですね。そうした需要が取り込めればと思います。

「AQUOS PAD SHT22」

「AQUOS PAD SHT22」(左)と、前モデルの「AQUOS PAD SHT21」(右)

――次は、「AQUOS PAD SHT22」について伺いたいと思います。

濱田氏
 auでは2012年11月に前モデルの「AQUOS PAD SHT21」が発売され、1年とすこしが経っています。当社が実際に購入したユーザーに調査を行ったところ、評価されたポイントはIGZO液晶の省電力、解像度、それに持ちやすさも評価されています。重量の軽さも評価が高かった点です。

 後継機を開発するにあたっては、こうした評価された点を強化し、7インチの、モバイルタブレットとしての本質を極めていこうというのが方針です。

 ターゲットユーザーは、屋内外で検索やニュースの閲覧に活用したい男女で、なおかつサイズ感や重さ、電池持ちも重視するユーザーです。

 前モデルの「AQUOS PAD SHT21」は男女比が7:3で、男性にかなり振れていました。幅広いユーザーに使っていただきたい、女性の割合を引き上げたい、そういう意味で、ボディデザインにラウンド感を出し、黒から白基調にカラーを変更しました。

 ボディサイズでは、三辺狭額縁の「EDGEST」を採用しているのは先ほど説明のあったモデルと同じです。

 前モデルの「AQUOS PAD SHT21」と今回の「AQUOS PAD SHT22」を比べると、三辺狭額縁を活かし、横幅が106mmから104mmに狭く、長さが190mmから173mmに短くなっています。なおかつ、重量も272gから263gに軽くなっています。ただ面積を小さくしただけではなく、電池容量サイズは3460mAhから4080mAhに引き上げつつ、サイズと重量をダウンさせています。

 結果的に、一般的な少年誌のコミックより一回り小さいサイズを実現しています。例えばはauの「ブックパス」などでコミックを見れば、紙のコミック本などと同じサイズ感で楽しめると思います。

濱田氏
 液晶画面の占有率は80%で、ダントツです。今世の中にあるタブレットはほとんどが60%台で、唯一70%を超えているのが「iPad mini」の71%です。「AQUOS PAD SHT22」は、7インチタブレットとしては世界最小になると思います。

――カメラがかなり強化されているのもポイントですか?

濱田氏
 タブレットといえば、8メガ、5メガクラスのカメラが主流でが、「AQUOS PAD SHT22」は「EDGEST」の採用などもあり、タブレットの使い方の提案のひとつとして、カメラに注力しています。

 スマートフォン並みの13メガピクセルのカメラですが、高画素で撮影したら高画素で見られるというものです。7インチのディスプレイですが、実は、写真のL判相当のサイズです。端末を横向きにして構えれば、画面のサイズがそのままL判のプリントサイズと同じですから、仕上がりをイメージしながら撮影することができます。「EDGEST」の狭額縁とあいまって、風景をそのまま切り取るような“全身ファインダー感覚”ですね。

 写真は撮るだけでなくとことん楽しむということで、デコレーションやプリントサービスまでカバーしていますし、インカメラも210万画素です。

 ロック解除画面の「ウェルカムシート」には写真を表示できますが、従来はユーザーが5枚を選ぶ形でした。今回はウェルカムシートにビューアー機能を追加しており、撮影した写真が保存されているアルバムを指定するだけで、アルバム内の写真がウェルカムシートで閲覧できるようになっています。

 写真の撮影サイズについては、通常はスマートフォンのフルHDに合わせた16:9のモードですが、「AQUOS PAD SHT22」ではWUXGAの画面に合わせた16:10の撮影モードも追加しました。このモードならファインダー画面の上下に帯が出ることなくファインダーを全画面に表示できます。

 ウェルカムシートでは「Papelook」という写真編集アプリへの動線を入れています。フォトブックを注文できる「TOLOT」アプリでは、これまでアプリを立ち上げた後に画像を選択していましたが、通常のアルバムで閲覧中に気に入った画像を選択すれば、サブメニューからフォトブックの作成画面に移行できるようになっています。

 撮影して、編集して、フォトブックの作成までを簡単に分かりやすくしたのが、カメラを使い方のひとつとして提案する取り組みですね。

――タブレットユーザーはどの程度カメラを使っているのでしょうか。

後藤氏
 普通はスマートフォンのカメラで撮影しますが、例えばお互いに見せ合うという場面ではなかなか使いにくい。そういうこともあってなのか、タブレットでも8メガクラスのカメラではスマートフォンとの差があり、そこを不満とする声がけっこうありましたね。

スマートフォンとタブレットを連携させる「Passtock」

――「AQUOS PAD SHT22」には「Passtock」というスマートフォンとの連携機能が搭載されました。これはどういうものでしょうか。

横畠氏
 大きく2つあり、データ連携、電話連携の2つです。データ連携というのは、撮影した写真などを簡単にやりとりしたいというときの機能です。電話連携というのは、「AQUOS PAD SHT22」には3Gの通話機能が搭載されていないので、Webブラウザで見つけたお店に予約をする際などに便利な機能です。電話番号をタップすれば、すぐにスマートフォンに電話番号が渡され、かけられるようになります。

 この機能はスマートフォンとタブレットの2台持ちが前提ですが、スマートフォンとタブレットの役割の違いに注目しました。スマートフォンがコミュニケーションを中心とし、タブレットは写真や動画、Webサイトなどのビューワーとしての役割が中心になると考えました。

 この2つの役割を持った2台を持ち運ぶ際、問題になる点を考えると、例えばスマートフォンで撮影した写真をタブレットの大画面で見たい、あるいは、タブレットで調べた情報を移動中にスマートフォンで見たり、SNSで共有したいといったものです。こうした連携を実現するのが「Passtock」のデータ連携と電話連携です。

 データ連携では、Android標準の共有機能の中に「ストックする(Passtock)」という項目が追加されているので、これを選ぶとアニメーションとともにストックすることができます。ストックされると、自動的に同期し、もう一方の端末でも見られるようになります。

発表会で展示された「Passtock」のデモ

――「Passtock」の通信機能は、BluetoothとWi-Fi Directの2つの通信方式を使って実現しているとのことですが、これはなぜでしょうか?

 当初は家庭にあるようなWi-Fiのアクセスポイントを経由して通信しようと考えていました。しかしそれでは家などのアクセスポイントのある場所でしか使えません。そこでWi-Fi Directを使おうと考えたのですが、2台の端末が同時にWi-Fi Directをオンにして、端末を検索する設定にしておく必要があり、消費電力の面で相当厳しいことが分かりました。そこで、待受は低消費電力で済むBluetoothを使って相手の機器を起こし、Wi-Fi Directの接続を確立させる方法にしました。

 このほかにも、連携機能以外に1台だけで完結する使い方もあります。写真やWebブラウザのURL、Google マップの地図情報などを一元管理できる機能です。また、ストックしてある情報をほかのアプリに共有で受け渡す際、複数を選択しても、一度の操作で共有できます。さまざまな種類の情報を調べていて、後で誰かに教えたいという場合にも一括して送れます。

――「Passtock」でデータをやりとりする際ですが、データはそれぞれの端末に残る形でしょうか?

横畠氏
 「Passtock」専用フォルダに格納されますが、ほかのビューワー系アプリからでも参照できます。データ連携でやりとりした場合はコピーされる形になり、それぞれの端末にデータは残ります。

――片方の端末の電源が切れているなど、さまざまなケースがあると思いますが、データが同期されるタイミングはどうなっているのでしょうか。

横畠氏
 通常は「ストックする」の操作を行うとすぐに送信し、「Passtock」のアプリには手動で同期を行えるボタンもあります。ほかにも、画面のロック解除のタイミングで同期を行います。同期に必要な「Passtock」のアプリはバックグラウンドで動作します。

――通話連携では自動的に通話アプリが起動しますが、複数の通話アプリがあった場合は選べるのでしょうか?

横畠氏
 ユーザーが複数の種類の通話アプリをインストールしていた場合は、選べます。

――通信は、Bluetoothのみで済む場合もあるとのことですが。

横畠氏
 現在は、電話連携ではBluetoothのみを使っています。電話連携は電話番号と電話アプリの起動の指示だけなので、Bluetoothのみで済ませています。

 データ連携は写真や動画なども想定されるので、Bluetoothで起こした後にWi-Fi Directで通信します。現時点では、データ連携はデータの大小に関わらずWi-Fi Directで通信します。

――端末がすでにWi-Fiを利用していても、Wi-Fi Directで通信を行うのでしょうか?

横畠氏
 そうです。両方同時に使えます。

――対応端末の拡大についてはどのような方針でしょうか。

濱田氏
 まず対象機種の条件ですが、Android 4.2以降であることです。auの春モデルである「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」と「AQUOS PAD SHT22」には「Passtock」アプリがプリインストールされます。

 シャープ製ではほかに、auから発売されている「AQUOS PHONE SERIE SHL22」「AQUOS PHONE SERIE SHL23」が対象になります。auの他メーカー製の端末については、Android 4.2以降であれば動作する見込みですが、確認でき次第、公開していく予定です。

後藤氏
 連携機能ですから、シャープ製端末だけで使えるのでは広がりがありません。スマートフォンに限りますが、ほかのメーカーにも対象機種を拡大する予定です。ただ、auのスマートフォンという枠の中での取り組みになります。

――タブレット側にインストールするアプリも同じものでしょうか。

後藤氏
 基本的に、タブレット、スマートフォンともに同じアプリです。ただ、タブレットで対応するのは、先ほど説明した条件などから、当面は「AQUOS PAD SHT22」だけになると思います。

――そもそも「Passtock」の利用は、片方が必ずタブレットでなくてはいけないのでしょうか? 例えば2台のスマートフォン同士の間で連携させることはできるのでしょうか?

横畠氏
 できます。

濱田氏
 基本的に1対1となりますが、スマートフォン同士でも使えます。

後藤氏
 「Passtock」はそもそも、インテントと呼ばれている、Androidが標準で用意しているアプリ同士の連携機能を、2台の端末の間でも実現しようというものです。「Passtock」のアプリが進化すれば、連携できる機能も進化します。

 一方で、連携の基本的な仕組みはAndroidの標準的なものを使っており、それを端末間で仲介しているのが「Passtock」のアプリです。メールやブラウザなど、ほかのアプリは、「Passtock」と連携するための特別な対応は不要です。

――自分以外のユーザーが持つ端末とペアリングする、ということは可能でしょうか? 便利かどうかは分かりませんが……。

後藤氏
 仕組みとしては可能です。

――自分以外のユーザーとペアリングするのは想定されてないと思いますが……。

後藤氏
 今回はそうです。自分がもつタブレットとスマートフォンを連携できますというものです。ただ、使い方や連携機能が進化していった先には、友達同士であるとか、コミュニケーションの道具として「Passtock」が使われる可能性は十分にあると思います。

スマホ給電機能、室内用アンテナ変換ケーブル

――ほかに見どころや細かなポイントなどがあれば。

濱田氏
 「AQUOS PAD SHT22」には「スマホ給電」として、ほかの端末を充電できる機能を搭載しました。USBホストケーブルの市販品を用意してもらう形になりますが、いざというときはモバイルバッテリーとして使えます。

 また、「AQUOS PAD SHT22」は3Gの音声通話には対応していませんが、LINEやSkypeなどの通話で使える受話口を搭載しました。

 フルセグに対応したこともあり、「AQUOS PAD SHT22」を立てかけられる簡易スタンドをパッケージに同梱します。屋内向けに、USB端子に接続するアンテナ変換ケーブルをオプション品として販売しますが、こちらは視聴中に充電もできるよう、二股になったアンテナ変換兼充電ケーブルになっています。

――本日はありがとうございました。

太田 亮三