インタビュー

玩具メーカーが市場へ送り出す、女の子向けスマホ「Fairisia」とは?

メガハウス濱氏に聞く、開発秘話

 7月31日、バンダイナムコグループのメガハウスから、10歳〜13歳の女子をメインターゲットとしたAndroidスマートフォン「Fairisia (フェアリシア)」が発売される。端末価格は2万2990円(税抜)、利用時は1GBの通信料込みで月額2390円(税抜)。

 「Fairisia」は、IIJが提供する専用SIMカードで毎月1GBの3G通信が利用できる、Android 4.2搭載のスマートフォン。IP電話番号が割り当てられ、通話ができるほか、メール、インターネット、チャット、辞書などオリジナルアプリを含む30コンテンツがプリインストールされている。Fairisia同士のIP電話は無料。

 スマートフォンを模したおもちゃが各玩具メーカーから続々発売されている中、通信サービス付きで本物のスマートフォンを玩具メーカーが手がけるのはメガハウスのFairisiaが初めてのこと。それだけに6月の製品発表時には大きな話題となった。そのFairisiaが、7月31日にいよいよ発売となる。そこで今回は、製品開発を担当したメガハウスの濱高朗氏にお話を伺った。

子どもの欲しいものNo.1はスマホ

株式会社メガハウス開発担当、濱高朗氏

――製品開発へ至ったきっかけを教えてください。

濱氏
 子ども向けのタブレット「tap me」という製品も当社から出していて、その頃からスマートフォンの企画もありました。子どもたちのアンケートで“欲しい物ランキング”を見ると、最近はスマートフォンが1位なんです。玩具メーカーとして、子どもたちが欲しいものは叶えたいという思いがありました。

――子どもの中でも女の子向けにした理由はなんでしょうか?

濱氏
 女の子は、欲しい物やしたいことが明確で、「友達と繋がりたい」という思いが強いことでコミュニケーションツールとしてはスマートフォンがマッチしています。「こんなアプリがあるよ」と女の子同士の話題にもあがるくらい。一方、男の子のこの世代はゲームに熱中するので、そうすると携帯ゲーム機(DSやPSPなど)との戦いになってきます。当社としてはまずは先に女の子から、男の子向けも今後の展開として検討はしています。

――IP電話のサービスをつけることで、開発のハードルが上がったのでは?

濱氏
 半端じゃないですね(笑)。ただ、本物志向を叶えるためのスマートフォンに、通話は必須でした。我々がターゲットとしている10歳〜13歳の女の子たちは、現状スマホじゃなくて何を持っているかというとiPod touchが多いことがわかりました。iPod touchは、タブレットの小さい版というイメージで、Wi-Fiで通信することになりますが、それらを使って不満に思っていることは外で通信や通話ができないことではないでしょうか。

 そういった課題をクリアできたのは、MVNO事業者さんとの巡り合わせがありました。以前から構想はありましたが、昨年10月頃にお話を頂いて「これなら実現できる」ということで、開発に着手することができました。

――タブレットを手がけた経験があったことで課題も見えてきたということですね。10月に着手して、6月に製品発表というのはなかなかしんどそうですが、6月のゴールは先に決めていたのでしょうか?

濱氏
 私ひとりで担当していたので、まぁしんどかったですが、想像していただけるとありがたいです(笑)。おもちゃ業界では、6月に開かれる「おもちゃショー」をひとつのターゲットとして開発を進めることが多いので、ゴールは先に決めていました。おもちゃショーはメディアにも取り上げて頂けるきっかけになりますから。

――なるほど。ケータイ業界としては、特に子どもをターゲットにする場合(進学の時期である)春が大きな市場になりますが。

濱氏
 実は一度、春を目指していたこともありました。ただ、そこはさすがに間に合わず……。当社のおもちゃの開発期間は、半年くらいが多いのですが、デジタルモノはもう少しかかる場合もあります。

――端末そのものはどのような点にこだわったのでしょうか?

濱氏
 スマホを作れる工場とタブレットを作れる工場が違うので、まず、デザインを検討してから(メーカーの工場を)選定しました。子どもの片手に合うように大きすぎないことは第1として、ターゲットとなる子達の声を聞きました。そうすると、大人がイメージする子どもが好きそうな丸っこいデザインや、デコラティブに可愛いデザインは彼女たちは持ちたくないようなのです。玩具メーカーなので、おもちゃだったら可愛くしなきゃというDNAがあるのですが、そうでないことが分かり、できるだけデザインも本物っぽさを意識しました。

――それで、子ども向けにしては落ち着いたラベンダーとホワイトの2色ということですね。

濱氏
 はい。その代わりケースはポップなデザインを3種類用意しました。ケースのデザインもアンケートを元に選定したものです。花柄・水玉は女の子が好きな定番、それから、洋服の柄でフルーツ系が流行っているということで、チェリーの柄になりました。

本体カラーはホワイト、ラベンダーの2色
専用のスマホケースは3種類ラインアップ

オリジナルアプリで付加価値を提供

――プリンストールされているチャットアプリ「tete」は独自に開発したものなのでしょうか?

濱氏
 これはベンダーに依頼して独自に開発したものです。テキスト、スタンプ、手書きのコミュニケーションが、Fairisiaを持っている人同士や、Fairisiaを持っている人とその親御さんのAndroidスマートフォンとできるようになっています。実際に会った人とだけ繋がることが大事というイメージで、この端末を介してのやりとりのみになります。

――チャットアプリとしては既存のサービスが沢山ある中、オリジナルにこだわった理由を教えてください。

濱氏
 既存のサービスを、そのまま子どもに使わせるのは、親の立場からみたら心配があるようなのです。そこを付加価値ととらえ、オリジナルで作りました。実際、子どもとチャットしたいという親御さんのニーズは多くあるのですが、利用できる相手が限定されるのが理想的だと考えています。

――プリインストールされている辞書アプリも、親の目線を意識したものなのでしょうか?

濱氏
 「tap me +」にも辞書アプリを入れて好評でした。教育要素として親御さんからの反響がいいだけではなく、実際にターゲットとなる子どもたちからのニーズも高いです。最近は、宿題しながら、友達とチャットしたり、調べ物をしたり、コミュニケーションが行われているようなので、利便性も重視して、検索できる辞書アプリを入れました。

コミュニケーションを中心とした女の子が楽しめるアプリを30種類以上プリインストールしている
写真に落書きやデコレーションができるオリジナルの「デコカメラ」アプリ

――Google Playは普通に見られるようになっているようですね。ダウンロードを制限する注意喚起などはあるのでしょうか? また独自の課金システムなどは?

濱氏
 Google Playは初期設定ではオフとなっていますが、設定を変えてオンにすれば利用できるようになっています。アプリダウンロードの際は、親御さんがパスワードで管理するようにと、取扱説明書に記載しています。独自の課金システムは、当初プリペイドカードなどを検討はしていましたが、今のところ予定はありません。

――このほか、ペアレンタルコントロール機能も搭載していますね。

濱氏
 親御さんが納得しなければ買ってもらえないので各家庭で決められたルールを話し合って、それに合う設定ができるようになっています。保護者の端末から遠隔ロックできたり、アプリの利用を制限できるようにしました。親子の対話も必要ですし、最初が肝心なので、機能としてはしっかり用意しています。

――音声通話の部分で、今回はIP電話というある種の割り切りがあったかと思いますが、MVNO各社が提供をはじめている音声通話つきのSIMカードとのセットはないのでしょうか?

濱氏
 明言はできないのですが、今後は検討していきたいです。今回採用したIP電話は、チューニングをして音声改善されているので、だいぶ通常の通話と遜色ないところまできたと思います。(サービスが開始されたら)実際にユーザーからの声も聞いてみたいと思っています。

おもちゃ離れ世代は、キャラクターよりもファッション

――製品発表時に、販路については課題があるとのお話でしたが、(オンラインショップ以外では)やはり玩具店のみになるのでしょうか?

濱氏
 メインは玩具店なのですが、一部の家電量販店では、ケータイ売り場で取り扱って頂けることになりました。

――発表のときの反応として「高い」といった声もあがっていたように思います。

濱氏
 仰る通りだと、受け止めています。スマートフォンは未完の製品だと思っていて、ポータルサイトの運営や、サポートなど、我々としても(スマートフォンを提供するのは)今回が初めてのことなので、通信や端末だけではないということをご理解頂くしかないと思っています。

――おもちゃのトレンドとしては、人気のキャラクターゲームでのリアル課金(ガチャやおみくじ)などがありますが、今後のビジネス展開として、こういった課金モデルは考えていますか?

濱氏
 そのようなニーズがあれば採用していきたいと思います。ただ、Fairisiaの世代(10歳〜13歳)はちょうど“おもちゃ離れ”する世代になります。おもちゃ離れは、イコール“キャラクター離れ”ではないでしょうか。女の子は特にキャラクター離れが早く、そこからどこへ向かうかといえばファッションに流れていきます。アパレルブランドさんや「ニコ☆プチ」などの女子小学生向け雑誌に協力をお願いしてプロモーションを行う予定です。ある意味でキャラクターではあるのですが、そういったブランドとのコラボレーションは今後も考えられます。

 バンダイグループとしては、このあたりの層にうまくリーチできたのは、数えるほどしかないので、大きなチャレンジととらえています。

――本日はありがとうございました。

(川崎 絵美)