インタビュー

「1GBプラン? 何も決まっていない」、ドコモ加藤社長インタビュー

実質0円はやめるのか、+d構想の狙い、料金競争の舞台裏を聞く

 2015年度に入って「+d(プラスディ)」戦略を掲げ、さまざまな企業と協力しながら、新たな分野への進出をはかるNTTドコモ。国内の携帯電話市場は、スマートフォンがある程度普及して、その伸びが鈍化。大手キャリアは3社に集約され、新たに“格安SIM”を提供するMVNOに注目が集まるなか、この秋、政府が携帯電話料金の値下げに向けて動き出している。

NTTドコモの加藤社長

 13日には、NTTドコモが新たに割安なプランや料金の値下げを検討する、と報道されるも、同社代表取締役社長の加藤薫氏は「今の段階では何も決まっていない。総務省のタスクフォースが開催されており、何も検討できない」と白紙状態であることを吐露する。また端末価格について“実質0円での販売”は好ましくないとした。

タスクフォースについて

――安倍首相の指示で、総務省にタスクフォースが設置され、携帯電話料金に関して議論が始まっています。13日はドコモが値下げを検討するなどと報道されましたが。

加藤氏
 結論から言うと、タスクフォースが動いて論点、課題が整理されている状況で、それを待たないと何も検討できません。仮定の質問にはあまりお答えしたくないです。何がどう整備されるかわかりませんが、不公平感や選択肢といったあたりがキーワードになっているような気もします。

――タスクフォースでは、高市総務大臣が「不透明性/料金のわかりにくさ」「不公平感」といったあたりを指摘していました。タスクフォースがどうなるかわかりませんが、ドコモから何かしら先手になるようなアクションをとることはありませんか。

加藤氏
 いやあ、なかなか難しいですよ。すぐに答えが出ないかもしれませんし。

――たとえば端末代金と、通信料への割引の関係性も指摘されています。

加藤氏
 わかりにくさという声がありますよね。もう一方で行き過ぎた競争という点も話があると思います。去年、私は提起して、新しいステージに行きたい、だから新しい料金プランも作りました。不健全なキャッシュバックは、うちは辞めようと。ときたま仕掛けられて痛い目にあってるんですけども。

――「ドコモ」などキャリア名でTwitterなどを検索すると、携帯電話販売で商品券が付く、といった案内を目にします。

加藤氏
 基本的に代理店がやられることなので難しいところはあります。でも意識を合わせながらやっていきたいです。ただ、(大手3社で)談合するわけにもいきません。難しいところです。

――料金プランについて、たとえば1GBのプランですとか、端末代金の見せ方など、今日の段階では?

加藤氏
 (決まったものは)何も考えていません。ただ、料金プランは、通信事業者の根幹中の根幹ですから、いつも考えています。お客さまから声もたくさんいただいて、踏まえて考えるけど、毎日、毎月変えるわけにはいきませんし。世界中の料金プランも見ています。
――今年2月のインタビュー(※関連記事)では、サブブランド的なMVNOについて何も決まっていないが、いろいろと検討している、ということでした。

加藤氏
 MVNOさんははずいぶん増えてきましたね。一方で、高市総務大臣が1GBプランに触れたり、安いプランがあってもいいんじゃないかと個人的に意見を、と向けられる際、MVNOというところまで視野を広げれば、端末・料金ともに特徴があって、ずいぶん選択肢が増えてきている。実際にMVNOに乗り換えて料金を節約する方もいます。

 一方で、我々の新料金の根幹には「パケットをシェアできる」という点が挙げられます。家族のなかであまり使わない方、逆に使う方がいて、現状うまく利用されています。

――それはどの程度の割合で利用されているのでしょうか。

加藤氏
 月間の通信量が1GB以下、という方はいるにはいらっしゃいます。しかしその半分程度は、(家族と)シェアしていますよ。

――それは相当、利用されていますね。

加藤氏
 ですよね。我々の料金は、2GB、5GB、8GBがあって、1GB単位で追加できて、シェアもできる。ある種、自由に設計して利用していただける。

料金競争、その舞台裏

――料金で言うと、今秋には、他社から従来より割安なプランが登場しました。

加藤氏
 9月11日ですね(※関連記事)。お昼過ぎに出て、夕方には安倍首相の発言があって(※関連記事)、あの日はダブルですよ。

――事前にドコモとしては、そこまでの料金体系は考えていなかったのですか。

加藤氏
 去年の4月に新料金プランを発表しましたが、その前の2014年1月にソフトバンクさんが制限付の通話定額というアイデアを出されて、ギクッとしながら我々は完全定額でいこうかどうしようかと議論していて、(1000円安い)そんなプランもサンプルとして検討はしていました。

――auが今秋発表したプランでは、他社と比べて既存プランよりも安くなることがアドバンテージだとアピールされています。

加藤氏
 そうですね、それが競争ですよね。それで優位性が失われると困るので他の2社が追随したのは事実。そこでのやり方の違いもありますが、これが競争です。結果だけ見ると、月額1700円で揃った。(横並びになったことから)これが競争か、と言われると、ものすごく私はつらいです。2014年に新料金プランを乾坤一擲で出しましたが、(他社は)慌てられたと思いますよ、完全通話定額や通信量のシェアがあって、システムの開発もある。でも、全速力でキャッチアップされて、違う構えも見せつつある。これが競争ですよね。

「+d」で差別化を

――携帯電話業界全体で、競争を続けていくためには、加藤さんご自身のお考えとしてどういった要素が必要だとお考えですか。たとえば大手キャリアから1GBプランが登場するとMVNOのサービスが選ばれにくくなることは容易に想像できそうです。

加藤氏
 今は、スマホとモバイルブロードバンドでできることはたくさんあります。一方で、契約数はこれからどんどん伸びるのかというと、(成長カーブは)なだらかです。かつて当社はiモードを提供し、端末〜サービスを垂直統合で提供しました。今のスマートフォンの先駆けのような存在ですが、ちょっとクローズドなものでした。しかし今、ドコモではオープンにしようとしています。その概念として「+d」を出した。協力して、創造していこうと。パートナーさんが先にあって、そこにドコモが加わる。そして新しい付加価値を提供する。これは世界的な流れかもしれません。1つはIoTですよね。

 少子高齢化が進む日本では、地方創生や医療、農業などでそうしたものをうまく活用して、効率化を進められる。そうすれば人にうまく時間が生まれて、豊かな生活が送れるようになる。そのために我々は頑張ろうとしているんです。だから「+d」を出した。そのキーワードは、オープンとコラボレーションです。そういう会社に変わっていきたい。キャッシュバック云々するよりも、そっちのほうが大事だと思っているんです。

――上期に「+d」を打ち出した狙いは?

加藤氏
 これまでも「スマートライフのパートナー」などと標榜してきましたが、「+d」のほうがわかりやすいかなと思っています。裏話ですけれども、「+d」構想は、半年ほど掛けて、そのコンセプトを詰めてきましたのですが、一時は「ドコモ生活圏」なんてワードも候補になりましたが、これはやりたいことを示せているようでそうでもないし、上から目線のようでもあった。ちょうど「dマーケット」のように「d〜」というネーミングを使っていたこともあって、うまく連携できないか悩んだすえに「+d」になったのです。

――なるほど、そうなるとポイントサービスが「dポイント」に生まれ変わったのは、至極当然のこと、となりますね。そういえば「dポイント」はキャリアフリーのサービスでもあります。これは便利なだけに、ドコモ回線を解約しても使える、解約に繋がるのでは、といった懸念は検討されたと思うのですが……。

加藤氏
 はい、社内で議論してきました。とはいえ、「dカード GOLD」にしていただけると、通信料によるポイント付与が通常の10倍になります。事業者にとってもメリット・デメリットはあるでしょうが、ポイントサービスを囲い込みのためのもの、とだけ考えると、キャリアフリーにはできません。それでも、ドコモのサービスを見てもらおう、使ってもらおうと考えました。

 これまでもクレジットブランドの「iD」をやってきて、その機能をdポイントに盛り込んだ。決済の機能を持たせているわけです。なかなか黒字化しなかったクレジット事業も、黒字になって2年目です。ポイントサービスは、これまでぽつんと存在していて、うまく活用できていなかった。オープン化への抵抗感を整理できると、できることが増えてきたのかなと思います。

――先日の発表会ではdカード GOLDをずいぶんオススメしていましたが、日本ではクレジットカードの利用率が低いと言われています。dカードの利用を促進するための取り組みは?

加藤氏
 最初に実施するのは、今回発表したキャンペーンです。恒久的な取り組みはまた考えていきたいですが、ポイントが貯まるからこのカードを使おう、というのは増えてきていると思います。

 個人的な話ですが、妻は現金主義なんですよ。ところが、「このカードを使うとポイントが貯まる」「使ったほうがガソリンが安いし」といったことを伝えると、いいんじゃない? と言うわけです。

 どこかへ出かけたときには「ここはカードで払うの?」という会話も増えてきました。年会費に比べて、あんまり使わないとおトク感が追いつかない部分があるかもしれませんが、そういったおトク感があると、一歩進むときにハードルを低くするところがありますね。そのあたりをうまくアピールしないといけないなと思います。長期契約の方にもおトクですよと。

――タスクフォースでも長期契約のユーザーへの優遇を、という声もありましたね。dカードの取り組みはそうした指摘への回答になりますか。

加藤氏
 そういう側面はあるかもしれません。でも、もともと新料金プランで長期契約者向けの割引は提供しているのです。また25歳以下の方に向けた割引もある。うまく伝えられていないのかなと思いますね。

電力、単なるセット割では意味なし

――パートナーシップの展開について、たとえば来春には電力自由化がありますね。先日の「dポイント」の特約店には中部電力も入っていましたので、来春、中部電力さんが全国でサービスを、となれば、dポイントでおトクになる、という考え方ができるかもしれません。

加藤氏
 全国各地に電力会社があって、近しい存在としてガス会社さんも存在します。家というものを見据えていると、いろんな可能性があります。鵜浦(博夫氏、NTT社長)も言っていますが、単なる値引きだけじゃ意味がないと思っています。生活のなかで、どんな提案ができるか一生懸命考えています。

 もちろん中部電力さんとも考えていますが、いろんなところと議論しています。電力の見える化は当たり前かもしれない。家電さんはどうされるんだろうか、と。IoTについても規格はできるだけ統一したほうがいいけれども、グローバルな団体もいくつかあって、なかなか難しいですね。

「実質0円」はやめる?

――ここ2〜3年は端末を中心に、同質化が進んだという指摘がありました。

加藤氏
 はい。2007年にモバイルビジネス研究会があって、その結果を受けて2年契約での割引や、端末代金の分離を実施した。ところがそこへスマートフォンが登場したことが大きかった。ポテンシャルがあってやれることが多い。こちらのほうがサービスも提供しやすい。では蛇口としてのスマホをサポートしようかとなった。タスクフォースでも同じ議論がされるかもしれませんが……。

――タスクフォースでは、毎月の割引へ切り込みたいのか、という印象があります。一方で、スマートフォンの端末価格が高額になっており、割引がなければ買えないという面もあります。

加藤氏
 ちょっと支援せねばいかんだろうなと思いつつ、でも「(実質)0円」であったり、キャッシュバックであったり、というのではないだろうなと思っています。

――海外では奨励金の上限を決めたところもあったそうですが。

加藤氏
 1つのやり方かもしれませんが、その後、端末が売れなくなったという話もあります。難しいところです。チキンレースみたいな面もありますが……。

――LTEも広がって、スマートフォンのスペックも横並びになったように見えますが、2020年を見据えると5Gの話もあります。今、奨励金にキャップが付いてしまうと、次のステップに影響しそうです。

加藤氏
 進化が遅くなる、という側面も考えなきゃいけないかもしれませんね。かといって、今、(具体的な施策は)何も考えていません。ただ歴史は踏まえている。個人的には、繰り返しになりますが、あまり不健全なものは避けつつ、一定の価格でお求めいただけたらありがたいです。9万円、10万円という端末価格はありますが、割賦という制度もありますから。

Windows Phone、まだ未定

――この冬はWindows 10 Mobileが本格的に展開しそうですが、ドコモとしてはどう取り組むのでしょうか。

加藤氏
 法人では、歴史的に過去の資産もあって、その延長線にあるかもしれないなと思っています。ドコモのラインアップとしては、Windows 10 Mobileのスマートフォンを取り扱うかどうかは未定です。

――市場性はどう見ているのでしょうか。

加藤氏
 あるならば、法人市場がまず最初なんだろうな、と思います。

――以前からWindows Phoneに関する質問が、発表会では挙がりますよね。

加藤氏
 他社さんはどうでしょうね?

――大手キャリアは、みなさん、慎重な姿勢のままという印象ですよね。

加藤氏
 MVNOさんでは……。

――今はまだ、でしょうか。これからSIMと端末を手がけるところがありますね。通信事業者からするとリスクがあるものでしょうか。

加藤氏
 リスクというか、準備すべきことがたくさんあるのでしょうね。コンテンツもそうですし。

――なるほど、温度感はさほど変わらず、でしょうか。

加藤氏
 (否定も肯定もせず)あっはっはっは。

――ありがとうございました。

(関口 聖)