インタビュー

遅れてやってきたソフトバンクのアプリ定額「App Pass」の強みとは?

担当者に聞く、その狙いとAndroidのこれから

 8月29日に、「AQUOS CRYSTAL」の発売と同時にサービス提供を開始する、ソフトバンクのアプリ取り放題サービス「App Pass」(アップパス)。昨年ソフトバンク傘下となった米Sprintと、初の共同開発・同時提供となり、日本メーカーと海外メーカーのアプリが、App Passのプラットフォーム上で提供されることになる。

「App Pass」担当者、ソフトバンクモバイル コンテンツ本部の田中伸忠氏と甲立隆雄氏

 App Passは、月額370円(税別)で合計約4万円分の有料アプリが取り放題になるサービス。月額料金にはアプリ内の有料アイテム課金が毎月500円分利用できる「App Passチケット」が含まれる。対応環境はAndroid 4.1以上を搭載している4G対応のソフトバンクモバイルのスマートフォン。iPhoneは非対応。アプリのラインナップはサービス開始時点で100タイトルほど。

App Passの特徴

スプリント買収をきっかけに、構想約1年

 担当者の田中伸忠氏にApp Passのきっかけを聞いたところ、昨年同社が、米国のスプリントを買収したタイミングで、具体的な企画が始まったと話す。「孫正義社長がよく“タイムマシン経営だ”と言っているが、今回は逆のパターン。日本ではauスマートパスのように成功している事例があります。一方でアメリカに目を向けると、コンテンツサービスをキャリアが提供するといったことがほとんどありません。向こうではアプリ取り放題という概念がないので、日本で持っている知識や、CPさんとの契約などに関するノウハウを伝えるところから始めました」(田中氏)。

 App Passで提供されるアプリの選定基準は、まずは“きちんとしたアプリ”であること。不正アプリではないことの判断はもちろん、趣向の偏りがないように選定したという。また、Google Playの有料アプリの人気上位にあることも選定基準になっている。そうして選ばれたアプリの各ベンダーと話し合いを進めてきた。日本で人気のゲームアプリなどエンタメ系、定番のツール系、海外の人気カメラアプリなど100タイトルが決定している。

グループ会社が手がける「パズドラ」は?

 ところがソフトバンクグループのガンホーが提供している「パズドラ」は含まれていないようだ。課金ユーザーの多いタイトルだけに、グループシナジーを生かしたいところなのでは……。「そこは聞かれると思っていました(笑)。今のところラインナップに含まれていませんが、一応話はしています」(田中氏)。

 グループシナジーといえば、スプリントのほかワイモバイルも気になるところ。田中氏は「それぞれのコンテンツ戦略があると思いますので、切り離して考えています」ときっぱり。「ただ、ヤフーとのサービスと連携した“パケットマイレージ”のようなものはアイデアとしてはいいなぁと思っています」と話す。

 田中氏に、いま1番口説きたいアプリベンダーを聞いたところ、「今いろいろなベンダーさんと話し合いをしているところです」とかわされた。

差別ポイントは“500円チケット”と海外アプリ

 App Passは、他キャリアよりも後発となったが、それと差別化する要素として、アプリ内の有料アイテム課金が毎月500円分利用できる「App Passチケット」が含まれるということ。田中氏はこれについて、「アプリに課金したくない、というユーザーも多くいらっしゃると思うので、App Passの月額370円よりも、有料アイテムで得するチケットを用意した」と話す。

 App Passチケットは毎月500円利用できるが、余った分は翌月に繰り越すことはできない。それには、有料アイテムを気軽に使って楽しんでもらいたいという思いがあるようだ。今後はアプリのラインナップも、ユーザーニーズを見ながら増やしていくとしている。

 その他の強みとしては、海外のアプリを提供できることもポイントに挙げている。田中氏は「日本からアメリカへ、アメリカから日本へ、広がりが持てることはアプリベンダーにとってもメリットがある」という。それぞれアプリのローカライズが大変そうで、App Passへの参入の壁になっているのではないかと想像したがそんなことはないようで、ソフトバンク コンテンツ本部の甲立隆雄氏いわく、「アプリベンダーは、我々が思っていたよりもグローバルに目を向けている」という。App Passは、海外進出のきっかけにもなるととらえているアプリベンダーも多くいるようだ。

 ちなみに田中氏におすすめアプリを聞いたところ「Toca Hair Salon 2」を教えてくれた。「スウェーデン発の知育アプリで、日本でのユーザーはまだ少ないが、グローバルでは数千万ダウンロードを記録している人気アプリ」なのだとか。そうした、日本ではあまり知られていない優良アプリをApp Passで紹介することにより、ユーザーとベンダー双方にメリットが生まれるのだろう。

サービスイン後に、店頭ではアプリカタログのような冊子を配布する予定

AQUOS CRYSTALとApp Passを機にAndroidに本腰

 App Passは、どのアプリを使ったらいいかわからないスマホ初心者や、ゲームなどエンタメコンテンツを楽しみたいというユーザーにはもってこいのサービスだが、iPhoneには非対応であることから、数多くいるソフトバンクのiPhoneユーザーは利用できない。これには、アップルが運営するApp Storeでの課金の仕組みに制約が多いことから実現できない事情がある。もちろん、提供したい気持ちはあるという。

 甲立氏は「“ソフトバンクといえばiPhone”というイメージを持たれている方が多いと思います。今回はスプリントとの共同調達によっていい端末を提供できることになったので、Androidにも力を入れていきたいと考えています。App Passを通じてアプリを取り込み、自分好みで使いやすいスマートフォンにしていただきたい。スマホでもっと楽しんでほしい」と語った。

キャリアとしての価値を上げることが目的

 各キャリアがコンテンツサービスに力を入れ、ユーザーの囲い込みやARPU向上に努めているが、ソフトバンクのApp Passも同様だ。田中氏は「サービスそのもので収益を上げることももちろんだが、キャリアとしての付加価値向上に寄与したい」としている。

 “製品の購入と同時にサービスに加入すると、キャッシュバック”というような施策が行われるのだろうか。田中氏は「販売戦略に関わることなので、ここでは(コメントは)控えておきます」とした。

ネーミングについて

 auのスマートパスとちょっと似ている「App Pass」という名前について田中氏は、「スプリントとの共同ということもあり“英語であること”、イメージがつきやすいこと、定額制であること、さらに“チケット”の要素を含めたかった。そういったもろもろを鑑みてスプリントと一緒に決めましたので、似てしまったのは致し方ない」としている。

 スマートパスといえば、アプリの取り放題以外にも、映画のチケットが安くなったり、ライブイベントのチケットを優先購入できたりといった、さまざまな特典を用意しているが、App Passでは「名前にAppと入れていますので、あくまでもアプリに特化したサービスにしていく」とのこと。

 2014年2月からソフトバンクが提供しているWebサービス「スマホとくするパック」(月額500円)では、クーポンやプレゼント企画などの特典を提供しており、それとの棲み分けといったところのようだ。ちなみにNTTドコモでもWebベースの定額サービス「スゴ得コンテンツ」(月額380円)を提供している。各キャリアの製品ラインナップと料金が横並びになりつつある現状で、各社がコンテンツ事業で差別化を図っている。

 App Passは8月29日から、ソフトバンクショップ店頭またはWebサイトから申し込みできる。

(川崎 絵美)