インタビュー

シャープ、ドコモ向け夏モデル開発者インタビュー

シャープ、ドコモ向け夏モデル開発者インタビュー

速く、かしこく、美しく。夏モデル4機種の魅力に迫る

シャープのドコモ向け夏モデル

 この夏のNTTドコモ向けのシャープ製端末群は、スマートフォンのフラッグシップモデル1台にミドルレンジが1台、Androidベースのフィーチャーフォン1台、7型タブレット1台と幅広く、まさに役者が勢揃いした感じ。現在1社でここまでカバーするメーカーはシャープだけといっても過言ではない。

 4機種リリースした目的や、それぞれの端末の新たな機能について、通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第一商品企画部 部長 高木健次氏、同部 主事 別府莉那氏、同部 丸山晋由氏、デザイン本部 プロダクトデザインセンター 通信デザイン室 シニアデザイナー 真野靖彦氏にお話を伺った。

高木健次氏

――スマートフォン2機種、ケータイ1機種、タブレット1機種と、今回4機種を供給されるわけですが、なぜでしょうか?

高木氏
 ワンシーズンで4機種って、ちょっと多いですよね。元気なところを見せようかなと(笑)。スマートフォンの契約数が半数を超えてきて、スマホとケータイのお客様が半々くらいになってきていますよね。それに伴ってニーズも多様化していますので、お客様のニーズに合わせたモデルを提供したいと考えまして、今回4機種をラインナップしています。

 たとえば、スペックや機能を重視する人や、最新の技術をいち早く体験したいという方は、5.5インチのフラッグシップモデルである「AQUOS ZETA SH-03G」を選ばれると思います。それに対して、あまり高い機能は求めず、手頃な価格でスマホデビューしたいという方は、5インチの「AQUOS EVER SH-04G」を選ばれるでしょう。一方で、まだまだ折りたたみのケータイは手放せないけど、LINEは使ってみたいという方には、新世代ケータイの「AQUOSケータイ SH-06G」をおすすめします。さらには、通話は折りたたみのケータイがいいけど、いろんなアプリを便利に使ってみたい、コンテンツを大きな画面で楽しみたいという方はタブレッドである「AQUOS PAD SH-05G」とのセットをおすすめしたい。この夏モデルはこんな感じでラインナップしています。

GR認証再び、この夏のフラッグシップモデル「AQUOS ZETA SH-03G」

AQUOS ZETA SH-03G

――SH-03Gのチェックポイントをズバリ教えてください!

高木氏
 これまでも電池持ち、画面の綺麗さというところをZETAの特長としてきましたが、さらに完成度を高めました。ハードウェアとしては、今回は64bit 8コアCPUを採用し、消費電力は最小限でありながらゲームや動画再生時には最高のパフォーマンスが出るようにしています。そこへ指紋センサー、さらに進化したS-PureLED、グリップマジックのイルミネーションを新たに搭載しました。内部的には、おススメ画質モード、GR認証カメラによるスーパースロー映像の撮影機能、光学手ブレ補正、よりセルフィがしやすくなったインカメラ、そして、よりかしこく親しみやすくなったエモパーをぜひチェックして欲しいですね。あと、かなり地味ですが「書院」がS-Shoin(スーパーショイン)となって新搭載されて、予測変換がしやすくなっています。

――書院ですか!(笑) 随分懐かしい響きですが、何年ぶりでしょう?

高木氏
 そうですよね(笑)。2010年の夏モデルとして発売されたSH-09Bの「ケータイShoin」以来です。

 まず、今回新たに追加した「指紋センサー」。登録した指で背面のセンサーをなぞると、ロック解除ができるようになりました。弊社では、端末の側面を握るだけで電源がオンになるグリップマジックを搭載し続けていますが、指紋センサーと併用することで、グリップしてなぞるだけですばやくロック解除できるようになりました。もちろん個人認証にも応用できるということになります。

イルミネーション対応のグリップマジック

 グリップマジックは機能としては引き続きの機能になりますが、イルミネーションするようになりました。光ることでどこにセンサーがあるのか分かりやすくなったほか、後ほどお話しするエモパーの新機能もサポートします。

 ディスプレイですが、新開発のバックライトとカラーフィルターS-PureLEDで、色の再現性をさらに向上させました。これまで赤の発色がよかったんですが、緑も青も非常にクリアに見えるようになりました。もちろん今回もIGZOを搭載しており、省エネと発色を両立させています。

 また、今回から新たに「おススメ画質モード」という画質モードを搭載しています。これは表示するアプリによって最適な画質に自動的に切り換えるというものです。これまでは標準で「ダイナミック」になっていて、設定で画質モードを変えるとそのモードがすべてに適用されていました。しかし、「おススメ画質モード」は、プリインアプリにおいて、テレビや動画を視聴するときはより鮮やかに、カメラを使うときや、写真を見るときは自然な発色といった具合で、都度画質を最適な状態に変更します。これは初期設定で設定されているので、手間なく綺麗な画質をお楽しみいただけます。

 スマートフォンに欠かせないカメラですが、今回もF1.9の明るいレンズを搭載し、リコーの画質改善認証プログラムである「GR certified」を取得しています。光学手ブレ補正とあいまって、非常に美しい画質で写真が撮れます。プリントしたサンプルもご覧いただけるようにしますが、本当に高い描写力を出していると思います。

 インカメラも従来モデルよりも広角になって、標準でもワイドに写せるようになりました。顔検出機能も新たに搭載しましたし、セルフタイマーは2秒と5秒のいずれかを選んでいただけるようになりましたので、より使いやすくなっています。

 で、今回の目玉となるのが、ミルククラウンとか、風船が割れるスロー映像でおなじみの「スーパースロー映像」の撮影機能です。通常1秒間に30フレームなんですが、ハイスピードCMOSセンサーを搭載したことにより、FWVGAサイズで秒間210フレーム、フルHDサイズで秒間120フレームの高速撮影が可能になりました。さらに、再生時にFWVGAサイズで秒間2100フレーム、フルHDサイズで秒間1200フレームまで画像補完することで、70分の1のスロー再生が可能になりました。これは当社調べではありますが、2015年4月6日現在で、スマートフォンでは世界最高となっています。

 スロー再生される場所は自動的に動きがもっとも早い部分が選択されるのですが、再生時のアプリで好きな範囲に変更することもできます。

左がS-PureLEDのAQUOS ZETA SH-03G
スーパースロー映像の撮影に対応

――それはすごいですね。YouTubeやSNSなどにスローな状態でアップすることもできるんですか?

高木氏
 もちろんです。プレーヤーのメニューで「エクスポート」を選んでいただくと、秒間30フレームに変換して書き出せますので、それをアップしていただけます。

――セルフィというと、最近は自撮り棒が流行っていて、笑顔などに反応してシャッターが切れるモーションシャッターなんかもあるようですが、そういう機能はありますか。

高木氏
 そこは我々はセルフタイマーでやっていこうかなと思っています。手を動かすとそれでカメラがぶれちゃうこともありそうですし、笑顔でないシーンも撮りたいと思う方もいるかもしれませんので。今回は秒数も選べるようにしたので、使いやすくなったと思います。

――イルミネーションの光り方としては、昔のフィーチャーフォンのときみたいにいろんなパターンが用意されているんですか。

高木氏
 はい。パターンはいろいろ変えられるようになっています。いろいろできるんですけど、夜まぶしいといった意見ももらっておりますので、配慮した仕様も加えています。

エモパーが2.0に進化。声に反応

エモパーが2.0に

――エモパーが2.0になったとのことですが、まずはこれまでのエモパーに対するユーザーの反響について教えてください。

高木氏
 エモパーは2014年の秋に冬モデルから搭載した人工知能ですが、「使うとハマるね」という声が結構聞かれます。買っていただいた方の3割くらいの方に利用されているようです。使わない人は、食わず嫌いというところはあると思うんですけどね(笑)。実際使ってみると、良いと思っていただけるようです。ご利用いただいてる方の半分くらいは男性なんですよ。1つのアプリで3割というのは結構多いと考えていますが、もっともっと増やしていきたいなと思って啓蒙しているところです。

――実際にユーザーから多かったのはどんな意見ですか。

高木氏
 多かったのは「もっとしゃべってほしい」という声ですね。バージョンアップでもしゃべる言葉を増やしているんですが。また、「なんでエモパーが今しゃべらないのかわからない」とか、そういう声はかなり多くいただいております。家の中でしかしゃべらないですが、外で電車を降りるときに言ってくれたらいいよね、便利だよね、という声もありました。

 そういう声を踏まえて、今回は「エモパー2.0」として、使う人に合った話題を選んで話しかけてくれる機能、イヤホンを使うと外でも話しかけてくれる機能、声に反応してくれる機能、エモパーの気持ちが見える機能の4点を新たに追加しました。話題としては、もうすぐ始まるテレビ番組や、先週の液晶テレビAQUOSの視聴ランキング、近くのカフェ、今日の花などを話すようにもしています。

 まず1つめの使う人に合った話題を選んで話しかけてくれる機能ですが、入力したキーワードで、この人はこういうことが好きなんだろうな、というようなことに関する話題を選んでくれます。

 2つめのイヤホンですが、その名の通りでイヤホンを繋げば、自宅以外でも声で話しかけてくれます。いつも降りる駅の付近だと、そろそろいつもの駅だよということも教えてくれるし、到着地付近の名物とかそんなことも教えてくれるようになりました。

 3つめの声に反応してくれる機能は、エモパーが話したあとに「ほかには?」「もう1回」というと、予定を見て、スケジュールを教えてくれたり、繰り返してくれたりします。

 4つめのエモパーの気持ちですが、エモパーの状態が分かる機能です。

別府莉那氏

別府氏
 私が使っているエモパーの気持ちをお見せしますね。まだ関係性が低くて62%なんですけど……。昨日3回話しましたよとか、出会ってから何日とか、誕生日を登録しておくと「あと2日」とか、そんなことを覚えています。エモパーに今どんな情報が蓄積されているというのが一目で分かるようになっているんです。私はキーワードで「シャープ」を登録してあるんですが、そうすることで、「この人、シャープ好きなんだな」ということをエモパーが覚えていてくれたりします。「あ、こういうの認識してくれてるんだな」っていうのがわかるようになりました。

――気持ちっていうのは具体的にはどんな気持ちに相当するのでしょうか。

別府氏
 楽しい、嬉しいではなくて、自分に対する愛情度合いといいますか、関係性の度合いですね。お客様のことをこれくらい知っている、という。

――さきほど「ほかには?」「もう1回」というフレーズに反応するとおっしゃいましたが、ほかにどんな言葉にも反応するのでしょうか。

高木氏
 現在のところは「ほかには?」と「もう1回」の2つですね。

――どんなときでも応答してくれるのですか?

別府氏
 エモパーが1回話したあと、グリップセンサー部分のイルミネーションが点滅していたら待機状態の印となります。そのとき「ほかには?」または「もう1回」というと、何か話してくれます。何度も反応するのではなく、基本的には1回しゃべったら返してくれて、それで一旦お話は終了ということになります。

エモパーの気持ち

――なるほど。1回だけなんですね。

別府氏
 そうですね。「もう1回」は聞き逃した情報を聞き返すのに便利だと思います。ただ、必ず何か気の利いたことをしゃべってくれるというわけでもなくて、エモパーの機嫌がイマイチなときは「ほかには?」といっても「急に振られても困る」といってやんわり拒否されることもあります(苦笑)。

――声に反応するということですが、基本的にテーブルの上においた端末に話かけるわけですが、マイクの性能含め、いろいろ調整されたんでしょうか。

高木氏
 初期のエモパーでは、スマートセンシング、音声合成、プライバシーの3つの技術をやってきました。今回は「エモパー2.0」ということで、こちらの声も認識させますから、センシングに高度なノイズキャンセリング機能を持った3マイクのシステムを、頭脳には音声認識エンジンを、出力にはデジタルアンプスピーカーを新たに導入しました。これで周囲の音をより聞き取れるように、また会話のレスポンスも早く、エモパーの声も聞き取りやすくなっています。

 今回は「もう1回」と「ほかには?」の二言なんですが、この技術をもっと応用すれば、もう少しいろんなことができるんだろうなと先々をみながら取り組んでいます。

――通信まわりで、変わったところはありますか?

高木氏
 国内最速の「PREMIUM 4G」に対応して、受信時速度が最大225Mbpsになりました。Wi-FiとLTEの自動がスムーズにできるだけでなく(スムーズチェンジモード)、大容量データを高速にダウンロードしたいときは、Wi-FiとLTEの同時通信できる「デュアルスピードモード」もサポートしています。

 それから「MU-MIMO」(エムユー・マイモ)に新たに対応しています。Multi User - Multi Input Multi Outputの略なんですが、複数のアンテナを同時に使って、Wi-Fiの通信速度を約2倍にできるという技術です。従来、親機に複数のスマホが接続されていたら、すべてのアンテナで時分割で細切れにデータを送っていたんですが、「MU-MIMO」をサポートした親機とSH-03Gを組み合わせて使うと、アンテナごとに端末を割り当てられるので、途切れない安定した通信が可能になり、スループットも低下せずにデータを送れるようになるというものです。新しい技術なので、従来のルーターでは使えませんが、対応機器がこれから出てくるはずです。

価格もサイズも機能もすべてほどよい「AQUOS EVER SH-04G」

AQUOS EVER SH-04G

――続いて、EVERの特徴を教えてください。

高木氏
 これはこれからスマホデビューされる方や、一度スマホを使って、自分の使う機能は限られているとわかっている方に向けた商品になります。フィーチャーフォンからの乗り換えやすさ、データの引き継ぎやすさを意識したモデルで、赤外線通信も搭載してます。

――「EVER」というサブネームがついていますが、名前の由来は?

高木氏
 これは、約100年前に弊社の前身の早川金属工業が開発したシャープペンシルのコピー「Ever ready sharp pencil」からとりました。高品質だけどお手頃価格というコンセプトがSH-04Gと一致しますので。

 EVERは、手に収まる5インチサイズの液晶を搭載しており、重さも140gを切っています。コンパクトで持ちやすくて軽く、電池持ちも3日間、防水で赤外線通信にも対応するなど、安心して使えるところが大きな特長です。

――確かに持った感じで優しい印象がありますね。こちらも液晶はIGZOですか?

高木氏
 液晶は液晶はIGZOではありませんが、S-PureLEDはしっかりサポートしています。カメラはGR certifiedではありませんが13メガで、タイプラプス、NightCatch、リアルタイムHDR、フレーミングアドバイザーも搭載しています。インカメラも210万画素ですし、もう普通に使える機能は全部載っていますね。

 VoLTEも対応していますし、エモパーはライト版のダウンロードとなりますが、S-Shoinなどのソフト関係のところはフラッグシップと同じものを引き継いでいます。CPUはクアッドコアでRAMは2GBです。

――カメラにおいてフラッグシップのZETAとの違いは、ハイスピードセンサーによるスーパースロー映像が撮影できないことくらいでしょうか。

高木氏
 はい。それから、こちらはGR certifiedではありません。インカメラもちょっと違います。ZETAに比べて広角ではないですね。そのあたりはやはり多少差はつけています。

シャープ初のクイックオープン、「AQUOSケータイ SH-06G」

AQUOSケータイ SH-06G

――続いて「AQUOSケータイ SH-06G」の特徴を教えてください。

高木氏
 ケータイのスタイルは手放せないけど、パソコンやスマホと同じコンテンツが見たい、LINEは使いたいといった方向けの端末です。液晶は先行したキャリアさん(au)のモデルと同じで、3.4インチのQHD液晶を採用しています。RAMも1GBと同じですが、こちらはLTE非対応モデルなので、CPUは少し違ってデュアルコアです。

 アプリのインストールには対応していませんが、ブラウザを使えばFacebookやTwitterも利用できます。弊社のケータイでおなじみの「タッチクルーザーEX」も使えるので、キー全体をタッチパッドのような感覚で片手で操作していただけます。液晶はのぞき見防止のベールビューもワンボタンで実行できますし、スクリーンショットも撮れます。カメラ機能にはフレーミングアドバイザーも入れています。

――LTE非対応ということは、テザリングはできない?

高木氏
 そうですね。3GのみでWi-Fiも非対応です。基本的に端末内のデータ通信と通話がメインといったように、これで全てをこなすというよりは、最小限のことができればいい方向けということになります。とはいえ、GPSも加速度センサーも載せていますので、LINEのふるふるもできます。さらなる機能を求める場合は、次にご紹介するタブレットとの連携でお楽しみいただくことをイメージしています。

ヒンジ部のボタンを押すと開くクイックオープン対応

――これ、ワンプッシュで開くんですよね。よくボタンの部品があったな、と。

高木氏
 弊社初のクイックオープンになります。部品は新規で起こしたものです。外側から見るとわからないかもしれませんが、結構苦労も工夫もしました。でも、おかげでボタンをワンプッシュでパッと開くので、名前を呼びかけてそのまま発信なんてこともできます。せっかくなので何かできないかということで、開く度に壁紙が変わる機能も搭載しました。

――今となっては、この折りたたみのケータイをワンプッシュで開いて話すというスタイルのほうが斬新に思えてくるから不思議です(笑)。

クラス最軽量の7インチタブレット「AQUOS PAD SH-05G」

歴代のAQUOS PAD(一番右が今回のAQUOS PAD SH-05G)

――続いてAQUOS PAD SH-05Gをご紹介ください。

丸山氏
 ドコモ様向けのタブレットとしては、一昨年の初代SH-08E、昨年のSH-06Fに続いて3代目となります。いずれも7型の通話もできるモバイルタブレットという点にこだわってきました。今回も液晶はIGZO、バッテリーは3900mAhということで、軽くて綺麗で長持ちというのはそのままに、さらに進化させています。

 具体的には3つの特徴があります。1つは軽さです。これまででもっとも軽く仕上がっているのが最大の特徴ですね。SH-06Fが233gと世界最軽量だったのに対して、今回はEDGESTの中では最薄になる約8.0mm。さらに軽くなり210g台になります。弊社調べではLTE内蔵では自己記録更新です。

 2つめはスピードです。いかに快適につかっていただけるかというところにこだわって、CPUはオクタコア、通信はPREMIUM 4Gに対応しています。ZETAでもご紹介したデュアルスピードやスムーズチェンジにも対応していますし、中身はフラッグシップのZETAと全く同じです。

 3つめは、連携機能の強化です。これからは新世代ケータイとタブレットという使い方をキッチリ訴求していく必要があるなと感じまして、連携にこだわりました。

 今、世の中には本当にたくさんのタブレットがありますが、ここまで妥協せず中も外もしっかり作り込んでいるのはこの端末以外ないだろうというくらい自信作です。

丸山晋由氏

――さらに薄く軽くなってますが、それを実現した要因は何でしょうか。

丸山氏
 最大の要因は前の機種をやったからですね。こうやれば軽くできるというノウハウが非常にたくさん得られたんです。ですから、具体的にどの部品がどうというところではないんですけども、表面のタッチパネルも、背面のパネルも、キャビンもそれぞれちょっとずつ軽くなって、結果全部軽くなってます。前の機種をやったからここまでできたという、誇れる取り組みかなと思っています。

――わずか1年でここまでできたということは、この先もさらに期待できそうですね。

丸山氏
 この先も進化にご期待いただければと思います。

――この端末、スピーカーはどこにありますか?

丸山氏
 スピーカーは側面です。以前は全部後ろにあったんですけども、「後ろにあっても、前からテレビ見てたら聞こえないじゃないか」という声をたくさんいただきまして。ただ、これはEDGESTなのでどうしても前面に置けないので、横に配置しつつ、卓上ホルダにつけてテレビを見てても、ちゃんと前にも音が響くようにしています。

――先ほど連携機能を強化されたとおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことが可能になったのでしょうか。

丸山氏
 SH-06Gとの2台持ちをかなり意識して「PASSNOW」(パスナウ)というアプリを搭載しました。ペアリングから着信やメッセージの通知、写真データのやりとりやブラウジング中のコンテンツの表示切替などが簡単にできるようにしています。

 たとえば、ケータイのSH-06Gに電話がかかってくるとします。ケータイは鞄の中、持っているのはAQUOS PADという状態でも、誰からかかってきたか、AQUOS PADの画面に表示されます。そこで「クイック返信」というのを押すと、SMSの定型文を選択できるようになっていまして、あとからかけ直すといった連絡ができます。電車の中など移動中にPADで読書してるときなんかに役立つと思います。

 ケータイに届いたLINEのメッセージなんかも、AQUOS PAD側で通知を見ることができます。どちらかにあってどちらかにないアプリでも双方に通知を表示できるので、AQUOS PADにインストールしたGoogleのハングアウトや、Facebookのメッセージ通知をケータイで見ることもできますよ。移動中はケータイを手に持っていて、タブレットは鞄の中ということは多いですよね。そんなときも、手元でメッセージは読めます。

 AQUOS PADが見つからない、またはケータイが見つからないというときも、どちらかから一方を呼び出すこともできます。音がなるので、どこにあるのか見つけやすくなります。

PASSNOW

――なるほど。まるでウェアラブルデバイスの通知機能みたいな感じで利用できるわけですね。

丸山氏
 まさにその通りですね。ケータイのカメラで撮影した写真を、プレビュー画面で*印ボタンを押すだけで、AQUOS PADに表示させたり、同じくケータイのブラウザで見ようとしたものを、もう少し大きく見たいということでAQUOS PADのブラウザにワンタッチで切り換えたり。そんなことも楽にできます。

 人によっては、そんなのBluetoothで前からできるよって言うんですけど、誰でもすぐ簡単に操作できたかといえばそうではないと思うんですね。ワンタッチでできるのが「PASSNOW」の魅力です。

 ケータイのSH-06GとタブレットのSH-05G、この2台をペアで持っていただいたら、それぞれの魅力が増強されるはずです。ぜひこの2つを快適に使っていただけたら嬉しいなと思っています。

――ケータイを選択するユーザーをイメージすると、ペアリング設定はかなり大きなハードルだと思うのですが。

丸山氏
 そうですよね。そこでペアリング方法も簡単にしています。ケータイのSH-06Gで「PASSNOW」を起動するとQRコードの読み取り画面になり、AQUOS PAD側でペア設定を選択するとQRコードが表示されます。あとはこれをケータイ側の読み取り画面に表示させるだけでペアリングが完了します。設定を開く必要がないので、とても簡単です。

――それはだいぶ簡単そうですね。「PASSNOW」の連携機能は、このAQUOS PADとこのケータイに限った機能ですか?

丸山氏
 ケータイ側の機能はこの機種が初めてです。タブレット側のアプリ自体はGoogle Nowからダウンロードできるものなので、他のタブレットにもインストール可能です。プリインストールされているのはAQUOS PADだけということになります。

「拡大鏡」機能

――AQUOS PADといえば電子書籍をイメージするのですが、そちらでの変化は何かありますか。

丸山氏
 ございます。読みやすくなる機能と、検索しやすくなる機能が追加されています。薄くて軽いので、どこにでも持って行っていただける端末なのですが、そうなると当然、電子書籍のご利用も増えるかと思います。高精細な画面ではありますが、7型なので正直文字は小さくなります。

 たとえばドコモさんのdマガジンですが、もう少し文字が大きく見えたらと思うことも実際にあります。そこで、そういう部分を改善しようということで、部分的に拡大鏡のように文字を拡大して表示する機能をいれました。ナビバーにある「+ボタン」から「拡大鏡」を選んでいただくと、四角い虫眼鏡が現れます。虫眼鏡は指で動かせるので、レイアウトそのままで範囲を拡大しながら読むことができます。

――それは単純に拡大しているだけなんですか?

丸山氏
 そうです。4倍に引き延ばして拡大して表示しているんです。これができるのも、IGZOにより、ワイドUXGAという高い解像度を実現しているからですね。

――検索しやすくなるというのは具体的にはどういうことでしょうか。

丸山氏
 「さわって検索」ですね。読みながら気になったお店が出てきたとき、すぐに調べたいですよね。そいうとき、先ほどの「+ボタン」から「さわって検索」を選んでいただき、お店の名前をなぞるとGoogleの検索結果にダイレクトにジャンプできます。雑誌以外の情報にも手間なく素早く辿り着けるように工夫してるというのも、今回の新たな取り組みです。

――その2つの機能は、dマガジンに限った機能というわけではないのですか?

丸山氏
 アプリケーションに関係なく使えるように作っておりますので、何でも使えます。Chromeでも使えますしGoogleマップでも使えます。ただ、著作権の関係からワンセグなど画面キャプチャができないアプリは使えません。

――これはスマートフォンに入っても嬉しい機能かなとも思いました。

丸山氏
 そうですね。それはまた今後の検討課題になると思います。やっぱり大きな画面でまず一番メリットがいかされる使い方かなと思いますので、まずタブレットから搭載させてもらいました。状況を見まして、今後いろんな展開を検討することになると思います。

それぞれの形にあったヘキサグリップシェイプに

真野靖彦氏

――ここからはデザインについて伺います。今回4機種ありますが、全体のデザインについてコンセプトなどがあったら教えてください。

真野氏
 ドコモ様向けの弊社の昨年来のデザインの中で、形を考えるキーワードとして、EDGESTデザイン、三辺狭額縁で大画面を際立たせるという考え方、横断面を六角形にするヘキサグリップシェイプがあります。昨年の春モデル、秋冬モデル、そして今回で3回目になりますが、それらの考え方は踏襲しております。

 昨年はフラッグシップのモデルに対してのみこの考え方を落とし込んでました。でも、よく考えるとこれらはどんな画面サイズにも適用できるんじゃないかと思ったんですね。今回はスマホ、タブレットというラインナップの中で、シャープのデザインの考え方の1つのくくりとしてアピールできないかと考えてました。

 ただ、それぞれサイズもコンセプトも違いますから、六角形の断面を同じ形で全部落とし込むのは無理があるだろうと。だったら六角形でもそれぞれの特徴に合わせたものにしていきましょうというのが、今回の考え方です。

――ZETAの場合はどうでしょうか。

丸山氏
 従来の記号性を継承しつつ、新たに側面にイルミネーションを加えて、グリップセンサー部分が光るというのがデザイン的な特徴の1つです。あとはメタルフレームや金属筐体を採用がデザイン上の新しいところとなります。金属を使うと面と面、稜線の部分というのがハイライトと影がしっかりでてくるので、金属で側面を回すことによってヘキサを際立たせて、財貨感を出しています。

 上のコネクターの部分に関しては樹脂なんですけども、ぐるっと下にU字型でアルミを回しています。これ、丸い棒を上からプレスでガーンと突いてから作る鍛造という方法を採用しています。鍛造すると1回圧を加えるので、色があまり出ないというデメリットがあるんです。しかし、製造プロセスの中で、あとで熱処理を施すことで、ツヤを上げたりすることができる、綺麗な色が出せるということが分かったので、それを上手く活用しています。切削が多い中、鍛造はなかなかのトライでしたね。

――ZETAのカラーバリエーションは3色ですが、白・黒・赤にした理由は?

高木氏
 白黒は定番ですが、そこにシャープのレッドを加えました。シャープのレッドって結構人気あるんですよ(笑)。

真野氏
 赤に対する思い入れは結構あるんですが、今回は製造上、深みのある赤というのが出せるというまたとないチャンスでしたので、それに合わせて裏のパネルも蒸着的な輝度の高いパネルの仕上げを使っています。

――センサー部分のイルミネーションは、かなり凝ったつくりになっていそうですが、どうなっているんですか。

高木氏
 センサー自身は金属をもう1つ埋め込んでるんですよ。その周囲にイルミネーションを巻いてるというちょっと複雑な作りになっています。静電方式を使っているので、センサーのところを金属筐体のところと独立させないといけないんですよね。

真野氏
 イルミネーション部分には、光を拡散させる導光板というのを入れてるんですが、これで一つの光源から光を拡散させます。導光板の真ん中にグリップセンサーをのせて両端で電気的接続をさせ、その上にドーナツ状の透明パーツをはめて、センサーの両端が光るという、込んだ作りになっています。

 金属筐体というのは稜線に光が反射してキラッとするんですが、イルミネーションも稜線近くに配することで光るという効果を見た目に揃えたいというこだわりもあり、かなり技術とやりとりをして決めました。

――ZETAに比べると、EVERは柔らかい印象ですね。

真野氏
 こちらはフラッグシップではなくて、どちらかというと幅広い層、みなさんに持っていただきたいということで、仕様とデザインのバランスを重視した商品になっております。あまり尖っていると手当たりが強くなるということもありますし、もともと女性でも持ちやすいサイズですので、無理に尖らせてホールドしやすくする必要もありません。ですので、こちらのヘキサフォルムは、ZETAよりも角度が鈍角になっていて、くの字が浅いんですね。

 カラーリングは比較的ソフトな、パールを生かした綺麗な色を使っています。ZETAは金属でパシッとハイライトと影を使ってますが、EVERは面と面がソフトにコントラストを持たせているような感じにまとめています。

――AQUOS PADは薄さを感じるデザインだと思いました。

真野氏
 今回のラインナップの中では一番サイズが大きい分、片手で持つことも考えて、いかに持ちやすくするかに重点を置いています。下側を削れるだけ削って、しっかりしたくさび型を持たせています。さらに、上はブラスト調、下はグロス調にすることで、影とハイライトを上手く生かして薄さを際立たせています。

――確かに置いたとき、くさびの上が明るく、下の影が強くでてますね。その分薄く見えます。

真野氏
 そうなんです。ブラストは白く明るい感じに光るんですが、グロスは影を拾って黒く沈むんですね。

 AQUOS PADの仕様はフラグシップのZETAと比較しても遜色ないということをある程度伝えたいという気持ちもあり、AQUOS PADはZETAを意識したヘキサシェイプデザインにしています。

――最後にSH-05Gのデザインのこだわり教えてください。

真野氏
 前機種のSH-07Fがあまり女性を意識しないデザインでしたので、今回のSH-05Gはもう少し中立というか、女性にも受け入れられるデザインを目指しています。具体的には、金属のよさを生かしながら、キラッとした輝きを持たせていますね。

――カラーバリエーションにブルーグリーンという珍しい色が入ってますね。

真野氏
 もともと想定している年齢は50代が中心なんですが、40代くらいにも広げたいなと思いまして、そういう層も手にしやすいよう少し緑を使ったカラーを加えています。

――今回、エモパーが入ってるのはスマホの2台ですよね。ZETAはエモパー2.0で、EVERはダウンロードのライト版に対応と。せっかくプラットフォームがそろっているのであれば、ケータイでもエモパーが使えたら面白そうな気がしました。

高木氏
 先々はそういうことがあってもいいかもしれませんね。

――クイックオープンでしゃべるとか、置いたらサブディスプレイで語りかけるとか、そういう形はいかがでしょう?

真野氏
 エモパーなり、イルミなり、情緒的なものを司ることがテーマになると思うんですね。なおかつ常に身につけているものなので、ある程度つながりというか、そういうことを感じたい。今後開発する上で情緒性というのが1つのヒントになるかとは思っています。

――本日はどうもありがとうございました。

すずまり