インタビュー

SIMフリー端末の日本展開を開始するファーウェイに聞く

SIMフリー端末の日本展開を開始するファーウェイに聞く

市場に風穴を開け、ファーウェイの強みを活かす

 ファーウェイが、6月下旬より日本向けにSIMフリー端末「Ascend G6」の提供を開始する。同社はこれまでキャリア各社を通じてスマートフォン、タブレット、データ通信端末などの製品を提供してきたが、今後はこれとは別に、グローバルモデルのSIMフリー端末を量販店などで販売することになる。

ファーウェイが年内に発売を予定しているSIMフリー端末等

サポート体制を整え、安心して使えるSIMフリー端末に

 キャリアやSIMに縛られない、いわゆる“オープンマーケット”に切り込むファーウェイ。SIMフリー端末の日本展開の経緯について、同プロジェクトの責任者は「ファーウェイでは、従来のオペレーター(キャリア)中心のビジネスとは別に、オープンマーケットにも力を入れていこうということで、オープンマーケットを開拓する新しい部署を4月に立ち上げて、SIMフリー端末の販売を推進する取り組みを始めた」と語る。

 その第1弾として「Ascend G6」を6月下旬に発売する。その後、7インチのタブレット「MediaPad X1」や8インチの「MediaPad M1」、ウェアラブル活動量計の「TalkBand B1」などを順次発売していく計画だ。

 「現在、日本のMVNOの動きは毎日のようにメディア媒体で取り上げられている状況。そういった中で比較的値段の安いLTE対応端末で、かつスタイリッシュなデザインのAscend G6でSIMフリー端末の市場の間口を広げていきたい」(同)。

 6月下旬からは、MVNOのIIJとU-NEXT、量販店のEDIONとノジマの計4社で先行的に販売し、その他の家電量販店にもいずれ並ぶことになるという。

Ascend G6。サイドのメタル調フレームが映える
こちらは同じくAscend G6のブラック。ボディカラーはホワイトとの2色展開となる
左はEmotion UIの標準デザイン。右が「シンプルモード」

 外見上、グローバルモデルと同じように見えるAscend G6だが、ハードウェア面の構成は全く同じだという。グローバルモデルと違っているのはIME(日本語入力エンジン)で、日本版には富士ソフトの日本語入力アプリ「FSKAREN」がプリインストールされる。

 「LTE対応端末で3万円切る2万9800円という価格は、このモデルの魅力になるはず。500万画素のインカメラにこだわり、“セルフィー”(自分撮り)の流行に乗って、きれいに撮影できる機能をふんだんに盛り込んだ。独自のEmotion UIでは『シンプルモード』も用意し、年配の方やフィーチャーフォンからスマートフォンに初めて移行する方にも使いやすい」(同)と同端末の魅力を説明する。

オープンマーケットに活路

 オープンマーケットに取り組む意図はどこにあるのか。「日本は特にiPhoneが売れており、少し前までは過激なキャッシュバック競争があった。その影響もあり、Android端末の苦戦が続き、そんな中でファーウェイの端末を選んでいただける確率は非常に小さいものになる。生き残りの策としてのオープンマーケットへのチャレンジ、という意味もある」(同)という。

 「分割払いを前提としたオペレータービジネスの形では、端末ごとの価格差は非常に見えにくくなっているが、逆にオープンマーケットは、『端末の値段がいくらか』というのがまずありきのビジネス。我々はグローバルではスマートフォン出荷台数世界3位というシェアを獲得しているので、そのボリュームメリットを、一番コストパフォーマンスが高いミドルレンジの端末で活かせる」(同)。比較的スペックの高いものを安価に出せるという同社の強みが、オープンマーケットであれば活かせると見ている。

 今回のAscend G6を皮切りに、ハイスペック端末やタブレットなど、グローバル向けのラインアップから日本向けにそのまま提供していくという点は、今までのオペレータービジネスと異なるところ。グローバルのプロダクトをほぼそのまま持ち込むことで、コストメリットとスケジュール上のメリットがあるという。

 たとえばAscend G6は、バルセロナで2月に開催されたMobile World Congressで発表後、海外ですぐ発売になっているが、日本向けには数カ月遅れで提供されることになる。5月7日に発表されたAscend P7は、9~10月頃に日本市場に投入される見込み。「今は3~4カ月遅れくらいだが、今後はタイムラグを短くしていく」(同)と意気込む。

 通信事業者経由での販売となると気になるのは、端末購入後のサポート体制だ。「コールセンターでの電話対応に加え、購入した販売店に問い合わせていただく形でも大丈夫。宅配での交換修理対応も行う。交換対応となった場合は、2日以内の完了を目指す」(同)としている。

豊富なラインアップでSIMフリー市場で存在感を示す

 Ascend G6の発売以降、ファーウェイではグローバールモデルを順次日本市場に投入していく。

 ハイスペックの7インチタブレット「MediaPad X1」は、Nexus 7のセルラーモデルを意識し、3万9800円という販売価格を設定。WUXGA(1920×1200ドット)の高解像度液晶を搭載し、5000mAhのバッテリーを装備する。

 8インチタブレットの「MediaPad M1 LTE/WiFi」は、セルラーモデルはMediaPad X1より1万円安い2万9800円に設定。Wi-Fiモデルは2万6800円となる。ディスプレイはHDクラス(1280×800ドット)で、フロントにステレオスピーカーを搭載するなど、エンターテインメントを意識した製品になっている。

 このほか、タブレットでは、低価格重視のエントリーモデルとして「MediaPad 7 Youth2 WiFi」をラインナップする。同モデルは1万9800円で販売される予定。

MediaPad 7 Youth2 WiFi

 タブレット以外では、ウェアラブルデバイス「TalkBand B1」(1万3800円)も販売する。TalkBand B1は、リストバンド型の活動量計で、液晶部分がバンドから外れるようになっており、耳に引っかけてスマートフォンと連携するBluetoothヘッドセットとして使うことができる。バンドの一端がUSB端子になっており、そのままPCなどのUSBポートに接続して充電できる。

TalkBand B1。液晶部分が外れるようになっている
外した液晶部分は耳穴にかけてBluetoothヘッドセットとして使える
バンドの端がUSB端子になっており、そのままUSBポートに接続して充電可能

 秋以降にはフラッグシップモデルの「Ascend P7」も投入する計画。同モデルは、5インチのフルHDディスプレイ、1.8GHzのCPUを搭載。1300万画素アウトカメラ、800万画素インカメラを装備し、筐体背面にガラスを使うなど、デザインにもこだわっている。販売価格は4万9800円前後を予定しているという。

 「オープンマーケットに向けたこのようなラインアップの豊富さは、他社にはない特長。年内には家電量販店でのショップinショップや、ネット販売にも着手したい」(同)と国内でのシェア拡大を狙う。

日沼諭史