インタビュー

ワイモバイル村上氏に聞く、端末&サービス戦略

目指すはレイトマジョリティ、最先端のIoTも

 イー・モバイルとウィルコムが1つになってワイモバイル(Y!mobile)となって、1カ月半。ウィルコム出身でCOOの寺尾洋幸氏は、「やんちゃしたい」(※関連記事)と本誌インタビューで語り、その中で端末やコンテンツ関連をヤフーの村上臣氏が担当すると説明していた。

村上氏

 その村上氏は、ヤフー側から取締役としてワイモバイルに参画。かつてNTTドコモの「iモード」に代表される、いわゆるフィーチャーフォン向けのコンテンツに数多く取り組んでおり、その後、いったんヤフーを離れたものの、経営陣の刷新にあわせ、2012年、CMO(チーフモバイルオフィサー)としてヤフーに復帰。それからのヤフーが“爆速”“スマデバファースト”を掲げて、さまざまな取り組みを進めていることは、耳目を集めてきた。

狙いはレイトマジョリティ、初速は40代〜50代が多く

 8月1日からワイモバイルとしてサービスを提供しはじめ、1カ月半が経過した現在、月額2980円〜(税抜)といった料金面の効果もあってか、具体的な数は明らかにしなかったものの、フィーチャーフォンからの乗換が一定数あり、そのユーザーの年齢層は40代〜50代が多かったのだという。

 もともとヤフーとしても、レイトマジョリティのスマホ移行は伸び悩むと見ていた、と語る村上氏は、さらにそうした層の獲得に向けて意欲を示す。そのためには、スマートフォン側や各種サービスのユーザーインターフェイスの改善などを図ることが第一とする。ただ、シニアだから簡単にする、というよりも、こうしたツールはユニバーサルなデザインであるべき、との考えがあり、「(シニアの方が使いにくい、使えないというのは)テクノロジー側の敗北かなと思う」とも述べる。

Yahoo! JAPAN IDとの連携強化、今後は電話番号と紐付けへ

 レイトマジョリティ層に対して、いかにスマートフォンを手にしてもらうか、使い続けてもらうか、という点は、ワイモバイルに限らず、各キャリアが掲げる大きな課題。村上氏は「料金が高いのではないか、インターネットは何か怖いのではないか、という心理的なハードルが一番大きい」と解説し、そういった点の解決手段の1つとして、ヤフーの各種サービスを手軽に利用できるようにすることが、ネットへの心理的な垣根の払拭に繋がる、とアピールする。

 たとえばYahoo!ニュースのような、多くのユーザーがアクセスするコンテンツは、日常的に利用されるものとして、ワイモバイルユーザーに限らず、多くのユーザーが利用できるものであり、オープンインターネットなサービスとして提供される一方、ヤフオクやYahoo!ショッピングといったサービスは、ワイモバイルユーザーであればもっと手軽に利用できる、という形だ。現在、ヤフー側にも新サービスを開発する際には、ワイモバイルユーザーならではの要素を踏まえるよう、リクエストしているのだという。

 その一方で「ワイモバイルの村上としては、連携するサービスはヤフー以外の選択肢があると思っている。ショッピングにしても、楽天さんやAmazonさんと組むことはあり得る。もちろん先方が了解すればだが(笑)、ヤフーのサービスだけを24時間使ってもらう、というのは現実的ではない」と述べて、ヤフーで囲い込むことはない、とも語る。そのため、ワイモバイルだけで利用できるサービス、という独占的な形ではなく、ワイモバイルユーザーならば何らかの特典、といった形態を想定しているようだ。

 特に、他キャリアとの大きな違いとして、「契約したユーザーにYahoo! JAPAN IDが付与される」点があるという。既存の会員も紐付け可能な仕組みで、ヤフーのサービスをより簡単に利用できるようにしよう、という取り組みだ。この機能について、村上氏は「ヤフーとの融合だからこそできる技として、ワイモバイルのユーザーならではのメリット、より利便性が高まるようにしたい」と説明する。つまりワイモバイルのユーザーであれば、SIMカードなどを通じて自動的に認証が行われ、ヤフーの各種サービスが使える、という形になるようで、かつてのフィーチャーフォン向けサービスを彷彿とさせる機能になりそうだ。

ビッグデータとの連携は慎重、かつ、意欲的に

 通信会社とネット企業が融合するスタイルを目指すワイモバイルにとって、携帯電話の利用で見えてくる“ビッグデータ”はどう捉えているのか。たとえば、NTTドコモやKDDIでは、個人を特定できる情報を除去した上で、携帯電話の位置情報をもとにユーザーの動きを可視化して、街づくりや観光資源の開発、といった用途に応用している。

 こうした点について、村上氏は、個人情報の保護は当然重要であり、とりあえずデータを収集するといった姿勢では、ユーザーにとっては不安を与えるだけになる、と指摘。どういった活用を行い、どういったメリットがあるか、きちんと説明する必要があり、その上で今後の社会の発展に向けて、そうした情報の活用を過剰に恐れる必要はなく、個々人にまつわる情報全てをひとまとめに捉えるべきではない、とも語る。

 具体的なアイデアはまだまだこれからのようだが、「松竹梅のような形」(村上氏)とたとえて、ユーザーが企業に対して開示する情報のレベルをコントロールできるようにして、その分、料金や各種サービスの使い勝手と連動させる、といったアイデアを示す。

 こうした個々人のユーザーの利用動向にあわせたサービスの在り方として、ビッグデータとは言えないかもしれないが、現在もWebサイトの広告配信で利用されるような技術を応用し、これまでより精度を相当に高めてユーザーをあるカテゴリーに分類した上で、そのカテゴリーにマッチする広告配信を行う、といった場合には、アプリ上の広告表示をなくしたり利用料に反映したりする、といった考え方もあり得るという。

レイトマジョリティ向け製品でアドバンテージを

 サービス面でスマートフォンの利用促進を図る、という考えが示される一方、端末担当でもある村上氏は、今後の新機種については基本的にレイトマジョリティに向けたラインアップを用意する考えとする。特にAndroid端末は国内外で、徐々に安くなってきている、として、ベーシックなスペックの機種を中心に取り揃える方針とする。つまり、価格面でのアドバンテージを打ち出す考えのようだ。

 ちなみに最近は“格安スマホ”としてMVNOの各種サービスにも注目が集まる。ただ、こうしたサービスはAPNの設定など、ある程度、スマートフォンを使いこなす人に限られる、として「ヤフーでも当然MVNOへの参入は検討した」(村上氏)ものの、MVNOでは市場規模が一定の枠内になり、より大規模な市場へリーチするため、最終的にワイモバイルという形に繋がっていったとする。ワイモバイルでは全国1000カ所以上の店舗を構えており、こうした店舗によるサポート体制がMVNOとの違いにもなる、と村上氏は見る。

 ちなみに、ITリテラシーの高い層(マーケティング用語でイノベーター、アーリーアダプターと呼ばれる層)に向けたスマートフォンはどうか、「村上個人としては、尖ったモノもやりたいが、そうした層へのアプローチは今後の課題」と心情を吐露した。

ウィルコム、イー・アクセスの文化を継承、ヤフーとの三位一体で新しい文化

 もう1つ、ハードウェア面での構想としてIoT(Internet of Things)も重要とする「むちゃくちゃ尖ったものとむちゃくちゃレイトマジョリティ向けのものをやりたい。IoTは、ネットのモノ化、サービスのモノ化だと思っている。たとえばボタンを押すと通販サイトでの注文が完了して何か届く、といった形で、リアルデバイスは圧倒的にわかりやすい」と解説。六本木にある店舗では、ワイモバイル自身は手がけていないものの、一般に販売されているIoT製品を並べており、こうした見せ方も「僕の覚悟を示している」(村上氏)のだと笑顔を見せる。既存モデルのうち、こうしたIoTのレイトマジョリティ向け端末の代表例として村上氏は「迷惑電話チェッカー」を挙げて、「ウィルコムの文化かもしれない」とする。

六本木の店舗には、IoT関連やスマートフォンと連携するリストバンド型デバイスなどを展示。ワイモバイル自体が販売するわけではないが、そうした製品への意気込みを示している

 一方で、製品の投入はスピーディに展開していく構え。このあたりはワイモバイルの前身であるイー・アクセスにベンチャーらしい気質があり、これが「ヤフーの爆速と相性がいい」とのことで、特にITリテラシーが高い層に向けた製品が海外にあるものを日本向けにした上で投入したり、日本で企画開発して海外で製造したものを販売したり、とさまざまな形で取り組む。

 スマートフォンやIoT製品の発売時期は、いわゆる携帯電話市場が一番盛り上がる春商戦のほか、ネット通販の繁忙期である年末商戦を強く意識しているとのこと。

 これからまさにそうしたシーズンに入っていくことになるが、今回の取材では「どうなるんでしょうね(笑)。でも期待していてください」と明言を避けつつも、意気込みを見せた村上氏。今後登場するハードウェア群はヤフーとワイモバイルの協業スタート後に手がけてきたものとのことで、その真価を見せつけることができるか、注目が集まる。

(関口 聖)