インタビュー

Xperia Z2/Xperia Z2 Tablet開発者インタビュー

ボディ成形技術やサウンドなど、進化ポイントを聞く

 ソニーモバイルが夏モデルとして開発し、NTTドコモから発売された「Xperia Z2 SO-03F」は、好評だった「Xperia Z1」のデザインやコンセプトを継承しながら、各部に大幅な改良を加えたモデルだ。同じデザインや技術を採用した「Xperia Z2 Tablet」は、防水でありながら薄型・軽量も追求され、10インチクラスのタブレットのスペックとして他社を大きく引き離している。

「Xperia Z2 Tablet」と「Xperia Z2 SO-03F」

 共通のデザインコンセプトが与えられた「Xperia Z2 SO-03F」と「Xperia Z2 Tablet」だが、「Xperia Z2 SO-03F」は夏モデルとしては早めの5月21日に発売されている。一方の「Xperia Z2 Tablet」はWi-Fi版がソニーモバイルから5月31日に発売されたほか、LTE対応版はドコモから6月27日に、KDDIからは7月5日に発売されている。

 すでに“Xperia Z2”シリーズの特徴は、その使い勝手を含めて、さまざまな記事で明らかにされている。「Xperia Z2 Tablet」のau版が7月5日に発売され、現在は発表済みのモデルがすべて出揃った段階だが、本誌はこれに前後して、「Xperia Z2」シリーズの各デバイスの担当者に話を伺う機会を得た。

 本稿では、強化された各部に的を絞り、注目を集めるボディの一体成型技術のほか、ディスプレイ、カメラ、サウンドといった、ソニーならではの技術について、ソニーモバイルコミュニケーションズの担当者に話を伺った。

 インタビューでは、ボディデザインなどについて、UXクリエイティブデザイン部の石田一宏氏、機構設計部の河村晋吾氏、深谷友詞氏に話を伺った。同様に、カメラ関連はデバイスデザイン部の入山慎吾氏と、Core SW 3課の須藤尚稔氏に、ディスプレイ関連はデバイスデザイン部の尾崎高志氏に、サウンド関連はエレクトロニクス1部の内山弘氏に話を伺っている。

デザインにとどまらないインサートモールディングの効果

UXクリエイティブデザイン部の石田氏(左)、Core SW 3課の須藤氏(右)
機構設計部の深谷氏(左)、河村氏(右)

――“Z2”になって、さらに進化した部分とはどういったところでしょうか。

石田氏
 ボディは樹脂と金属を一体成型するインサートモールディングの採用で、隙間のない持ち心地を実現し、側面にはカットを施し、金属そのものの輝きを演出しています。「オムニバランスデザイン」の特徴であるコーナーの球形は、Xperia Z1よりも大きくなり、さらに手へのフィット感を高めました。

「Xperia Z2 SO-03F」のデザインの特徴

河村氏
 機構の部分でも、インサートモールディングの採用と効果が大きいですね。樹脂と金属を一体成型したものを、切削で一体加工するというもので、シームレスな触り心地になります。

 Xperia Z1でも、本体周囲のメタルフレームをアンテナとして使っていました。インサートモールディングの技術自体はすでにあるものですが、アンテナとして使うことを前提に採用したのは初めてです。

 また、この工法を採用することで、ディスプレイサイズをアップさせながら、本体の幅はXperia Z1より約1mm狭めることができました。軽量化にも貢献しており、Xperia Z1と比較してトータルで約8gの軽量化を果たしていますが、このうち筐体部分だけで約6gの軽量化を実現しています。

 防水処理の面でも効果があります。Xperia Z1では樹脂やメタルなどパーツごとに防水のシーリング処理が必要でしたが、インサートモールディングで一体成型することにより、シーリング箇所を減らす部品構成を目指しました。

――なぜ、インサートモールディングを採用するに至ったのですか?

石田氏
 デザインを次のステップに引き上げるにはどうするか、と進めていく中、ほかの要素も含めて同時発生的に出てきた答えが、インサートモールディングでした。

ボディのフレームと、内部の様子
樹脂と金属を一体成型したボディ
インサートモールディングにおけるボディ(外周フレーム)の断面。シーリング処理の箇所が減っている
樹脂と金属の境目は非常に滑らか。コーナーの球形は少し大きくなった

――Xperia Z2 Tabletも同様に、インサートモールディングが採用されているのでしょうか?

石田氏
 背面の一部にインサートモールディングを採用しています。前モデルと比べて、側面から背面パネルに至る部分に繋ぎ目が無くなり、デザインもスマートフォンのXperia Z2と共通のものになっています。

深谷氏
 Xperia Z2 Tabletを開発する中でインサートモールディングを採用したのは、剛性を確保し、同時に軽量化するためです。外側の「超高剛性FRPパネル」と「高剛性ナイロンフレーム」を組み合わせることで、通常あるコアメタルフレームを省くことに成功しました。

 一方で、これまではパネルとフレームの接着処理に防水のためのクッション性が必要で、一体感や剛性が失われがちでした。ここもインサートモールディングを採用することで、防水とさらなる薄型化を実現しながら、剛性も確保でき、軽量化も成し遂げました。

「Xperia Z2 Tablet」は側面と背面パネルが一体成型されている
「Xperia Z2 Tablet」の内部。右は基板などの部品を取り除いたもの。これまで必要だった内部の金属フレームが省かれ、軽量化を実現した

――剛性というのは、従来と変わらないという意味でしょうか?

河村氏
 そうですね。“タフネス”といった意味ではありませんし、アンテナ性能と剛性の確保はトレードオフになることはありますが、剛性として十分に担保できるレベルです。

深谷氏
 実は、Xperia Z2 Tabletはもっと薄く作ることも、技術的には可能でした。従来機種「Xperia Tablet Z」から、ユーザーの反応を見ながら開発を継続してきましたが、前モデルの剛性を下回ることはしたくなかったので、剛性を確保した今の薄さになっています。

4K動画にハンディカム譲りの手ブレ補正を搭載

エレクトロニクス1部の内山氏(左)、デバイスデザイン部の尾崎氏(中央)、入山氏(右)

――カメラ機能では4Kへの対応も始まっています。

入山氏
 スマートフォンのカメラは、身の回りの出来事を記録するライフログのような用途が多いですが、Xperiaのカメラは“思い出画質”として、旅行や記念日など、特別な時にもしっかりと使えるレベルを目指しています。例えば3倍の超解像ズームや、暗部に強い特性などです。

 これらは、前モデルのXperia Z1から取り組んでいる内容ですが、Xperia Z2は「動画も思い出画質に」という取り組みを進めました。

 一番の特徴は4K動画への対応で、手ブレ補正の効いた状態で4K動画を撮影できます。この手ぶれ補正は、ソニーのハンディカムで培った高性能手ブレ補正をXperiaに最適化したものです。

 次に、動画再生でズームできる機能です。決定的な瞬間を撮り逃したくない場合でも、とりあえず4Kで撮影しておいて、必要な部分にズームして見る、という使い方を提案しています。4Kなので、フルHDのディスプレイで見るなら2倍にズームしても解像感が落ちません。

須藤氏
 動画に注力するということで、「クリエイティブエフェクト」も搭載しました。Xperia Z1では静止画に「ピクチャーエフェクト」という名前で搭載されていましたが、Xperia Z2では同等の機能を動画にも適用し、名前も「クリエイティブエフェクト」に改めました。

 これは、動画を撮影している最中にエフェクトを加えたり変更できるというものです。この機能で撮影された動画を再生すると、撮影時のエフェクトの追加や変更が反映されたものになります。

 サードパーティのアドオンとしてカメラにモードを追加できる機能も、かなり増えてきたので、ソニーセレクトとして手軽に選べるようにもしました。

バックライトLEDを刷新、色域を拡大したディスプレイ

――ディスプレイについては、発色が強化されているようですね。

尾崎氏
 Xperia Z2とXperia Z2 Tabletは、色域で約15%向上し、テレビのブラビアとほぼ同じになりました。どういう絵作りをしていくかという点に正解はありませんので、ソニーとして、ブラビアに合わせながら進めています。

 表現力が向上した約15%は、赤と緑が中心です。緑は輝度感に影響しますし、赤は人間の眼が敏感に捉える色です。これらは記憶色とも呼ばれ、メリハリのあるチューニングを目指しました。原色に近い部分は表現力を拡大し、逆に人肌周辺の色はあまり動かさないようになっています。

 ブライト・アンド・ビビッドがコンセプトで、バックライトの白色LEDについては、従来の黄色の蛍光体を通して光を調整するものから、赤と緑の蛍光体を通して調整するものに変更しました。視野角も広がっています。

――他社からは狭額縁のディスプレイを搭載したモデルも登場していますが、こうした取り組みはどうでしょうか。

尾崎氏
 確かに狭額縁はカッコイイというのはありますが、ディスプレイの解像度が上がると、パネルの横を通る配線も増えますので、それらとのトレードオフの関係になりますね。

“フロントステレオ”も実現したスピーカー、ハイレゾ対応も

――オーディオも、新しい取り組みがみられますね。

内山氏
 ひとつはデジタルノイズキャンセリングへの対応で、マイクを内蔵した対応イヤホンで逆位相をあててノイズをキャンセルというものです。ウォークマンに搭載されているものを導入した形ですね。

 もうひとつは、ステレオスピーカーの搭載です。ステレオにして、さらに、手に持った時に、従来は側面から出ていましたが、スピーカーがフロント側に向くように配置しました。これにより、フロントスピーカーでサラウンドを実現する「S-Force フロントサラウンド」を搭載でき、臨場感のある再生も可能になりました。

 ハイレゾ対応も新しい点で、192kHz、24bitの音楽ファイルの再生に対応しています。USBで接続し、対応DACなどで出力が可能です。

2つのスピーカーがユーザー側を向いた“フロントステレオ”を実現

――フロントステレオの採用については、例えばユーザーから要望があったというような経緯なのでしょうか?

内山氏
 もっと音量を大きくできるようにしてほしいという声はありました。大音量への対応や音質などを含め、スピーカーは新規に採用したものです。もっとも、ソニーとして、ある意味では携帯電話らしくないというような、音楽っぽい音を目指すというコンセプトは、従来から継承しているものです。

――各部について伺うと、強化や刷新されている部分が改めてよく分かりました。本日はどうもありがとうございました。

(太田 亮三)