インタビュー

「Galaxy S7 edge」「Galaxy S7」開発者インタビュー

とことんユーザーの声に耳を傾けたフラッグシップモデル

 サムスンが2月に発表したAndroidスマートフォンのフラッグシップモデル「Galaxy S7 edge」と「Galaxy S7」の2モデルについて、開発チームにグループインタビューする機会を得た。今回は前編として、グローバル商品企画グループ 次長のソ・ジン氏へのインタビューの模様をお伝えする。

新機能の搭載よりも実用性を重視

サムスン グローバル商品企画グループ 次長のソ・ジン氏

――Galaxy S7/S7 edgeは、一言で言うとどんなスマートフォンなのか、何を目指して企画したものなのかを教えてください。

ソ・ジン氏
 以前は新たな機能や新しい体験を重視していました。今はある程度スマートフォンが成熟していますから、よく使う機能の利便性を重視する傾向にあります。新しい体験はもちろん、実用性の方を重視して、よく使う機能の完成度を最大化することに重点を置きました。

――先行して販売されている地域では、どういった機能が評価されていると感じていらっしゃいますか?

ソ・ジン氏
 実用的な革新と完成度について好評をいただいています。例えば、コンパクトなサイズや持ちやすさ、暗いところでもきれいに撮れるカメラ機能、キャップレスの防水防塵機能、強化されたエッジの体験、microSD対応やバッテリー容量の大きさなどが好評をいただいています。

――防水は日本以外の地域ではあまり必要とするユーザーは多くないように思われていたのですが、これに載せることで世界中の消費者は防水というものに興味を持ち始めているのでしょうか。

ソ・ジン氏
 スマートフォンは日常的に持ち歩くデバイスになっています。日常的に手を洗う場合もありますし、雨の日にも使用できるようにするというニーズは(グローバルでも)多くありました。日本については言うまでもありません。

――edgeのモデルは過去にいくつか出していると思うのですが、ユーザーからどういう評価だったのでしょうか。今回のモデルで、そこにどういう機能を持たせようと考えられたのでしょうか。

ソ・ジン氏
 今までedgeのモデルを出している中でユーザーがどのように使用しているのか、弊社で調査しました。調査の結果、よく使う機能をショートカットに割り当てるというのが、一番よく使用されている使い方でした。それを強化して欲しいという要望がありました。ですから、S7 edgeでは、エッジパネルを拡張し、タスクエッジのような機能を追加しました。サードパーティにもエコシステムを公開し、ユーザーがより簡単で便利に使用できるようにしました。グローバルではそのような面も評価いただいています。

――S7とS7 edgeの2モデルがありますが、これらをどう差別化していくのでしょうか。

ソ・ジン氏
 プレミアム端末にもいろいろなユーザーがおり、さまざまなニーズが出ているような状況です。それに応えるために、一つは一般的な端末を作って、もう一つはエッジ機能やディスプレイサイズなどに違いを持たせました。

ユーザーの声を反映させたS7シリーズ

Galaxy S7 edge

――microSDや防水などのS6で省略した機能は、S6のセールスに影響があったためにS7に搭載することになったのでしょうか。

ソ・ジン氏
 今回はお客様の声を重視するというコンセプトでした。その中で、どういう機能を望んでいるのかを調べたところ、microSDや防水防塵という機能への要望も大きく挙がってきたので、それに応える形で搭載することにしました。

――S6からS7の間で技術的にできるようになったことなどがあったのでしょうか。

ソ・ジン氏
 技術的な制約があったというわけではなく、さまざまな声があった中で、じゃあ、microSDはどうやって対応したらいいのか、防水防塵はキャップがあった方がいいのか無い方がいいのかなど、そういう部分を確認してから、それを技術的に実現できるように集約したということになります。

――S6とS6 edgeの時はディスプレイのサイズが同じでしたが、S7とS7 edgeでサイズを変えたのには何か理由はあるのでしょうか。

ソ・ジン氏
 プレミアムスマートフォン市場のニーズ自体が細かくなってきていますので、それを反映した結果、ディスプレイやバッテリーのサイズを調整したり、エッジを入れる入れないということを決めました。

――edgeのユーザーほどハイスペックな仕様を求めるということでしょうか。

ソ・ジン氏
 スペックというより、edgeを使用している方がトレンドに敏感なので、トレンドに合わせた機能を搭載しました。

――チップセットを地域によって分けている理由は?

ソ・ジン氏
 2つのチップセットを利用している理由としては、まず地域ごとにネットワーク環境が違うということで、ネットワーク環境に合ったチップセットを採用しています。性能は同等です。

――外部コネクターがUSB Type-Cではなく、microUSBになっていますが、Type-Cの導入はまだ早いと見ているのでしょうか。

ソ・ジン氏
 技術的なハードルは無いのですが、市場を調査した結果、まだType-Cに対応したアクセサリー類が十分準備できていないと判断したため、今回はこのような形になりました。ユーザーが不便に感じてはいけませんから。

edgeシリーズのユーザーには常に最新機能を

――最近のサムスンはGear VRやGear 360のようにスマートフォンと連携するようなアクセサリーをたくさん出されています。それらの開発チームとは密に連携しているのでしょうか。

ソ・ジン氏
 同じチームに所属していますから、当然連携しています。いつも協議して話し合いながら同じ方向に行くように調整しています。

――Gear VRに対応させるために制約などは発生しなかったのでしょうか。

ソ・ジン氏
 そもそも逆の発想で、Gear VRがGalaxyシリーズに対応できるように準備していました。S7とS7 edgeについては、Note 5などの大型端末も対応していたので、問題なく対応できると想定して企画しました。

――S6 edgeでもソフトウェアアップデートすることでS7 edge相当のエッジ機能を利用できるようにされていますが、その理由は?

ソ・ジン氏
 edgeシリーズのユーザーは、常に最新機能で満足していただくというのが弊社としての基本方針です。ですから、S7 edgeが出る前にS6 edgeでソフトウェアアップデートを通して、先に実現し、エッジ自体の機能をより多くの方に使用していただけるよう考慮しております。

――サムスンのフラッグシップというと、SシリーズとNoteシリーズがありますが、S7はどういう位置づけの端末になるのでしょうか。

ソ・ジン氏
 Sシリーズは一番のフラッグシップモデルという位置づけです。Noteについては、より専門的な領域でペン機能などを訴求していますので、そのような差別化を図っています。

――S6シリーズの時と比べると、販売価格を下げられているようですが。

ソ・ジン氏
 いつも端末を出すときにはユーザーにとって最適な値段がいくらになるか悩んでいます。考慮した結果、現在のS7シリーズの価格になっています。

――Sシリーズのディスプレイが大型化してNoteシリーズとの差が小さくなっています。

ソ・ジン氏
 Noteのユーザーは、大画面で購入いただく方も多いのですが、ペンの機能が良いということで購入いただく方も多いので、S7 edgeのユーザーがNoteユーザーを食い込むということは無いという風に考えています。

――スマートフォンの最適なサイズをどれくらいと考えているのでしょうか。

ソ・ジン氏
 プレミアムのスマートフォン自体が細かいニーズに分かれているので、そのようなユーザーが使用している形を考えて、どれが最適か悩んでいます。デザインの面では、サイドの曲面の美しさを実現できるようにこだわっています。S6よりも滑らかなカーブで、前面と背面の両面をカーブさせました。これによりグリップ感の向上につながっています。

――海外で販売されているデュアルSIMのバージョンは2Gと4Gの組み合わせですが、3Gと4Gにはならないのでしょうか。

ソ・ジン氏
 市場のニーズは常にリサーチしており、そのようなニーズがあることは認知しておりますので、今後適用できるように検討をしているところです。

――ありがとうございました。

湯野 康隆