インタビュー

京セラ、「URBANO L02」開発者インタビュー

京セラ、「URBANO L02」開発者インタビュー

3つのUIと、こだわりのハードキー

 「URBANO L02」は、スマートフォンの初心者や40代~50代のユーザーに向けた機能を充実させた京セラ製のAndroidスマートフォン。「URBANO」シリーズの最新モデルで、2月8日に発売された。

URBANO L02

 3種類のホームアプリを搭載し、幅広いユーザーに使いやすいインターフェイスを用意している。スマートソニックレシーバーなど京セラ独自機能も継承して搭載している。OSはAndroid 4.2。ディスプレイは約4.7インチ、1280×720ドットのTFT液晶。1300万画素のカメラを搭載し、インカメラは97万画素。チップセットは「MSM8960」で、1.5GHz駆動のデュアルコア。

 今回は、同製品の商品企画・デザインを担当した、京セラ通信機器関連事業本部国内第1マーケティング部商品企画課の大西克明氏、同社同事業本部デザインセンター デザイン3課の照山康介氏のお二人に、お話を伺った。

幅広いユーザーが、より使いやすく

商品企画課 大西氏

――まずは製品の特徴とコンセプトについて教えてください。

大西氏
 URBANOシリーズは、上質なデザインと使いやすさの両立をコンセプトにしたKDDIブランドの商品です。これまで京セラでは、URBANO PROGRESSO、URBANO L01と開発をしてきましたが、とくにデザインについて好評頂いています。加えて、スマートフォン初心者でも使いやすいインターフェイスを用意しています。

――前のモデル(L01)では大人向けのスマートフォンという印象がありましたが、今回はターゲットをシニア向けに振っているのでしょうか?

大西氏
 年配の方にまで、ターゲットの幅を広げた、というイメージです。前のモデルでは、当初想定していたよりも、年齢の高い層のお客様にもご購入いただいていたので、その反応を見て、より幅広いユーザーにご利用頂けるものをイメージしました。ホームアプリは、スマートフォン経験者向けの「通常のホーム」、初心者の方に使いやすい「エントリーホーム」、シニアの方を意識した「かんたんメニュー」の3種類を搭載しています。

「標準のホーム」
「エントリーホーム」

――かんたんメニューはどういった特徴があるのですか?

「かんたんメニュー」

大西氏
 「通常のホーム」と「エントリーホーム」には、フィーチャーフォンでいう“壁紙”にあたるホーム画面がありますが、「かんたんメニュー」は、スリープ解除で起動したらすぐにアプリケーションのメニュー画面が表示され、直後に行いたい機能を選び、操作がスムーズにできます。

――ほかに、使いやすさを意識して改良した点はありますか?

大西氏
 端末のロック解除です。前機種のURBANO L01では、ロック画面で表示された錠アイコンを下から上にフリックする操作でロック解除する仕様でしたが、今回はアイコンをタッチするだけで解除する仕様としました。エントリーホームでは、時計の表示を太く大きくするなど視認性に配慮して改良しています。

――ターゲットを意識して搭載した新しい機能はありますか?

大西氏
 新しい機能として、閲覧したホームページ画面をメモしておきたいときなどに便利な「スクリーンショットシェア」というアプリを搭載しています。このアプリを搭載したことにより、画面を左から右にフリックするだけでスクリーンショットが撮れて、メールに貼り付けたりという操作が簡単になりました。これまでは、ホームキーと、音量キーを同時に押す操作だったのですが「タイミングが難しい」といった声がありましたので、それに応える機能になっているかと思います。

――そもそも、エントリーユーザーに、スクリーンショットの需要は高いのですか?

大西氏
 スクリーンショットを必要としている方はすごく多いわけではありませんが、フィーチャーフォンで利用していた「画面メモ」に似たような機能があったらというユーザーのご意見を聞きましたので、そのご希望を反映しています。初期設定ではこの操作はオンになっていますが、設定でオン/オフの切り替えができます。

――全体的に大幅な変更はあまりないですね?

大西氏
 騒がしい場所でも聞き取りやすいスマートソニックレシーバーや、文字サイズを大きく表示する「でか文字」、音声を入力してアプリケーションを起動させる「すぐごえ」など、もともとL01で好評だった機能はそのまま踏襲しています。一方で、細かな要望を頂いた部分を改良し、ブラッシュアップを図っています。

物理キーへのこだわり

――筐体のデザインについて、ポイントを教えてください。

デザイン3課の照山氏

照山氏
 これまでのURBANOシリーズでは、全体的に曲線的で、クラシカルな印象に仕上げてきました。今回は、これまでよりもスクエアなフォルムで、モダンな印象に仕上げています。また、背面の持ちやすさ、ハードキーの押しやすさも意識しています。

――カラーは少しイメージが変わりましたね。

照山氏
 ピンクは女性からのご要望が多いカラーです。春モデルということもありピンクを採用し、今まで以上に華やかなラインナップになりました。男性向けには、精悍なイメージを持つシルバーをご用意しました。グリーンはURBANOシリーズのコンセプトカラーでもあり、前機種から受け継がれているカラーです。

――L01ではどの色が好評でしたか?

照山氏
 一番支持をいただいた色はやはりグリーンです。この深みのあるグリーンは上質感があり、男性・女性ともに人気です。今回のL02では、ディスプレイの周囲にもグリーンを入れることで、よりカラーの印象を強めるような工夫をしています。

――最近のスマートフォンで、物理キーが3つ(ホームキー、バックキー、メニューキー)搭載しているモデルが少ないですが、こだわりがあるのですか?

照山氏
 スマートフォン初心者の方には、物理キーがあったほうが操作しやすいですし、これまでも支持されてきた部分なので変わらず3つ採用しています。

照山氏
 金属らしさ、質感を上げることにも、とてもこだわっています。ひとつひとつのキーの表面にV(字の)溝の切り込みが入っているのですが、切り込みの角度で、金属の輝きと、押しやすさが変わります。本数と角度の違うものを何パターンも作って、実際の使用感を社内で試しながら、トライ&エラーを繰り返しました。どの部分に、どの角度で、何本の溝があったら、輝きと押しやすさがちょうどよいかを検討しました。

溝の幅を変えて試作したもの。0.4mm~0.7mmまで刻んで試作を重ねた
実際に採用されたものは溝の幅が0.7mm

――とても細かいこだわりですね。

照山氏
 スマートフォンの外観は、ディスプレイが大部分を占めており、ハードキーなどの細かい箇所が、スマートフォンのデザインとしてインパクトがあるので、特に、URBANOの特長でもあるハードキーにはこだわりました。

――背面はどうでしょうか?

照山氏
 スマートフォンは持ち歩く製品なので、背面はすっきりさせたいと考え、必要な要素(カメラ、赤外線センサー、フラッシュなど)は、一箇所にまとめてあります。さらにこの部分は、置いたときに傷が目立たないように、素材を吟味して裏面から加飾したパーツを選びました。

電池パックを取り替えることで無接触充電(Qi)に対応する。黒い電池パックが通常、白い電池パックがQi対応(別売)
四角いプレートの下に背面に必要な要素をまとめて配置している。プレートは各色ごとに色を変えている

――バッテリーといえば、電池パックの取り外しが可能なモデルは、今回のau春モデルではURBANO L02のみでしたね。取り外せる仕様を好むユーザーもいますが、狙いがあってのことなのでしょうか?

大西氏
 電池パックを取り外し可能な仕様にしたのは、無接点充電対応の電池パックに取り替えられる仕様にするためです。初期のスマートフォンユーザーの中には電池パックを持ち歩いて、電池がなくなったら取り替えて、という使い方をしている方もいらっしゃいましたので、そういった用途も少し意識していますが、最近はバッテリー容量なども改善されてきているので、需要は少なくなってきていると思います。電池パックの取り外しに関しては、当社のDIGNO Mのように、より薄く、持ちやすくなど、機構デザインを重視し、あえて電池を取り外さないモデルにしているものもありますし、それぞれのスマートフォンの重要視する部分によって、対応は変わってくると考えています。

――とはいえ、電池の持ちに関するユーザーの声は多いのでは?バッテリー容量以外でなにか工夫されている部分はありますか?

大西氏
 「省電力ナビ」というアプリを搭載し、最適化を図っています。簡単に切り替えられるオート設定もありますし、輝度や画面の回転など、ユーザーの好みに応じて細かく設定できます。また、今回は急速充電に対応した専用卓上充電台を同梱しています。フル充電にするには、140分くらいかかるのですが、最初の30分程度で、半分まで充電できます。バッテリー容量が2700mAhなので、その半分の容量で1日もつ分くらいは素早く充電できるようになっています。

省電力ナビの設定画面
急速充電に対応した専用卓上充電台が同梱されている

――CPUについて、「クアッドコアなら最高なのに、惜しい」と言われませんか?

大西氏
 そういったご意見も頂きますが、前機種のURBANO L01では、デュアルコアで満足しているとのユーザーからの声も頂いています。あらゆるパーツで、より性能のよいものを搭載するというよりは、全体的なバランスを重視しています。

――マルチウィンドウ機能を搭載している端末も増えてきましたが、そのあたりはどうでしょうか?

大西氏
 URBANOでは、設定を多くもたせないことが、気をつけているポイントのひとつです。スマートフォンは、多機能なので使いこなすこと自体がひとつのハードルになってしまいます。エントリーユーザーにとって、まずは迷わずに使っていただくことを重視しています。

――カメラ機能ではターゲットユーザーを意識している部分はありますか?

大西氏
 すぐに起動できて、直感操作ができることを意識しています。ロック画面からワンタップでカメラが起動できるようになっています。設定も、極力シンプルにしています。

ユーザーのご意見を大切にしていきたい

――URBANOのように幅広くというよりは、(先日発表されたトルクなど)特徴的なモデルも今後投入されるようですね。国内メーカーが減りつつあるなかで、ユーザーからの期待も高いと思いますが、意識されていますか?

大西氏
 もちろん、ユーザーのニーズには応えていきたいです。特長的で、他に無いものや、かゆいところに手が届くような製品を。ユーザーから頂く貴重なご意見を参考に、今後も本当に求められる商品作りを続けていきたいと思っています。

――最後に、読者に向けて一言お願いします。

大西氏
 URBANO L02は、上質感と使いやすさにこだわって作ったモデルです。初めてスマートフォンを使うという方も、安心してお使い頂ける商品です。

――本日はありがとうございました。

川崎 絵美