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ドラゴンボールのアプリで全米1位、秘訣は「かめはめ波を打つまでの時間」

グーグルのイベント「Go Global」で語られたバンダイナムコの成功体験

 「やっぱりみんな、『かめはめ波』を打ちたいんですよね」――そんなエピソードがバンダイナムコエンターテイメントの関係者から披露されたのは、グーグル主催のゲーム開発者向けイベント「Go Global」でのことだ。

 「Go Global」は、日本、韓国、台湾のメディアを対象に20日に行われた。午後には開発者向けのイベントが開催されるとのことで、その内容をメディア向けにいち早く伝える場となり、イベント名の通り、各国から世界へ飛躍するために重要な点が語られた。

左からGoogle Playゲーム事業開発部日本統括の金 清司氏、App Annie CEOのバートランド・シュミット氏、台湾レイヤークCEOのMing-Yang Yu氏、バンダイナムコの金野徹氏、ネットマーブルのTaesoo Kim氏、Google Play APAC ディレクターのジェイムズ・サンダース氏

中心はブレなく

 アプリ調査サービスを手がけるApp Annieの共同創設者兼CEOであるバートランド・シュミット氏によれば、日本のゲーム会社では売上の90%が日本国内から。これが韓国の企業では、日本企業よりも多くの割合で海外市場で売上を伸ばしている。

日本企業の売上比率
韓国企業の場合。グラフ上の黒い部分が海外からの収入だ

 そんな中でも、米国のGoogle Playでトップを獲ったバンダイナムコの「ドラゴンボール ドッカンバトル」。バンダイナムコエンターテイメント執行役の金野徹氏によれば、全米1位となったスマートフォンゲーム「ドラゴンボールドッカンバトル」はプレイし始めてから『かめはめ波』を打つまでの時間が継続率に影響する。

 同社では、コンテンツを軸に展開する戦略を進めており、個々の機能や各種演出の調整と、ユーザーの動向の相関関係を細かく見る、といった手法に加えて、「この原作が好きならば、どういった展開を好むか」と、作品ごとに仮説を加えて分析し、ファンが魅力に思う原作の本質的な部分を抜き出そうとしている。

 「ドラゴンボール ドッカンバトル」では、それが「かめはめ波」というわけだが、そうした本質的な魅力を重要視する手法については、ワールドワイドで共通化しているのだという。その上で、配信する地域ごとに好まれる翻訳など、細かなローカライズも行って仕上げている。本質はブレず、細部でカスタマイズしていくという手法により、「ドラゴンボール」のほか、「ONE PIECE トレジャークルーズ」は韓国で2位、「ソードアートオンライン メモリデフラグ」は台湾で8位となり、売上のうち海外が占める割合は2015年の10%、2016年の18%、2017年の25%(見通し)と右肩上がりで推移している。

海外でも好調なバンダイナムコのアプリ
バンダイナムコの3つの手法
配信開始から間もないリネージュ2 レボリューションも、大規模なCM展開もあってか好調という

 9月にスマートフォン向けMMORPG「リネージュ2 レボリューション」を提供しはじめたネットマーブルのTaesoo Kim氏も「もともとリネージュは対人戦が基本的な魅力の部分。日本ではMMORPGはコアなジャンルであり、対人戦はうまくいかないという先入観があった。そこで協力バトルや4~5人のパーティでプレイというアイデアが出てくるかもしれないが、それは良くない。一番良いところは触れないでおくことが重要」と語る。奇しくも、バンダイナムコの金野氏と同じように、本質的な魅力はブレない、という視点であり、グローバル展開を図る上で重要なヒントになりそうだ。

アプリ市場、これから期待できる国は?

 Google Playの売上を国別で見ると、世界トップ5には、日本、韓国、台湾が入る。いずれもモバイルネットワークが充実し、ゲームや課金に慣れたユーザーが多くいる市場だ。

スマホアプリ市場の一般的な推移
国ごとのダウンロード数

 App Annieのシュミット氏は、一般的なスマートフォンアプリ市場の推移として、「まずダウンロード数が増える」「利用が増える」「収益が伸びる」という3つのステップがあると説明する。利用が増え、収益が期待できるマーケットを国別に見ると、日韓台のほか、米国や欧州、中国など、いわゆる経済大国や先進国が挙げられるが、今、ダウンロード数が急激に伸びているのは、インド。それにインドネシア、ブラジル、タイといったいわゆる新興国が続いており、シュミット氏は「次の10億人のマーケットはこういうところになるのでは」と予測する。

グーグル、インディーゲームコンテストを2018年春に

 今回のイベントでは、2018年春、グーグルがインディーゲーム開発者を対象に下コンテスト「Indie Game Festival 2018」を開催することが明らかにされた。

 30人以下の非上場企業、あるいは個人の開発者が参加できる、と条件があることで、いわゆるスタートアップなどが参加資格を得られる。革新性、楽しさ、デザイン、技術力と品質という4項目で評価されるとのことで、2018年4月のファイナルイベントに向けて、まずは今年10月、キックオフイベントが開催されるとのこと。ARやVRを使ったゲームアプリもまた対象だ。

 こうしたイベントのほか、Google PlayではABテストの機能、あるいはデバイスカタログと呼ばれるサービスのユーザーインターフェイス刷新など、開発者を支援する機能を展開し、開発者の活動をさらに活発化しようとしている。たとえばデバイスカタログを使うことで、日本では販売されていないAndroid端末のスペックがわかるとのことで、これまでより海外展開しやすくするためのツールになり得る。

 Google PlayのAPAC(アジア太平洋)担当であるジェイムズ・サンダース氏は、日々、Android端末がアクティベートされ、市場に増える中、規模にかかわらず開発者が成功できるよう、開発支援機能のほか、課金システムの拡充などで支援すると説明し、アプリ開発者がさらに大きなマーケットを狙えるようにするための環境作りに注力する姿勢をアピールしていた。