インタビュー

キーパーソン・インタビュー

キーパーソン・インタビュー

NTT Com新村氏に聞く、音声対応を果たした「OCN モバイル ONE」の本気度

 12月1日から提供が開始された「OCN モバイル ONE」の音声対応SIMカードは、他社のMVNOサービスでは提供されているものの、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が提供してこなかったサービスだ。待ち望んでいたユーザーも多いと思われる今回のサービス拡張について、同社 ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏に話を聞いた。

NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏

 本誌が7月8日に掲載した新村氏へのインタビュー記事では、「OCN モバイル ONE」の約8割のユーザーが、最も安い1日70MB(取材時は1日50MB)のコースを選択していたというが、その後のサービス拡張などにより、月間4GBのコースに移行するユーザーが増えたという。それでも、1日70MBのコースは「OCN モバイル ONE」全体の約7割を占めるとしており、安価なサービスであることは、大きな条件になっているといえる。

 同社では、「音声対応SIMカード」の追加にあたって、価格を含めたさまざまな面で、他社との差別化や対抗策を打ち出している。

 例えば主契約に追加できるSIM「容量シェアSIM」は、音声対応SIMカードも選べるようにし、業界初と謳う。これは、通信機器などのモノではなく、人をターゲットにするという方針によるもので、主契約がデータ通信専用のプランでも、追加SIMでは音声対応SIMカードを選べるようにしている。

 最低利用期間を半年間と比較的短めに設定したのも、1年といった期間設定が多い他社への対抗の意味合いが強い。一方で新村氏は、「本当に嫌だったら、止めてもいいというスタンス」ともしており、自信の表れとも言えそうだ。

 他社への対抗という意味では、音声対応SIMカードでの「即日開通」も取り組みを始める。まずは12月1日からゲオアキバ店で導入し、ここではMNPの転入による即日開通への準備も進められている。将来的には、「即日開通」に対応する店舗の拡大も目指している。

 また、既存の「OCN モバイル ONE」のユーザーが「音声対応SIMカード」に移行しやすいよう、「事実上の交換にする」(新村氏)という施策も用意。12月と1月の2カ月間は変更にかかる費用が無料になっている。

 料金については、音声対応で、1日70MB(月間2.1GB相当)のプランでは月額1600円と、同社が競合とするようなサービスと比較して最安クラスを実現しているが、「OCN 光モバイル割」を適用すると200円の割引となり、月額1400円になる。

 同社ではまた、NTT東西が光回線を卸提供する光コラボレーションモデルの提供も、検討中という。OCNの固定回線は約800万の契約があり、1世帯が2~3人と仮定しても、契約件数の2~3倍の数が“OCNユーザー”ということになるため、自社の固定回線の既存ユーザーにも着実にアピールしていく構えだ。

12月1日から提供する「OCN モバイル ONE」の「音声対応SIMカード」

固定通信事業のインフラ、ノウハウをフル活用

 通信業界で2014年の後半から顕著になってきたのが、MVNOにおける料金の値下げ競争だ。乱暴な例えだが、MNOから提供される回線の一定の帯域幅に、一人あたりの実効スループットを無視してユーザーを詰め込めば、従来の常識を覆す低料金化も不可能ではないとされている。過当競争により、通信速度やつながりやすさに影響が及ぶことになれば、MVNO全体へのイメージダウンを懸念する声もある。価格面でも競争を仕掛けているOCNのサービスは、こうした不安にどう答えるのか。

 新村氏は、NTTドコモから卸提供を受ける帯域を毎月増加していることや、今回の「音声対応SIMカード」の追加でユーザー数が増えることを見越した対策も、すでに実施済みであることを明らかにした。「ギガを超えて卸してもらっているのはうちだけではないか」と、帯域幅も大規模になっている様子を語っている。

 「安くする代わりにユーザーを詰め込むようなことは考えていない。(制限時の)200kbpsの通信速度は、ネットワーク側で調整して200kbpsが必ず出るようにしている。NTT Comには固定のバックボーン回線の運用ノウハウがあり、一部のユーザーに足を引っ張られて速度が出ないというケースを抑制する仕組みも入れている」。

 さらに新村氏は、「『OCN モバイル ONE』は、ドコモ網からのトラフィックは通常のOCNと同じバックボーンに接続している。これはある意味で“異常なまでに潤沢”な環境。固定回線の通信事業をやっていないところは、こうした接続の部分でもボトルネックがあるのではないか。また、ドコモ網と接続する地点も、東京と大阪の2カ所。これは恐らく我々だけではないか。どちらもギガ単位の接続で、もし仮に片方が落ちてもサービスが継続できる環境」と、万全の体制になっている様子を語っている。

太田 亮三