インタビュー

「Betweenしよう」が告白の定番に、若者に広がるカップル専用アプリとは?

〜人気の理由がわからなすぎて担当者に聞いた

カップル専用アプリ「Between」

 若いカップルが、スマホのアプリ内でいちゃいちゃしているらしい。VCNCが運営するカップル専用アプリ「Between」の累計ダウンロード数が1000万件に達した。2011年11月に韓国で生まれた「Between」は、2013年4月に日本法人を設立した。現在、ユーザーの半数が韓国のユーザー。韓国では、“スマホを持っている交際中のカップル”のおよそ半数が、このアプリを利用しているという。日本でも2014年5月に100万人を突破した。

 カップル向けのアプリといえば、「Pairy」や、若年層を中心に広がる「Couples」など類似サービスがいくつか存在する。10秒の動画をシェアする「MixChannel」では、カップルのいちゃいちゃ動画投稿が話題になっている。今回は、カップル向けアプリの中でも、ユーザー数を堅調に伸ばしている「Between」について、VCNC日本法人で代表を務める梶谷恵翼氏にお話を聞くことができた。

VCNC 梶谷恵翼氏

 梶谷氏は、「“Betweenしよう”って動詞にもなるくらい、韓国の若者たちには認知されています」と話す。Betweenする=恋人同士になる、という認識から、もはや告白のセリフとして使われているというのだ。

LINEじゃだめなの?

 「Between」では、一体何ができるのか? 主な機能は、メッセージ(チャット)、写真共有、“行きたいところリスト”などを自由に書き込めるメモ機能など。これだけならLINEでいいじゃない、と思われるかもしれないが、アプリ内にはふたりだけのホーム画面が設けられ、“特別な空間”を演出している。メッセージ機能には、カップル向けのスタンプが約50種類も用意されている。ふたりの予定を書き込めるカレンダー共有機能には、「記念日リマインダー」なるものまで備える。

――記念日って、付き合い始めて何カ月目、というやつですよね?

梶谷氏
 そうです。ほかにも、お互いの誕生日はもちろん、カップルが盛り上がるイベントや“初めて○○した記念日”とかもありますね。あとは付き合い始めて何日目を、カウントしてくれる機能もあります。「記念日リマインダー」では、記念日まであと何日、というのを知らせてくれます。

――なるほど。記念日……。すごく忙しいんですね。なんだか疲れちゃいそう。

梶谷氏
 記念日が苦手な方も実際にいらっしゃいますが、ユーザーさんの中には、年間数百もの記念日があるという方もいます。彼らにとっては、毎日が特別なんです。だからこそ、ちゃんと覚えておきたいというニーズがあり、この機能は好評なんですよ。

――毎日がスペシャル! 竹内まりやですね。確かに、LINEとは異なる世界観かも。

梶谷氏
 実際にLINEと併用して使っているカップルも多いみたいです。LINEとはまた違う、ふたりだけの“プライベート空間”というイメージで使っていただいています。

――あの、素朴な質問ですけれど、これは面倒ではないんでしょうか?

梶谷氏
 カップルのバランスによるんですよね。片方が積極的に利用していて、もう片方がそうではない場合、残念ながらアプリを使われなくなることもあると思います。

 先日ユーザーさんから聞いたエピソードによると、「私ばっかり積極的で、彼氏がぜんぜん写真をアップしてくれない」って愚痴っていた女の子がいたんですけど、彼氏に「ちゃんと見てるから」って言われてキュンとなったのだとか(笑)。

――それ女子にありがちな、愚痴から始まるのろけエピソードじゃないですか(笑)。楽しそうでいいですね。

カップル文化が盛んな韓国。日本では?

――恋愛に関して、韓国と日本では、文化に違いがあるように思います。最近は、日本の若者が恋愛に消極的だと言われていたりしますが、それでもBetweenは若者を中心にユーザー数を伸ばしている。その理由は何だと思われますか?

梶谷氏
 理由……。実は僕もよくわかっていないんですよね(笑)。韓国でいえば、もともとカップル文化が盛んな国なので、このアプリはよくマッチしています。たとえば、記念日も日本よりもたくさんあって、忘れちゃうとこっぴどく叱られるんだとか。日本ではあんまりないですが、ペアルックなんかも当たり前みたいですよ。

 ただ日本のユーザーのほうが、実はアプリのアクティブ率が高く、興味深く感じています。メッセージのやりとりだけ見ても、1日平均75通。

――ええ!! 75通!? そんなに!?

梶谷氏
 そうなんですよ。僕もこれにはとても驚きました。韓国のカップルはオープンに交際するけれど、日本人ってオープンではないですよね。日本人は、友だち同士の飲み会の席で、彼氏・彼女の話をするときに「ケンカした」「うんざりした」とかネガティブな話をして、ラブラブなところを見せたがらない。謙虚なんですよね。

――ああ、お馴染みの“うちの愚妻が”ってやつですね。

梶谷氏
 そうそう。本当は自慢したいけれど謙遜する。それはそれで日本の美しい文化だと思います。だからこそ、人目のつかないところでは思いっきりいちゃいちゃしたいんじゃないかと(笑)。それが、1日平均75通というアクティビティにも表れています。

 オープンな場となるFacebookやTwitter上では写真も上げづらいという声もあります。そう考えるとふたりだけのプライベート空間を提供できる「Between」は、実は日本人にこそニーズがあるアプリのではないかと思うんです。

――なるほど。イメージと実態では、けっこうギャップがあるみたいですね。つまり、日本の若者も、結局はいちゃついているっていう……。

着信音がリア充の証

――アプリの仕様でなにか工夫している点はあるのでしょうか?

梶谷氏
 “プライベート空間”へのニーズに加えて、もうひとつは顕示的欲求というのがあると思います。たとえばペアリングをつけていると、この人たちは付き合っているってわかるじゃないですか。それと同じように、Betweenのアプリがスマホにあると“誰かと付き合っている”ということになるんですよね。だからこそ、そうした欲求を満たすようなデザインを意識しています。

――アイコンやUIに使われているカラーはティファニーをイメージしたものなのでしょうか?

梶谷氏
 まさにおっしゃる通りです。カラーはとても悩んでこの色を選びました。カップル向けアプリは白や赤が使われることが多いのですが、男性目線で考えるとブルー系のほうが好まれるのではないかと。一方女性は、この色を見てティファニーをイメージするので、憧れの象徴でもあるし、“かわいい”とか“上品”といったイメージを持ってくれるのです。

――確かに。男女ともに受け入れられやすいカラーですね。ほかにはありますか?

梶谷氏
 メッセージの着信音でしょうか。ユーザー数の多い韓国では、学校のクラスで、Betweenの着信音が鳴ったら、恋人からメッセージが来たとわかるので「いいなぁ」という感じになり、ちょっと自慢できてうれしい、みたいな雰囲気になるんです。

――へぇ。着信音が鳴ったら「あいつリア充」みたいな?

 そうです。クラスで鳴っても、生徒同士ではわかるけれど、ユーザー層ではない先生にはわからないらしいです(笑)。いわばモスキート音みたいな感じで、若者だけが認識するキャッチーな要素になっているんですよね。

別れたらどうなるの?

――ところで、カップルが別れたらどうなるのでしょうか?

梶谷氏
 それは考えたくはないですよね……。アプリでは、プロフィール画面に、「接続を解除」という悲しいボタンを設けてあります。その悲しいボタンをタップして接続を解除すると、これまで蓄積してきたデータにアクセスできなくなってしまいます。

――悲しい!

梶谷氏
 ただし、Betweenでは、アカウントを残しておけば、1カ月以内であれば再度お互いに接続することで、データが復元できる“猶予期間”を設けています。1カ月以上、接続されなかったら完全にデータが消えてしまいます。なので、相手に別れを告げられたあとでも、別れたくない場合は1カ月以内に復縁できるよう努力するのです。

 猶予期間は、1週間にするか、1カ月にするか、2カ月にするか、といったことをかなり悩んで決めているんです。ユーザーから「頼むからあと1日だけ延ばして」という依頼があったこともありました。それだけ、恋愛が絡むアプリというのは、ユーザーの人生を左右することになるので、仕様ひとつとっても、慎重に議論します。

 これまで蓄積してきた2人の思い出の記録が消えてしまうことと、猶予期間が設けられていることで、カップルが別れにくくなるという話は聞きます。

――アプリの仕様で、ユーザーの人生が変わるかもしれないということですね。運営側としては、荷が重たいですね。

梶谷氏
 サーバーが落ちたり、メンテ中で使えない時間がちょっとでもあると、「大事な恋人と連絡が取れなくてすれ違ってしまった」とか「僕たちの大事な時間を奪った」というお叱りのメッセージが寄せられます。特に韓国では、カップル間におけるインフラのようになっているので、ユーザーも敏感で、バグや、サーバーの不具合があると検索のホットワードに「Between 落ちた」とか上がってくるみたいなんです。それだけ、カップルアプリがやらかすとトラブルになったり、ダメージが大きいので気をつけなくてはと思っています。

――恋愛がらみだとトラブルもつきものなんですね。ところでBetweenでは複数アカウントをもつことはできるのでしょうか?

梶谷氏
 メールアドレスが複数あれば、実際には可能です。ただし、1つの端末に入れられるのは、1アプリにつき1つまでなので、いちいちログイン、ログアウトを繰り返さなくてはならない上、ログアウト状態ではメッセージが受け取れなくなるので、使いづらく、複数アカウントでは続けづらくなっています。

――複数端末を持っていて、相当マメな人ではない限り、難しいんですね。トラブルにならないためにも、1人に絞ったほうがよさそうですね。

梶谷氏
 もちろんそうですね(笑)。

“ふたりで過ごす部屋”のような、プラットフォームを目指す

――ほかにも、いくつかの類似サービスがあると思いますが、Betweenは今後どのように差別化してくのでしょうか?

梶谷氏
 カップルアプリの市場自体がまだ小さいのですが、類似サービスは10〜20くらいようです。同じような機能を持ったアプリが多いので、参考にしてもらっているのかなぁと思っています(笑)。

 恋人同士がスマホで行うやりとりや行動を、このアプリ内でできるようなプラットフォームに育てていくことが今後の目標です。たとえば、デートや旅行の計画を立てて、予約できたり。記念日のプレゼントを贈り合ったり。コミュニケーションの分野では、LINEさんなどが前を走っているので、勉強させてもらいながら、カップル専用として、独自のものを出していければいいなと思っています。カップルにとって、ふたりで過ごせる部屋のような、居心地のよいものにしていきたいと思っています。

――沢山の人に使ってもらいたいですね。

梶谷氏
 カップル専用アプリって、好みが分かれるとは思うのですが、騙されたと思って1度使ってみていただきたい。僕が入社したときは、彼女いなかったんで「誰が使うのこのアプリ」って思っていました。でも実際に使ってみると、相手のことが良くわかって、すごく面白いんですよね。「使い続けていくうちに、お互いのことをもっと好きになった」というユーザーさんからの声を頂くので、それが、なにより嬉しいです。

 日本ではまだ、「Betweenしよう」が通じるほど認知されていないので、これから認知されるように頑張らなきゃと思っています。「Betweenしよう」って言えなくても、「このアプリ試してみたいから」と言い訳に使ってもらって、そこから仲良くなるのもアリだと思います。もしうまくいかなかったとしても、そのときはアプリのせいにしてもらっても構いません(笑)。

Betweenユーザー歴1年以上。美大生のおふたり、ナナさん(左)、ネモトさん(右)。「SNSはTwitterがメインです。Facebookはお父さんもやっているから恥ずかしくて投稿できない(笑)。LINEは、グループチャットや、彼とのちょっとした連絡用に使っていますが、Betweenだと特別感が違います。ツイキャスですか?ツイキャスは読モの子たちがやっているイメージ。私はちゃんと編集してから公開したいので、動画はMixChannel派です」(ナナさん)「Betweenを提案してくれたのは彼女から。とくに抵抗はなかったです。どんどんアップデートして使いやすくなっている。彼女と一緒にいない時のほうが、Betweenを開いています。一緒に撮った写真を見返したりするので」(ネモトさん)

(川崎 絵美)