インタビュー

これから来そうなメーカー探訪

日本で喜んでもらえる端末を企画~アルカテルの国内戦略

TCL Communication TechnologyのJapan Country Directorのラッキー・ツァオ氏

 アルカテル(ALCATEL)はフランス発祥の通信メーカーで、現在は中国のTCLが端末の開発・販売を行っている。日本ではあまり馴染みのないブランドだが、ケータイ業界では老舗のブランドでもある。

 アルカテルブランドを展開しているTCL Communication TechnologyのJapan Country Directorのラッキー・ツァオ氏にお話を伺う機会を得たので、インタビュー記事の後編となる今回は、アルカテルブランドのスマホや日本での製品展開についてお届けする。

欧米の若者に人気のアルカテル・スマホ

最新の若者向けモデル「go Play」

 グローバル市場において、アルカテル端末のユーザーはその大半が若い人たちだという。この理由についてツァオ氏は、「アルカテルの端末は価格帯で見るとミッドとローの割合が多い」と指摘する。30~400ドルがほとんどで、スペックは普及帯・低価格だがファッショナブルな端末を多く取り揃えていることから、若いユーザーでも選択肢が多く購入しやすいという。

 しかし、そうした若いユーザーだけでなく、年配のユーザーにも使ってもらえるような端末やシニア向け製品、逆に子ども向けタブレットも製造している。ツァオ氏は「すべてのお客さまに楽しんでもらえる製品を作るのが弊社の目標の一つ」と語る。

シニア向け製品「POP3」

 調査会社IDCによる2015年の第3四半期までのデータによると、アルカテルのケータイはグローバルで第5位のシェアだという。アルカテル内部のデータによると、2015年のアルカテルのケータイ総出荷台数が8300万台以上で、前年比14%増、そのうちスマートフォンは4800万台で前年比16%増だという。2015年のスマートフォン全体の出荷台数は、10%の成長だったので、市場全体の成長が鈍化している中、アルカテルは堅調な伸びを維持しているわけだ。

 とくに北米では出荷台数が倍増しシェア5位にランクインしているほか、オーストラリアは市場参入から3~4年程度でシェア4位にまでなっているという。今後は新興国など、新しい市場の開拓に積極的に取り組むとのことだ。

 グローバルの競争環境に参入したことで、アルカテルにとってのライバルとはどこになるのだろうか。その質問に対してツァオ氏は、「各社それぞれの戦略と特徴を持っているので、そういった比較はしにくい」と語る。明確にどこがライバルと考えるより、グローバル市場でケータイを提供する全メーカーがライバルと考えているという。

 そうしたグローバル市場でのアルカテルの強みはというと、やはりフランス発祥のブランドの力。ツァオ氏は「アルカテルはフランスとイタリアにデザインセンターを設置し、エレガントなデザインを提供している」と説明する。

まずはフラッグシップ

日本でも発売されたフラッグシップモデルの「ALCATEL ONETOUCH IDOL 3」

 アルカテルブランドのスマホとしては、日本では昨年夏に「ALCATEL ONETOUCH IDOL 3」が発売されているが、これはアルカテル端末の日本投入としては第5弾となるという。それ以前のアルカテルブランド端末としては2013年12月に3Gスマホの「ONETOUCH IDOL ULTRA」、2014年9月にイオンスマホとして「ONETOUCH IDOL 2 S」などが発売されている。

 アルカテルが日本に参入して3年目となるが、ツァオ氏は「これまでの経験の積み重ねで、日本市場に対する認識は深くなってきている」と語る。

 ほかの海外メーカー同様、ツァオ氏も「日本市場は特殊なマーケットであり、ほかの国での成功経験が適用できない部分がある」と評価する。「日本は製品の品質も高く、消費者の目も肥えているので、日本で受け入れられるために、デザイン、スペック、品質をすべて日本に最適化して戦略を調整している」とのことだ。

 その戦略の中で、2015年夏に最新のフラッグシップモデルであるIDOL 3を投入している。IDOL 3は5.5インチディスプレイを採用しながらも薄く軽いことや、オーディオやディスプレイの品質の高さが国内でも好評だという。

 最近は日本でもMVNOで使う端末として2万円以下の安価なスマホが多く登場していて、アルカテルもグローバルでは安価なスマホを多数ラインナップしている。しかし、そうした安価なモデルは、アルカテルにとっては「次のステップ」だと考えているという。「日本市場では、まず当社のフラッグシップ機、つまり最も良い製品を提供し、アルカテルブランドの認知度を高めたい」とツァオ氏は説明する。

日本での次なる展開は?

 今後の日本向けの端末としては、ツァオ氏は「製品自体のコンセプトや特徴も大事だが、日本のユーザーに喜んでもらえる機能を搭載した端末を企画している」と明かす。さらに個々の端末だけでなく、日本においてはラインナップと販売チャネル、ブランドの3つのポイントを拡充していくという。

 まず、ラインナップについては、現在店頭に並んでいるのが2モデルなので、これを増やしていく。それもフラッグシップのIDOLシリーズだけでなく、ほかのシリーズや個性的な製品、ローエンド製品、スマートフォン・タブレット以外の製品の日本投入も検討しているという。

 ちなみに、アルカテルは米AT&T向けにルーター内蔵iPadカバーを提供しているなど、特定の国やキャリア向けに独自端末も開発・提供している。日本向けに開発・最適化された端末が登場する可能性もあるかも(?)とのことだ。

 販売チャネルについては、現在は量販店とECサイトでの展開となっているが、今後はこれらを増やすとともに、MVNOへの販路を増やしたいと考えているという。現在もIDOL 3はIIJmioのSIMカードとセット販売しているが、これはあくまで同社のオンラインショップでのキャンペーンという扱い。MVNOキャリアからの販売となれば、商品面や価格面でより面白い展開が期待できる。

 ブランドについては、アルカテルは日本においてまだ新しいブランドなので、ブランド認知度の向上を目指すという。そのためにオンライン・オフライン両面でのプロモーションを活用・継続していきたいと語っていた。

 2月22日から開催される世界最大のケータイ見本市「Mobile World Congress」では、世界中のケータイメーカーが新製品を発表するが、アルカテルも新製品を発表すると予想される。ALCATEL ONETOUCH IDOL 3が昨年のMobile World Congressで発表された経緯からすると、日本でも発売されるようなフラッグシップモデルが発表される可能性も高い。Mobile World Congressでの同社の動きは要チェックだ。

昨年の「Mobile World Congress」での発表の模様

白根 雅彦