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スマホのカメラで「指静脈認証」、日立が開発

 日立製作所は、スマートフォンのカメラを使った生体認証技術を開発した。

 今回開発された技術は、指先の静脈から登録者かどうかを判定する「指静脈認証」を用いたもの。銀行のATMなどで実用化されているが、専用の赤外線センサーが必要だった。

 日立は新たに、スマートフォンのカメラで撮影したカラー画像から、画像認識技術によって指静脈パターンを抽出することに成功した。新技術は専用ハードウェアを必要とせず、スマートフォンのカメラに指をかざすだけで利用できる。現行スマートフォンのスペックで、パターン抽出処理が可能としている。

 将来的には、業務用タブレットでの従業員の本人確認や、金融・決済アプリでの認証サービスとして提供を目指す。2017年~2018年度の実用化を目処に、技術検証を進める。

複数の指で精度を高める

 指静脈認証は、人によって異なる指の静脈パターンを利用して、登録者かどうか判定する。指を利用するため手軽に利用できる点や、偽造が難しい点などが、他の生体認証技術より優れている。従来の技術では、赤外線を吸収する性質を利用して、センサーによって精度の高い静脈パターンを取得していた。

 日立が今回開発した技術は、静脈パターンの抽出メカニズムが異なる。スマートフォンで撮影した皮膚表面の画像から、静脈パターンを探り出す。皮膚の下に静脈がある部分の色は、皮膚全体の色と比べて、やや青みがかっているという。一方で、指のシワは赤みが強くなっている。

 そこで、VGAサイズで撮影したカラー画像から、画素1ドットごとに「“静脈らしい色”か」を判定。指の位置や傾きを補正する技術を組み合わせることで、静脈パターンを検出している。

 スマートフォンのカメラで利用する場合、背景に指以外のものが映り込むが、機械学習を用いて指と背景の境界線を抽出している。また、同時に開発しているセキュリティ技術により、指を撮影した画像では認証できないようにしているという。

 現時点で、指1本から「登録者本人の指を本人と識別(本人認証)」し、「他人の指を本人ではないと識別(他人認証)」でき、複数の指から判定することで、より高精度な認証が可能。

 プロトタイプでは、4本の指を同時に撮影し、うち2本以上が一致している場合に本人と判定。画像処理にCore i5プロセッサー搭載のタブレット端末を使って、指をかざして1秒程度で判別している。1000回の本人認証と、1万5000回の他人認証を行い、確実に判別しているという。

 今後は、検証対象となる指のサンプルを増やし、人種による肌の色の違いや、指が汚れている場合、外光が強い屋外環境など、さまざまなケースで精度の評価を行う。

日立製作所 テクノロジーイノベーション統括本部 システムイノベーションセンタ長の池田尚司氏
デモンストレーションを披露するシステムイノベーションセンタの三浦 直人氏