インタビュー

KDDI田中社長インタビュー、「iPhone 6はネットワークが競争軸に」

MVNO、新料金への考えも

 アップル(Apple)からiPhone 6が発表された米国サンフランシスコにおいて、KDDIの田中孝司代表取締役社長がインタビューに応じ、auの戦略について、話をうかがうことができた。

KDDI田中社長

ネットワークに自信

――iPhone 6がAppleから発表されましたが、auとしてはどのように見ているのでしょうか。

田中氏
 とても魅力的な商品で、我々としてはこの新しいiPhoneが発表されることを目指して、いろいろなことに取り組んできたんです。たとえば、昨年のiPhone 5s/5cではネットワークが800MHzのプラチナバンドに対応していましたが、今回はauが今年5月からサービスを開始しているキャリアアグリゲーション(CA)に対応しましたし、UQコミュニケーションズが提供するWiMAX 2+と互換性のあるTD-LTE方式にも対応しました。特に、キャリアアグリゲーションについては、他社さんの提供が2014年度内以降とされているので、auの大きなアドバンテージになると見ています。

――今回のiPhone 6のLTEは最大150Mbpsまでと表記されていましたよね。

田中氏
 LTEのCategory4(LTEの性能分類の1つ)は規格上、FDD-LTEが最大150Mbps、TDD-LTEが最大110Mbpsになります。FDD-LTEでは20MHz幅のシングルバンド、もしくは10MHz+10MHz幅のキャリアアグリゲーションで、150Mbpsを実現します。auのLTEはこの両方が利用できます。キャリアアグリゲーションで最大150Mbpsが利用できる基地局数は、9月現在で約1万局あるのですが、12月までには約2万局まで増やす計画です。TDD-LTEは20MHz幅のシングルバンドで最大110Mbpsを実現しますが、これはWiMAX 2+で対応します。

――今回のiPhone 6はVoLTEにも対応していますが、auでも提供されるのでしょうか?

田中氏
 VoLTEはすでにドコモさんが提供されていますが、当然、我々も準備を進めています。iPhone 6が端末として、VoLTEをサポートしているのですから、もちろん、利用できるようにしたと思います。ただ、時期については、まだアナウンスできないので、少しお待ちください(iPhone 6の日本でのVoLTE対応時期は未定)。

――昨年のiPhone 5sでは『プラチナバンドLTE対応』を積極的にアピールされていましたね。

田中氏
 LTEは世界で100カ国以上、300以上の事業者が採用し、国内も3社が提供していますけど、auのプラチナバンド(800MHz)LTEは、総務省の新しい基準の人口カバー率で、すでに99%に達しています。2.1GHz帯の人口カバー率も今年8月末現在で、91%まで来ました。確か、他社さんはまだ新基準の人口カバー率を公開されていませんよね。プラチナバンドLTEの免許許可数(基地局設置の目安)も約5万局と他社を大きく上回っています。昨年のiPhone 5s/5cが発売されたときは、人口カバー率が97%だったんですが、この1年間に積み上げた2%分は、面積にすると、約4.4万平方kmで、東京都20個分に相当します。この先の1%を拡げるのはもっと大変ですけど、着実に取り組んでいきますよ。

――LTEのネットワークが充実してきたのはよくわかりますが、実利用ではどのくらいの手応えがあるのでしょうか。

田中氏
 第三者機関の調査の結果もいろいろ出ていますが、我々自身もいろいろな調査をしています。夏でしたら、花火大会やお祭り、音楽フェスなどの混雑するイベントで、どれくらい繋がるかを調べ、ちゃんと使えるという結果が得られています。もうひとつアピールしたいのは、LTE接続時の維持率です。現在準備を進めているVoLTEでは高音質の通話ができますが、LTEの接続が切れると、3G接続に落ちてしまい、通常音質になってしまいます。そのため、移動中でもLTE接続が維持できるかどうかを調べています。今年4月に東海道新幹線の東京〜名古屋間で、30台の端末を使い、調査を実施しましたが、一瞬でも3Gにハンドダウンした端末は30台中5台のみで、ほぼ全区間をLTE接続のまま移動することができました。VoLTEの品質調査も同じく東海道新幹線の東京〜大阪間で実施しましたが、他社のVoLTEが一部でしか利用できないのに対し、auはほとんどの区間でVoLTEによる通話(通信)が可能でした。自信を持って、お客さんにVoLTEを提供できるように準備を進めているのです。

サービス面での取り組み

――今回のiPhone 6ではディスプレイが大きくなりました。

田中氏
 auはネットワークだけでなく、コンテンツパスのサービスを数多く提供しています。たとえば、映画やドラマ、アニメが楽しめるビデオパスは、iPhone 6の4.7インチ、iPhone 6 Plusの大画面で楽しめます。iPhone 6ではカメラもさらに高性能になりましたが、auスマートパスで提供している「データお預かり」を利用していただければ、画像や動画を50GB、アドレス帳も3000件、預けておくことができます。

――NFC対応はどうでしょうか。Apple Payは米国のみでスタートするようですが……。

田中氏
 auでは2012年にモバイルNFCサービスを開始し、2014年にアジアNFCアライアンスを設立するなど、いろいろな取り組みをしてきています。iPhone 6のNFCがどのような仕様になっているのかは、これから確認しますが、培ってきたノウハウは活かしたいですね。

――細かいところですが、Wi-FiがIEEE802.11acに対応しました。

田中氏
 公衆無線LANサービスでは3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)共通で、東京ドーム周辺にIEEE802.11acのWi-Fiスポットを設置していますが、au独自では昨年10月にドトールやエクセルシオールカフェにIEEE802.11acのWi-Fiスポットを展開しています。2×2 MIMOなので、理論値ですけど、最大速度は866Mbpsになります。

――iPhone 6は今年も揃って、3社が扱いますが、他社に対するアドバンテージとして、何をアピールされたいですか?

田中氏
 今、ご説明したネットワークはひとつの競争軸になると思います。実は、今回の発表へ向けて、我々はキャリアアグリゲーションやWiMAX 2+対応などを着実に準備してきました。VoLTEはこれからの対応になりますが、きちんと準備を進めているので、サービス開始時からみなさんにご満足いただける品質を展開できると思います。料金プランも新料金プランの「カケホとデジラ」と従来の「LTEフラット」を選ぶことができるので、自分のスタイルに合わせた料金プランで契約ができます。また、なかなか見えにくいところですけど、auスマートパス会員限定という形で、iPhoneの自損や水没といったトラブルが起きたときの修理代金をサポートするサービスを提供しています。iPhone 6についてはこれから発表しますが、安心して、思う存分、iPhoneを使っていただける環境を提供していきますよ。

MVNO、新料金への考え

――話題がiPhoneから外れますが、最近、国内でも注目を集めているMVNOについては、どうお考えでしょうか。

田中氏
 auも新しい料金プランをティアード型で提供するなど、幅広いユーザーのみなさんのニーズに応えようとしていますが、そこに当てはまらないの人がMVNOに注目しているのかなと見ています。auのネットワークを利用したMVNOとしては、ケイ・オプティコムさんのmineo(マイネオ)がありますが、それ以外はほぼNTTドコモさんの独占に近い状況です。そこで、より多くのMVNO各社にauネットワークを活用してもらうために、新たにKDDIバリューイネイブラーという会社を設立しました(※関連記事)。今後、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)が増えてくると、我々では想像もできないようなものが登場してくるでしょうし、現在の料金体系では必ずしもニーズに応えられないかもしれない。そんなときにMVNO各社なら、応えられるかもしれないし、auのネットワークを活用したMVNOさんであれば、我々としても嬉しいというわけです。

――8月から受付を開始した「カケホとデジラ」ではティアード型を採用しましたが、一人あたりのデータ量はどう見ているのでしょうか。

田中氏
 人によって、少しずつ違いはあるでしょうけど、全体的に見ると、毎月のようにデータ量は増えてきていますし、日本はまだこれから本格的に伸びるのだろうと見ています。先日、韓国の支社に行ったとき、現地のスタッフと話していたら、月に10GB以上、使う人が結構、居て、7GB以下の人はほとんどいなかったんです。年配の男性でも5GBくらいは使うそうです。これは韓国の人たちがドラマや映画などのビデオが好きなうえ、スマートフォンをパソコンのブラウザのように活用していることを反映しているんでしょうね。特に、スマートフォンは大画面のモデルが人気で、タブレットやパソコンの用途もスマートフォンひとつでカバーしようという考えの人が多いようです。

――日本のユーザーも月に10GB以上、使うようになっていくのでしょうか?

田中氏
 そうですね。そこは我々も注目しています。今後の動向が楽しみです。特に、今年はタブレットの売れ行きが好調ですし、今回、iPhone 6も4.7インチと5.5インチの大画面になりましたから、より多くの人がたくさんスマートフォンを活用するようになるんじゃないかと期待しています。

――今日はありがとうございました。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。